第15話「Brand new Sisters」
*
気が付くと、見馴れた天井が目に入ってきた。
「気が付かれましたか、ヨウイチ様?」
「その声は、メイさん?」
俺はゆっくりとベッドから起き上がった。
ベッド脇の椅子にはメイド服に身を包んだメイさんが座っていた。
「えーっと、俺どれくらい寝てました?」
「ほんの30分程度です。
怪我そのものは、以前に比べれば大したことありませんでしたので」
そこへ、カズヒとイツキが部屋に入ってきた。
「あ、お兄ちゃん!目が覚めたんだね!」
「全く、お兄様はまた無茶をなさるんですから…」
そう言って左右に別れた二人は、メイさんと入れ替わるようにベッド脇へとやって来て、イツキが俺の右腕を、カズヒが俺の左腕を、それぞれ自分達のおっぱいで挟み込み、左右の頬に二人同時にキスをしてきた。
「チュッ…♪お兄様、お帰りなさいませ」
「チュッ♪お兄ちゃん、感謝してよね、あたしがいなかったらお兄ちゃん死んでたんだから!」
「ああ、ただいま。
それと、ありがとな、カズヒ」
俺は、二人の柔らかいおっぱいの感触を両腕でしばしの間堪能するのだった。
*
竜眼島の基地の自爆装置が作動した時、意識を失った俺を助けてくれたのはカズヒだった。
その直前、カズヒは何かしら嫌な予感を感じたらしく、マコトとモトカに俺の未来を『未来視』してもらったところ、俺がコンソールの自爆に巻き込まれて意識を失い、その後基地全体の自爆に巻き込まれる未来が見えたらしく、俺が意識を失うタイミングで、『物質転移』を使い、間一髪で俺を助け出したのだという。
また、先にテレポートさせていたアインス姉ちゃん達の方も無事のようで、皆クルセイド研究所で身体検査をしながら(例によって害のある改造部位などを取り除きながら)眠っているようだ。
それから、ナインスの首輪の錠前の解析は、結果的に上手くいっておらず、やはり16桁のパスコードをたった一分で解析して入力するのは不可能、ということのようだ。
ちなみに、カズヒの『物質転移』も試してみたが、何故か上手くいかなかった。
着ている服やパンツなんかは『物質転移』で脱がすことが出来るのに何故このボンテージ服は脱がせられないのか?
「脱がす方法が分からない、からかな~?」
というカズヒ。
首輪と一体化しているボンテージ服は、首輪を外さないと脱がせられない。
その首輪を外す方法が現時点で不可能だから、カズヒにもその首輪を外すイメージが出来ず、『物質転移』が上手く働かない、ということなのか?
何にせよ、カズヒの超能力でも無理なら、現時点では本当にこのボンテージ服を脱がす方法が無いということになる。
だが、こんなことでは諦めない。
いつか必ず、皆を縛り付ける首輪を取り外し、アイツに無理矢理着せられたボンテージ服を脱がしてみせる!
…ボンテージ服は、俺の好きなタイミングで、皆の同意を得た上で着てもらいたいからな!
