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シスターズアルカディア~転生姉妹とハーレム冒険奇譚~  作者: 藤本零二
第6章~ワールドダークネス~
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第1話「魔王城」

*


 俺達が“ワールドフラワレス”に帰って来た翌日、つまり5月27日の月曜日早朝、小倉こくらタウンノース地区のアタゴ山、その山頂にあるアタゴ神社にて、魔王ヤミの封印が解かれた。

 イツキやハルカのつてで、王国騎士団に連絡して、予め周辺住人の避難をしてもらっていたので、封印が解かれた際の人的被害は無かった。



 俺達家族(きょうだい)は、見張りをしていた王国騎士団からの連絡を受けて、アタゴ神社へと向かうと、騎士団のメンバー達が何者かと戦っているのが見えた。

 男の魔人のようだが、アイツは…、



「お兄様、団員達が戦っているのは、もしや六魔皇の…、」


「ああ、イツキの言う通りだろう、六魔皇が一人、【魔獣使い】クレヘラスだな」



 ローブを纏った見た目が老人の魔人、クレヘラスは俺達の存在に気が付くと、こちらへ視線を向け、



「おお、ようやく来たか!待っておったぞ!」



 そう言うと、右手に持った杖を地面に勢いよく突き刺した。

 すると、杖の刺さった地面を中心に魔方陣が描かれ、そこから突風が発生し、クレヘラスに攻撃しようとしていた騎士団のメンバー達をまとめて吹き飛ばした。



「お前さん達が来るまで、こやつらと暇潰しに遊んでおったが、

 精霊術師達の実力が2000年前より落ちとりゃせんかの?

 もう少し鍛えなおさんと六魔皇最弱のワシにすら勝てんぞ?」


「え、あのおじいちゃん最弱なの?」


「騙されるなよカズヒ、最弱なのはあくまで素手で殴りあった場合の話だ。

 奴の本質は【魔獣使い】の通り名の通り、様々な魔獣を操り行使する力と、それだけの魔力を保有しているという点だ。

 ある意味一番厄介な相手であることには違いない」


「でも、素手で殴りあった場合は六魔皇最弱と言っても、ここにいた騎士団のメンバー全員を素手のみであしらっていた時点で、いかに六魔皇がヤバい連中なのかってのは嫌でも分かったけどね…」


「ハルカさんの言う通りですわ。

 皆さん、決して油断しないで下さいませ」



 イツキに言われ、改めて気を引き締める俺達だったが、そんな俺達に対してクレヘラスは



「まぁまぁ、待ちなさい。まずはワシの話を聞いてもらおうか」



 そう言って持っていた杖を地面に捨て、両手を上げて戦闘の意志が無いことを示してきた。



「…何のつもりですの、クレヘラス?」


「ワシは魔王様からの伝言を伝えるためにここに残っておるだけで、この場所で今すぐ戦う気は無いということじゃ」


「魔王ヤミからの伝言、ですって?」


「ああ、本当じゃ。

 ワシは、というかワシら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そのことは王女殿も分かっておろう?」


「ええ、()()()()()()()()()は、あなた方を信用しておりますわ」


「理解してくれて助かるわい。

 さて、ワシは予め魔王ヤミ様より本日このタイミングで復活することを知らさらておったので、兼ねてより身を潜めておったこことは別世界より馳せ参じたわけじゃが、復活した魔王様はそれはもう美しく、」


「能書きはよろしくてよ?

 要件だけおっしゃいなさいな」


「…やれやれ、王女殿は相変わらずワシらの扱いがぞんざいじゃのぅ。

 まぁ、よかろうて。要件を言おう。

 ワシら六魔皇と魔王ヤミ様は“ワールドダークネス”にある神湖じんこ、その中央にそびえ立つ魔王城ダークキャッスルにて待つ。

 来るも来ないも自由じゃが、来ない場合は…、まぁ、言うまでもなかろうて」



 先手を打たれたか。

 元よりここで戦う気はなかったが(市街地が近いためここで戦うのは避けたかった)、それでもここ“ワールドフラワレス”内の比較的周囲に何もない場所へ誘導して戦うというのを想定していた。

