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シスターズアルカディア~転生姉妹とハーレム冒険奇譚~  作者: 藤本零二
第2章~ワールドシルヴァネア~
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第8話「加速装置」

*


 俺はまた過去の夢を見ていた。


 それは、俺が魔人だった頃の記憶。



 その時の俺の名前はラクサ・カミュエルで、俺の2つ歳上の姉ちゃんの名前はアンナ・カミュエルと言った。

 アンナ姉ちゃんは特殊体質を持っていた。

 それは、無限に近い魔力をその身に宿し、そのせいで身体が変質し、どれだけ身体を切り刻もうとも再生することが出来る不死身の肉体を持っていたが、一部の魔術を除いて、魔術が全く使えないというものだった。

 一部の魔術と言うのは、魔力を注ぎ込むことで使える魔法陣を使った魔術のことだ。

 例えば魔獣を“使い魔”にするための『魔獣隷属術』や、場所や世界を転移するための『転移魔術』などがこの魔法陣を使った魔術、ということになる。


 まず、魔術と言うのは何か。

 魔術とは、魔人や魔獣が持つ魔力を変換させて、体外に放つ術のことだ。

 様々な属性を持った精霊術とは違い、基本的に魔術には属性がなく、強いて属性を現すなら“闇”、といったところだろうか。

 ただ、稀に“雷”や“炎”などに特化した魔術を使う者もいて、彼らのことは“雷の魔術師”や“炎の魔術師”などという風に呼ばれていた。

 ちなみに、俺の幼馴染みで俺のことを“兄や”と呼んで慕ってくれていた少女は“雷の魔術師”だった。


 俺達の世界にとって、魔人が魔術を使えるのは当たり前で、無限の魔力と不死身の肉体を持ちながら、まともな魔術を全く使えないアンナ姉ちゃんは、周りから劣等魔人扱いを受けており、学校では半ばイジメのような扱いを受けていたという。


 魔人の世界にも学校はある。

 他の世界を支配しようと何千年にも渡って侵略戦争を仕掛けてきた魔人達だが、それは俺達人間が過去に世界大戦を起こしたのと感覚的には変わりがない。

 

 魔人は、各地区にある義務教育である魔人養成学園に14年通い(俺達の世界で言う小学校~高校までだ)、そこから魔術師としてパラレルワールド侵略のための兵士としての教育を受ける魔術師養成学院に進むか、魔術や魔力の研究を行う魔術研究学府に進むか、一般の魔人として魔術以外の高等教育を行う高等魔人学府に進むか、そのまま社会に出て働くか、の選択肢があった。

 魔術師養成学院に進んだ後は、余程のことがない限り卒業後はそのまま魔術師として軍に所属することになり、部隊配属後に様々な世界の様々な戦地へと向かわされることになるのだ。



 アンナ姉ちゃんは魔術が使えないから、学園卒業後は進学せず普通に働くことになっていた。

 俺も、戦争に興味は無かったし、アンナ姉ちゃんの側を離れたくなかったから進学したとしても一般研究学府に進学するつもりでいた。


 しかし、俺が14歳、姉ちゃんが16歳、魔人養成学園の10年生と12年生だった年、突然、魔術研究学府の者がやって来て、姉ちゃんを特別に進学させたいと言ってきたのだ。

 当然、姉ちゃんはその誘いを断ろうとしたのだが、何故か国からの命令書もあり、断ることが出来なかった。

 しかも、その日の内に養成学園を中退させられて、有無を言わさぬといった感じで魔術研究学府の者達に連れていかれてしまった。


 当然、俺は大切な姉ちゃんを連れていかれたわけだから抗議をしたわけなのだが、国から多額の(一生を遊んで暮らせるほどの)金を積まれた両親は、その金でもって世界旅行へと旅立って行ってしまった。

 魔人にとって、血の繋がりというのは、然程重要視されていないため、この時の両親の行為を責めることは出来ない。

 むしろ、俺や姉ちゃんのように姉弟(きょうだい)仲のいい関係の方が異常だったのだ。



 魔術研究学府に連れていかれた姉ちゃんからの連絡は一切なく、こちらからの連絡も一切させてもらえず、ただ毎月研究協力費という名目で俺個人宛に一ヶ月では使いきれないほどの金が送られてくるだけだった。