その後、竜眼島の地下実験施設の爆発に関して、アスカさんからの連絡があった。
爆発直後で、何があったのか詳細までは知らなかったアスカさんだったが、島の所有者がシロック氏だったため、俺達、というより“クローンサイボーグ”絡みの事件だろうと考えて、真っ先にこちらに連絡してきたらしい。
俺は簡単に事の顛末を伝えると、アスカさんは早速ニューモジ港地区の海沿いにある小高い岸壁の上に建つシロック氏の屋敷に自身の指揮する小隊を派遣して、シロック氏を捕らえると言ってきた。
それに対し、シロック氏の屋敷にはアンドロイド型クローンサイボーグが四人いるから、俺達で助けてあげたいと言うと、ならば一緒に来て欲しいと言われたので、俺とハルカとナインスとゼブン姉ちゃんで、アスカさんと共にシロック氏の屋敷に乗り込み、フォルス以外の“家族”はなんとか助け出せたのだが、フォルスと当のシロック氏には逃げられてしまった。
…まぁ、この辺りの詳しい話はいずれ何処かで。
助け出した(と言っても、魂の無い彼らを操っていたAIチップを破壊した状態なので物言わぬ身体だけを連れて帰った、というのが正しいか)、ツヴァイス兄さんとフィフスとアハトンは、とりあえずクルセイド研究所の地下のカプセルにてコールドスリープさせておくことにした(そのために、カプセルはマコトとモトカの眠っていた物とは別に、新たに二つ作っておいた)。
本当はこのまま三人を眠らせるのが正しいのだろうが、俺個人としては、やはり“家族”として生きていて欲しい。
ゼブン姉ちゃんのようにAIチップを再起動させて(あるいは新たなAIチップをいれて)、アンドロイド型サイボーグとして蘇生させるか、あるいは別の方法で蘇生させるか…
ゼブン姉ちゃんが新たな形で蘇生してくれたからこそ、荼毘に伏す以外の選択肢が生まれた。
勿論、彼らを蘇らせることは、とても傲慢なことで身勝手なことだろう。
でも、それでも、“家族”には生きていて欲しいから。
とはいえ、今すぐに出せるような結論ではないので、家族皆で話し合って、家族皆が納得いく結論が出るまでは、彼らには眠っていてもらうことにしたのだ。
そんなこんなで夜になり、アインス姉ちゃん達の目が覚めたところで、イツキの提案により、アインス姉ちゃん達の歓迎パーティーをすることになった。
勿論、大浴場で裸の付き合いという形で。
*
シルヴァサン歴146年4月30日、ボク達は兄さま達によって助け出された。
ボクが目覚めた時は、すでに夜になっていて、兄さまが前世の頃に所長を務めていたというクルセイド研究所という場所にいた。
「ここ、は…?」
「あら、お早う、ドラインちゃん、ううん、ミラちゃん」
「あ、あなたは…、ま、まさかサク姉さま…!?」
目が覚めたボクの顔を覗きこんできたその女性は、前世のボクの上司で姉のような存在だった女性、サク・ローザスその人だった!
「ふふ、私のこと、覚えていてくれたのね?」
「ま、まさか、サク姉さままで転生していたなんて…!
またこうして姉さまと会うことが出来るなんて…!」
サク姉さまとは、前世で悲しい別れをしていた。
魔獣と呼ばれる人類を襲う敵との戦闘中、姉さまはボクと兄さまを助けるために身代わりとなって、その魔獣にボク達の目の前で食べられてしまったのだ。
あの時のことは、ボクにとっても兄さまにとっても、トラウマとなっていた。
「うん、私も、こんな形でミラちゃんと再会出来るなんて本当に嬉しいわ♪」
そしてボクを抱き締めてくれたサク姉さま。
ああ、この感じ…、とても懐かしい。
サク姉さまの甘いいい匂いと、柔らかくて弾力のある大きなおっぱい…!
「サク姉さま…、大好きです…!」
しまった、心の声が…!
「ふふ、私も、私もミラちゃんのこと大好き♪」
そう言ってキスをしてくれたサク姉さま。
ああ、幸せ…
前世の頃も、姉さまのことは好きだったけど、転生して“姉妹”となった今、その愛情が増してる気がする。
ブラコンでシスコン、どうやら兄さまの“姉妹”には遺伝子レベルで刻まれているらしい。
そして、サク姉さま、いえサクヤ姉さまから、大体何があったのかを聞いた。
兄さまの作戦でボク達は助けられ、ゼロは基地ごと死んだこと、そして、ボク達の体内に仕込まれていた自爆装置や監視機器などの有害な機械は取り除かれたこと、だけどボンテージ服だけは錠前のロックの解除が事実上不可能なため、これだけはどうしようもないということ。
幸い、このボンテージ服は伸縮性に優れた素材で出来ているから、生活するには問題なく、体が成長してもそれに合わせて伸縮するから、現状で困ることはない。
むしろ、兄さまや姉さま、妹達に見られるのは少し快感があるし、テンダーちゃん達のボンテージ姿も目の保養としては最高…、って何を言わせるのよ!?
また、シロックという男に渡された他の“家族”を助け出すために、兄さま達がシロックの屋敷に向かったらしい。
ボクも今すぐ駆け付けに行きたかったが、すでに終わったらしく、兄さま達は屋敷でボク達が目覚めるのを待っているとのこと。
そしてボク達が部屋を出ると、両隣の部屋から、アインス姉さまとマコト姉さま、テンダーちゃんとモトカ姉さまが同時に出て来た。
階段を下りていくと(どうやら研究室は地上三階建てらしく、ボク達が寝ていたのは三階部分が居住区画らしい)、ちょうど研究所を出ようとしていた、割烹着姿の女性と手を繋いで顔を真っ赤にして恥ずかしがるゼッツ君がいた。
「あ、あの、僕一人でも歩けますから…」
「まぁまぁ、いいじゃない少年♪
それとも、私と手を繋ぐのは嫌かい?」
「い、嫌ではないです…」
「あ、それとも抱っこのがよかった?」
「そ、それは大丈夫ですっ!!」
「こらこら、セイちゃん?