 しかし、奴は決戦の場所として自らのホームグラウンドである“ワールドダークネス”、それも自身の城である魔王城ダークキャッスルを指定してきた。



「お兄様、魔王城ダークキャッスルと言うのは?」


「ああ、そうか、イツキ達は知らないか」



 基本、パラレルワールドを移動出来る人類は、そういった魔術を扱える魔人や、()()()()()()(例えば超能力など)を扱える一握りの人種に限られているからな。

 当然、“ワールドダークネス”についての情報をほぼ知らないイツキ達にとっては初耳だろう。

 そこで、魔人であるカナン姉ちゃんが俺に代わって簡単に説明してくれた。



魔王城ダークキャッスルってのはその名の通り魔王ヤミやその側近達の住んでいた城とされていて、

 カミノハラと呼ばれる地域にある湖、神湖じんこの中央に立つ城のこと。

 カミノハラはかつて魔人の神が降り立った地とされていて、その周辺には自然の魔力、“マナ”と呼ばれる特殊な魔力で溢れていて、

 魔術を扱う魔人、魔術師にとっては自身の魔力切れを恐れること無く無限に魔術が使える場所であることから、そこに魔王城ダークキャッスルが建てられた、とされているわ」


「補足するなら、“マナ”ってのは精霊力の魔力版みたいなものだな。

 魔術師であれば当然、その“マナ”を自身の魔力代わりとして扱うことが出来る。

 “マナ”自体は無限に湧き出ているから、無限に魔術を使えるというのは間違いではないが、本来の術師の実力が上がるわけではないから、自身の魔力限界値以上の大魔術を扱うことは出来ない」



 だから、例えば最高でも中級クラスの魔術しか扱えない魔力量の魔術師が上級クラスの魔術を使おうとしても術は発動しない。



「ほほぅ、さすがに詳しいのぅ、王子殿下、いやこの場合は魔人養成学園の天才児殿、と呼んだ方が良いかの?」


「呼び方なんてどうだっていいさ。

 それより、さっきの話だが、少し姉妹達と話す時間を貰ってもいいか?」


「構わんよ。どうせ時間はある。

 一週間でも一ヶ月でも一年でも待つぞ?

 ああ、安心してくれてよい、その間にこちらから攻め込んで世界を滅ぼすなんてことは()()()()()()()せぬから。

 世界を滅ぼすのは、お主らがこちらの要求を拒否した場合だけじゃ。

 ま、こちらの要求を飲んだ場合でも、お主らがワシらに負けてしまえば結果は同じじゃがの」



 さて、改めて聞くまでもないとは思ったが、皆の意思を聞くことにした。



「当然、わたくしは行きますわよ?

 こちらに不利な状況だからと逃げるわけにはいきませんわ」


「しょーがないよね、世界平和のためにも、このカズヒちゃんが一肌脱ぐっきゃないよね!」


「確かに、カズヒの裸で世界が救われるなら安いものよね。

 世界平和のために、カズヒにはその身体で魔人達を籠絡ろうらくしてきてもらおうかしら?」


「ちょっ、ハルカちゃん!一肌脱ぐってそういう意味じゃないからね!?」


「そんなの分かってるわよ、冗談よ、冗談。

 第一、アタシ達のカズヒの裸をそんな簡単に他人に見せるわけないでしょ?

 もし見た奴がいれば、アタシが即処刑してやるわ」


「ハルカちゃん…!やっぱりハルカちゃんは最高のツンデレだよ!!」


「だーもう、くっつくなバカズヒ!」


「あっ痛いっ!?」


「ふふ、相変わらずハルカちゃんとカズヒちゃんは仲良しね♪

 勿論、私も魔王城ダークキャッスルに向かうわよ?

 家族きょうだいの一番のお姉ちゃんとして、皆を絶対に守ってみせるんだから!」


「当然、ボクらも向かいますよ!」


「ボクと姉ちゃんがいれば~、向かうとこ敵なし~、だからね~♪」


「自分も逃げないぞ!アニ様やハル姉ぇ達と一緒ならひゃくにんりきなんだぞ!!」


「リンだってやる時にはやるネコだにゃ!

