第8話 紹介、行動予定
会話が多くなってしまいました。
「な、なに!?どうしたのシルビィ!?隠密のあなたが叫ぶなんてよっぽどのことよ!?」
「エ、エレン~。ナナシクンにいきなりお嫁さんができたんだって…
こんなの叫ぶしかないじゃない…しかもとんでもなく美人さんだよ」
「おい落ち着けシルビィ。そもそも記憶喪失だって言ってるだろ。
さっきも言ったが、俺は実験してたんだ。魔法の練習ついでにな。そしたらこいつが現れて…」
「私の身も心も溶かしつくすほど愛されたというのにシラを切るのですか…
あんなに荒々しく激しさのある波の中に垣間見えた優しい流れ、中に流れる強い力…
ああ、思い出すだけで身の震えが止まりませんわ…っ」
「紛らわしい発言すんな!俺は魔法の実験をしていたって言ってるだろうが!
あー、もうイチから説明するから全員落ち着け!ドルフも聞こえてんな、野営地に戻るぞ!」
「気づいてやがったか…まぁいい、話を聞こうじゃねぇか…そのネェちゃんのことをな」
「黙れ下郎。貴様如きと話す口などない。旦那様の許可があれば貴様など消滅させているところだ」
シルビィの叫びにより、野営地にいたエレン・ドルフ両名が慌てて声の下に武装して現れる。
これは説明しなければ魔法の練習ができない、そう思ったナナシは野営地に戻り、事の顛末を語ることにした。
何が起きたのか話している最中、胡坐で座るナナシの後ろには恍惚の表情でその背中を見つめるアスモがいた。
…何故かハァハァと興奮していたのだが。
「…というわけで、『召喚魔法』を使って呼び出したのが、魔物じゃなくアスモ。『色欲』の大罪の名を持つ悪魔だったってわけなんだ。魔力の量と質を見せろって言われて見せたらなんか…変態になった」
「…アンタ、『召喚魔法』ってとんでもない魔法も使うのね…もう呆れてきたわよ。
しかもそれで出てきたのが悪魔?しかも契約に成功なんて…魔法使いのアタシからしたら本当に同じ人族かどうか怪しい…というか人族じゃないんじゃないの?」
≪アスモ、余計なことは言うなよ。お前は俺の種族をわかっているはずだ。
一応釘を刺しておくが、バレたらとんでもないことになる≫
≪かしこまりましたわ、旦那様。旦那様の不利益になるようなことはいたしません≫
「俺はただ『俺の右腕になるような』召喚を試しただけなんだ。それに見合う奴がアスモしかいなかったんだと。眉唾みたいな話にはなるが、これが真実になる。
旦那様って呼び方は気にしないでくれ、こいつが勝手にそう言いだしただけなんだ」
「そんで…アスモのネェちゃん、あんた悪魔のトップだったんだろ?しかも【大罪】なら他に6柱いるはずだ。悪魔側としてはパワーバランスが大きく乱れることになるんじゃねぇのか?」
「その名で呼ぶな、下郎。その名を口にしていいのは旦那様だけだ。
魔界は確かに他に6柱がいるが、私が抜けたところで大したことは起きない。他の【大罪】どもは皆勢力争いをしている。私は中立を保っているし、不可侵条約を全員と結んでいる。
もう600年は経っているが、柱が折れることはまずないのでその盟約は途切れることはないだろう」
「ウチ、それで一つ気づいたんだけど…魔界からアスモさんが抜けた時点で不可侵条約?って無効にならないかな?
魔界にアスモさんが存在することが第一の条件な気がするんだけど…」
「まぁ、だとしても私は城を一つと城下町がある程度の小さな領土だけで営んでおったからの。
その領地も大した特産品や武力を持たない程度故、無くなったところで変わらぬさ。
今は私にはこの大切な旦那様がおるしの、それ以上は何も望まぬよ」
「ん、だがアスモ。他の悪魔にとってはお前を探すという行為をする可能性があるんじゃないのか?
例えば…それこそこの人間界を攻めてくる、とか」
「それは無い。言いきってもよいぞ、旦那様。我ら悪魔がこちら側に来る方法が召喚以外だとほぼない。
唯一魔界と通じる扉があるにはあるが、強力な封印が施されておってな。内側から封印を解く以外にその扉を開くことは叶わぬ。
もう200年ほど前の話にはなるが、その封印を解くことができる魔力の持ち主がおらぬのよ。
もしおったとしても、魔界は人間にとって過酷すぎる環境故、好き好んで通る者はおらぬさ」
「その封印がもし解かれた場合…人間界は滅んだりしないよな?
ナナシがアスモデウスさんを呼び寄せたことによって悪魔どもが扉を破壊したり…」
「ウ、ウチ怖くなってきた。ナナシクン守ってね?エレンはほっといて」
「ちょっとシルビィ!?アタシを裏切るつもりなの!?この恩知らず!」
「まぁ、私がいる限り旦那様に危険が及ぶことはない。私が身命を賭して守り抜いて見せる。
そもそも守りなど必要ない可能性も孕んでおるが…」
「と、とにかく。アスモは俺の召喚した魔物…になるから。迷惑はかけん。
『ファスター』の町に着くまで案内は頼む。3人ともそれでいいか?アスモもいいか?」
「私は旦那様に付き従い付き纏い子を授かり一生を尽くすと決めましたの。異論などありませぬわ」
「ウチは町について報告を済ませたらナナシクンのとこに転がり込むって決めたから!
よろしくね、ナナシクン?」
「俺はそもそも雇われ傭兵みたいなもんだし、このパーティも一時的なもんだ。
報告を済ませたらそこで解散だ、気にすることはない」
「シ、シルビィ…アタシを置いていくの…?アタシはこれから一体どうすればいいのよ…」
「アホなこと言ってるアスモは置いといて、エレンを置いていくわけにもいかないだろ、シルビィ。
お前はエレンと一緒に行動するのが正しい。そうした方が『ならエレンも一緒に行こー!』…は?」
「確かにエレンを放ってはおけないよ。でもウチはナナシクンに惚れたんだ。
だから離れたくない。それならエレンも一緒なら問題ないでしょ?名案だと思わない!?」
「あのなぁ…俺はともかく『そ、それはいいわね!そうします!』っておいエレン?
お前何言ってるんだ、シルビィに感化されてないか?」
「アンタみたいな人外にシルビィを任せられないわよ!アタシだって恩返しくらいしたいわよ…
そ、それに…アタシも、ちょっと…うん」
「おやおやあ?エレンー、なんで顔が赤いのかなー?ニヒヒ」
「う、うるさい!とにかく、アタシもアンタについていく。いいわね!」
「お、おう…アスモ、この二人も同行するがいいな?喧嘩はするんじゃねぇぞ」
「我が愛しき旦那様のご用命とあらば、この私アスモデウス、命令を遂行いたしましょう!」
(あ…めっちゃ時間経ってる。もう真っ暗じゃん、魔法の練習、できなかったな…)
そして夜が更けていく。
時折聞こえる虫の声が夜の帳の静寂を断ち切り、穏やかな時間をもたらす。
だがナナシは寝れずにいた。ナナシの脳によぎる、あの大きな気配の持ち主。
そして何故かナナシの寝袋に寄り添って寝ている3人の女性たち。
寝苦しい夜がナナシを襲ったのであった。
10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。
読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。




