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シスターズアルカディア~転生姉妹とハーレム冒険奇譚~  作者: 藤本零二
第2部第1章~ワールドアクア~
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第17話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍⑤」


 頭からは角、背中からは黒い翼、お尻の辺りから生えた魔人の尻尾、そして、普段より一回りか二回り程大きくなった胸元、その身体を覆うのは、魔力で編まれた特殊な深紅のワンピースドレス装束、そんな出で立ちの魔王ヨウコと戦うアタイ達、ヒカリとショウとアキホ。


 目的は、魔王ヨウコの魔力を削り、陽子の魂を覚醒させて、“魔王の因子”を陽子の中に封印すること。

 そのためにアタイ達は、魔王ヨウコを殺さぬよう、しかし手加減の一切出来ない戦いを繰り広げていた。



「やぁああああっ!!」



 “ガモス化”したアキホが、背中から生やしたガモスの羽から、麻痺効果のある“毒鱗粉”を、魔王ヨウコの周囲に撒き散らす。

 ガモスというのは、簡単に言えば蛾を巨大化させたような魔獣で、その得意技が羽から広範囲に撒き散らす“毒鱗粉”なのだ。

 その毒は、大抵の魔獣を痺れさせることが出来る程強力で、魔王ヨウコといえど、わずかにでも皮膚に触れれば、暫くの間は動けなくなるハズだ。



『『シャドゥウィンド』ッ!!

 そして『シャドゥバースト』ッ!!』



 対して魔王ヨウコは、突風を起こして“毒鱗粉”をアタイらの方へ向けて吹き飛ばし、その“毒鱗粉”めがけて術を放った。

 すると、術の爆発と共に、鱗粉が連鎖爆発を起こしていった。



「うニャァアアアアっ!?!?」


「キャァアアアアっ!?!?」


「くそっ!?粉塵爆発か!!」



 ただでさえ、魔王の魔力で底上げされた術の威力に、こちらの攻撃まで利用した粉塵爆発の威力は凄まじく、アタイらは地面へと勢いよく叩きつけられてしまった。



「ぎニャっ!?」


「あぐぅっ!?」


「ぐぅっ…、ちくしょうめ…!?」


『こんな小細工で我を足止め出来るとでも思うたか!?』



 さらに、爆炎の中を突っ切りながら、魔王ヨウコが魔力を込めた拳で、アタイに殴りかかってきた。



「かは…っ!?」



 アタイはなんとか腕でガードしたが、勢いは止められず、思いっきり地面へとめり込まされてしまう。



「ヒカリちゃん!!」


「ヒカリ姉さん!!」


『おっと、よそ見してる暇はないぞ?』



 直後、ショウの背後に移動した魔王ヨウコが、強烈なハイキックをショウの側頭部に叩き込み、ショウを蹴り飛ばした。



「ニャァアアアアっ!?!?」


「ショウ姉さん!?

 おのれ、魔王っ!!『風刃爪ふうじんそう』っ!!」



 アキホが風の刃を纏わせた爪で魔王ヨウコに切りかかる。



『おっと、この身体に傷をつけてもいいのか?』


「あ…っ!!」



 魔王ヨウコのその言葉に、そ身体に爪が触れる直前で、動きを止めてしまったアキホ。



『やれやれ、甘いな!そんなことでは我とまともにやり合うことなど出来んぞっ!?』


「キャアァアアアアっ!?!?」



 魔王ヨウコに蹴り飛ばされるアキホ。



『さて、次はどんな作戦で来るのだ?』


「…ち、余裕かましやがって…!」



 アタイはなんとか立ち上がり、魔王ヨウコと向き合った。



『そもそもがお前達にとって不利なのだ。

 我が身体、いや、陽子の身体を傷付けぬよう我が魔力を削り切るなど、無謀もいいところだ。

 普通にり合えば、お主らと()()我とでは互角以上に渡り合えるだろうに。

 このままでは、お主らの方がもたずに、先に死んでしまうぞ?』


「…アドバイスどうも。

 だが、アタイらが本気を出して困るのはアンタの方だろう?」


『そんなことは無いぞ?

