プロローグ
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魔王ヤミとの戦いが終わり、その後“ワールドシルヴァネア”で起きていたクローン姉妹達の問題もひとまずの解決を迎えた俺達“シスターズアルカディア”。
そんな5月29日の水曜日の朝、“ワールドフラワレス”のイツキの屋敷に集まった、総勢27人の家族が、朝食を終えたあたりのタイミングで、俺とカズヒの両親であるアポロニア(現世での名は藤原一郎)とアルテス(現世での名は藤原陽恵)が突然現れ、こう言った。
「どういうことも何も、今日今から全員分の戸籍を取って、正式に俺達の娘として、皆を養ってやるって話だ!!」
「それと、皆さんの学校への編入もサポートします。
と言っても、“ワールドアクア”か“ワールドシルヴァネア”、“ワールドアイラン”の三つの世界の学校の何れか、という制約はありますが、皆さんお好きな学校へ編入し、それぞれの学園生活が送れるよう、私達がサポート致します。
それが、魔王ヤミ様から頂いた最後の加護となります」
突然過ぎて皆が混乱しているが、要するに、俺達はこれから普通に生活して学園生活を送ることになる、らしい。
「いくつか質問してもよろしいですか?」
イツキが手をあげて父さん達に質問をした。
「おう、なんでも聞いてくれ、王女さん!いや、娘になるんだから、イツキちゃん、と呼ばしてもらうぜ?」
「…少々不本意ですが、お兄様の妻になる以上はどうあってもお二人はわたくし達の両親になる方々、呼び方はお任せいたしますわ。
それより質問なのですが、まずわたくし達の戸籍はどのようになるのでしょう?
お兄様達の世界“ワールドアクア”でのわたくし達の戸籍、という意味でしょうか?
それから、“ワールドアクア”か“ワールドシルヴァネア”、“ワールドアイラン”の三つの世界の学校の何れかへ編入するサポートをしてくれるということですが、何故その三つの世界なのでしょう?
それと、具体的なサポート内容とは?」
「…すまん、三行でまとめてくれ」
「あなたは黙っていて下さい。
イツキちゃんの質問には私が答えます」
そう言って母さんが代わりに質問に答えた。
「まず、皆さんの戸籍に関してですが、これは皆さんの旅した世界全てで、それぞれに皆さんの戸籍が作れます。
例えば、イツキちゃんは“ワールドフラワレス”において、イツキ・フジワラという戸籍を持ちながら、同時に“ワールドシルヴァネア”、“ワールドカシミウラ”などでも同じイツキ・フジワラの戸籍を持ち、“ワールドアクア”では藤原一月としての戸籍を持つことになります」
「そんなことが可能なのですか!?」
「はい、魔王ヤミ様が最後に私達に残した加護のおかげです」
改めて、魔王ヤミの『認識改編』の魔術はとんでもないな…
「…なるほど、戸籍に関しては理解しました」
「はい、では次に学校に関してですが、これに関してはシンプルで、
すでに陽一君と一陽ちゃんの通っている“ワールドアクア”の高校へ編入するか、
ミライちゃん達の通っている“ワールドシルヴァネア”の高校に編入するか、
もしくは“ワールドアイラン”にある妖獣高校に編入するか、の三択が一番現実的だろうと考えたからです。
勿論、全員が“ワールドアクア”の高校に通うもいいですし、別れて登校するも自由です。
学園生活は違えど、帰って来る家は一緒なのですから、皆が離れ離れになることはありません」
「え、でも世界が違えば『異世界転移魔術』を使わないといけないんでしょ?