 それに、リンはにーにーに処女を捧げるまでは絶対に死なないって決めてあるのにゃ!」


「もう、リンちゃんってばこんな時に…、ううん、こんな時だからこそ、か。

 そうよね、わたしだって、ヨウちゃんの赤ちゃん産むまでは死ぬわけにはいかないよ、ってね♪」


「それを言うならわらわもじゃ。

 前世からの願い、お兄ちゃまと添い遂げること、ようやく叶ったのじゃ、こんなところで魔王ヤミごときに邪魔されるわけにはいかんのじゃ」


「ま、そういうことよね、ウチだって同じ気持ち。

 世界を救って、ヨウ君と結ばれる、そのために魔王ヤミを倒す、以上よ」



 姉妹達の気持ちは皆同じようだ。

 後は俺の気持ち次第、というわけだが…、



「正直な話、俺は世界平和とかはどうでもいい」


「ちょっ、お兄ちゃんっ!?」


「世界を救うなんてのも、興味がない、というか、散々前世で世界救ってきたからな、もう飽きた」


「世界を救うのが飽きたなんて言えるのはお兄様くらいですわ…」


「とはいえ、だ。

 俺達がこれから平和に幸せに暮らすために魔王ヤミを倒さなければならないというのなら、倒すしかない。

 その結果、世界が救われようと俺の知ったことではない。

 今の俺の目的は、家族きょうだい全員で幸せになること、“シスターズアルカディア”のために俺は戦う!」


「やれやれ…、アニぃの言ってることメチャクチャよ」


「がっかりしたか?」


「ううん、全然。

 むしろ、世界平和のためになんて言う奴より、大切な家族のためにって言う人の方が信頼出来るわ」


「ちょっ、ハルカちゃん!さりげなくあたしのことディスるのやめて!?」


「本当に、これからラスボス戦やって言うのに、緊張感なさ過ぎっちゃろ?」


「ま、わたくし達らしくてよろしいのではなくて?」


「確かに、そうかもね」



 そんな俺達を黙って見ていたクレヘラスが、俺達の会話が一段落したとみるや、ゆっくりと口を開いた。



「…ふむ、どうやら決まったようじゃの?」


「ああ、覚悟は出来ている。

 俺達を魔王城ダークキャッスルに案内しろ、クレヘラス」




*


 そして、クレヘラスが地面に描いた『異世界転移術』の魔方陣の上に乗った俺達は、あっという間に“ワールドダークネス”のカミノハラへと着いた。


 カミノハラは、俺達の世界で言うところの八幡西区の陣原じんのはる辺りになる。

 折尾おりおに比較的近い場所、と言えば地元民には分かりやすいかもしれない(地元民以外にはサッパリだろうけど、それは地方民が東京のどの辺と言われてもピンと来ないのと同じだから勘弁してほしい)。



 カミノハラの比較的奥の方(海側では無い方)に、くだん魔王城ダークキャッスルがある神湖じんこがある。

 俺達はその神湖じんこの中央辺りにそびえ立つ魔王城ダークキャッスルを目の前に望む場所に転移させられていた。

 気付けばクレヘラスの姿はすでに無く、ここには俺達家族(きょうだい)しかいなかった。


 すると、魔王城ダークキャッスルの上空にホログラムのような映像が映し出され、黒いマントを背中に羽織った、布地の少ない黒いビキニアーマー姿の魔人の少女が現れた。



『ようこそ、我が宿敵ヨウ王子とルナ王女、及びその姉妹の皆さん。

 我こそは魔王ヤミ、全ての世界を支配し、滅ぼす存在である』



「あれが、魔王ヤミ…?」


「っていうか、あの姿にこの声、何処かで聞いたことあるような…?」



 ハルカとカズヒが魔王ヤミの姿と声に既視感デジャビュを覚えたようだが、それは俺を含めた他の姉妹達も同様のようだった。



「何てこった…、何で今まで気付かなかったのか…、

 アイツは、あの声と姿は、ヨミそのものじゃないか…!」


「ああっ!?」


「ほ、本当だ…っ!」


「角と翼と尻尾こそ生えてはいるものの、確かにヨミちゃんそっくりね…!」


「というか、声は間違いなくヨミの声だよ!」



 まさか、俺達を【次元航行者ディメンショントラベラー】として旅立たせ、魔王ヤミを倒すためにと11人の姉妹を集めさせたヨミが、魔王ヤミ張本人だった…!?



