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ナナシの使い(仮)  作者: りふれいん
第四章 それぞれの決意と失踪
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第74話 忘れられた所長、ドルフの活躍

 魔族の襲来を受けたものの、一切の被害なく見事退けて見せたナナシとエルは王より翌日城へ来るように言われていた。

 馬車から多額の王金貨を下ろし、身軽になった馬車で城へと戻っていく王の姿を見てリスティルは深々と頭を下げていた。

 ここまで親として育ててくれたことへの感謝と、その家を捨てて出て行く不幸者としての謝罪。

 その姿勢は馬車が見えなくなるまで保っていた。



「…もう見えなくなったぞリスティル。王様もわかってくれただろうさ。

 だからそこまで気に病む必要は無い、そもそもお前はもう大人だ。そうだろう?」


「そう…ですね。自分の道は自分で決めるべきだと思います。

 だから父上も何も言わずにそのままにしてくれたのだとわかります」


「ふふ、リスティル様はお家族思いの優しい方なのですね。

 ナナシ様、既に荷物を運びこむ用意は整っております。エル様も特製の紅茶がございますのでそちらをお飲みになりながらごゆるりとお休みくださいませ」


「さすが万能執事だな、手際がいい…が、荷物はまとめて『収納』に入れるから大丈夫だ。

 それと…エルにはこれを渡しておく。これは魔力回復に効果的な薬だ。紅茶と一緒に飲むことをおすすめするぞ…『良薬は口に苦し』だからな」


「え、あっはい、ありがとうございます…ってえ?苦いんですか…私苦いの苦手なのですが…」



 そう言ってナナシがエルに渡したのはビー玉程の大きさの黒い丸薬だった。

 薬草を数種類練りこまれており、体力と魔力の自己回復力を飛躍的に高めてくれるという高級な薬である。

 ナナシはこの薬をダンジョン探索前にいくつか買い込んでおいたのだ。だが使うことなく今まで日の目を見ることは無かった。

 味に関しては苦いどころかむしろ薬草の甘みが強調されており、単なるナナシの悪戯心でエルを脅かそうとしただけである。

 もちろんその薬が苦くないことはサラは知っているし、何度か使っているエレンも好きだと言うほどなのだが…エルは疲れとは別に少し嫌そうな顔をしていたのだった。






 ファスターの町ではまだナナシからの報告が無く、厳戒態勢が敷かれたままであった。

 町のそばにある森の中は相変わらず不気味な静けさを保っているが…地龍は既にその地を去っていた。

 サラにより魔道具が取り除かれた地龍は意識を取り戻し、ユキの姿を見て平伏。そして言われるがままに元いた集落へと走っていったのだ。

 それを知るのはナナシ達のみ。ナナシはグリーグに報告することを忘れていたのだった。



「ナナシ殿がここまで時間をかけるとは…一体何者が森に住み着いたというのだ?

 まさか報告するのを忘れて…いや、そんな訳はあるまい。

 だが…音沙汰が無いのも気になる。ううむ、どうしたものか…」


「エルちゃんのことも気になるんですよね、所長は。

 私たち職員はナナシさんがすごいイケメンで所長と決闘してSランクになったってことだけしか知らないので、実際どの程度の人物なのか想像がつかないです」


「ふむ…まぁ少なくとも言えることは私など足元にも及ばない。それどころか世界一の実力者かもしれぬ。

 ガルディア王が何か策を企てていたようだがそれすらも正面から突破してみせたようだ。

 …ところで、君が抱えてきたその書類の山はまさかとは思うが、追加の私の仕事ではないだろうな?」


「察しがいいですね、所長。所長がいない間に貯まった書類仕事はかなり終わりましたが、それでもまだ少し残っております。

 厳戒態勢を解け、と一部の冒険者が騒いでおりますが…いかがいたしますか?」


「む、あれだけ捌いたというのにまだ残っているとは…それほどまで溜め込んでいたのか私は。

 冒険者のことだが、文句があるのならば私に決闘で勝てるなら聞く、と触れを出しておけば問題なかろう。

 それでも大人しくならなかったのなら指示無視として冒険者権限剥奪、とまで言ってしまっても良い」



 冒険者権限剥奪は大きな罪を犯した者や、ギルド命令に対する違反行為を繰り返した者が対象となる冒険者にとって最大級の裁定である。

 依頼を受けることはおろか、再登録も行えず、冒険者ギルドのある町から出ることすらも許されない。

 万が一町の外に出たならば密入国者として扱われ、その場で射殺される可能性も大いにあるのだ。

 騒いでいる冒険者にとっての抑止力として十分すぎるグリーグの判断だった。



「さすが所長なだけありますね、そこまで簡単に解決方法が出てくるなんて。

 それと…その騒いでいる冒険者たちをなんとか諫めようとしているドルフさんなんですが、ギルドで雇うというのはどうでしょうか?

 初心者指南に今回の騒動を抑えてくれているというのは多大な功績だと思います。

 双方にとっていいことずくめだと思うのですが…いかがでしょうか所長」


「ドルフか…確かに彼には世話になっている。一考するのもやぶさかではないな。後は本人の気持ち次第、か。

 …ところで、なぜ書類の量が増えているのかね?処理しているはずの山の高さが変わらないのだが…」


「それは当然ですよ、まだまだ仕事はありますから。ほら所長、急がないとまた上からお咎めが来ますよー!」



 ナナシの報告を待ち続けるグリーグとファスターの町の冒険者たち。

 面倒見のいいドルフはここでもその力を発揮、既に職員と同様の扱いをされていたのだった。

毎朝10時に投稿しております。1日1話確実に投稿しております、楽しく読んでいただければ幸いです。

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