第48話 襲撃の理由、アリウスの企み
「急げ!冒険者どもをダンジョンから呼び戻すのだ!これは王からの命令である!」
冒険者ギルドでそう叫ぶのは謁見の間にいた王の側近のアリウスである。
その手には豪華な装飾の施された書状が持たれており、『王の命令』であることを誇示しているかのようだった。
時は遡りナナシがユキを躾している頃、突如としてアリウスが数名の兵士と共にギルド内にやって来る。
普段人前に姿を現さない王の側近である彼がギルド内に現れたことにより一時騒然となったのだが兵士たちにより即座に鎮圧、平穏を取り戻した。
これを予期していたかのようにアインズが執務室より出てきてアリウスの下へ歩いていく。
「これはこれはアリウス殿…冒険者ギルドに何用ですかな?あなたほどの人物が来るとなると相当な依頼を持ち込まれたのでしょうか?」
「おお、アインズ殿。いやはや慧眼ですな、その通りです。とある冒険者集団を捕縛せよ、との王からの指示をギルドに依頼せよとのことだったので、私自ら馳せ参じたのです」
「ほほう、冒険者集団となるとそれは盗賊団かぶれかはたまた…『突如現れた』クランでしょうかね?
そういうことであれば依頼を無下にすることなどできませんな、所長命令によって受理いたしましょう」
笑顔でやり取りする2人だったが、その内容は物々しいもので下手をすれば死人が出る可能性もあった。
犯罪行為に手を染める冒険者はたまに現れるのだが、その度にAランク以上の冒険者に指名で依頼をすることが基本だった。
今回指名される冒険者はそう、アインズ・サリヴァーンだったのだ。
そしてその捕縛対象となる『冒険者集団』はもちろん…
「では、これをアインズ・サリヴァーン氏に指名依頼とする。捕縛目標はナナシという冒険者率いる『虹の輝き』というクラン、保護対象はその奴隷であるリスティル・ガルディア第2王女である。
『万が一』死体となっても構わぬとのことだ、詳細はこの書状にある」
「これはまた豪華な書状を…なるほどそこまで本気というわけなのですな、王は。
では早速我が配下の者たちを連れて準備出来次第向かうとしましょう。それと職員たちにも動いてもらわねばなりませんね。
そこの君、至急冒険者登録をしていて動けるものを10名ほど集めてきてくれ、所長命令だと」
「さすが行動と判断が早いですな、アインズ殿は。ですが何故職員も動かす必要があるのですかな?」
「捕縛対象は先日『ラビリンス』へと向かったのですよ。他の冒険者たちに被害が行かぬようにするのも我ら冒険者ギルドの務め、ですので。『万が一』流れ弾が被弾する可能性もありますからね。
ですが彼らに接触した際はどうすべきでしょうか?何か理由付けでもしておきますか?」
「ふむ…ではこうしよう。元々あそこには盗賊団がいたはずだ、それを捕縛するために来た…というのはどうだろうか?それならば問題もないだろうし警戒される危険性も少ない」
「なるほど、彼らには一応存在は知らせてあるので理屈は通りそうですな…ではそれで行きましょう。
では、私はまだ少し書類仕事が残っていますのでそれを終わらせ次第行動に移ります。
では失礼します、アリウス殿」
アリウスはにやけるのを止められなかった。なぜなら今回の騒動はアリウスが王に進言したのがきっかけであるからだ。
王はアリウスを信用しているものの、信頼するまでには至っていなかった。
なぜなら時折国や王家のためではなく己の利益のため動いている節があったからだ。
だがそれでも彼を側近から外すことなどできなかった。それほどアリウスの齎した価値は莫大だったのだ。
だが側近という立場で味を占めたアリウスは止まることも知らず暴走を始めるのだった。
時は戻り、ナナシ達が1階層に辿り着いた頃のダンジョン入り口は王家の兵士と諜報部隊で封鎖されていた。
圧倒的人数差、それと圧力。並の冒険者や傭兵、盗賊程度なら委縮して瞬時に殲滅されるだろう。
だがここにいる数百の兵士、数十名の諜報員は一切のゆるみを見せなかった。相手が並ではない、Sランクであるからだ。
指揮を執るアリウスただ1人だけが浮かれていた。この時既に王は地下牢に捕縛されていた。だが『王命である』と言って豪華な装飾が施された書状をちらつかせることで兵士や都民、冒険者ギルドや冒険者まで指示に従わせることができるのだ。
『自分が今のこの国を動かしている』という、彼にとってこれ以上ない幸福が身を包んでいるのだ。
「アリウス様、ダンジョンを探索中だった冒険者はクラン『虹の輝き』を除き全員が帰還したとのことです。
後はアインズ殿が戻ってくるのを待つだけです」
「そうか、ならば皆で迎える用意もしておけ。王の喜ぶ姿が目に浮かぶようだぞ…では早速とりかかれ!」
やがてダンジョンの階段から『コツ…コツ…』と誰かが向かってくる足音が響き始める。
足音はただ1つだけ聞こえてくる。それを聞いたアリウスは心からの笑みを浮かべた…が。
ダンジョンの暗闇から姿を現したのはアインズではなく、背の高い壮年の男性。
執事服に身を包み、にこやかな表情をして兵士たちの目前に現れる。
『誰だ?こんな老人知らないぞ?冒険者でもなさそうだが…』といった会話が聞こえてくる中、その男性は声を出す。
「初めまして、皆様。私は『虹の輝き』クランマスター、ナナシ様に仕えさせて頂いてるクラウディウス、と申します。以後お見知りおきをお願いいたします…が、先に謝罪を1つさせていただきます。
私の名前及び主の名は覚えることは無いでしょう、これから皆様のお命を頂戴させていただきますので」
そう言って執事のクラウディウスは殺気を放つ。先ほどまでのにこやかな顔ではなく、冷徹に仕事をこなす暗殺者のような表情になる。
その場は一瞬にして凍り付き、ゆるんだ表情のアリウスも険しい表情となっていた。
だがその光景を空中からこっそり眺めている集団がいた。『虹の輝き』のメンバーであった。
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