第63話 『大罪』の由来、その成り立ち
「さて…ベリアも回収したし、地龍も正常に戻ったし。暗くなってきたからまずはファスターに戻るか」
森に入ってから既に6時間ほど経過していた。日は沈み、辺りは既にかなり暗くなっていた。
地龍がまた暴虐の限りを尽くす可能性があると野生が悟っているのか、動物や魔物の気配は未だに感じられないが、それでも異常事態は収束したと報告できるだろう。
サラが先ほど作った結界では心配だったため、ナナシが新しく作った結界で隔離したベリアは意外にも大人しくしており、何か諦めにも感じる表情をしていた。
切れて失った右腕と左足は止血されており、命の危険性は無くなっている。
治せると思っているのか、その腕と足を抱えながら座り込んでいた。
「なぁシルビィ…お前はどうしたい?ベリアの、お前の母親の処分だ。お前が決めていいんだぞ」
「うーん…とりあえず屋敷に連れ帰ってもいいかな、少し聞きたいこともあるし。それに…」
「ああ、そういうことか。んじゃそうだな…シルビィとサラの2人で屋敷に戻ってくれ。
クラウには既に言ってあるからすぐにでも案内してくれるだろう。そんじゃ転移させるぞ?」
ナナシがアスモとユキを残したのはそれぞれに聞きたいことがあったからだ。
アスモには魔界について、ユキには今回の騒動の原因でもある地龍及び龍族について。
サラとシルビィ、それにベリアを屋敷まで転移させる魔法陣を一瞬で出現させ、そこに3人を乗せ起動する。
扱いになれたのだろう、実にテンポよく…そして魔力消費も格段に減っていた。
そしてナナシの魔力の色である真紅に魔法陣が染められ、3人はガルディアの屋敷へと転移していった。
「ふー、いとも簡単に扱えるようになったな。これくらい魔力効率も速度も早ければだいぶ楽になるな。
…さて、お前らには聞きたいことがいくつかある。命令権で喋らせるようなことはしたくないんでな、素直に洗いざらい話した方が身のためだぞ?」
「だ、旦那様…私は何も隠し事なんてしておりませんわ」「我も何もやましいことは何もないぞ!」
「まぁ待て、順番に聞くから。まずはアスモ…魔界と最上位悪魔について教えてくれ。
そもそもの説明が今までなかったんだ。他に…お前の身内の話もな」
「そういえば『大罪』だの【色欲】だのその称号は名乗りましたが意味や階級については一切言ってませんでしたわね…
いいですわ、全てお話しましょう。それと…おそらくそのうちやってくる私の妹についても」
最上位悪魔7名及びその大罪名
【傲慢】ルシファー
【憤怒】サタン
【嫉妬】レヴィアタン
【怠惰】ベルフェゴール
【強欲】マモン
【暴食】ベルゼブブ
【色欲】アスモデウス
実力は伯仲、ただしそれぞれに有利不利の関係性あり。ベルゼブブは肉体的な死は訪れたものの、悪魔は魂のみの姿で長い時間を過ごし新しい肉体を生み出すことで何度でも復活できる。
ただしその魂が破壊される、もしくは他人に取り込まれた場合完全なる死を迎えることになる。
『大罪』とは人々が生み出した欲望が具現化した物である。
誰よりも人々の上に立ちたい(傲慢)全て自分の物にしたい(強欲)など。
そしてそれら『大罪』はある日突然果て無き欲望に目覚める悪魔が立つ地位となる。
将軍クラスの上位悪魔が目覚めることもあれば、下働きしていた無名の悪魔に芽生えることもある。
アスモは前者であり、元は地位の高い名付きの学者であったという。ベルゼブブは下働きどころか悪魔にも存在する奴隷の地位であったらしく、ある日他の奴隷の食事を全て食らい尽くし、他の奴隷悪魔の肉体をも食い始めたのがきっかけだそうだ。
彼ら『大罪』の上には誰もいないと上級悪魔以下には伝えられているが、『悪魔王』と名乗る存在が
『大罪』になったことをテレパシーのようなもので脳内に伝えられるそうだ。
その姿形は誰も見たことが無く、存在すること自体が嘘ではないかと言われているが、7名全員がそのテレパシーを受け取っているため7名だけは存在を確信している。
「…というのが我々最上位悪魔『大罪』と呼ばれる7名の成り立ちですわ。
私も元の名前があったのですが…既に数千年も前の話ですから忘れてしまいました。
次に妹なのですが…彼女は私を敬愛しています。むしろ狂信と言うほどですわ。
今頃おそらく、というかほぼ確実に城から脱出を何度か謀っていると思います」
「それは間違いなくアスモを取り戻そうとしているってことだよな。
これで俺に心酔しているなんて知ったら…間違いなく攻撃を仕掛けてくるだろうなあ」
「ええ、彼女はとても行動的で…感情的に動きます。そんな彼女も名付きの上位悪魔です。
私たちはともかく、エルやシルビィたちに勝機は無い…と言っても過言ではないでしょう」
「主よ…何やら悪寒が走ったぞ。まるでアスモに愛でられる可能性が増えたような…」
「ん?何言ってんだ、旅ではログハウスの部屋はもう決まっているからな。ユキとアスモが同室なんて元から決まっていたぞ?」
アスモから『大罪』について話を聞いていたユキだが、アスモがじわじわと近づいていることを察していた。
どうやらユキを愛でたくて仕方がないらしい。
それを感じて救いの手を求めたのだが、彼にとって更なる地獄がこの後待っていることを知り絶望した表情となっていた。
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