第4話「メイド喫茶でアルバイト」
*
「あに様!朝だぞー!」
ドスンッ!
「うぎゃっ!?」
突然、寝ていた俺の腹の上にキョウカがフライングボディプレスをかましてきた。
「…おはよう、キョウカ」
「おはよー!あに様ー!
それから、目覚めのキスだぞ!」
チュッ♪
「えへへー、どう?あに様?自分のキスうまく出来た!?」
「ああ、上出来だ、キョウカ」
朝から元気100倍なキョウカの頭を撫でてあげると、お尻の尻尾がブンブンと高速で左右に揺れる。
「えへへー、自分もこれでパワーアップ出来たかな!?
あに様を守れるくらい強くなれたかな!?」
キョウカには家族でキスをすれば能力が強化(駄洒落ではない)されることは伝えてある。
昨日の夜の歓迎会(例によって大浴場で)でも、家族全員とキスをしていたが、ただでさえチート地味た強さを誇る“銀毛の九尾”がこれ以上強くなったらどうなるのだろうか…?
「そうだなー、俺だけじゃなく世界も救えちゃうかもな!」
「くふふ~♪そうなったら、自分、世界一のヒーローってことだよね!」
「ああ、キョウカ、お前がNo.1だ!」
と、そこへハルカが部屋に入って来た。
そういや、キョウカも当たり前に鍵をかけてたハズの俺の部屋に入ってきたな。
カズヒはいつ身に付けたのかピッキング技術で開けたらしいが、恐らく姉妹の間には俺の部屋の合鍵が共有されているのだろう。
「キョウカー?アニぃは起きた?」
「あ!ハル姉ぇ!!」
ハルカを見ると、キョウカはピョン!と俺の上から飛び降りると、ハルカに正面から抱きついた。
その尻尾は俺に撫でてもらってた時以上に揺れている。
…まぁ、ハルカは“相棒”だしね、多少はね。
「あ、アニぃ、おはよ」
「べっ、別に悔しくなんかないんだからねっ!!」
「はぁ?何の話?
ともかく、もうすぐ朝御飯出来るみたいだから早く下に降りて。
今日からアルバイトも始まるんだし、急いでよ?」
「ああ、分かった、着替えたらすぐに行くよ」
そうだ、今日からアルバイトだ!
しかもケモ耳メイド喫茶で!!
俺の自慢の美少女姉妹達のケモ耳メイド服姿を想像して、俺はにやけがとまらないのだった。
*
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
“喫茶妖獣メイド”は昼時も過ぎたというのに、メチャクチャに繁盛していた。
それもこれも、我が美少女揃いの自慢の姉妹達のおかげだ。
「いやはや、まさかここまで繁盛してるのは開店当時以来かもだよ~」
そう言ってキッチンでせっせと料理を作っているのは、狸耳メイドの少女、この店のチーフメイドであり、本物の“妖狸”であるユリコさんだ。
ユリコさんの着ているメイド服はいわゆるオーソドックスな黒と白のメイド服で、首元から鎖骨にかけて肌が見えるデザインで、胸元はハート型に開いて谷間を強調しており、スカートは膝上10センチメートルで、黒いニーソックスとそのスカートの間の絶対領域が眩しい。
ちなみに俺は黒い執事服を着て、ユリコさんと一緒にキッチンを担当している。
普段は閑古鳥が鳴く、とまでは言わないが、それほど客数は多くないと聞いていたが、どうやらSNSを中心に、今日の“喫茶妖獣メイド”にはカワイイ女の子が大勢いる、という風に話題になっているそうだ。
「しかし、怪我の功名と言うか、アルバイトの子が長期入院することになっちゃって、人手不足の時に皆が来てくれて、しかもそのおかげでこんなに繁盛することになるなんてね~」
「そうだったんですね」
「そうそう、だからヨウイチ君達が来てくれて助かったよ~
むしろ、このままずっとこの世界にいてくれない?」
「す、すみません、そればかりは…」
「あはは、ごめんごめん、冗談だよ。
君達には君達のやるべきことと、本来の世界があるんだもんね」
そんな話をしていると、ホール担当のイツキがキッチンに注文を伝えに入ってきた。
「2番テーブル、オムライス追加お願いいたしますわ!」
イツキのメイド服は、ユリコさんと同じ仕様のもので、頭にはネコ耳カチューシャと、お尻にはネコの尻尾を付けている。
うん、超カワイイ!
