幕間4「遠い昔の主従」
ヨウイチ達が“喫茶妖獣メイド”に旅立ちの報告に来たその日の夜、喫茶店に残って一人翌日のお別れパーティーの準備をしていた店長の元に、一人の少女が現れた。
『今回の件、よくやってくれたの、グレイ』
「おお、これはこれは我が主、お久し振りじゃの」
『久し振りと言ってもほんの約一週間ぶりじゃがの』
「確かに…、その前が2000年前と考えると、ほんの一時に過ぎませんな」
『それよりも、本当に今回は助かったぞ。
さすがに“アンナ”、いや今はカナンと言ったか、彼女がこの世界に時空間転移する際に誤差が生じて、一週間もズレるとは思わなかったからの』
「いやはや、しかしかの【建国の王子】と【精霊姫】の転生者とその一行の話を伺った時は驚いたものじゃが、
【建国の王子】の別の世界の“姉”なる少女がこの世界に時空間転移してくるから、その少女を助けてやって欲しいというあなた様からのお願いにはさらに驚かされましたな」
『我は、まさかカナンのためだけにあれだけの屋敷と生活用品をたった一日で揃えたお主に脱帽したがの』
「他ならぬ、我が主からのお願いじゃからの」
『しかし、一週間ズレたおかげで“スズネ”、リンとカナンが出会い、ヨウイチ達との再会を果たした。
彼らの魂の絆は、我の想定以上に強い、ということなのかもしれんの』
「…ところで、我が主は、本当にこのまま……、」
『うむ、そのために2000年かけて準備をしてきたのじゃ、我が意思は変わらぬよ』
「それは、残念じゃの…」
『……さて、我はもうそろそろ行くぞ。
お主とは、これで永遠のお別れ、となるかの』
「そう、なるかの…
私としては、そうならぬことを願っておるがの」
『それは、我が大願が成就せぬことを願う、ということか?』
「いえ、成就した上で、の話でございますよ」
『…それは、』
「分かっておるよ、そんなことは奇跡が起きぬ限りはありえぬということは。
しかし、彼ならば…、と私は思ってしまうのじゃよ」
『……では、我はもう行く、達者でな、グレイ』
「ええ、またお会いできる日を楽しみにしておりますよ、我が主、いえ、」
「我が魔王」