ゼッツ君が困ってるじゃないの」
「いやー、だってこの子、可愛い過ぎるからつい♪」
「気持ちは分かるわ、だって私達の弟なんだもん♪
イッ君とはまた違う魅力があるわよね~♪」
ゼッツ君は二人の歳上の女性に挟まれて、さらに顔を赤くして恥ずかしがっていた。
本当に初々しい弟だ。
研究所を出ると、目の前にはこれまた大きな屋敷が建っていて、ボク達はサクヤ姉さま達に連れられて、屋敷へと入っていった。
すると、この屋敷の持ち主であり、兄さまの最初の妹だというイツキ・ウィンザーちゃんが玄関で出迎えてくれていて、開口一番こんなことを言ったのだ。
「今から、皆様の歓迎パーティーを行いますから、大浴場へお越しくださいませ!」
そして、ボク達は裸で歓迎パーティーという初体験をすることになるのだった。
*
というわけで恒例となった新しい姉妹の歓迎パーティーだが、まずお互いの自己紹介と、自分達の前世のことや、俺達の現状(【次元渡航者】云々などの設定)をアインス姉ちゃん達に説明した。
それからこれも恒例となった体の洗いっこだが、俺の背中をアインス姉ちゃんが、右腕をナインスが恥ずかしがりながら、そしてテンダーが両足を、ゼブン姉ちゃんが左腕を、それぞれ自分達の全身に泡をつけて擦ってくれた。
「さ、さすがに恥ずかしいわね…、んんっ…!はぁ、はぁ…」
「ボクは平気…、んっ…!」
「わ、わたしも平気、だもん!んぁっ…!?これ、気持ちいっ…!?」
「なるほど、これが家族のスキンシップなのですね、勉強になります。
んっ…、い、今、何か私の体に静電気のような、不思議な刺激っ、が…、あぁ…っ!?」
さて、残るは前だけど…
「じゃ、じゃあ後は前の方を、」
「ドライン、お願い…」
「っ!?!?」
「よ、よろしく頼むな、ドライン」
「~~っ!!」
ドラインは顔を真っ赤にしながらも、健気にその豊満なおっぱいを俺の胸に押し付けてきた。
「ど、どうかな、兄さま…?
んんっ…、き、気持ち、いい…?はぁ、はぁ…」
「あ、ああ、最高だよ、ドライン…」
「んっ……、んんんっ!?んぁああああっ!?!?」
「ああっ、ど、ドラインちゃん!?」
「た、大変…!ドラインが、気絶した…!」
「ど、ドライン姉ちゃーーん!」
「なるほど、これが気持ちよくなって“イク”、という現象でしょうか」
無の境地だ、無の境地っ!
何も感じない、何も感じてはいけない!
平常心、平常心…っ!!
でなければ、俺は今ここで獣となり、姉妹達を瞬く間に食らってしまうだろうから…
「伊達に2000年、童貞を貫いてはいねぇよ」
「カッコつけてるけど、カッコ悪いよお兄ちゃん…」
「大丈夫ですわ、お兄様。
お兄様の2000年分の童貞は、わたくしの2000年分の処女が美味しくいただいてあげますから、
それまでもうしばらくお待ち下さいね♪」
イツキ、本当にお前は俺には勿体ないくらいに最高の妹だよ…!