 両親に一生遊べるだけの額を支払い、さらには俺個人宛に毎月余るほどの金を送るほどの価値が、姉ちゃんにはあったということなのだろう。


 考えられるのは、姉ちゃんの不死身の肉体の具体的な仕組みを解明することで、不死身の肉体を持った魔術師軍団を計画している、とか。

 かつて、魔人たちの世界を統べていた魔王ヤミという存在は、無限に近い魂を持っていて、殺される度に、その殺され方に耐性を獲得し、より死ににくくなるという不死身に近い能力を持っていたという。

 魔王ヤミに近い特殊性を持っていた姉ちゃんの肉体を調べ、第二、第三の魔王ヤミを作ろうと考えていたのかもしれない。



 目的はどうあれ、姉ちゃんの身体を研究しているのだとすれば、それはまともなやり方であるハズがない。

 何せ、姉ちゃんの身体はどれだけ切り刻んでもバラバラにしても再生し、自ら望まぬ限り死ぬことはないのだ。



 俺は、一刻も早く姉ちゃんを魔術研究学府から救い出すために、計画を練った。

 研究学府に侵入し、姉ちゃんを救出するだけでなく、救出した後も、俺達二人だけで平和に暮らすための計画。

 当初は俺一人で作戦を行う予定だった。

 だが、俺の幼馴染みで俺や姉ちゃんのことを本当の家族のように慕ってくれていた、ボクっ娘の少女、モーナ・ギャランズも俺の計画に協力してくれると言ってくれた。

 だが、この計画はとても危険な賭けだ。

 下手をすると命を落とす可能性だってあると言ったのだが、



「姉やも、兄やも、ボクにとって大切な家族、だから…

 二人がいなくなるくらいなら、ボクも生きていたって仕方ないから…」



 そう言ってモーナが俺の腕をギュッと握りしめた。

 そう、だよな…

 血の繋がりはなかったが、モーナは俺達のことを家族だと言ってくれている。

 魔人にしては珍しい俺達の関係性。

 だからこそ、愛しく、尊い。

 なら、そんな家族のためにも、俺が覚悟から逃げてちゃダメだよな。



「分かった、モーナの覚悟は受け取った。

 俺も覚悟を決める。絶対に三人で帰って来て、平和な場所で三人で暮らそう!

 俺達は、運命共同体だ!」


「うん…っ!!」



 だが、俺は結局その約束を守れなかった。

 モーナは、俺を姉ちゃんの元へ行かせるために盾となって犠牲となり、当の俺もまた、姉ちゃんを別時空へと逃がすために………、



―――…ぃ様、お兄様、起きてくださいませ。


―――…さだよ、起きて、アニぃっ!



 何処からか二人の妹の声が聞こえてきたところで、俺の夢は終わり、目を覚ますのだった。




*


 イツキとハルカに起こされ(軽く朝一のキスを二人とした後)、俺は二人に連れられるまま、屋敷の中庭へと連れて来られた。

 そこでは、マコトとモトカがカズヒの指導のもと、何やら特訓をしているようだった。

 パラレルワールドに来てカズヒが早起きしてるのも珍しいが、カズヒが二人を指導しているというのも不思議な光景だ。

 何の特訓をしているのかと近付いてみると…、



「ライダー……ッ、パーーーンチッ!!」


「違よマコト君っ!もっとこう、魂からライダーになりきってっ!!

 でもマコト君カッコいいよ!!」


「ライダーキック~!」


「ああっモトカちゃんカワイイけど違うな~!

 もっとこう天の道を意識して総てを司る感じで振り抜くのっ!!」



 何か予想とは違ったが、ある意味想定通りというか…



「……あれは、何をやってるんだ?」


「どうも、昨夜寝る前にカズヒさんが二人に仮面ライダーの素晴らしさを本格的に布教したみたいで」


「マコトもモトカもすっかりどハマりしたってわけ」



 …まぁ、本人達が楽しそうだからいいか。

 と、俺が起きてきたのに気付いたか、三人が駆け寄ってきた。



「お兄ちゃん、おはよっ!チュッ♪」


「兄さん、お、おはようございますっ!!…チュッ」


「兄ちゃん、おはよう~♪チュッ♪」


「うん、おはよう、三人共」



 朝の挨拶からの流れるような口付け。

 マコトはファーストキスの時こそ、恥ずかし過ぎて気絶してしまったが、昨夜の二回目で多少恥ずかしさが薄れたのか、今朝の三回目(いや、正確にはカズヒやイツキたちともキスをしているハズだから、もっとか)は顔を赤くしつつも、すんなりとキス出来るようになっていた。


 この調子で、あとはその能力が順調にパワーアップしてくれれば…

 そうだ、パワーアップと言えば、“加速装置”だ!

