第0話「夢」
俺は夢を見ていた。
――行きますわよ、お兄様!これが最後の戦いですわ!
――この戦いが終われば、わたくし達は…
――この剣に誓いますわ、わたくしは永遠にお兄様を愛します、
生まれ変わっても、きっと巡り会って、必ずお兄様と結ばれんことを……
ある時は、白い騎士服を纏い、全身に紅蓮の炎をまとわせて戦う高貴な見た目の少女との夢。
――アイツが、最凶最悪の魔獣、ギラド!
――アニぃ、気をつけて!
そいつの三本の首は、それぞれ別個の意識を持ってる!!
――嫌だ、嫌だよ、アニぃっ!!
それだとアニぃが…!
――アタシを一人にしないでぇええええええええっ!!
ある時は、深紅のビキニアーマーに身を包んだ、真っ直ぐな眼差しのボーイッシュな少女との夢。
――大丈夫、いつだってアナタにはお姉ちゃんがついてるんだから!
――ダメ!ヤツの再生能力は普通じゃない!
――泣かないで…、
お姉ちゃんは、ずっとアナタの傍にいる、から……
ある時は、巫女装束のような衣装に身を包んだ、清楚な髪の長い少女との夢。
夢はそれだけじゃない。
他にも、機械と融合した“戦乙女”と呼ばれる少女と“侵略宇宙機械生命体”との戦いの夢や、頭に銀毛の狐耳とお尻からは綺麗な銀色の九本の尻尾が生えた少女との幸せな夢だったり、【吸血姫】と呼ばれる世界最強の少女とのとあるお宝を巡る冒険の夢だったり、etc、etc...
様々な世界、様々な時代で、様々な少女達と関わる夢を毎日代わる代わる見てきた。
それぞれの夢に出てくる少女達は全員が違う少女達だったが、共通している点が一つだけあった。
それは、皆が俺と血の繋がった妹、もしくは姉という点だった。
だが、それは夢に出てきた少女全員が姉妹、という意味ではない。
最初の夢に出てきた白い騎士服の少女と俺は、間違いなく兄妹の関係であったが、白い騎士服の少女と二番目の夢に出てきた深紅のビキニアーマーの少女とは全く血の繋がりがない、それどころかお互いに面識すらないだろう。
それぞれの世界、それぞれの時代で、俺は全く別の人間としての人生を送り、その人生の中で様々な少女達と出会う夢。
それらは、いわゆる姉妹属性持ちをこじらせた自分の単なる夢妄想物語だと思っていた。
あの日、俺の人生が大きく変わったその日までは……