でも、それを使うにはかなりの魔力が必要で、そもそも魔力をもたないあたし達には移動すら出来なくない?」
そう質問したのはカズヒだ。
「それなら、カナンちゃんの魔力を利用した“異世界転移魔法陣”を各世界の拠点に、それぞれ配置しておけば問題ないわ」
「わたしの魔力を?」
「ええ。
その魔法陣は、どれだけ魔力をつぎ込んでも私達家族以外には起動出来ないようになっていて、
私達家族が魔法陣に乗ると、自動でカナンちゃんから魔力が供給されて、魔法陣が起動して、それぞれの世界の拠点へ移動出来る仕組みになってるの。
ちなみにその拠点は、“ワールドアクア”だと私達の家、“ワールドシルヴァネア”だとクルセイド研究所、“ワールドアイラン”だとカナンちゃん達が住んでた屋敷、“ワールドフラワレス”はここ、イツキちゃんの屋敷、となっているわ」
「ああ、ちなみにカナンちゃんの魔力に関してだが、本人は気付いているか分からねぇが、魔力をある程度放出し続ける必要があってな、魔力が体内に溜まり過ぎると、体調不良を起こす場合があるんだ」
「え、そうだったんですか!?」
「ええ、これは無限に近い魔力を持つ者にしか分からないことだから、ほとんど知られていないことなの。
ただ、カナンちゃんの場合、幸か不幸か、常に魔力を放出し続ける環境にあったせいで、そういう経験はなかったかもしれないけど」
カナン姉ちゃんは、その無限の魔力を利用されて、人体実験のようなことを繰り返し行われてきた過去があり、そのせいで魔力を溜め込み過ぎるということがなかったというのは皮肉なことだ。
「だから、この“異世界転移魔法陣”はカナンちゃんの魔力を常に使い続けることで、カナンちゃんの身体を守ることにもなるから一石二鳥、ということなの」
「あ、それならクルセイド研究所と第2研究所、それにムツミさん達の家を繋ぐ“転移魔法陣”にも、同じような仕組みを利用すれば、
モモコちゃんやユエちゃんがいなくても自由に魔法陣を起動出来るようになるのかしら?」
そう質問したのはマイカ姉ちゃんだ。
クルセイド研究所と、アスカさんが秘密裏に作っていたクルセイド第2研究所、そしてムツキとムツキハーレムのメンバーが暮らしているムツミさんの家に、それぞれを繋ぐ“転移魔法陣”を設置しているらしいが、起動するにはモモコかユエが魔力を送って魔法陣を起動させる必要があった。
「ええ、可能のハズよ。
カナンちゃんの魔力量を考えると、一日に何万回と魔法陣を起動させない限りは魔力不足に陥るということはないハズだから」
「さすがにそれだけの移動を一日ですることはないだろうな…」
「なるほど、理解しました。
最後に、わたくし達へのサポートと言うのは?」
「それに関しては、学校に通うための資金やその他手続きは勿論ですが、
普段の生活費、おこづかいなど親として子供に果たすべき義務と責任全て、ですね」
「そ、そこまでしていただけるのですか!?」
「魔王ヤミの加護って、そこまでしてくれるものなの!?」
イツキだけでなくハルカも驚きの声をあげた。
「ん?いやいや、さすがにお金までは魔王ヤミ様の加護でもどうにもならねぇよ、ハルカちゃん」
「え、だって…、」
「お金は私と一郎さんでしっかり稼ぎますからご安心を」
「ええっ!?」
「で、でもさすがに27人分の生活費を稼ぐのは大変なんじゃ…?」
サクヤ姉ちゃんの問いに対して、父さんと母さんはなんでもないことのように答えた。
「ま、その辺のことは子供達が気にすることじゃねぇよ!」
「ええ、その通りです。
最悪、一郎さんが臓器を売りますから」
「はははは!母さん、冗談はよしてくれよ!」
「さて、他に何か質問などはありますか?」
「…え、冗談だよね?
