第55話 2人目の『大罪』、奴隷の正体
アスモも含む7名の最上位悪魔、『大罪』と称される悪魔たちがそれぞれ領土を分けて魔界を統一している。
アスモはその中でも領土争いには興味が無く、城と城下町1つずつ、それに東京23区ほどの大きさの領土で不可侵条約をそれぞれと結び生活していたのだ。
だが他の6人の悪魔たちは違い、領土争いが過激化していてそれぞれが忙しく動き回っているはずだった。
だがそんな大悪魔たちの1人が今ナナシ達の前に姿を見せていた。
「旦那様、あれは『大罪』の1人、【暴食】の名を持つベルゼブブと言う者ですわ。
その名の通り、見た目こそ太ってはいないものの飽くことなき食欲、それが伝染するのです。
おそらくあの地龍はベルゼブブの力で食欲が止まらなくなり、この森を拠点に狩りと言う名の暴食を繰り返しているのでしょう…」
「なるほど、それでBランク以下の魔物たちが森から逃げ出していたというわけか。
だが妙だな。アスモの話だと魔界から出ることはなさそうなんだが…なぜ奴はここにいるんだ?
【暴食】ゆえに食料が枯渇したとか、人間界の食事を食べてみたいとかか?」
「あ奴の領地は3番目に広く、山も海もあるため食事に困ることはないはずですわ。
人間界の料理もいくつか伝わっているのでそちらの線も少ないとは思いますが…
仕方ありません、直接聞くしかないでしょうね」
「まずはこいつらの話を聞いてからだな…っと、丁度始めるようだ」
ベルゼブブと呼ばれる悪魔が3人の人物の前に降り立つ。こちらも認識阻害系統の魔法を使っているためか表情は確認できないが、それでも魔力だけは抑え込めずナナシ達に気づかれてしまっていた。
だが本来であれば気づくことさえ難しいほど微弱な放出なのだが、同じ最上位悪魔であるアスモと神の力を徐々に身に付けつつあるナナシには気づかれてしまうのだ。
アスモがこの場にいることすらも予想できないであろうその悪魔が語り始めた。
「みなサン、遅かっタですネ。アト少し遅れていタラ、こちらカラ迎えに行ってイタかもしれまセンね。
まァその時はアナタ方とそのオ仲間さんたちハ死んデいたカモしれまセンけどね」
「おいおい冗談にも程があるぜベルさん。それにしてもまだカタコト直らないんだな、いい加減普通に喋れてもおかしくないと思うんだが…」
「その通りね、もう1ヶ月は経つのよ?ここまでくるとわざとその口調にも聞き取れてくるわよ。
それで本題だけど…この亜人が依頼されたものに比較的近いと思うのだけれどどうかしら?」
「やだナァ、まだまダ慣れルまで時間が必要でスヨ。どれドれ…フムフム、これハまた珍シい亜人ヲ見つけテ来まシたね。
ドウやらこの狐…ユニークな能力ヲ持っていまスね、よろシイでショウ」
「ははっ、結構苦労したんだぜ?それなりにいい報酬の依頼だったから探すのに苦労したんだ。
ファスターで狐人を見たって情報があったが見つからなくてな…まぁ代わりにはなるだろ」
フードを無理矢理外されたその女性はどことなくシルビィに似ていたが、毛の色が違っていた。
シルビィは黄金色だったが、この狐人の女性は銀色だったのだ。だがやはり目鼻立ちは似ている、まるで本当の親子のように。
ベルゼブブはシルビィを探していたようで、人探し専門の裏の人間に高額の報酬で依頼していたようだった。
この男女2名はその専門家らしく、ファスターで身を隠しながら冒険者をしていたシルビィがいたことも掴んでいたようだ。
ナナシは今この場にシルビィを呼ばずにいたことに安堵していた。だがそれでもあの狐人の女性が気になっていて仕方のないようで、思い出そうと必死になっていた。
だがその女性のとある一言でその正体を思い出すことになる。
「お主の探している狐人はおそらく我の一族の娘…シルビィであろう」
その声を聞いてナナシは思い出す。エレンの夢の中で出会ったあの大狐がこの女性なのだと。
エレンが幼いころ出会い、その時代にナナシを呼び出し、そしてシルビィを育てた一族の長。
まさかまた出会うとは、とナナシは驚いていたのだ。
「マスター、あの女性に何か…なるほど、過去の時代に呼び出され出会ったのが彼女だったと。
心優しいマスターですからこの後はおそらく助けに入るのでしょうね。エレンの命の恩人、シルビィの親族なのですから」
「ちっ、さすがサラだな…ああその通りだよ。だが困ったことにあの悪魔、油断も隙も見せねえ。
どうにかして動きを止めようにも『私がお相手します』…アスモ」
「同じ最上位悪魔として恥になるような行為は見過ごせません。
魔族全てが悪などと思われたくないのです。特にあ奴は己の欲望に忠実ですの…
私も少し前まではそうでしたが、今は旦那様がいらっしゃいます。それだけで満たされているのです。
だからこそ…ここで私が止めなくてはならないのです」
そう宣言したアスモの表情は怒りに満ちていた。悪魔同士思うところもあるのだろうが、ここまでアスモが怒りに満ちることは今までなかったのだ。
思わずナナシも一歩後ずさってしまい、任せる以外に収まりがつかないことも把握した。
そして結界を解き、4名の前に姿を現すナナシ一行・戦いは即座に始まるのだった。
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