*
ドラインは数分で目を覚ましたので、もう一つ、彼女達のことで決めておかねばならないことを話した。
それは彼女達の名前のことだ。
「アインスとかドラインってのは、この世界の旧シルヴァ語における数字の読み方そのものだからな、いつまでも姉妹を数字呼びするわけにはね。
それに、前世の名前をそのまま、というのもアレだし…
勿論、前世の名前がいいというなら別だけど」
「私は、ヨウ君が決めてくれるならむしろ大歓迎よ」
「ぼ、ボクも兄さまに決めて欲しい、かな」
「ボクも、兄やに名前、決めて欲しい…」
「わたしもわたしも!」
「ぼ、僕も、お兄様に名前をいただけるのなら、嬉しい、です」
というわけで、皆の名前を考えることになった。
そして、漢字表記はカズヒが考えてくれることになった。
例によって“陽(日)”か“月”の漢字を必ず使う縛り付きで。
「まずはアインス姉ちゃんからだけど…、前世の名前がマイだから…、マイカ、って名前はどうかな?」
「漢字で書くならこうかな?」
「藤原舞香、それが私の新しい名前なのね?
ふふ、名前も素敵だけど、ファミリーネームがヨウ君と同じ、ってのが、何より嬉しいわ♪」
喜んでくれて良かった。
「それから、ドラインはミライ、
テンダーはモモコ、って名前はどうかな?」
「ミライとモモコ…、漢字で書くとすると……、むむむ…!」
カズヒがちょっと苦戦してるようだな。
“陽(日)”か“月”の字が入った漢字で、となるとかなり特殊な読み方をせざるを得なくなるからな~
「むむ…っ!?閃いた!!
こんなの漢字でどう!?」
カズヒが風呂場の鏡(高さ2メートルくらいで横幅は5メートル程もあるかなり大きな姿見)に指で書いた漢字は、“心望”と“望心”と書かれていた。
「ん、これは…?」
「ふっふっふ、“心望”と“望心”と読みます!
二人は、マコト君とモトカちゃんのクローン双子、つまり遺伝子的には全く同じ、ということは四人は一卵性四つ子と言っても過言ではない!
そこで、洵心君と心香ちゃんの漢字表記に共通して含まれる“心”という漢字を二人の名前にも入れることで、
四人は遺伝子だけでなく、“心”でも繋がっているんだよ、というのを表してみました。
そして、二人は双子だけど、精霊術師と魔術師、という正反対の存在、というわけで両者の名前をひっくり返してみたわけなんだけど、どうかな!?」
「本当にカズヒは漢字のテストは苦手な癖に、姉妹の名前の漢字を考えるのは得意だよな~」
「あたしは常にお兄ちゃんやイツキちゃん達との間に出来た子供の名前のことを考えてるからね!」
「ということだが、二人はどうかな?気に入らなければまた考え直すけど」
「ううん、気に入らないだなんて…、」
「二人に名前を付けて貰えただけでも嬉しいよ、ありがと、兄や、カズ姉や…」
「じゃあ、ドラインの新しい名前はミライ、藤原心望だ。
そして、テンダーはモモコ、藤原望心で決まりだな!」
さて、残るはナインスとゼッツとゼブン姉ちゃんか。
「ナインスはメイコ、ゼッツはムツキで、えーっとゼブン姉ちゃんはナナカ、とかどうかな?」
「ふむふむ、明子、睦月、菜々香、だね!」
「メイコ!うん、カワイイ名前!わたしはそれでいいよ!」
「僕もそれで構いません」
「私にも名前を下さるのですか、ヨウイチさん?」
「勿論、ナナカ姉ちゃんも、俺達の家族だからな!
あと、俺のことをさん付けはやめて欲しい、俺の方が年下で弟なんだから」
「…しかし、私のこの肉体は、成長促進剤で無理矢理17歳の身体に成長させられたもので、精神的には私はまだ生まれたばかりですし」
「俺がナナカ姉ちゃんを姉ちゃんと呼びたいんだから姉ちゃんでいいの!」
「…分かったわ、ヨウイチ君。
これでいいでしょ…、いいかしら?」
「うん、バッチリ!
あと、ムツキも言葉遣いが他人行儀過ぎる。
俺達は家族なんだから、もっとフランクに、な?」
「え、えっと、は、はい!お兄さまっ…、いえ、えっと、お兄さん…!」
「ああ、そんな感じでいい」
さて、これで伝えるべきことは伝えたかな。
あとは、俺達がいつまでこの世界にいられるか、だけど…、
『それはゴールデンウィーク最終日、つまりは5月5日までじゃ』
「うわっ!?びっくりした!?」
「やはり出やがったな、ヨミ!」
突然カズヒの背後に現れた顔を隠した美少女である(らしい)ヨミが現れた。
「いきなり現れないでよヨミちゃん!