 我にとっては今のこの時間稼ぎの状況の方が困るのでな』



 アタイ達の目的は、“魔王の因子”の魔力を削り、魔王ヨウコの中の陽子の魂を目覚めさせ、その陽子の力で“魔王の因子”を封印すること。

 故に、アタイらの勝利条件は、このまま時間を稼いで“魔王の因子”の魔力を削るまで生き残ることだ。


 一方、魔王ヨウコにとっての勝利条件となると…、



『我がこの場でキサマらを殺し、我の中にいるヨウイチ達を完全に我がものとして取り込むこと。

 それともう一つは、』



『お前達にこの身体(陽子)破壊され(殺され)(“魔王の因子”)がこの身体から開放され、新たな身体に転生すること』



『故に、我はお前達を本気で殺しにいくし、その結果、本気になったお前達に殺されても良いわけだ』



『だからこそ、もう一度言うぞ?

 お前達は、この状況において圧倒的に不利なのだ。

 それでもまだ、お前達はこの無謀な戦いに挑むのか?』



 勝ち誇った顔でこちらを見下してくる魔王ヨウコ。



「それでも、アタイ達がここから逃げるわけにはいかねぇなぁ。

 というか、アタイらが諦めてそこで戦闘が終了しちまえば、それでもアンタの勝利条件になっちまうじゃねぇか」


『ま、それはそうだな。

 しかし、双方無駄に傷付かなくてよいではないか』


「はっ!ふざけんな!

 アタイらが傷付かなくとも!

 他に傷付く姉妹達がいるんでねっ!!

 アタイらはここで逃げるわけにも、負けるわけにもいかないんだよっ!!」


『だったら、どうする?』


アンタ(陽子)を殺さずに、アンタ(“魔王の因子”)を倒すっ!!それだけだっ!!」


『ならば…、やってみせよっ!!』



 アタイと魔王ヨウコは、ほぼ同時に魔術を放った。



「『アイスエンドバースト』ッ!!」


『『シャドゥエンドバースト』ッ!!』



 魔力で出来た巨大な氷塊と、純粋な闇の魔力とがぶつかり合い、大きな爆発を起こし、周囲に氷の破片が飛び散る。

 その破片を避けながら、爆煙の中を突っ切り、魔王ヨウコへと接近するアタイ。



「『アクアウィップ』っ!」



 そして、右手に込めた魔力で水の鞭を作り、それで魔王ヨウコを拘束した。

 さらに、アタイの霊能力『状態変化』で水の鞭を凍らせ、魔王ヨウコの動きを封じる。



『むっ…、これは…!?』


「アタイ特製の氷の鞭だ!

 そう簡単に壊させないぜ!?」



 魔王ヨウコが力尽くで氷の鞭の拘束から逃れようとするが、氷の鞭は砕けない。

 というのも、氷を引き千切ろうとしても、その瞬間に『状態変化』で、その部分だけを瞬間的に水に変えることで力を受け流し、再び氷へと『状態変化』させて動きを封じる、というのを繰り返しているのだ。


 当然、魔力もだが、細かく部位ごとに『状態変化』を行うため、精神も集中力も消費する。



『なるほど、確かに厄介な拘束術だが、これだけでは我の魔力を削り切ることは出来んぞ?

 何せ、我はこのまま何もせず、お主の魔力が尽きるのを待てばよいのだからな』


「へっ、だったら強引にでも魔力を使わせるだけさ!ショウ!」


「了解ニャ!」



 アタイの合図に、額から血を流しながら立ち上がったショウが、切札を発動した。



「ナノマシン起動っ!」


『何…っ!?』



 すると、魔王ヨウコは拘束されたまま、その全身から魔力を放つ術『シャドゥフラッシュ』を発動した。

 『シャドゥフラッシュ』は目眩ましのような術で、相手に直接的なダメージを与えることは出来ないが、相手に一瞬のスキを作らせる際なんかには重宝する術だ。

 だが、今回の使用目的は大きく異なる。



『なっ…!?何故勝手に術を…!?』


「ニャはは、どうニャ?ウチのナノマシンちゃんの威力は?」


『何?どういうことだ!?』



 ショウのサイボーグとしての能力の一つ、“ナノマシン制御”。

 これは、自身の体内で生成するナノマシンを周囲にばら撒き、そのナノマシンを使っての透視や盗撮、はたまた相手の体内に侵入して毒液を注射したりするなど、多岐にわたる使い方がある。