「わたしが魔王ヤミの姿を見たのは初めてだけど、直接見たことあるハズのヨウちゃんやイツキちゃんが気付かなかったのはどうして?」



 カナン姉ちゃんの疑問はもっともだ。

 だが、ヨミの正体が魔王ヤミだとするなら、色々な疑問が解ける。



「魔王ヤミだけが使える特殊魔術によるものなんだろう…

 俺とイツキの記憶や認識に干渉して、ヨミと魔王ヤミが同一人物であると分からないように、そう認識させないようにした…」


「言われてみると、ヨミさんの力でわたくし達の部屋のテレビだけに元の世界の番組が映るようにしたり、スマホが普通に使えたりしたことに疑問を感じたことはありましたが、それを魔王ヤミの力と結び付けることが出来ませんでした…

 魔王ヤミであれば、その程度の世界干渉は可能であると知っていたハズなのに、ヨミさん=魔王ヤミとは見抜けなかった…!」


「あたし達が戦乙女ヴァルキリー養成学院に編入出来たのも、ヨミちゃんの魔王ヤミの力が働いたってわけか!」


「となると、アタシやサク姉ぇ達の頃は、ほとんど力を貸してくれなかったのに、

 ツキヒの時になれば学院への編入手続きまでするなんていう大盤振る舞いだったのは、

 封印が弱まるにつれて徐々にその力が強まっていってたから、ってことかしら?」


『ふふ、全て正解だよ。

 お前達の魂に記憶を保持したまま転生するための魔術的呪いを課し、我の封印が()()()解けるこの時に全ての魂を集めるよう仕向けたのだ』



 つまり、封印が弱まったことで、魔王ヤミは自らの精神体(のような存在)であるヨミを生み出し、そのヨミを通じて、俺達を【次元航行者ディメンショントラベラー】として、彼女の思惑通りに行動させられていたのだろう。



「何故そんなことを?」


『それは、我が元まで無事に辿り着けたら説明してやろう』



 魔王ヤミがそう言うと、俺達一人一人の足元に、それぞれ微妙に異なる式が書かれた転移魔方陣が現れた。



「なっ、これは…!?」


『まずは、そなた達家族(きょうだい)に試練を課す。

 家族きょうだい全員で全ての六魔皇を倒し、我が元へと辿り着いてみせよ』


「しまっ…、」



 全員の足元に描かれた魔方陣が目も眩む程の光を発し、思わず俺は目を閉じた。



 そして次に目を開いた時、俺がいたのは先程の神湖じんこのほとりではなく、暗闇に包まれた不気味な広野だった。

 明かりは周囲を無作為に飛び回る無数の青白い火の玉と、空に浮かぶ真っ赤な三日月のみ。

 地面は荒れ果てており、所々にバラバラになった人や魔獣の骨の一部が落ちているようだった。


 いや、それよりも他の姉妹達はどうなった!?

 俺は慌てて周囲へ視線を巡らせると、すぐ近くから声が聞こえてきた。



「ひぇっ…!?こ、ここは何処なんっ!?」


「その声はツキヒ姉ちゃんか!?」


「え、あっ!ヨウ君!良かった、無事やったんやね!!」



 どうやらツキヒ姉ちゃんの方も無事らしい。

 しかし、ここには俺達以外の家族きょうだいはいないようだ。



「くそ、バラバラにされたか…!」


「皆、大丈夫よね…?」


「魔王ヤミは俺達全員で六魔皇を倒せって言っていた…

 六魔皇に対し、俺達は12人。

 ということは、二人ずつのペアで飛ばされている可能性が高い。

 一人で相手をするには厳しくても、二人ずつならなんとかなるとは思うが…」


「うん、そうやね!

 なんだかんだで他の姉妹の皆もかなり強いけんね。

 今はとりあえずウチらの現状について確認しとこっか」


「ああ、その通りだ。

 …にしてもここは一体何処なんだ?

 六魔皇を倒して魔王ヤミの元へ来いって話だったから、てっきり魔王城ダークキャッスルの中なのかと思ったが…」


『ここは魔王城ダークキャッスルの中ですよ』



 その声に俺達が振り返ると、そこには白い布を頭から全身に被った女性が宙に浮かんでいた。



「ひっ…!?ゆ、幽霊っ!?」


「確かに見た目は幽霊っぽさ満々だが…

 確か、アンタは【死霊使い】のヘラーナだったか?」


『ご名答、久しいわね、ヨウ王子、いや、今はヨウイチと呼ぶべきですか?』


「好きに呼べばいいさ。

 それより、ここが魔王城ダークキャッスルってのは本当なのか?」



 空に浮かんでいる不気味な月や時折吹く妙に生ぬるい風など、ここが城内の一室とはとても思えない雰囲気に困惑する俺達に、ヘラーナは事も無げに答えた。



『これは魔王ヤミ様の能力で、私達六魔皇全員に特別に与えられた特殊な空間です。

 城の中に無限の広がりを持った異空間を作り出す魔術、だそうよ。

 ここから出るには私か魔王ヤミ様のみが扱える特殊な転移魔方陣を使うか、私を倒すしかない。

 他の姉妹達も、あなた達と同じ状況にあるハズですよ』



 実にシンプルな話だな。

 ちなみに、念のため奴の言葉が本当か確認するために、『転移魔術』を使ってみたが発動せず、『使い魔召喚』や『奴隷召喚』魔術でサクヤ姉ちゃんやハルカ、カナン姉ちゃんをこの空間に召喚しようとしてみたが出来なかった。

