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シスターズアルカディア~転生姉妹とハーレム冒険奇譚~  作者: 藤本零二
第5章~ワールドカシミウラ~
56/103

第5話「鎌鼬島殺人事件1」

登場人物


・カナミバディーズ(A棟301号室)

  カナミ・タケシタ(属性:炎、戦武器:弓)

  ノリエ・ビューイング(属性:風、戦武器:刀)

  ナギサ・ツキミヤ(属性:水、戦武器:鞭)


・アミナバディーズ(A棟203号室)

  アミナ・タチバナ(属性:炎、戦武器:レイピア)

  キリコ・ナカジマ(属性:風、戦武器:弓)

  ソフィア・リー(属性:水、戦武器:銃)


・ランカバディーズ(A棟305号室)

  ランカ・カンザキ(属性:水、戦武器:ライフル)

  シノブ・サイファー(属性:風、戦武器:片手剣)

  リオ・ウィスキー(属性:炎、戦武器:斧)

*


 5月24日の金曜日、いよいよこの日がやって来た。


 “戦乙女ヴァルキリー養成学院”恒例の巌風島がんぷうじま合宿。

 先週末には一年生の合宿が行われ、今日から26日の日曜日までの間は俺達二年生の合宿、そして来週末には三年生、という風になっているらしい。



 まず、早朝に学院に集まった俺達。

 二泊三日ではあるが、そこはやはり女子だからか、皆それなりに大きなバッグを持ってこの合宿に参加していたが、一際大きな旅行カバン(人が一人入るのではないかというくらいの大きさの旅行カバンだ)を持って現れたのは、理由わけあって留年したというカナミ・タケシタさんとノリエ・ビューイングさんのバディメイト、ナギサ・ツキミヤさんだ。



「ナギサさん、その荷物は何ですか!?」



 さすがにその大きさに驚きを隠せない担任のミチコ先生だったが、一方でバディメイトであるカナミさんとノリエさんの持っていたのが手提げポーチ程の小さなバッグだったことから、ある程度の事情は察せられた。



「このカバンにはお姉様方の荷物が入っています。

 お姉様方に重たいものを持たせるわけにはいきませんから!」


「それは何となく分かりましたが、何もナギサさんが三人分の荷物を持たなくても…、」


「いえ、これは私が好きでやっていることなんです!

 ですから心配はご無用です!」


「そうですか?ナギサさんがそう言うのであれば…」



 ナギサさんはカナミさんとノリエさんに心底惚れ込んでいるようで、二人の荷物を持つことは本当に彼女の意志のようだ。



「ま、惚れたものの弱み、というやつだね」



 そんな風に言うアミナ・タチバナさんの荷物は一見すると普通だったが、旅行用のバッグの他に細長い形状のバッグを肩からかけていた。



「アミナさん、それは?」


「あぁ、これは釣竿さ」


「釣竿?」



 そう言ってファスナーを開いて中の釣竿をミチコ先生に見せるアミナさん。



「釣りがボクの趣味でね、自由時間の時に関門の荒波にもまれて育った強敵()達とぜひ一戦交えてみたいと思ってね、持ってきたのさ。

 別に自由時間に釣りをしても問題は無いだろう、先生?」


「え、ええ、まぁ、確かにそういう規則はありませんので、別に構いませんが…」


「あら、アミナさんの場合、釣るのは魚ではなく、B組の女の子達なのではありませんか?」



 と、そんな風にアミナさんに絡むカナミさん。

 どうやらこの二人は仲があまり良くない(というよりカナミさんが一方的にアミナさんに絡んでいる)ようだ。



「ふふ、確かにそれもいいかもしれないね♪」



 しかしアミナさんはカナミさんの皮肉を華麗に受け流した。



「…ふん、ま、好きになさるといいですわ」



 口喧嘩にすらならず、売り言葉をあっさり受け流された形になったカナミさんは、それ以上何も言わずに引き下がった。



「ねぇねぇ、なんであの二人あんなに仲悪いの?」



 と、二人に聞こえないくらいの声でカズヒがツキヒ姉ちゃんに尋ねる。



「んー、詳しくは分からんっちゃけど、元々カナミさんは成績優秀で、かつては学年の人気者やったらしいんよ。

 やけど、留年して以降は成績こそ上位なものの、その人気はアミナちゃんに取られちゃったもんやから、まぁ、そのことで嫉妬してる、的な?」


「そもそもカナミさんとノリエさんが留年した理由わけなんなんですの?

