第71話 エルとクレア、エルの才能
投稿予定日を1日間違っておりました。申し訳ございません。
本日分の投稿は14時に投稿いたします。
そのころ町では王が豪華な馬車に乗り、1人でどこかへ向かったという噂が流れていた。
だがその噂は点々としており、『王が1人でいるわけない』『そもそも馬車なんて扱えるのか?』と否定的な意見により自然と消滅していった。
王が身を隠して町へ繰り出したりすることは今まで無く、アリウスがたまに冒険者ギルドへと依頼を持ってくる程度なのだ。
食料や衣料品などは全てメイド及び執事などの世話係の仕事であり、諜報部隊も王の直属で存在している。
王やその近辺の人間が町に出てくることはほとんどあり得ないことなのだ。
「リスティル、本当はお前も戦いたかっただろうが今回は我慢してくれ。
その代わりと言っちゃなんだが…お前にもできる技術を今から見せてやる。それで勘弁してくれ」
「私にもできる技術…ですか。ナナシさんの剣の腕がどの程度なのかはわかりませんが参考にします」
「…ま、素手か魔法でしか戦ってこなかったからな。信じろって言う方が難しい話かもしれんな。
まぁ見てりゃわかる。その代わり目を離すな。一瞬で終わらせる」
そう言ってナナシはテンペストを左手に持ち、力を抜いた自然体で構える。
綺麗な真半身、一切の隙のない集中力と威圧感。剣術をかじった人物なら一目でわかる錬度の高さ。
生前のナナシの記憶には存在しないのだが、『戦闘知識』スキルにより導き出された構えである。
ナナシ自身はどこかしっくりきてないらしく、微調整を繰り返しているがそれでも隙は生まれない。
その姿を見た魔族3匹とリスティルは背中に冷や汗が流れた。馬鹿にする相手を間違えたとはっきり認識したのだ。
自分よりも格上、それも雲の上のような遥かな高みにいる存在にすら感じられる。
リスティルの視線は既にナナシの一挙手一投足に夢中になっていた。
片やエルとクレアはナナシには目もくれず真っ直ぐに一番近い魔族を見ていた。
エルの手には先ほどガルディア王から受け取ったアサシンダガー、それに一本の短い杖だった。
この杖はエルが冒険者として第一歩を踏み出した時にお祝いとしてグリーグから授けられた物で、エルにとっては宝物同然に大切にしていたものである。
杖が無くても魔法が使えるようになってからはほとんど使ってこなかったのだが、それは多数の敵を相手取る場合に狙いを定める必要が無い範囲魔法を使用していたからだ。
今回は1匹の魔族にのみ集中するため、魔法の道しるべとして使うために取り出したのだった。
「この杖も数年ぶりに取り出しました…一対一の戦いは苦手なのですが、今日はクレアもいます。
クレア、手筈通りによろしくね…それじゃお願い!」
≪仰せのままに、エル様。私の力をお貸しします≫
クレアが魔族に向かって走り出す。黒ヒョウらしくかなり素早い動きをしていた。
ナナシに気を取られていた魔族は反応が遅れ、クレアの爪によるひっかきを受けてしまう。
傷は浅いが、それでも不意打ちに成功したためバランスを崩し地上へと落下していく。
地面に激突寸前でバランスを立て直し、着地を試みるがそこに待っていたのは地面ではなく穴だった。
これはエルが空けた穴である。クレアに命令して突進を行わせる前に詠唱をしていた。低級土魔法『ホール』という、簡素な穴を指定した位置に生み出す罠生成の魔法である。
エルは独学ながら光と闇以外の4属性の魔法が使えるようになっていた。
火はシルビィ、風はエレン、土はアスモにそれぞれコツを教えてもらい、こっそり練習していたのだ。
水魔法は元々使えていたため中級魔法も使えるが、他の3属性は低級魔法しか使えない。
だがそれをハンデと思わず戦略として組み込む才能がエルにはあったのだ。
「クレアありがとう!次はこれ、『ウィンドカッター』!」
「ギギギッ!?ツ、ツバサガアア!!」
≪エル様、私の背中にお乗りください。そうすれば移動しながら魔法の使用も可能でしょう≫
「なるほど…うん、それじゃお願いします!…っと、結構安定してるんですね。
って感心してる場合じゃないです、次は…『ファイアボール』、からの…彼の者を堅固な水の檻へ封じ込め、『ウォータープリズン』!」
「コ、コシャクナァ!ナゼココマデタカガヒトゴトキニマゾクノジブンガヤラレルノダァァ!?」
エルとクレアの息はぴったりだった。先ほど組んだばかりだと言うのにまるでエレンとシルビィの連携のごとく攻守ともにバランスに優れていた。
クレアが素早い動きでかく乱、エルが後方から魔法で狙撃。それだけじゃなく、クレアの背中に乗り高速移動もしてみせたのだ。
その雄姿を見ていたガルディア王はナナシの戦いぶりを見るのを忘れ、我が子の成長を喜ぶ親のように満足そうな表情をしていたのだ。
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