第2話「“戦乙女”の姉」
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“吸血鬼”で最強で最カワで最年少の妹と出会った“ワールドブラディ”を後にしたあたし達家族は、いよいよ最後の姉妹となる女の子と出会うために“ワールドカシミウラ”へとやって来た。
そして、この世界ではなんと、あたしことカズヒとイツキちゃん、そして『女体化』したお兄ちゃんことハルヒちゃんの三人は“王立戦乙女養成学院”に編入するという展開に!
何故かというと、最後の姉妹であるツキヒ・トキハちゃんはその学院の生徒で、その学院は全寮制のため、普通に探すだけでは絶対に見つけられないし会えないから、ということらしい。
そんなわけであたし達三人は“王立戦乙女養成学院”へとやって来て、編入手続きなどを終え(これは後から知ったんだけど、普通“戦乙女養成学院”では編入生を認めていないものなのだそうだ。なのにあたし達の編入が普通に認められたというのは間違いなくヨミちゃんが何かしらの力を使ったのだろう)、編入手続きをしてくれた先生の案内であたし達が入寮する学生寮へとやって来た。
「一部屋につき二人、つまりルームメイトと一緒に住んでもらうことになりますが、
イツキさんとカズヒさんは第2棟の306号室に、そしてハルヒさんは305号室に入ってもらいます」
先生から“2-306”と書かれた部屋の鍵を受けとるイツキちゃん。
「わたくしとカズヒさんがルームメイトとなるんですのね」
「よろしくね、イツキちゃん♪」
ちなみに、あたしとお姉ちゃんは姉妹、イツキちゃんは従妹という設定になっているらしい。
そのことに若干の不満を覚えたらしいイツキちゃんだったが、あくまで書類上の問題だから、と納得させたようだ。
「ちなみに305号室にはすでに一人の生徒が住まわれています。
今日のことは彼女にも伝えていますので、部屋でハルヒさんのことを待ってくれているハズです」
何!?お姉ちゃんとルームメイトになる女の子が別にいる、だと…!?
これはお姉ちゃんの貞操のピンチか!?
と、あたしは思ったのだがお姉ちゃんとイツキちゃんは違う考えのようだ。
「まさか、俺のルームメイトって…?」
「ええ、その可能性はありますわね」
「え、どういうこと?」
「ま、305号室に行けば分かるさ」
そして、先生と別れたあたし達は第2棟へと向かう。
寮は外階段になっていて、一階部分は食堂と大浴場になっているらしい(ただ、大浴場とは別に各部屋にもお風呂は付いているみたい)。
外階段を上り、305号室の扉の前に立ったお姉ちゃん。
お姉ちゃんが扉をノックすると、「はーい」という返事と共に、中から三つ編みお下げに眼鏡をかけた少女が扉を開けて出てきた。
「あ、初めまして!
ウチがルームメイトのツキヒ・トキハだよ、よろしくね!」
ツキヒ・トキハって、まさか最後の姉妹の!?
こんな運命的偶然ってあり得るの!?
隣のイツキちゃんを見ると「やはりそうでしたか」という顔をしていた。
そして当のお姉ちゃんも半ば予想していたような顔で、特に驚いた様子もなく「初めまして、今日から編入してきたハルヒ・フジワラです」と自己紹介していた。
ひょっとして、二人ともお姉ちゃんのルームメイトがツキヒちゃんだって知ってた?いや、気付いてた?
あ、じゃあ、さっき先生から部屋割りを聞いた時の二人の思わせ振りな会話ってそういうことだったのか!
うわー、マジか、あたしだけお姉ちゃんが姉妹以外の女の子に貞操奪われるんじゃないかとか心配していてバカみたいじゃん…
なんて一人で頭を抱えていたらお姉ちゃんに声をかけられた。
「…おい、カズヒ?聞いてるか?
お前も自己紹介しろって!」
「うひゃい!?なんですか!?!?」
「カズヒさん、お話聞いていましたか?今、ツキヒさんにわたくし達の自己紹介をしていたところなのですが」
「え!?あー、ごめん!聞いてなかった!!
えーっと、あたしはカズヒ・フジワラ!お姉ちゃんの妹だよ!よろしくね!」
「カズヒちゃんね?よろしく♪」
そう言ってツキヒちゃんと握手をするあたし。
そこで改めてツキヒちゃんのことを見ると、三つ編みを除けばあたしらとよく似た顔立ちをしている。
しかもメガネっ娘ということで、あたし自身を鏡で見ているみたい、というとさすがに言い過ぎかもしれないが、とにかくカワイらしい顔立ちをしていた。
そしてそう思ったのはあたしだけではなかったようだ。
「んん~?なんとなくさっきから思っとったちゃけど、ウチらって、そっくりっちゃない?