「もう、お兄様ってば、そんなに見つめられると、ホールに戻りたくなくなってしまいますわ♪」
「す、すまん、あまりにもカワイイ過ぎるもんだからつい…」
「お兄様の執事姿も素敵ですわよ♪」
チュッ♪
そう言って頬にキスをしてホールへと戻っていくイツキ。
入れ替わりに今度はカズヒが入ってきた。
「5番テーブル様もオムライス追加注文お願いしまーす!」
カズヒのメイド服は色違いで、白に青のデザインとなっており、頭にはイヌ耳、お尻にはモフモフのイヌの尻尾を付けている。
うん、メチャクチャカワイイ!
「おっ!お兄ちゃん、あたしのイヌ耳メイド姿に欲情してくれてるね♪」
「ああ、悔しいが今日のカズヒはメチャクチャにカワイイ!」
「いつだってあたしはカワイイの!」
チュッ♪
そう言って頬にキスをしてホールへと戻っていくカズヒ。
入れ替わりに今度はマコトとモトカが入ってきた。
「6番テーブルのお嬢様方に、デザートのイチゴパフェを二つお願いします!」
「7番テーブル~、イチゴパスタ追加注文で~す」
二人はメイド服ではなく、俺と同じ執事服を着ている。
マコトはイヌ耳にイヌの尻尾を、モトカはキツネ耳にキツネの尻尾を付けている。
イケメンのマコトは勿論だが、タレ目なモトカは何処か気だるげな雰囲気が一部の女性客に受け、この二人を目当てに多くの女性客も店内にはいた。
それはともかく、執事姿なふたりはやっぱりカワイ過ぎる!!
「兄さんに見つめられるのはうれしいけど、出来ればボクもメイド服が良かったな~」
「マコトのメイド姿とか想像しただけで興奮してきたぞっ!」
「も、もう…、兄さんってば…!」
「ねぇねぇ、兄ちゃん~、ボクのメイド姿も見てみたいよね~♪」
「そんなの当然だるぉ!?
明日は二人とも絶対メイド服にしてもらおうな!」
「じゃあ~、兄ちゃんも一緒にメイド服着ようね~♪」
「いや、俺は遠慮しとくよ!」
チュッチュッ♪
そう言って左右の頬にキスをしてホールへと戻っていくマコトとモトカ。
入れ替わりに今度はサクヤ姉ちゃんが入ってきた。
「カウンター席、オムナポリタン一つお願いしまーす♪」
サクヤ姉ちゃんのメイド服も色違いで、白と緑のデザインとなっており、頭にはタヌキ耳、お尻にはタヌキの尻尾を付けている。
バスト90超えのその大きなおっぱいをこれでもかと強調するそのメイド服は、姉ちゃんの魅力を120%引き出しており、控え目に言ってエロカワイイ!!
「あらあら、イッ君、私のおっぱいが気になるのは分かるけど、きちんとお仕事してね♪」
「はい!」
「うふふ、いいお返事ね♪」
チュッ♪
そう言って頬にキスをしてホールへと戻っていくサクヤ姉ちゃん。
「君達家族は本当に仲が良いね~」
「あ、す、すみません…、仕事中なのにデレデレしてしまって…」
「いや~、仕方がないよ、私がヨウイチ君の立場だったら、今すぐここで全員(性的に)食べちゃってるよ。
それをキスされるだけで我慢出来てる君はエライ!」
「あははは…」
ユリコさんはそう言うが、俺もかなりギリギリなのだ。
裸の付き合いは慣れてきたが、ケモ耳メイド服という、姉妹の新たな魅力を見せつけられると、我慢出来なくなりそうになる。
と、今度はホールとは反対側、休憩室の方からキョウカの育てのおじさん、つまりこの店の店長が出てきた。
「ヨウイチ君、次は君が休憩に入りたまえ」
「あ、はい、分かりました!」
「いってらっしゃ~い♪
休憩室でも思う存分イチャイチャしてきな♪」
「へ、変なことはしませんからね!?」
店長と入れ替わりに俺が休憩室に入ると、中には少し前から休憩に入っていたハルカとキョウカがイチャイチャしていた。
「あっ!あに様ー!」
「アニぃも休憩?」
「ああ。
…と言うか、キョウカはハルカの膝の上がよほどお気に入りなんだな」
「うん!ハル姉ぇに抱かれてるとすごく落ち着くんだ!」
「アタシも、キョウカのモフモフの尻尾が気持ち良すぎてね」
ハルカのメイド服は白と赤のデザイン、キョウカのメイド服は白とオレンジのデザインとなっており、二人の頭にはキツネ耳、お尻にはキツネの尻尾を付けている(キョウカのは本物だが)。
こうして見ると二人は本当の姉妹にしか見えず、もうとにかく二人とも尊カワイイ。
「むっ、アニぃ、キョウカのことエロい目で見てるでしょ?」
「仕方ないだろ、そんなエロカワイく生まれたキョウカが悪い!」
「えへへー、あに様は自分とえっちなことしたい?」
「勿論っ!!」
「アニぃ、分かってると思うけど、キョウカはまだ15歳だからね?