「ウチのナノマシンには色々なバリエーションがあるんだけど、その内の一つに、相手の脳に寄生して、相手の行動パターンをある程度操れる、ってよがあるのニャ。

 それで、陽子ちゃんの脳に寄生して操り、魔術を強制発動させてるのニャ」


『な、なんだと…!?そんな馬鹿な…!?

 第一ナノマシンなど、いつの間に…、はっ!?まさか…!?』


「そう、アキホちゃんが“毒鱗粉”をばら撒いた時、その鱗粉に混ぜて一緒にウチのナノマシンも散布しておいたのニャ。

 鱗粉とは違って、ウチのコントロール下にあるから風の影響も関係ないしニャ」



 そう、魔王ヨウコにわざとこちらに害の無い術を発動させることで、魔力を無駄に使わせることが目的だ。

 切札ともいえるこのナノマシンは、出来ればあまり使いたくなかった(陽子の身体にどんな副作用が起こるか判断しかねたからだ)が、どの道“魔王の因子”に操られた続けたままでは、陽子の魂そのものが擦り切れて、いずれ消滅してしまう。

 であるなら、手段を選んでいる余裕は無い。



『おのれ…っ!!

 なら、魔力を使い切らされる前に、お主らを殺すのみよっ!!』



 魔王ヨウコが、今度は自らの意思で魔力を全身に込め、氷の鞭を無理矢理吹き飛ばそうとしたが、



『な…、なん、だ…?身体が…、痺れて……、』


「ようやく、私の“毒鱗粉”の効果が出てきたみたいね」



 アキホが出血した左肩を右手で抑えながら、アタイらの隣にやって来た。



『“毒鱗粉”、だと…?馬鹿な!?それらは全て我が吹き飛ばしたハズ!!』


「ところがどっこい、ショウ姉さんのナノマシンに付着した“毒鱗粉”が、ナノマシンと共にアンタの体内に侵入してた、ってわけよ!」


「ま、そもそも目に見えないような小さな粒子を完全に吹き飛ばすなんて芸当は不可能に近い。

 日常生活における花粉とか埃なんかもそうだが、どんだけ対策したって知らぬ間に身体に付着しちゃってるもんさ」


「ちなみに、ウチらは予め解毒作用のある薬を飲んであるから、“毒鱗粉”は効かないのニャ」


『うぐ…っ、お、おのれ…っ!!』



 いくら魔王ヨウコが強くとも、その元々の肉体は人間である陽子のものだ。

 当然、対策のしていないアキホの“毒鱗粉”の効果はテキメンだ。


 アキホの“毒鱗粉”とアタイの術で身体の自由を奪われ、ショウの“ナノマシン”で魔王ヨウコの魔力を切らす。

 作戦は上手くいきそうだ。



『なるほど…、どうやら、我の負けのようだな…』


「やけにいさぎいいな」


『ここで無駄に抵抗をすれば、魔力の消費が早まるだけだからな…

 それに、お前達に負けただけで、我の敗北が決まったわけではない…』



 そう、アタイらのやったことはあくまでもサポート的な役割に過ぎない。

 真に勝たなければいけないのは、魔王ヨウコの中で戦うヨウイチ達と、そして魔王ヨウコの肉体の主である陽子の方だ。



「アタイらはやるべきことをやった。

 後は頼むぞ、ヨウイチ…!」



 アタイは祈るように、両手を合わせた。

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