 成績が優秀なのでしたら、そもそも留年など…、」


「はーい、では全員揃いましたので、バスに乗ってくださーい!」



 イツキが二人の留年の理由を聞こうとしたそのタイミングで、ミチコ先生の号令が出たため、一旦その話は中断され、俺達は港へ向かうバスに乗ることになった。



 バスに乗った俺達は、門司港にある巌風島がんぷうじままでの送迎船の出る港までやって来ると、そこから船に乗って巌風島がんぷうじまへと向かった。




*


 巌風島がんぷうじまはその名の通り、島の周囲を常に厳しい風が不規則に吹き荒れており、昼間でも島の周囲の海域では、いかなる手段における飛行が制限されている。

 また風だけでなく潮流も厳しく、ベテラン漁師でも船の操縦を誤れば難破してしまうという海域だ。

 さらに夜間になればその風の勢いは激しさを増し、飛行は愚か船での航行も禁じられる、というより不可能な程の激しさだそうだ。

 故に、地元住人からは別名“鎌鼬島かまいたちじま”と呼ばれ、恐れられると同時に、夜はそこに神なる獣“鎌鼬かまいたち”が降臨する島として、敬われてもいるという。


 だが何故、鎌鼬かまいたちが神なる獣として敬われているのか。

 それは、“侵略宇宙機械生命体ヴァイスターエクストライフ”との戦争が終わった後、その残党と思われる“侵略宇宙機械生命体ヴァイスターエクストライフ”達がしばしば関門エリアを中心に暴れまわっていたらしい。

 そんなある時、彼らが関門エリアに夜襲を仕掛けてきた時に、くだん巌風島がんぷうじまを中心として未だかつて無い程の強風が巻き起こり、連中をその風で引き裂き、追い払ったことで関門エリアの人々を守ったという。

 その引き裂かれた様は、まるで伝承として残る、妖怪鎌鼬(かまいたち)によって引き起こされたかのごとくであった、という。

 そのことから、鎌鼬かまいたち様の奇跡として関門エリアに言い伝えられ、その象徴として巌風島がんぷうじまは、別名鎌鼬島(かまいたちじま)と呼ばれるようになった、という。



 俺達の世界では、巌流島まで行くのに遊覧船で片道約10分程度だが、この世界では風や潮流の影響が強すぎるため、安全な航行をするとなると片道で2~30分はかかるそうだ。

 そんな安全航行中の船内は、風と潮流の影響でかなり揺れており、予め酔い止め薬を飲んでいなければ大変なことになっていたかもしれない…


 そんなわけなので、俺達は騒ぐ気力も無く、割り当てられた船室で大人しくしていた。

 船室は一部屋10人前後が入れる程の大きさで、俺達の部屋には俺達以外にランカ・カンザキさんと、シノブ・サイファーさん、リオ・ウィスキーさんのバディメイト三人がいた。

 ランカさん達は手芸部ということで、室内でも持ち込んだ毛糸で黙々と何かを作っていた。

 俺達もミステリ同好会として、部室から借りてきたミステリ小説を読んで時を過ごした(カズヒは今日は『名探偵コナン』を読んでいた)。



「へー、この世界の蘭姉ちゃんは“戦乙女ヴァルキリー”候補生なんだ…」



 え、何その設定!?

 それもう、コナン君(頭脳)いらなくね?全て蘭姉ちゃん(物理)で解決じゃね?