というか、5月5日がどうしたの!?」
俺の思考に答える形での台詞だったため、カズヒには何のことか分からないのも無理はない。
『お前さん達がこの世界にいられる日じゃ。
今日が4月30日じゃから、今日も含めてあと6日この世界にいられることになるな』
「つまり、わたくし達は6日の日には次の世界にいる、ということですのね」
『そういうことじゃ。
それまでは、新しく出来た姉妹とキャッキャウフフしてゆっくり過ごすと良かろう』
キャッキャウフフて…
「あの、ヨミさん?」
『なんじゃ?マイ・イェーガ、いや今はマイカ、と呼んだ方が良いか』
「私の前世のこともご存知なんですね?」
『勿論じゃ、ヨウイチの魂に強く引かれた魂の少女よ』
「なるほど…
それで聞きたいことなのですが、私達も、次の世界にヨウ君達と一緒に旅立つことになるのでしょうか?」
『それはお前さん達次第じゃ。
5日の深夜、日付が変わる直前にこの屋敷に残っておれば、お前さん達も一緒に次の世界へ行ける』
「そうでなくても、ボク達魔人なら、『転移魔術』の魔法陣を使えば世界を移動出来る…
ボク一人分の魔力じゃ魔法陣を起動するには足りないけど、兄やに、ハル姉や、サク姉やの魔力も合わせれば…」
『残念ながらそれは無理じゃ』
「何故…?」
『今のヨウイチ達は『転移魔術』の魔法陣は起動出来ないようになっておる』
「起動出来ない、ってどういうこと…?」
「それは気になるな。
俺が単に『転移魔術』の魔法陣の書き方を思い出せていないからとか、魔力を扱うのにまだ反動が来るからとか、そういう理由で使えない、というわけじゃないのか?」
『うむ、ヨウイチ達が『転移魔術』によって世界を転移出来るようになるためには、魔王ヤミを倒す必要があるのじゃ』
「魔王ヤミを?」
『そうじゃ、分かりやすく言うなら、そういう類の呪いがかかっていると思ってもらえればよい』
「呪い…」
『そういうわけじゃから、マイカ、ミライ、ムツキ、メイコ、モモコ、ナナカ、
お前さん達がずっとヨウイチといたいと望むのなら、共に世界を旅する選択肢を選ぶがよい。
ただし、まだこの世界でやるべきことがあると思うのなら、この世界に留まり、ヨウイチ達が魔王ヤミを倒して、『転移魔術』を使えるようになるまでしばしのお別れ、となる』
「兄さまと、」
「しばしの別れ…」
『ま、時間はある、しっかりと考えるがよい。
確実に言えるのは、皆が死なぬ限り、永遠の別れとはならない、ということじゃ』
「分かりました、しっかりと考えさせていただくわ」
『うむ。
…そうじゃ、最後に一つだけ。
お前さん達、新しく出来た姉妹にも転生特典を付与しておるからの』
「転生、特典…?」
「て、転生特典って何、アニ君?」
『ミライは心当たりがあるのではないか?
前世では使えなかった『スピリット』を使えるようになっておったじゃろう?』
「え?あ、は、はい…」
『あれは、お前さんがゼロの元にいた時に、モモコとキスをしたからじゃよ。
愛する姉妹同士でキスをしたことで能力がパワーアップしたのじゃ』
「えっ、えええええええっ!?」
『勿論、ヨウイチとのキスでもパワーアップ出来るし、他の姉妹とのキスでもパワーアップは可能じゃ。
ま、その辺の説明はヨウイチ、お前さんからしておくのじゃ』
「な、なんで俺が!?」
『余にはあまり時間が無いのでな。
ではもう行くぞ、また次の世界で会おうぞ』
そう言ってヨミが姿を消した。
その後、言われた通り簡単にマイカ姉ちゃん達に説明したところ、早速皆でキスをしようとなったのだが、その前にセイさんが大浴場に入ってきて、夕飯の準備が出来たから早く上がるようにと言われたので、その日のキスはお預けとなった。
そして夜も更けてきていたため、皆肉体的にも精神的にも疲れているだろうということで、その日はお開きになった。
*
それから5月に入り、ゴールデンウィーク(こちらの世界でもちゃんと存在している)の間はこちらの世界で、マイカ姉ちゃん達と過ごすことになった。
その間、姉妹達とのキスによるパワーアップや、模擬戦などの特訓、姉妹達とのショッピング、趣味の共有など、様々なことをして過ごした。