 どうやら、マコトとモトカも同じことを考えていたようだ。



「あの、兄さん、例の“加速装置”なんですけど」


「もうそろそろ完成してる頃じゃないかな~?」


「ああ、そうだな。

 朝食まではまだしばらく時間ありそうだから、先に“加速装置”の装着と“タキオン粒子”の注射を行うか」


「はい!」


「お~!」



 そうして俺達は屋敷の前のクルセイド研究所へと向かった。




*


 イツキとサクヤ姉さんは、人数が増えた分大変だという理由から、セイさんを手伝って朝食の準備をするために屋敷に残った。

 ちなみにメイさんは、屋敷の掃除係だから食事を作らない、という理由もあるのだが、メイさんは究極の料理下手で、何をどう作っても一度は食材または器具を爆発させるという体質があるせいで、配膳以外の食事の手伝いは禁止されている。


 なので、クルセイド研究所には俺とマコトとモトカとカズヒとハルカがやって来た。



 研究所に入ると、想定通り、すでに“加速装置”が完成していた。



「おー!これが“加速装置”!」


「なんか、時計みたい」


「あれ?でもこれ三つありますよ?」



 マコトの言う通り、“加速装置”は赤いデザインの物と青いデザインの物、そして黒いデザインの物の三つが出来上がっていた。



「ああ、一つは予備だよ。

 んで、こっちの赤い方がマコトの分、青い方がモトカの分だ」



 それぞれ二人に渡し、付け方を説明した。

 と言っても、普通の時計と同じように手首に回すだけなのだが。



「でも、これ留め具がないみたいですけど」


「ま、付けてみたら分かるよ」



 二人が“加速装置”を左手の手首に回すと、バンド部分が伸びて、カチッという音と共に両端がくっつき、そのまま手首と一体化するように装着された。



「わっ、これ手首にくっついちゃいましたよ!?」


「材料の一部に“バイオヴァリアブルメタル”が使われてたのはこのためか~」


「二人共、手首に違和感とかはないか?」


「あ、はい!特には」


「めっちゃ馴染んでるよ~」


「良かった。

 これで、“加速装置”が二人の身体の一部になった。

 だから“加速装置”に不具合が起きても、自己修復機能で自動修復出来るし、最悪の場合でも身体リペアマシンでの修復が可能だ」



 次に俺は特殊な注射器を準備し、昨日“黒い岩”から分離して低温保存していた“タキオン粒子”をカズヒに持ってきてもらってから、注射器をハルカに渡し、マコトとモトカに“タキオン粒子”を注射するよう頼んだ。



「ええっ!?あ、アタシが注射するの!?」


「ああ、俺の右腕の代わりになってくれるんだろ?」


「そ、そうだけど、でも失敗したら…、」


「大丈夫、俺がちゃんと指示するから」


「心配しないでハルカ!

 仮に失敗したとしても、ボクらは怒ったりしないから」


「そうそう~

 それに、注射くらいの痛み、サイボーグのボクらには全然大した痛みじゃないから~、何度射たれても平気だよ~」


「さ、さすがに何度もは失敗しないように頑張るわ…!」



 そうしてハルカは注射器を“タキオン粒子”の入った特殊容器に付け、俺の指示通りの分量注射器に入れると、まずマコトの左手を取り、俺が指差した場所に静脈注射した(知識や資格の無い人は、決して他人に注射なんかしちゃ駄目だぞ!)。



「…んっ!中に、入ってきてます…!」


「ああ、そのまま五分ほど安静にしていてくれ。

 そうすれば全身の血液に“タキオン粒子”が巡るハズだ」


「たったあれだけの量で全身の血液を満たすの~?」


「ああ。あまり多すぎると“タキオン粒子”が暴走して加速状態から戻れなくなる可能性があるからな」


「ひえ~」



 続いてモトカにも同じように静脈注射を終えたハルカは、緊張が抜けてホッとした顔を見せた。



「ふ~、緊張した…」


「お疲れ、ハルカちゃん!

