表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナナシの使い(仮)  作者: りふれいん
第四章 それぞれの決意と失踪
74/97

第69話 選ばれたエル、封印された本

「こ、こんな物が我が城に存在していたとは…だがこれは…」


「お、さすがに王様も気づいたか。こいつは短剣が本体じゃない、あの宝石が本体だ。

 そしてこいつは意思と知恵がある。持ち主と認められた奴だけが意志の疎通ができるらしいが…」


「な、ナナシさん…なんだかこの子、私を見ているようですけど…まさか私が持ち主、なわけないですよね?」


「なら『念話』でそいつに向けて話しかけてみるといい。もし持ち主と認められたなら何かしら応えてくれるはずだ」



 ガルディア王から渡された『アサシンダガー』から出現したライオンと同等の大きさの黒ヒョウ。

 手あたり次第攻撃したり殺気を放ったりするわけでもなく、ただじっとエルを見つめていた。

 それはまるで品定めするかのように。ただ敵意は持っていないようで、普段は警戒心で近寄りもしないエルでさえも友好的な態度に安心しているようだ。



≪えーと…初めまして、私はエルです。…アサシンダガーさん、でいいのかな?≫


≪やはり貴女様が私の新たな持ち主となるお方なのですね。アサシンダガーはこの依代にしている短剣の名前でございます。

 今の私には名前などありません…是非新たな名前をつけてくださいませ、エル様。

 それと…『念話』のスキルでお話せずとも、私には耳があります。皆様の声も聞こえておりますが、私の言葉はエル様にのみ届くようになっております。是非エル様の肉声でお話くださいませ≫


「あ、そうなんだ。それなら楽でいいですね…ナナシさん、私が持ち主になったそうです。

 それで…この子、名前が無いようなので付けてあげたいのですが、何かいい案はありませんか?」


「ほー、そりゃよかったな。んで名前が無いのか…俺と一緒だな。まぁ主は俺じゃなくエルなんだ、エルの思った通りの名前にしてあげればいいさ。そいつの意思や感情は俺たちには聞こえないからな」


「旦那様!是非この黒ヒョウに『クロ』と名を…なんですかその冷めた視線は。それにエルまで同じような視線を私に向けるなんて…」


「アスモさん、さすがに安直すぎますよ。そうですね…『クレア』。クレアにします」


≪クレア、ですね。さすがにクロという名前はこう言っては何ですが、少し嫌気がしました≫


「あー、やっぱり?アスモさん、クロって名前は嫌だったらしいですよ?この子はクレアです。

 ナナシさんもいいですか?」


「クレアか、いい名前を付けてもらったな。…アスモ、そんなに落ち込むなよ。次はお前の番だぞ?」


「…はっ、そうですわ!ガルディア王とやら、早く私に魔導書を寄越しなさいな!」



 自分のネーミングを断られ、しょんぼりしていたアスモだったが魔導書の存在を思い出し急に元気になった。

 その勢いに押される形となったガルディア王は思わず苦笑いを浮かべながら鎖で封印された本を麻袋から取り出す。

 鍵が付いているわけでもなく、ただ頑丈な鎖で開かないようしっかりと巻かれていたのだ。



「これが我が王家に伝わる魔導書であるが…内容は一切伝わっていないのだ。

 どうすればこの鎖が解かれるかも儂にはわからぬ…故にナナシ殿達ならば中を確認できるかと思ってな。

 王族とて無用の長物となっておるのだ、持っていても仕方あるまい」


「それを俺たちに渡していいのか?…というか王の決定だから反対意見も出ないか。

 まぁそれは俺じゃなくアスモに渡してやってくれ、本人が望んでいるからな」


「そ、そうですわ…というかこの本、どこかで見たような気もしますわね…私の城にもあったような…」


「え、そうなのか?なら尚更アスモが持つべきだな。もし城にあったものと同じなら、元はアスモの持ち物の可能性だってある。違ったとしてもこれはアスモに譲ると決めていたからな、問題ないだろう」



 アスモは本の表紙の柄を過去に見たことがあった。だがその時は鎖で巻かれておらず、いつでも読めるようになっていたのだ。

 だがアスモはその本を読んではいなかった。『そのうち読むだろう』と思い、施錠されていない書庫に保管してあったのだ。

 今もその本がその書庫にあるかどうかはアスモは知らない。



「ふむ…ではアスモ殿にこの本を託す。返却は不要だ、捨てるも持ち去るも構わぬ、好きにしてくれ」


「ではありがたく…それにしてもこの鎖、わずかながら魔力を感じます。誰の魔力かまではわかりませんが、魔族の魔力に酷似していますね…」


「確かに魔力は感じるが…アスモが言うなら魔族の魔力に違いないのだろうな。

 俺は魔族をほとんど知らないからそこまでわからないのもあるが…」


「え、えっと…私にはただの鎖にしか見えません…お二人には何か見えてるんですか?

 クレアも何かに気づいているようですし…なんだか疎外感…」


「ふふ、エルにも『魔力感知』を教えてあげますわ。そうすればきっとわかります。

 それで…旦那様、そろそろ来ますわね」


「ああ。クラウ、すまないがガルディア王を守ってやってくれ。結界は張っておくが念のためだ。

 それと…今回はエルとクレアに任せる。サポートは俺がする」



 ガルディア王が持ってきた一冊の本。それを求めてとある部隊が屋敷へ向かってきていた。

 この本の持つ価値、それはガルディア王やアスモが思ってる以上の価値があったのだった。

毎朝10時に投稿しております。1日1話確実に投稿しております、楽しく読んでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