姉妹協定があってもなくても、キョウカとそういうことするのは禁止!」
「ハルカは母ちゃんかっ!」
「えー、自分、あに様とえっちなことしちゃダメってことは、キスもダメなの~?」
「キスくらいなら問題ないわ、というかもうすでにしちゃってるじゃない」
「やったー!あに様~♪」
チュッ♪
ハルカの膝の上から飛び降りたキョウカが、俺の隣にやって来て頬にキスをした。
「あっ!抜け駆けはダメよキョウカ!」
チュッ♪
その後、ハルカもキョウカとは逆隣にやって来て頬にキスをした。
「えへへー、あに様大好きだぞ~♪」
「ア、アタシも、アニぃのこと、愛してるから…!」
「ああ、俺も二人のこと大好きだよ」
両サイドから美少女姉妹二人に挟まれて幸せな気分に浸っていると、休憩室の扉がノックされた。
「あれ?アタシ達もう休憩終わりだっけ?」
「んーん、あと5分はあるハズだぞ?」
「なんだろな?」
一体何事かと思っていると、「休憩中だけど、失礼するよ?」と言って店長が入ってきた。
「店長、どうされたんですか?」
「うむ、ヨウイチ君とハルカ君だけ、少し時間をもらえるかな?」
「はい、アタシは構いませんけど」
「俺もいいですよ」
「すまない、ちょっと二人だけ私に付いてきてくれるかな?」
「自分は、自分はー?」
「キョウカは残ってなさい。
あと5分したら、交代でイツキ君とカズヒ君が入ってくるから、
彼女らと交代してホールに戻るように、いいね?」
「はーい、だぞ…」
キョウカはしゅんとしながらも、大人しく休憩室に残った。
休憩室を出た俺達は、裏口から外に出て、裏階段から下へ降りた。
すると、そこには一台の車が停まっていた。
「えっと、これは一体…?」
「ああ、何もとって食おうとしてるわけじゃない。
昨日の件のことで、警察の方が君達に話を聞きたいということらしくてね」
「昨日の件って…、」
「ああ、ハルカが誘拐未遂犯達をボコボコにした!」
「あっ…、すっかり忘れてた…」
昨日、キョウカを誘拐しようとしてた男達をハルカが精霊術で半殺しにした一件、そういやあの後どうなったか知らないな…
「ま、まさか、アタシ逮捕されちゃうんですか…?」
「いやいや、そうじゃない!
むしろ、感謝状が送られてもおかしくない話さ。
君が半殺しにした相手は、ここ数ヶ月、妖獣達を誘拐しては闇ルートで売りさばいたりしている、悪質な“妖獣ハンター”の一味だったんだからね」
「“妖獣ハンター”!?」
「ま、ともかく、車の中で刑事さん達がお待ちだから、昨日のことを素直に話して、状況を説明してあげなさい。
ヨウイチ君は、ハルカ君が緊張しないよう、隣で支えてあげなさい」
「は、はい、分かりました!」
俺達は、手を繋いで刑事さんの待つ車の中へと入っていった。
*
警察の人がアタシに話があると聞いて、アタシはてっきり過剰防衛とかで罪に問われでもするのかと思ったけれど、結論から言ってそんなことは全くなく、むしろ刑事さん達に何度も感謝された。
アタシとアニぃは車の後部座席に座り、運転席には男性の、助手席には女性の私服警官が座っていた。
「“妖獣ハンター”の連中、なかなか尻尾を掴ませなくてね、我々としてもかなり悩まされていたところだったんだ」
「最初、通行人から通報を受けた時は、人相の悪い複数人の男達が倒れているという話でね、
チンピラ同士の喧嘩にでも巻き込まれたのかと思ったら、まさかの大物で、私達もビックリだったわ」
「えっと、それで、どうしてハルカが彼らをやっつけた、と分かったんですか?」
「それは連中から話を聞いていて分かったんだ。
最初は、短髪の霊能力らしき不思議な力を使う女に一方的にやられた、としか話さなかったんだが、
一番のしたっぱと思われる男が口を滑らせてね、それで彼らが“妖獣ハンター”で、俺達の天使であるキョウカちゃん、」
「ちょっと先輩?」
「…オホン!