 そうして過ごすことおよそ30分、いよいよ目的地である巌風島がんぷうじまが近付いてきた。



「ヨ…、ハルヒちゃん、ほら見えてきたよ、あれが今の巌風島がんぷうじま、別名、鎌鼬島かまいたちじま



 ツキヒ姉ちゃんに言われて俺は、船室の窓から厳風島がんぷうじまに視線を向けた。

 険しい風と潮流の中、ただそこに悠然とある島は俺の記憶にある姿とほぼ変わりはなかったが、ただ一つだけ明らかに違う、俺の見覚えのないモノが、島の端の方に建っていた、いや()()()()()と言うべきか。


 それは、二足歩行で立つ獣だった。

 両手が鎌のように鋭く尖った形状をしているその獣は、まさに鎌鼬かまいたちそのものだった。



巌風島がんぷうじまが学院の管理となる前に、関門エリアの人々が鎌鼬かまいたち様を祀るためにあそこに建てたらしいわ」



 全長10メートルはあるだろうか、右手の鎌を天に向けて突き出す鎌鼬かまいたち像に出迎えられる形で俺達は、巌風島がんぷうじまへと到着するのだった。




*


 俺達を乗せてきた送迎船は、俺達を島に降ろすと元の港へと戻っていった。

 島に船を長期間で停めておくのは難しいらしく、過去に夜中の大嵐で停めていた船が流されたことがあったり、流されなくとも激しい風や潮流で船が岸などにぶつかって故障したりということがあったようで、安全のために船は元の港へ戻るようにしているのだという。


 そこまでして、この島で合宿する意味があるのかという感じだが、昼間であれば島内部の低空域を吹く風は適度な風速らしく、“戦乙女ヴァルキリー”の飛行訓練を行うのにちょうどいいのだそうだ(勿論、高空域になると昼間でも自立飛行は不可能なくらいの風速になるが)。

 また、この島、というより島の浮かぶ関門海峡が、伝説の“戦乙女ヴァルキリー”【水皇石アクアブルー戦乙女ヴァルキリー】の眠る場所であるということから、“戦乙女ヴァルキリー”候補生の子達にとっては神聖な場所でもあるから、というのがこの島で合宿を行う理由らしい。



「凄いねツキヒちゃん、伝説の“戦乙女ヴァルキリー”なんだって?」


「さすがですわね、ツキヒさん」


「ウチにはそんな実感ないっちゃけどね…

 というか、イツキちゃんだって【精霊姫】って呼ばれる伝説のお姫様やったんやろ?

 ウチなんかよりよっぽど凄いやん」



 などという話をしながら、俺達は船着き場から島の中央辺りにある建物へと向かった。



 島内には合計で三つの建物が“コ”の字の横棒を上にしたような形で並んでおり、その中心が訓練用のグラウンドとなっている。

 それぞれの建物は独立していて、正面(“コ”の字の横棒の部分)が合宿用の校舎兼食堂兼教師宿舎となる。


 そして、向かい合ったふたつの建物が学生宿舎となっていて、正面向かって右側がA組、左側がB組となっている。

 建物はそれぞれ三階建てで、窓は全て外側、つまりは関門海峡が見えるように作られている。

 ちなみに、くだん鎌鼬かまいたち像は、A組の宿舎側にある。

 鎌鼬かまいたち像そのものは、合宿所の敷地外にあり、合宿所から歩いて4~5分くらいだろうか?



 島に着いた俺達は、ひとまずA組の宿舎へと向かった。

 宿舎には、入口となる扉が一つだけあり、その鍵は教師が管理している。

 入口を入るとまず左手側に廊下があって、右手側には階段がある。

 部屋番号は手前から○05号室、○03号室、○02号室、○01号室(○の中には階数の数字が入る)と続き、○01号室の隣には共用トイレがあり、その隣にもう一つの階段がある。


 ちなみに、建物は三階建てだが、それに加えて屋上もあり、この屋上へは入口入ってすぐの階段、つまり○05号室側の階段からしか上がれないようになっているが、常に施錠されており、この鍵もまた教師が常に管理しているため、基本的には屋上に出ることは出来ない。


 また、各階に共用トイレはあるが、各部屋ごとにもトイレは付いている。

 また、浴室も各部屋ごとにある。



 A組の宿舎(便宜的にA棟と呼んでいる)に着くと、ミチコ先生が入口の鍵を開け、バディメイトごとに部屋割りを発表しながら、各部屋の鍵をそのバディメイトのリーダーに渡していった。