ほら、顔立ちもそうやけど、雰囲気とか?」
「まぁ、それはそうだよね」
「え?どういうこと?」
「あー、えっと、そのことで、俺達四人で少し話をしたいことがあるんだけど、時間はあるかな?」
「え?あ、うん、ウチは問題ないっちゃけど、ハルヒちゃんって俺っ娘なん?」
「ま、まあ、その辺も含めて、な」
てな感じで、いささか唐突な感じはあったけど、あたし達はツキヒちゃんの部屋にお邪魔して、改めての自己紹介ということになった。
*
「…えっと、つまり?
ハルヒちゃんが男の子で、しかもその正体か転生してきたウチの弟のヨウ君で?
おまけにイツキちゃんも転生者で、ウチ以外に10人の姉妹がいて?
全ての転生した姉妹を集めるためにパラレルワールドを旅してる?
そんなとんでも話を信じろ、と…?」
ツキヒちゃんに改めてあたし達のことを説明すると、当然のように驚かれた。
「実はそういうことなんだ」
「いやいや、実はそういうことなんだって言われても…
第一、他にも転生した姉妹達がいて、イツキちゃんもその一人とかいうのも大概衝撃的なんやけど、ヨウ君が女の子のフリしてこの学校に編入してきたインパクトのが強すぎて、そっちが薄れとるっちゃんね…」
「ツキヒさんは、わたくし達が転生してきた、というのには驚かれないんですのね?」
「ん~?いや、驚いちゃいるよ?
驚いちゃいるけど、ウチもなんとなーくそんな感じはしちょったしね」
「ということは、ツキヒお姉ちゃんにも前世の記憶はあるんだね!?」
「お姉ちゃん、か…、いや、そうよね、カズヒちゃんはヨウ君の妹なんやからお姉ちゃんで間違いはないんやろうけど、何か違和感あるっちゃんね~…
同い年なんやし、ウチのことはちゃん付けでええよ?」
「そう?じゃあ、ツキヒちゃんで!」
「うん、それで。
えっと、そんで前世の記憶の話なんやけど、
ぶっちゃけると、確かにあるよ、ウチが【水皇石の戦乙女】だった頃の記憶」
「やっぱりそうか、なら話は早いな」
「いや、ウチに前世の記憶があるっちゅーことと、他にも10人、ウチも入れて11人か、の姉妹がおるっちゅーこととは納得出来るレベルが違うっちゅー話で。
おまけにヨウ君が女装して、」
「いえ、これは女装ではなく『女体化』で、今のお兄様は正真正銘お姉様ですわ」
そう言ってイツキちゃんがおもむろにお姉ちゃんの服をめくり上げて、お姉ちゃんの胸部を見せた。
「キャアッ!?」
「よ、ヨウ君におっぱいがある!?しかもかわいいブラ!!」
「「「っていうか、今の悲鳴カワイ過ぎっ!!」」ですわ!!」
最後の台詞だけあたし達三人の声が被った。
「い、いきなり何すんだ!?」
「いえ、こういうのは口で説明するより実際に見せた方が分かりやすいかと思いまして…」
「それよりもお姉ちゃん、今の悲鳴!!」
「ふ、不覚にもカワイイと思っちゃったわ…
ヨウ君は男の子なのに…!」
「…い、今のは自分でもビックリしてるよ……
この身体になると、無意識的には女の子の反応になるんだな……」
「もう一回さっきの悲鳴聞かせてよ、お姉ちゃんっ!!」
「聞かせねぇーし!!」
「はいはい、カズヒさん、気持ちは分かりますが、話を戻しますわよ?」
「はーい」
「ウチとしてはその『女体化』の原理を知りたいっちゃけど…」
「その話はとりあえず後回しで、な?」
お姉ちゃんの意外な一面が見れたところで、話は再びツキヒちゃんのことに。
「えーっと、何の話やったっけ?」
「ツキヒさんに前世の記憶があることと、わたくし達姉妹が11人いることとでは納得出来る規模が違うというような話ですわ」
「そうそう。
ウチの記憶に関しては、最初は単なる夢の話やろうみたいに思っとったっちゃけど、実際に目の前にヨウ君が現れて、ウチの記憶とも間違いない前世の記憶の話を聞かされて、ならウチは間違いなく転生してきたんやろうなってのは理解出来たっちゃん。
でも、そんなウチらみたいな転生してきた姉妹が他に10人もおって、おまけにパラレルワールドを旅してきた言われても、はいそうですか、とはならんっちゃろ?