あれぇ~?なんか最近俺に対して当たりが強くありません?」
「はいにゃ!」
「はい、リンちゃん」
「えっと、質問というよりお願いなんだけど、リンは年齢的に中学に通うことになると思うんだけど、他のねーね達と同じ高校に通うことって出来ないのかにゃ?」
「それなら“ワールドアイラン”の妖獣高校に通うのが良いでしょう。
あそこなら、飛び級が認められてますから」
「え、そうなのにゃ!?」
「おー!だったら、ボクもリンちゃんと一緒に妖獣高校に通おうかな?」
そう言ったのはアキラだ。
アキラは前世において、リンを妹のように可愛がってくれていて、リンもアキラによく懐いている。
「アキラねーねと一緒なら心強いにゃ!!」
「飛び級出来るなら自分も皆と同じ高校2年で編入したいぞ!!」
そう言ったキョウカだが、
「勿論それも可能です。
ですが、飛び級が認められるには、妖力に加えて編入試験時の点数もかなり高得点を要求されます。
リンちゃんもキョウカちゃんも妖力に関しては問題ないでしょうけど、試験勉強頑張れますか?」
「頑張るにゃ!!」
「うぅ~…、自信はないけど、でもリンの後輩になるのは嫌だから自分も頑張るぞ!!」
「ふふ、いい返事です。
では、他に質問はありますか?」
「妾はどうなるのじゃ?
さすがに一人だけ小学校に通うというのは、いくらなんでも寂しいぞ?」
そう言ったのは最年少のセイラだ。
「それでしたら、我がセイラ様と一緒に小学校に通いましょう!」
「ユエお姉ちゃんがそうするならぼくも!!」
「だったらオイラも!!」
ユエとユナとヒナの三姉妹がそんなことを言い出した。
三人は前世で、俺達の家でメイドとして働いていて、年下のセイラに対しても丁寧語で話していたのだが、それは現世においても同じようだ。
「お主らの気持ちは嬉しいが、さすがにそれは無理があるじゃろ!?」
「それなら、セイラちゃんは『成人化』の呪術で高校に通えばいいじゃねぇか?」
「おお、その手があったの!」
「いや、でもそれだと戸籍年齢と合わなくなるから色々無理があるだろ」
「その点は気にするな!
魔王ヤミ様の加護がある限り、戸籍に関する矛盾点は全てなかったことになるからな!」
「さすがは魔王ヤミの力じゃな。
さすがに妾の『世界ヲ変エル力』では、半永久的に世界を書き換え続けることは出来んからの」
いや、もうなんでもありだな、魔王ヤミの加護!
「では、他に質問はありませんか?
…無ければ、皆さんに何処の世界の高校に通うか決めてもらおうと思うのですが、さすがに今すぐというのは難しいでしょうから、
今週末、6月2日の日曜日までに答えを聞かせて下さい。
先程も言ったように、どの世界の高校に通っても、帰ってくる場所は皆同じですから、離れ離れになることはありません。
なので、そう難しく考える必要はありませんから」
「「「「「はい!!」」」」」
「よい返事です。
では、私達はこの後仕事がありますので、そろそろ失礼致します。
あ、それと、陽一君に一陽ちゃん、二人はすでに退院手続きを済ませましたから、もう病院には戻らなくていいですよ」
「えぇ!?」
「それ大丈夫なのか…?
いや、俺達的には何の問題も無いんだが、一応約一ヶ月意識不明の体で入院してた俺達が、そんな急に退院していいなんて…」
「ま、その辺は、な、うん、気にするな!」
「めっちゃ気になるけど、気にしないようにするよ……」
「それと、しばらくの間、高校の方はお休みをもらっているから、ゆっくりなさい。
復学は皆の編入が決まった頃になってるから」
「ああ、分かった!」
「やったー!!」
「あ、あと今日この後、従妹の陽子ちゃんが“ワールドアクア”の俺たちの家に、二人の見舞いに来るそうだから、それまでには“ワールドアクア”に戻っとけよ?」
「え!?今日この後!?」
「え、だって、今日は平日で学校あるんじゃ!?」
「それがな、昨晩二人が意識を取り戻して退院したって陽子ちゃんに連絡したら、『明日朝一でそちらへ向かいます!』って返事が来てな?