 これ以降、各部屋の鍵はリーダーとマスターキーをミチコ先生が、A棟入口の鍵はミチコ先生だけが持つことになる(A棟入口の施錠に関しては、夜中に内側から俺達ですることになる)。

 これはB組の宿舎、B棟でも同様だ。



 A棟の部屋割りは以下のようになった。



・101号室:ツキヒ姉ちゃん(リーダー)、俺、イツキ、カズヒ


・203号室:アミナ・タチバナ(リーダー)、キリコ・ナカジマ、ソフィア・リー


・301号室:カナミ・タケシタ(リーダー)、ノリエ・ビューイング、ナギサ・ツキミヤ


・305号室:ランカ・カンザキ(リーダー)、シノブ・サイファー、リオ・ウィスキー



 各自が部屋に荷物を置くと、俺達は学校指定のジャージに着替えて、訓練用のグラウンドへと向かった。




*


 グラウンドに集合した俺達は、バディメイトごとに列になり、組ごとに横に四列、合計八列で並んでいて、俺達の前に二人の教師が立っている。

 各生徒の右耳には赤色の“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”が付けられており、ミチコ先生とB組の担任教師の左手の薬指には“汎用主人石オルタマスターアイ”が付けられている。



「では、今日は合宿初日ということで、まずは各人の実力を知るために模擬戦を行います」



 そう言うとミチコ先生は、左手の薬指の“汎用主人石オルタマスターアイ”に口付けした。



「“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”起動承認」



 すると、ミチコ先生の“汎用主人石オルタマスターアイ”が深紅に輝き始めた。

 B組の担任教師も“汎用主人石オルタマスターアイ”に口付けして「“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”起動承認」と呟くことで、彼女の“汎用主人石オルタマスターアイ”も輝き始めた。



「では、皆さんの“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”を起動させますので、右耳を出してその場で待機して下さい」



 言われた通りに、生徒達は髪をかきあげたりして右耳の“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”が見えるようにして、その場で待った。

 そして二人の教師が、各々のクラスメイト達の“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”に、その光り輝く“汎用主人石オルタマスターアイ”を接触させていく。

 すると、“汎用主人石オルタマスターアイ”に触れられた“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”が深紅に輝き始める。

 これで“予科乙女石プレヴァルキリーアイ”の起動準備が整った。



「では、『武装化ヴァルキライズ』してください!」



 ミチコ先生がそう言うと、生徒達は待ってましたとばかりに、変身のためのコードを口々に叫ぶ。



「「「「「『武装化ヴァルキライズ』ッ!!」」」」」



 すると、生徒全員の身体に一瞬で戦装束ヴァルキリーアーマーが装着される。


 なお、通常の『武装化ヴァルキライズ』の手順は少々異なり、まず“主人石マスターズアイ”を持った“主人マスター”が、“戦乙女ヴァルキリー”の耳に付けられた“乙女石ヴァルキリーアイ”に口付けすることで起動承認され、後は“戦乙女ヴァルキリー”自身が『武装化ヴァルキライズ』とコードを叫ぶことで変身する。

 余談ではあるが、『武装化ヴァルキライズ』した“戦乙女ヴァルキリー”が、“主人マスター”の“主人石マスターズアイ”に口付けし、『武具化アーミライズ』とコードを叫ぶことで、『武具化アーミライズ』することが出来る。



 “予科乙女石プレヴァルキリーアイ”の戦装束ヴァルキリーアーマーなので、全員共通のデザインだが、細部に走るラインの色が属性によって異なっている。

 炎属性なら赤、水属性なら青、風属性なら緑、雷属性なら黄色、といった具合だ。

 その見た目が北欧神話に伝わるワルキューレ(ヴァルキリー)のごとく荘厳であったことから、そのまま“戦乙女ヴァルキリー”の名が付いたと言われる。


 戦装束ヴァルキリーアーマーの素材は宇宙鉱石で、纏うと同時に全身に血液を介して“タキオン粒子”が行き渡ることで、『クロックアクセル』、所謂“加速装置”が使用可能となる(ただし、この世界では“タキオン粒子”の概念が証明されていないため、『クロックアクセル』は宇宙鉱石に含まれる未知の原子による効果だと考えられている)。