あー、君達の妹であるキョウカさんを拐おうとしていたところを、
たまたまそこに現れたハルカさんにボコボコにされた、ということが分かってね」
「刑事さんはキョウカのことを知ってるんですか?」
「ああ、この辺りでは有名な子だよ!」
「先輩の言う通り、キョウカちゃんは天使のような可愛らしさで私達も元気をもらってるんです!」
「ですよね!やっぱりキョウカは天使ですよね!!」
「そんな天使のキョウカさんを誘拐しようだなんてとんでもない連中でした。
だから、ハルカさんには本当に感謝していますよ、我々の天使を助けてくれてありがとう、と」
キョウカが物凄く近所の人達から愛されてるのが分かって嬉しいのと、そんなキョウカが近日中にこの世界を離れると知ったら、この人達はどうなるのだろう…?
「…と、長々とありがとうございました。
ハルカさんから聞いた話と、犯人達から聞いた話に大きな違いはなく、裏付けがしっかりと取れました、ご協力感謝します」
「ああ、いえ、そんな大したことは…」
「ところで、お二人から何かこちらにご質問はありますか?
我々に答えられることでしたらお答えいたしますが」
「えーっと、聞きたいことはあるにはあるんですが…、何と説明してよいやら…」
アニぃが聞きたいこととは、恐らくこの世界のもう一人の“妹”、“猫又”の“スズネ”のことだろう。
しかし、前世の名前が“スズネ”という“猫又”の女の子を知ってますか?なんて聞けるハズもないし、よしんば聞いたとしても、何故その少女のことを知りたがっているのか?と逆に聞き返された場合に、前世の“妹”だからです、とも言えないだろう。
などと思っていたら、刑事さんの方から驚く発言が飛び出した。
「ひょっとして、この世界で探してるっていう、もう一人の“妹”さんのことですか?」
「えっ!?な、なんでそのことを!?」
「すいません、実はお二人、というより、ヨウイチさん達家族のことは、昨日の時点で情報が入っていて、
すでに昨日の内に、おやっさん…、ここの店長さんに話は聞いていたんです」
「それで、皆さんが異世界から来た方々で、ヨウイチさんがキョウカちゃんの前世のお兄様であることや、
もう一人、“猫又”の“妹”さんがこの世界に転生してきているかもしれない、ということも」
「そ、そうだったんですか…」
「おやっさんがそんな嘘を俺達に話すはずがないので、間違いなく真実なのだろうと」
刑事さんに“おやっさん”と呼ばれて、ここまで信用されてるあの店長って一体何者なの…?
「でしたら話は早いです。
その“妹”の件なんですが、この近所に該当しそうな“猫又”で14歳くらいの女の子っていますか?」
「“妖猫”であれば多くいるけど、“猫又”となると人数は限られるからね、
しかも年齢が14歳前後となると、確実に絞り込めるハズなんだが…」
「一応、昨日こちらの店長さんからお話を伺った段階で、北九州市内の住民票を調べたんですけど、該当者はゼロでした」
「そう、ですか…」
少なくとも北九州市内にはいない、ってことか。
そうなると、探すのがかなり難しくなりそうね…
「…ですが、一つだけ情報がありまして」
「な、なんですか!?」
「これは、本来なら捜査情報なので他言無用で願いたいのですが、
どうも、ハルカさんが捕まえた“妖獣ハンター”の連中が二週間程前に、福岡市内の方で施設に預けられていた“猫又”の女の子を誘拐して、
それを一週間前に闇オークションで売りさばいていたらしいんですよ」
「闇オークションで…!?」
「これはまだ捜査中なので、ハッキリとしたことは言えませんが、
確かに二週間前に、福岡県警の方に妖獣児保護施設の方から、“リン”という名の“猫又”の女の子の失踪届けが出ています。
ちなみに、その子の年齢は14歳です」
「リン…、それが今の“スズネ”の名前か」
「現状話せるのはここまでです。
今も、仲間の刑事達が捕まえた“妖獣ハンター”の連中からより詳しく話を聞き出し、
“猫又”の少女のことや、闇オークションの詳細、そして少女が売られた先などの情報を調べていますので、分かりましたら、またおやっさん経由でお伝えさせていただきます」
「分かりました、よろしくお願い致します!」
もう一人の“妹”、リンのことが分かったのは良かったが、同時に不安材料も増えてしまった。
闇オークションで売られてしまったというリンの無事を祈りつつ、アタシ達はお店の方へと戻るのだった。