念のため、学校は大丈夫か?って聞いたら『学校なんて行ってる場合じゃないです!』だと」
「陽子ちゃん、ほとんど毎日お見舞いに来るくらい心配してたからね。
まぁ、実際には誰も入院していないから、そういう風に思わされていた、ってのが正しいんだけれども」
『認識改編』のおかげで、色々とややこしいが、そりゃ従兄姉の俺達が一ヶ月近くも意識不明で入院してる、となれば心配もするよな…
「ああ、とりあえず分かったよ。
この後すぐ家に戻るよ」
「頼んだわね。
じゃあ、これがさっき言ってた“異世界転移魔法陣”だから、何処か屋敷の分かりやすい所に設置しておいてね。
各世界分用意してあるから、時間のある時に他の世界の拠点にも置いておくように。
あ、私達の家にはもう設置済みだから」
そう言って母さんが魔法陣が書かれた紙の入った封筒をいくつか取り出して、俺に渡してきた。
それぞれに“ワールドフラワレス”、“ワールドシルヴァネア”、“ワールドアイラン”と書かれていて、中には三枚ずつ魔法陣が入っていた。
行き先ごとに別の魔法陣を使うためだ。
俺が魔法陣を受け取っていると、後ろの方で姉妹達のひそひそ話が聞こえたが、具体的に何の話をしているのかは俺には聞こえなかった。
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「従妹の陽子さんと言うのは…、」
「アニぃのことが好きだっていう、あの?」
お兄ちゃんがお母さんから魔法陣を受け取っている時に、イツキちゃんとハルカちゃんがあたし達姉妹にだけ聞こえるような小さな声で話しかけてきた。
「あ、うん、前に少しだけ話したことあったよね」
イツキちゃん達には、あたし達に従妹で同い年の女の子がいて、その子がお兄ちゃんのことを好きだって話をしたことがあった。
当然、お兄ちゃんは陽子ちゃんからの好意には気付いていない。
「それで、どうするの?」
「どうする、とは?」
「いや、だってアタシらはその子からすれば恋敵みたいなものじゃない?」
「あー、そうなるのかな?」
「なるでしょ」
「なるでしょうね」
「というか、あんだけシスコンのヨウ君の何処に惚れたっちゃろね?」
そこへツキヒちゃんも会話に加わってきた。
「それをあたし達が言ったらおしまいじゃない?」
「いや、まぁ、その通りやけど…」
「まぁ、今ここでどうこう考えても仕方ありませんわ。
とりあえず、わたくし達も陽子さんにはしっかりとご挨拶をいたしましょう」
「何て言って自己紹介するの?」
「お兄様の前世の妹であり、恋人であり、現世での両親公認の妻です、と」
「完っ全にとどめ刺す気満々じゃないっ!!」
「まぁ、実際問題、その陽子ちゃんには諦めてもらうしかなくない?
ヨウ君的には、従妹は対象外なんやろ?」
「まぁ…、少なくとも恋愛対象としては見てないと思うよ?」
「お兄様に少しでも気があるのなら、ハーレムメンバー入りはあり得たのでしょうが…」
「ウチとしては、もうこれ以上増えてもらっちゃ困るっちゃけどね…」
「女の子26人ハーレムだもんね、なかなか無いよ、ラノベとかでも」
「ただ、その中でもアキホちゃんだけは微妙な感じやけどね」
「だとしても25人よ」
「かの魔法先生ものでクラスメイト31人でしたっけ?
まぁ、あれは全員が主人公に恋愛感情を抱いているわけではありませんでしたし、最終的には一人だけが選ばれましたし」
「あ、イツキちゃん達の世界でもあのマンガあるんだ」
「ええ、『魔法先生ハラみ!』、何度もアニメ化されて続編も作られた人気作ですわ」
「なんか微妙に違う!!」
「それはともかく、面倒なことにならないことを祈るわ…」
そんなこんなで、あたし達12人(さすがに全員は家に入りきれないので、ミライちゃん達には残ってもらうことにした)は“ワールドアクア”の家に一度移動することになったのでした。