 やはり、この空間から抜け出すにはヘラーナを倒すしか無いようだ。



『どうする?作戦会議をしたいならそのための時間を取ってあげてもよいのだけど?』


「随分余裕だな?」


『こちらの有利なホームグラウンドに来てもらったんだもの、

 それくらいのハンデくらいはあげないと、魔王ヤミ様に仕える六魔皇として正々堂々とは言えないわ。

 他の軍幹部連中とは違うのよ』



 魔人と言っても様々な性格の人がいる。


 それは俺達人間と同じで、戦を好む者もいれば、戦を嫌う者、人種を問わず仲良くすべきという者や、魔人以外の人種は等しく自分達の支配下に置くべきとする者、卑怯な手を使ってでも勝利を目指そうとする者や、騎士道精神に乗っ取って正々堂々と戦おうとする者、などなど…


 魔王軍の幹部の中には卑劣で下劣な輩が確かに多く、中には魔王ヤミの以降に逆らってまで目的を達しようとする者もいたが、六魔皇達は少し違った。

 基本的に彼らは勝ち負けそのものに興味があるというわけではなく、自分の好きなことに一直線というたちの者が多い。


 その好きなものの一つが魔王ヤミで、彼らは魔王ヤミに盲目的に従っている。

 魔王ヤミに死ねと言われれば恐らく簡単に死ぬだろう。

 それくらい魔王ヤミからの命令は彼らにとっては絶対で、逆に言えば例え魔王軍幹部トップの命令であろうとも彼らは無視をするだろう。


 今回の件でも、魔王ヤミの号令で再び集まり、俺達と戦えと命令されたからこうして戦うのだろう。

 そして魔王ヤミの言うことには絶対であるため、俺達が六魔皇に勝てば、魔王ヤミの元へ辿り着ける。

 そのことで彼らは約束を違えることはまず無い。



 そうした六魔皇に関する事情や彼ら個人個人の能力についても、昨日の内に他の姉妹達には共有してあり、ある意味で六魔皇の(魔王ヤミが関与することで)言うことは信用出来る、と(魔王ヤミの関与しない範囲ではその限りでは無いが、今回に関しては魔王ヤミからの命令という点で嘘は無いだろう)。



「いや、作戦会議なんて必要ない。

 誰が相手でも対処は出来るように話し合いはすでに終えているからな」


『それなら、始めようかしら。

 『死霊召喚ゴーストサモン』…っ!!』



 ヘラーナが叫ぶと、地表に転がっていた骸骨達が動き出して集まり、一人一人の人型、一体一体の魔獣型のスケルトンになった。

 さらに、地中からはボコボコと肉の腐った死体、ゾンビ達(こちらも人型と魔獣型が存在する)が無数に出現した。



『さぁ、私の1000の死霊ゴースト達を相手に、あなた方はたった二人だけでどう対処するのかしら!?』


「ツキヒ姉ちゃんっ!!」


「ええっ!『武装化ヴァルキライズ』っ!!」



 俺がツキヒ姉ちゃんの左耳の“水皇石アクアブルー”に口付けをし、“乙女石ヴァルキリーアイ”の起動承認をすると、ツキヒ姉ちゃんは『武装化ヴァルキライズ』して蒼き戦装束ヴァルキリーアーマーを身に纏った。



「っしゃあっ!!ヨウイチ、出し惜しみは無しだ!一気に殲滅するぞ!!『武具化アーミライズ』ッ!!」



 ツキヒ姉ちゃんが俺の右手の薬指の“主人石マスターズアイ”に口付けすると、その姿が変わっていき、蒼色の巨大な弓状の形態“蒼玉の根源弓(サファイアアロー)”へと変化し、俺の右腕におさまった。



「行くぜ、ツキヒ姉ちゃん!!」


『ああっ!全力全開でぶっぱなせ!!』



 こうして、俺とツキヒ姉ちゃんとヘラーナとの戦いが始まった。

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