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ナナシの使い(仮)  作者: りふれいん
第一章 目覚めと出会い
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第5話 事件、逃走

(『キマイラ』が試験対象ねぇ…こいつらじゃ手に余る相手ってことか…)


「なぁ、お前ら。町まで案内してくんねぇ?報酬は…そうだな、森を突っ切るから道中の護衛及び魔物の素材全て。最短距離でなるべく早くたどり着けるのが望ましい」


「「「はぁ!?」」」



 エレンは驚愕の表情を。

 ドルフは恐怖に顔を青ざめ。

 シルビィは何故か尻尾を元気よく左右に振り、『何か』を期待するような明るい表情で。



「えーっと…俺なんか変なこと言ったかよ?わかりやすく言うんなら道案内しろってことなんだが…」


「確かに、森をまっすぐ突っ切るなら数刻で『ファスター』の町には着くが…

『キマイラ』だけじゃなく、ゴブリンの群れやオークの群れ、他にもCランク以上の魔物がうようよいるんだぜ!?お前一人でどうにかなる数じゃないんだぞ!?」


「そ、そうよ!あたしはまだ死にたくないの!そんな道案内、Bランク相当のパーティ4人クラスよ!」


「ウチはナナシクンが守ってくれるって言うんなら文句はないよー!」


「「ナナシ…『クン』?」」


 エレンとドルフが綺麗にハモって、ギギギ、という音を立てながら背後のシルビィを見る。


「だーって、こんなにかっこよくて、『キマイラ』さえ手玉に取るようなヒトだよー?

 恩を売って取り付き…もとい、守ってもらえるなんてなかなかないよー?ニヒヒ」


(こいつ…下心丸見えじゃねぇか…)


 ナナシは心の中ではぁー、と溜息をついた。

 そして一言。


「あー、無理にとは言わん。方向を教えてくれるだけでもいい。如何せん地理には疎くてな。

 ただ、以来の邪魔をしてしまった可能性もあるし、さっきの『キマイラ』の群れの件でもなるべく早く報告させた方がいいんじゃねーかって勝手に思っただけだ。ワリィな」


「なるほどねー、ナナシクンはウチらのことを考えての発言だったわけねー。

 やっぱりウチが惚れ…見込んだ人族なだけあるね、かっこいいーっ」


「うおぉっ!?」



 そう言いつつ、ナナシに抱き着こうとするシルビィ。

 そしてそれをひょいっと躱し、咄嗟に距離を取るナナシ。



「ななな…何をしているの!シルビィ!そんな怪しい輩に抱き着こうとするなんて!

 今まで何人もの男に言い寄られても口八丁手八丁で避けてきたあなたが!」


「…俺も戦闘中以外では業務連絡程度の会話だったのになぁ…」


「ウチ、ナナシクンと森に入る!道案内は狐人族のシルビィにお任せっ!」



 2人がそれぞれの思惑を口にしている中、高らかとナナシに対して宣言するシルビィ。


(ニヒヒ…森の中では人目もない、そして2人きり…こんなイケメン、放さないぞー!

 そしてウチのモノにするんだ…ナナシクン、覚悟してね?)



 謎の悪寒を感じ、背中に汗が流れるナナシであった。


「ちょ、ちょっと!アンタが抜けたらあたしはどうするのよ!

 アンタがいないと索敵もできないし、急に襲われたらどうするのよ!死んじゃうじゃない!」


(あれ、俺ってこのパーティで一番ランク高いんだけど…頼りにされてないのかな俺…)



 人知れず心の中で涙を流す、Cランク冒険者のドルフであった。

 その時、ふと『賢人』からナナシに対して声が入る。


 ---マスター、先ほどのキマイラを『鑑定』した結果、1頭の後脚に何者かからの攻撃の痕がございました。その何者かからの逃走中にマスターたちに接触したものと推測されます---


(なんだと?何者かからの攻撃…『キマイラ』が逃走するとなるとBランク以上の魔物か。

 となるとこいつらを連れて突っ切るのは些かこいつらを殺しかねない、か)


「いや、気が変わった。やはり急いでも良いことがないようだ、迂回して野営しつつ町へ向かう。

 お前らも最初はそのつもりだったんだろ?勝手だがそれに付き添わせてくれ」


「「「…はぁ?」」」


「隠してもしょうがない。さっきの『キマイラ』の群れの1頭に俺が与えた攻撃『以外の』攻撃の痕があった。

 要するにキマイラが逃走するクラスの魔物が森の中にいるかもしれない…ということだ」


「ちょっと待てよ。Cランクの上位魔物のキマイラが逃走する魔物なんてこの森に今までいなかったぞ。

 その推測が当たっていたとするなら、少なくともBランク以上の魔物が住み着いたってことになる」


「な、なに言ってるのドルフ…ここは魔素の薄い地域よ?そんな高ランク魔物なんて生まれるわけないじゃない…」


「ナ、ナナシクン…悪い冗談はやめて?さすがにウチでも通じない冗談は笑えないよ…」



 一斉に顔を青ざめ、ナナシに『嘘だよな?』という顔で訴える3人。

 それに対し、ナナシは顔を僅かながら顰め、


「いや、少し急いでここを離れるべきかもしれん。シルビィ、お前も『気配察知』でも気づいているはずだ。

『キマイラ』なんかとは比べ物にならない大きな気配が、まだ遠いが少しずつ近づいていることを。

 俺だけなら余裕で対処可能だが、お前らを庇いながらは些か面倒だし、庇いきれるか少々怪しい。

 森は迂回でいい、町まで俺を案内するか。ここで3人仲良く食われるか。とっとと決めろ」



 岩裏で軽くはなった威圧よりも圧倒的に強い圧を3人にぶつける。

 本気だ。

 そう悟らせることは難しくなかった。


「わ、わかった。シルビィ、先行して索敵。その後ろを俺がつく。

 エレン、お前は俺の後ろでいつでも戦闘に入れるようにしておけ。

 ナナシ、アンタは…エレンの後ろで警戒をしておいてくれ。単純だがそれでいい」


「わかったー」「え、ええ」「あいよ」


 狐人族のシルビィがダガーを構えつつ走り出し、

 左手に盾を構えながらドルフが追いかけ、

 右手で杖を持ちながらしきりにナナシを警戒するエレン。


(この男…一体何者なの?草原での謎の発光、その跡地にいた圧倒的な能力値の持ち主…

 やはり…この男が原因なのではないかしら…)


(チッ…この大きな気配、やはり俺がトドメを刺した『キマイラ』に真っ直ぐ向かってやがった。

 食うため…だろうな。世界が変わろうとも、弱肉強食は共通…ってなんで俺こんなに睨まれてるんだ?

 能力を隠してることがバレて警戒されてるのか?めんどくせえ…)



 4人は森から1㎞ほど離れた地点から、大きく迂回するように走る。

 森を抜ければ数刻で着く『ファスター』と呼ばれる町だが、森を迂回する場合2日はかかるらしい。

 走れば1日弱で着くようだが、3人が見てわかるレベルで疲労しているため、やむなく野営を挟むこととなる。



 4人が移動を開始して数十分。

 ナナシが討伐した『キマイラ』の死体があった場所。

 そこには死体は無く、血だまりと生物の骨だけが散らかっていることとなった。

10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。

読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。

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