 また、“戦乙女ヴァルキリー”として変身した際の属性に関しては完全にランダムで、戦武器ヴァルキリーウェポンも完全にランダムで決まる。


 ちなみに、俺は雷属性で弓、カズヒは風属性で銃、イツキは炎属性で片手剣の二刀流、ツキヒ姉ちゃんは水属性で両手剣だ(ちなみに、イツキの二刀流というのはかなりのレアだ)。

 それから以下に他のA組メンバーの属性と武器を記しておく。


・カナミ・タケシタ(炎、弓)

・ノリエ・ビューイング(風、刀)

・ナギサ・ツキミヤ(水、鞭)

・アミナ・タチバナ(炎、レイピア)

・キリコ・ナカジマ(風、弓)

・ソフィア・リー(水、銃)

・ランカ・カンザキ(水、ライフル)

・シノブ・サイファー(風、片手剣)

・リオ・ウィスキー(炎、斧)



 弓や片手剣、銃などが一般的な戦武器ヴァルキリーウェポンだが、刀やライフルなどは比較的レアな部類に入る。

 とはいえ、レアな装備だからといって他の武器より強いというわけではない。

 どんな武器でも使いこなした者が単純に強い。


 とはいえ、通常一つしか持てないハズの戦武器ヴァルキリーウェポンを二本持つイツキの存在はやはり異常で、B組の生徒達からも畏怖の目を向けられていた。



「それにしても、改めてイツキの二刀流は反則級のレア装備だよな…」


「そういうものなんですの?」


「うん、少なくともウチは前世も含めて見たことない」


「さすがイツキちゃん!略してさすイツ!」


「さすイツって言いにくくないか?」


「というか、ヨウ君の“戦乙女ヴァルキリー”姿も、見慣れると違和感なくなったよね」


「俺は未だに違和感ありまくりだけどな…」



 この戦装束ヴァルキリーアーマーは、露出度こそ(ハルカのビキニアーマーなんかに比べれば遥かに)少ないが、胸元はしっかり開いてるし、ヘソも見えるし、ハイレグのような肌着のせいで、股間の辺りも心許こころもとない…