 さ、あたしの胸で遠慮なく休んでいいよ!さぁ!」


「…それは遠慮しとくわ」


「うぅ、お兄ちゃん、ハルカちゃんがまだあたしにデレてくれません…」


「はいはい」



 適当にカズヒの頭を撫でてやりながら、“タキオン粒子”が二人の全身に巡るのを待った。



 五分と少しが経ち、もう大丈夫だろうと思い、二人に“加速装置”の試運転をしてもらうことにした。



「じゃあ、その前に、“加速装置”の白いボタンを押してくれ。

 それが戦闘服を着脱するためのボタンだ」



 二人が同時にボタンを押すと、マコトは赤い、モトカは青い、お揃いのデザインの戦闘服に一瞬で着替えた。



「おおっ!」


「本当に0.05秒で戦闘服になっちゃった~」


「ぷ、プロセスをもう一度っ!!

 今度はゆっくり!ゆっくりじっくりたっぷり見せてっ!!」


「カズヒ、着替える途中の二人が見たいのは分かるが、そんなプロセスをスローモーションさせる機械なんかないからな?」


「バカズヒ…」



 ちなみに、戦闘服のデザインはシンプルで無駄がなく、首には黄色いマフラー、そしてマコトはショートパンツ、モトカはミニスカートで、二人ともばっちりおへそが見える仕様となっている!

 もちろん、ヘソが見えると言っても、その部分は透明素材で出来たスーツが覆われているから、身体へのダメージは問題なく防げる仕様だ!



「この戦闘服、シンプルでいいですね!ボク気に入りました!!」


「姉ちゃんのへそ出し衣装~、最高過ぎますな~♪」


「お兄ちゃん、あの戦闘服、『サイボーグ009』のモロパクりじゃない?怒られない?

 いや、確かにあたしは大好きなデザインだけど…」


「ぱ、パクりちゃうわ!!リスペクトと言えっ!!」


「う~ん、でもちょっとダサくない?」


「ビキニアーマーのお前がそれを言う?」


「びっ、ビキニアーマーの何が悪いのよ!?

 第一あれは昔、アニぃが…、ってアタシのことは今はいいのよ!」


「戦闘服がごちゃごちゃし過ぎてても仕方ないだろ?

 シンプルイズベストだ。

 それに、二人が気に入ってくれたからいいんだよ」


「…まぁ、確かにアタシが着るわけじゃないし、ね」


「ねぇ、あたしにもあんな感じの戦闘服作ってよ、お兄ちゃん!」


「おう、カズヒにもその内用意してやるよ」

 


 さて、戦闘服装着機能は上手く作動した。

 あとは肝心の“タキオン粒子”の活性化と抑制化が上手くいけばいいが。



「それじゃあ兄さん、次は加速実験ですね!」


「ああ、そうだな。

 それじゃあ、外に出ようか」



 俺達四人は研究所裏にある廃工場跡地(130年前には建物があった)にやって来て、マコトとモトカの加速実験を始めた。



「じゃあやってみてくれ」


「はい!“加速装置”起動!」


「起動~!」



 二人が“加速装置”の黄色いボタンを押すと、二人の周囲の空気が一瞬歪んだかと思うと、二人の姿が見えなくなっていた。



「消えたっ!」


「…ッ!」


「“タキオン粒子”の活性化には成功したみたいだな。あとは、」



 数秒後、再び空気が歪んだかと思うと、二人の姿が現れた。



「抑制化にも成功したか!加速実験は成功だな!