しかも、ハーレムってなんなん!?ウチはヨウ君をそんな風な不誠実な弟に育てたつもりはないっちゃけど!?」
ふむ、これまでの姉妹は全員ハーレムOK派ばかりだっただけに、こういう反応は新鮮だね。
というか、世間一般的な日本人の意見としてはツキヒちゃんの反応の方がきっと正しいんだよね(勿論、時代や国が違えば常識も変わるから一概には正しいとも言えないけど)。
「まぁ、姉ちゃんの言うことは分かるけど、各前世では間違いなく一人の姉ちゃんか妹だけを愛してたわけで、
それが現世で全員集合した結果、ハーレムというような形にやむを得ずなったというわけで…」
「むー、そう言われると反論し辛いけど…
でも、ハーレムはな~…」
「しかしツキヒさん、わたくし達の世界ではむしろハーレム制度は法律的に推奨されておりますのよ?」
「いや、そりゃイツキちゃんのいた世界、“ワールドフラワレス”だっけ?
その世界じゃ、男性の出生率、というより生まれてからの生存率か、それが著しく低けりゃハーレム制度もやむ無しだとは思うっちゃけど」
「じゃあ、ツキヒちゃんは姉妹の誰かが悲しむ姿を見たいの?」
「う…、そ、それは…」
「姉ちゃんの気持ちは分かるし、俺達の方が非常識だってのも理解してる。
だけど、俺は姉妹の誰一人悲しませたくないし、全員を等しく愛している以上、誰か一人だけを選ぶなんてことも出来ない。
勿論、姉ちゃんのことだって俺は愛してる。
だから、俺達のハーレム“シスターズアルカディア”を認めて欲しい!」
そう言って土下座するお姉ちゃん。
どうでもいいけど、美少女の土下座姿ってなんとなくそそるよね、ぐふふ♪
「んー…、ヨウ君の気持ちは分かったよ。
ウチとしては複雑っちゃけど、他の姉妹の皆が納得しちょるんなら、ウチだけが我が儘言うわけにもいかんしね」
どうやら説得に成功したらしい!
「ツキヒさんに納得してもらえて良かったですわ。
それにツキヒさん、“シスターズアルカディア”は何もお兄様だけがハーレムの主というわけではないのですよ?」
「え、それ、どういうことなん?」
「“シスターズアルカディア”は、皆がハーレムの主なんです」
「え、いや、よー分からんちゃけど…?」
「つまり、姉妹同士の関係というのも良いものですよ、ということです♪」
そう言ってイツキちゃんがツキヒちゃんの右手を掴んで、イツキちゃん自身の胸に当てた。
「ひゃん!?い、いきなりなんしよんね!?」
「ふふ、わたくしのおっぱいはどうですか?」
「ど、どうっち言われても、どう答えたらいいっちゃん!?」
「ふふ、ツキヒさんも素直になったらいいんです。
わたくしのおっぱいを触って、興奮してきたでしょう?」
「そそそそっ、そんなことないっちゃ!?
ウチはノーマルやし!!そんな女の子のおっぱいを触ったくらいじゃ…、って柔らか…っ!?」
「あん♪ツキヒさん、急に積極的になりましたね…♪」
「え?い、いや、これは、その、別に…!」
「とか言いつつ、わたくしのおっぱいから手を離しませんのね…♪」
「う……、だ、だって、イツキちゃんがウチの手を掴んどるから…」
「ですが、わたくしは力を入れていませんよ?離そうと思えば離せるはずです。
さぁ、ツキヒさんも素直になって♪
わたくしの、妹のおっぱいはどうですか…?」
「う…、うぅ……」
イツキちゃんに迫られて、顔を真っ赤にしつつも、その手だけはイツキちゃんのおっぱいから離せないでいるツキヒちゃん。
うん、分かるよ、イツキちゃんのおっぱいは格別に気持ちいいからね!
柔らかいのにしっかりと弾力があって、掌からくっついて離れない、いや離したくなくなる魔力を持った究極の至宝、それがイツキちゃんの乳房なのだ。
「というか二人だけ楽しんでズルい!!
あたしもそろそろ混ぜろよー!!」
「うひゃあっ!?」
ほとばしる熱い欲望が抑えきれず、思わずツキヒちゃんに後ろから抱き付いたあたしは、そのツキヒちゃんの左右のおっぱいを両手で鷲掴んでいた。
「ちょっ!?何しよんねカズヒちゃっ…、ひゃあぁん!?」
「良いではないか~、良いではないか~♪
おおっ、ツキヒちゃんもなかなかいいモノをお持ちで…、ぐふふふ♪」
「…姉妹仲がいいのはいいことだけど、ほどほどにな」
「あら、今はお兄様もお姉様なのですから、御一緒にいかがですか♪」
「もう大概にしぃいいっ!!」
その後、ツキヒちゃんのご機嫌が直るまであたし達は部屋を追い出されることになったのでした…