「ふふ、恥じらうお姉様の姿も素敵ですわ♪」


「うんうん!お姉ちゃんは宇宙一カワイイよ!」


「元が男だから素直に喜べねぇよ!」



 などという会話をしている間に、準備運動などが終わり、いよいよB組との模擬戦が行われることとなった。



「模擬戦はバディメイトによって組まれたチーム、バディーズ戦となります。

 バディーズのバディメイト全員が戦闘不能となるか、バディーズリーダーの降参宣言があるまでは試合続行中となります。

 では、まずA組はカナミさんチームから!」



「はい!」



 最初はカナミさん、ノリエさん、ナギサさんの試合だ。

 カナミさんとノリエさんは留年したとはいえ、元々の成績は悪くなかったという話の通り、武器の扱い方も熟練のそれに近かった。

 また、ナギサさんも鞭という特殊な武器を上手に使いこなしているようだった。



「『カザキリ』っ!!」


「きゃあああっ!?」



 まず、前衛をつとめるノリエさんが、刀の刃に風を乗せて相手を切り裂く技『カザキリ』でB組の生徒一人(片手剣を扱う少女だった)をあっさりと戦闘不能にした。

 ちなみに戦闘不能判定は、ダメージが一定値を越えると自動で戦装束ヴァルキリーアーマーが解除されるようになっていて、それを(もっ)て戦闘不能と判断される。

 なお、それは候補生のために設けられた安全装置セーフティであり、実際の戦争では自らの意思で解除するか、死ぬまでは戦装束ヴァルキリーアーマーが解除されることはない。


 続いて、B組の中衛と後衛をつとめる銃と弓を構えていた生徒二人を、ナギサさんが鞭で縛り上げた。



「カナミお姉様っ!!」


「ええ!『ホムラヤ』っ!!」



 そこへ後衛のカナミさんが弓で炎の矢『ホムラヤ』を同時に二本放つと、その二本の矢はそれぞれB組の生徒に命中し、二人を戦闘不能にした。



「そこまで!勝者、A組カナミバディーズ!」



 ふむ、『ホムラヤ』の命中制度もなかなかだが、威力そのものも悪くない。

 間違いなくカナミさんはこの学年の最強候補だな。



「……でも、ミスズさんはもっと……!」


「……しっ、聞こえるわよ……!」


「……でも、………、」



 ふと、隣を見るとアミナさんのバディメイトであるキリコさんとソフィアさんがカナミさんを憎々しげな瞳で睨んでいた。

 ひそひそ話で行われている二人の会話は聞き取り辛かったが、微かに聞こえた“ミスズさん”という人の名前、それは確か二年前にこの島で亡くなったという当時一年生の生徒ではなかったか?

 二年前に一年生、ということは順調にいけば今は三年生、ということになる。

 つまり、一年留年して現在二年生であるカナミさんとノリエさんの元同級生、か。



 その時、何か背筋にゾクッとしたものを感じ、辺りを見回したが特に変わった様子はなかった。



「お姉ちゃん、どうかしたの?」


「ん…、いや、何でもないよ」


「そう?じゃあ、次はあたし達の番みたいだから行くよ!」


「あ、ああ!」



 カズヒにそう言われ、俺達四人は皆の前に出た。



 さて、俺達の模擬戦はと言うと、相手が三人でこちらが四人だからそもそも数の上で有利だと言われていたのだが、前衛のイツキとツキヒ姉ちゃんが相手バディーズのど真ん中に突っ込んで行って、あっさりと三人を倒してしまったので、実質二対三で勝ってしまった。



「そ、そこまで!勝者、A組ツキヒバディーズ!!」


「やりましたわ、お姉様!!」


「ふふん♪ウチに惚れ直したっちゃろ、ヨウ君?」



 高々とそれぞれの剣を持ち上げて勝鬨かちどきをあげるイツキとツキヒ姉ちゃん。



「う、嘘でしょ…?」


「つ、ツキヒさんってあんなに強かったかしら…?」


「そ、それにイツキさんも…!」


「確かに先日の実技授業では、上手く二刀流を扱っているなとは思っていましたが…!」



 捕捉すると、ツキヒ姉ちゃんは一年生の頃は成績は中の下くらいだったのだが、今年になって前世の記憶を取り戻したために、一気に実技の成績が上がったのだという。

 というか、当たり前だろう、野球に例えれば小学生相手にソフトバンクホークスの一軍が本気を出すようなものだ。


 ツキヒ姉ちゃんが圧倒的なのは(俺の中では)分かりきったことではあったが、“戦乙女ヴァルキリー”としての戦闘は初めてのハズのイツキが、あそこまで二刀流を使いこなせていることに驚きだ。

 そもそも、イツキは前世の時から武器なんか使ったことなかった。

 我が妹ながら、やはりイツキは戦闘においても天才的な実力を発揮するのだな、と改めてそのチート具合を思い知らされた。

 


「あ、あははは…」


「あーん!!あたしの出番が無かったー!!せっかく“戦乙女ヴァルキリー”として戦えると思ったのにー!!」



 ヤル気満々だったもう一人の我が妹、カズヒは地団駄を踏んで悔しがっていた。



 それから他の二つのバディーズの模擬戦も行われたが、アミナさんバディーズは当のアミナさんが二人を倒したところでやられたが、残りの二人が一人を倒したことで勝利、ランカさんバディーズはランカさんのライフルという武器が致命的に不利で、この狭いグラウンドの中では上手く扱いきれず、結局前衛のシノブさんとリオさんが倒された時点で降参を申し入れた。



「では、本日の合宿はここまで!

 明日から本格的な訓練を行いますので、今日のところは皆さん各自自由に過ごしてください」



 そうミチコ先生に言われ、俺達はその場で解散し、束の間の自由時間を得たのだった。

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