 二人共、体調の方は大丈夫か?」


「あ、はい!問題ありません!」


「“加速装置”、これ~、本当に凄い発明だよ~…

 確かに、この力を使えば~、国を一つ滅ぼすくらい余裕で出来ちゃうかもね~…」


「“加速装置”って地味な能力だけど、最強クラスのヤバい能力なんだね、やっぱり」


「………」



 各々がそれぞれの感想を述べる中、一人ハルカだけが何かを考え込むような仕草をしていた。



「ん?ハルカ、何か気になることでもあるのか?」


「あ、えっと、気になるって言うか…、アタシ、今朝のアニぃとのキスで、またパワーアップしたみたいで…」


「え!?それは本当か!?」


「う、うん、多分。

 だからそれを確かめてみたいんだけど、マコト、アタシと軽く“遊んで”くれない?」



 この場合の“遊ぶ”は、手合わせをしようという意味だ。

 マコトにそのことを説明すると、マコトは快く了承した。



 二人は2メートル程距離を空けて向かい合った。



「“遊ぶ”と言っても、どちらかを倒すまでとかじゃなくて、そうね、相手に触れることが出来たら勝ちってことでどうかしら?」


「それで構わないよ。んで、“加速装置”は、」


「勿論“加速装置”を使って構わないわ、というより使って欲しい」


「…ハルカがそう言うなら、遠慮なく使わせてもらうよ?」



 二人が腰を落として構える。

 モトカが審判役として、二人に合図を出した。



「それじゃあ~、試合……、開始~っ!」




*


「それじゃあ~、試合……、開始~っ!」



 モトカの合図と同時に、マコトの周囲の空気が歪んだかと思うと、マコトの姿が一瞬で消えた。



 アタシは、先程感じた違和感の正体を確かめるためにマコトに“遊び”を挑んだ。


 先程感じた違和感、それは加速実験でマコトとモトカが消えた瞬間、二人の動きが()()()()()ように見えたのだ。

 加速しているハズの二人の動きが見えた、いや、()()()()()


 それを確かめるために、マコトには再び“加速装置”を使ってもらった。



 結論から言うと、マコトの姿は見えない。

 だが、どのように動いているのかが分かる、()()()()()

 これは、恐らくアタシの中のギラドの能力だ。

 超感覚とでも言うのだろうか、見えない相手の動きが手に取るように分かる。

 

 スローモーションのような感覚の世界の中で、マコトの右手がアタシの左肩に触れようとしてきたのが()()()()ので、アタシは左肩を少し後ろに下げ、マコトの右手から僅かに距離を取ると、逆にアタシが右手を前に伸ばし、マコトの左肩に手を置いた。


 驚くマコトの表情が見えた、その瞬間、アタシの着ていた服の右袖が勢いよく燃え始めた!



「熱ッ!?!?」


「わわわっ!?ハルカ大丈夫!?」


「ええええっ!?ハルカちゃんの右手が燃えてる!?何で!?」


「そりゃ、加速中のマコトに触れれば、空気抵抗による摩擦熱で服は燃えるだろうな」



 アタシは燃えてる服をその場に脱ぎ捨てた。

 確かに今着ていた服は戦闘服とかではなかったけど、アタシたちの国で作られた、魔術による攻撃などから身を守れるだけの強度を誇る服だったのよ!?

 そんな服に一瞬で火がつくなんて…!



「それだけとんでもない摩擦熱が発生する程の加速スピードが出てるってことだ」


「いやいや~、そんな加速スピードで動いてたハズの姉ちゃんからの接触を避けて~、逆に姉ちゃんに触れたハルカちゃんは一体何をしたの~?」


「まさか、ハルカも加速出来るようになった、とか?」


「いやいや、というかそれよりも!!

 ハルカちゃん火傷とかしてない!?大丈夫!?」


「ううん、加速出来るわけじゃなくて、加速してる相手を()()()ことが出来るっていう感じかな?

 それと火傷もしてないよ、何故なら、」



 そう言って、アタシは右腕に浮かんだ金色の鱗を皆に見せた。



「どうやらアタシ、ギラドの力を少しだけ使えるようになったみたい」


「そ、それ、ギラドの鱗!?」


「うん。完全なギラド化は、まだ無理だけど、身体の一部をギラド化することで、ギラドの超感覚能力を使えるようになったみたい」


「ギラドの…!?

 そう言えば、アイツ(ギラド)は“雷化”した俺の動きが見えているかのような動きをしていたが、

 てっきりその時はヤツ自身も雷系の魔術を使ってたから、それで“雷化”した俺の動きも見えているのかと思っていたが、超感覚能力で俺の動きを()()()いたのか」


「うん、恐らく、そうなんだと思う」



 ギラドには苦い思い出しか無いが、しかしこのギラドの能力はなかなかに強力なものだ。

 この力を完璧に自分のものと出来れば、アタシはもう二度と家族(きょうだい)を失うような悲しい思いをしなくて済む。


 アタシはもっと強くなれる!


 アタシは右腕を元に戻すと、ギュッと拳を握り締めて決意を新たにした。



「…ところで、ハルカ?

 そろそろ服を着た方がいいんじゃないか?」


「…へ?」



 アニぃに言われて、今アタシは燃えた服を脱ぎ捨てて、上半身裸のままだったことを思い出した。



「きっ、キャアアアアアアアアッ!?!?」



 アタシは胸を両手で隠しながら、一目散に屋敷の方へと向かって駆け出していた。



「あっ、ちょっとハルカちゃん!!

 ハルカちゃんの服、あたしがテレポートさせてここに!

 …って行っちゃったかー」


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