その辺りの話は何処かで話すこともあるかもしれない。
そうした中でも、俺が特に力を入れたのは、イツキの屋敷の地下室を改造し(地下室は物置と化していたり、ほとんど使われていない部屋が多かった)、そこにクルセイド研究所を丸々新たに作ることにした。
というのも、クルセイド研究所の設備がないことには俺の義手やマコト達のボディメンテナンスが出来ないからだ。
それならばクルセイド研究所の設備をカズヒの『物質転移』で丸ごと移動させるという手もあるのだが、それをしない、いや出来ない理由がある。
それは、マイカ姉ちゃん達はこの世界に残るという結論を出したからだ。
「まず、この世界にはまだシロックと共に行方不明になったフォルスちゃんがいる。
彼女の行方が気になるし、それにゼロだってこのままあっさり、というのは考えにくいし…」
「それは俺も気になっていた。
ゼロのことだ、何処か別の場所に基地を隠し持っていて、そこに自身のバックアップデータを残していてもおかしくはない。
自身の記憶と知識を、魂の無い肉体に埋め込んだAIチップの中にダウンロードさせれば、事実上自身を蘇生させることは可能だ」
「ええ、ヨウ君の言う通りよ。
それに、ちょっとだけしか確認出来なかったんだけど、彼のクローン実験計画書に、レイブン以降の製造計画が記されていたのを見たことがあるの」
「…“クローンクルセイド計画”はまだ終わっていない、か」
ということもあり、クルセイド研究所と同規模の施設をイツキの屋敷の地下室に作ることになった。
建材等はアスカさんのコネなどを利用させてもらって、かなり融通を利かせてもらった。
基本構図などは俺とマイカ姉ちゃんで考え、マコトとモトカとミライとモモコに“加速装置”で作業をしてもらい、通常の倍以上の早さで地下研究所を完成させることが出来た。
そうしてゴールデンウィークはあっという間に過ぎ、いよいよ旅立ちの日となった。
5日の深夜、日付が変わる直前、俺達はイツキの屋敷の前にいた。
「名残惜しいけど、しばしのお別れね」
「兄さま、ボク達待ってるから」
「だから、必ず帰って来て…」
「ああ、さっさと魔王ヤミを倒して戻ってくるよ、その時には他の姉妹も紹介するから」
「せっかく再会出来て、両思いになれたんだから、もう勝手に死んじゃ嫌だよ、アニ君!」
「分かってる、もう二度と自分勝手にカッコつけて独りよがりに死んだりしないよ。
家族全員、必ず無事に帰ってくる。
お前達も、無茶はするなよ?」
「大丈夫、皆は私、ナナカが必ず守ってみせるから、ヨウイチ君は安心して行ってらっしゃい!」
「そういうナナカ姉ちゃんも、無茶はしないでね?」
「お兄さん、僕も、お、男として、姉さん達を守れるよう強くなるよ!」
「ああ、ムツキ!姉ちゃん達を頼むぞ!」
「皆様と離れ離れになるのは寂しいですが、わたくし達家族の絆は、離れていても永遠です」
「マイカお姉ちゃん、帰って来たら、またおっぱい枕してね…、グスン」
「もう、カズヒちゃんは本当におっぱい好きな困った妹ちゃんね♪」
「バカズヒは本当に最後まで…
ううん、最後じゃなかったわね。
ミライ、帰って来たらまた“遊び”しょう、次こそ決着をつけるわよ!」
「ええ、【グランドクイーン】のアナタとまた“遊べ”るのを楽しみに待ってる!」
「ミライ、モモコ、ボク達ともまた趣味のこととかで遊ぼうね!」
「今度こそは~、魔法少女コスプレとかしてもらうからね~」
「う…、さすがにコスプレはまだちょっと…、」
「大丈夫…、ミライは何を着ても似合うから…」
「ムッちゃん、男の子だからって、あまり無茶してお姉ちゃん達困らせたらダメだからね?」
「は、はい!」
っと、もうあと数秒で日付が変わるな…
「じゃあ、皆、元気で!」
「ヨウ君達も!」
「「「「「また会う日まで!」」」」」
こうして、俺達は“ワールドシルヴァネア”を後にするのだった。
次の世界ではどんな“姉妹”と巡り合えるのだろうか。
出来ればもうこれ以上厄介な問題は起きて欲しくないものだが……




