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ナナシの使い(仮)  作者: りふれいん
第二章 王都を乱す男
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第34話 休憩所、隠し事

 先に15階層に辿り着いたナナシは、戦闘がしたいと言って飛び出したユキを見送った後に休憩ができるよう簡易的な休憩所…のつもりでログハウスを建てていた。


 2階建て、風呂トイレ完備、リビングダイニングにキッチン、3部屋にベッドが2つずつ。

 休憩所どころか普通の家同然の設備が整っている。女性ばかりの集団となったので、ここまでの設備が必要だとナナシは考え、時空間魔法で時の流れを遅くした空間内で建設した。

 魔物に襲われないよう結界を張り、安心安全な休憩所を完成させたのだ。


 小屋が完成して間もなくユキが帰ってくる。『主よ…さすがにやりすぎだぞ…』と呆れられていたが、その快適さに気づいたのだろう、ソファーに飛び込んでゴロゴロしていた。お気に入りのぬいぐるみを持って。


 ユキがソファーで静かになり、寝息を立て始めたころに6人がやって来る。

 既に結界によって透明化していてすぐには見つからないので、ナナシが迎えに出る。


「お、全員来たな。意外と早かったじゃねぇか…まぁとりあえず入ってくれ、中で休もう」


 時間の流れを遅くした世界で建築していたナナシは数日分働きづめだった。

 とにかく今すぐにでも休みたかったのだ。

 突如として目の前に立派なログハウスが現れ、そこからナナシが出てきたものだから呆気にとられるのも無理はないだろう。

 事態を把握するまで数分だったが、ようやく落ち着いて休憩が取れることがよほど嬉しかったのだろう。

 エレンに至っては『早くお風呂を使わせて!』とせがむほどだった。エレンは別の事情があるのだが…



「寝るところもちゃんと人数分ベッドを用意した。俺はこれを作るのに疲れたからもう寝させてもらうが、各々好きに休んでくれ。

 食料や水分はサラに頼んで『収納』から出すように言ってくれ、んじゃおやすみ…」


「では私も休ませてもらいますね、皆さん。お先に失礼します…」


「悪魔は元々睡眠を必要としないからそれぞれ好きに休むとよいぞ。サラよ、何か食料を頼む」


「では出発前に買っておいた牛肉を使って串焼きでもしましょうか。シルビィ、手伝ってください」


「ウチが?あー…エレンはお風呂だし、リスティルさんは料理下手だし…しょうがないか。

 切って串にさすだけでいいんだよね?さっさと始めちゃお!」


「わ、私は料理はいつも城の料理人に任せていたので…すみません、勉強させてください」



 ナナシと同じ部屋で休むエル、さっさとお風呂に向かったエレン、料理を頼んでおきながら優雅に紅茶を楽しむアスモ。

 頼まれて料理を作り出すサラに、手伝いを頼まれたシルビィ、そして料理の勉強をするリスティル。

 そしてソファーを一人で独占してすやすや寝ているユキ。そのユキを狙う視線が一つあるのだが…

 それは誰も対応できないからと諦め、『しょうがないよね』と目線で会話するだけだった。

 もちろんユキを狙っているのはアスモである。ユキは『ソファーでもう寝ない!』と決意をするハメになったのだった。


 それぞれが自由に休息を取り、心身ともに回復するまで2日ほど使った。

 主に女性陣の、その中でもエルとエレンの2人が辛そうにしていたからである。

 あくまでも目的は『ダンジョン攻略』であるため、長々と休むわけにはいかない。

 そうナナシが言い出したため、渋々と承諾したのだった。

 休息をしっかりと取った甲斐があってか、二日間の休憩で全員が出発前と同等の回復を見せた。

 ユキだけは何故か疲れているようだったが…見なかったことにするナナシ達だった。



「んじゃ出発するぞーっと…次の休憩は20階層のボス部屋の後だ。

 そこでだが…2つの班に分けることにする。俺とサラがそれぞれのリーダーになる。

 班分けは俺とエル、シルビィ、ユキ。残りのエレンとアスモ、リスティルはサラと行動だ」


「旦那様…なぜそのような班分けにしたか納得のいく理由をお願いします。

 旦那様と離れて行動するなんて嫌ですわ…」


「あー、じゃあ説明するな。ユキは俺がいればやりすぎることもないだろう、と判断した。

 で、エレンとシルビィを分けたのは2人以外で連携を取れるようにするためだ。

 一応この分け方も近接武器と遠距離攻撃で分けたつもりだが、エルは別だ。エルはサラに頼んである修行方法に相応しくない。体力が持たないからだ」


「なるほど、つまり…こっちを魔法使いで固めたのもアスモさんに学べってことでいいのかしら?

 アタシとシルビィが常に一緒にいても、他の人との連携を取れるようになるとは思えない。

 意外とちゃんとした班分けになっているのね」


「当たり前だ、『虹の輝き』は俺1人のワンマンチームじゃないんだぞ?全員が強くなってこそだ。

 その為に実力が突出しているアスモには期待しているんだぞ?」


「わ、私が旦那様の期待だなんて…わかりました。誠心誠意務めさせていただきますわ!

 では早速出発しましょう!行きますわよサラ、エレン、リスティル!」


「わわ、アスモさん!待ってよ!」「か、かしこまりました…では行って参りますナナシ様」


「ではマスター。手筈通りに鍛えてきます。20階層のボス部屋の前でお会いしましょう」



 やる気満々になったアスモが先頭に立ち、16階層の階段を下っていく。

 ナナシがサラに頼んだ修行が原因でアスモがボロボロになるのだが…それは後のお話。



「おう、行ってこい!強くなった姿を見れるのを期待してるぞ!…さて、じゃあ俺らはまず話からするか」


「話、ですか?何か注意事項とかあったりするんですか?」


「あーいや…話があるのはシルビィ、お前なんだ。2人には悪いがちょっと待っててくれないか?」


「わかったぞ、主よ。ではエル殿の護衛は任せてもらおう」


「ウチに話があるの?…ってナナシクンは鋭いから気づいてたんだね。いいよ、んじゃあっちで」


「お、おう。んじゃちょっと待っててくれよ」



 ナナシはシルビィを連れ出し、2人きりになる。『とある事実』にナナシは気づいていたのだ。

 休憩していた2日間でようやく気付けたのだが、ここではっきりさせておこうと思ったのだ。



「防音結界も張って、と。これでよし、話ってのは…もう分かってるな?」


「はあ…やっぱり気づいてたんだねナナシクン。ごめんね、隠すつもりはなかったんだ。でも言え出せなくって…」


「ああ、そういうことだろうと思ってた。お前自身が『それ』に気づいたのはいつだ?」


「うーん、そうだねぇ…10階層のボスの後かな?なんかいつもより身体が重いなーって思ってて」


 ナナシが指摘したのはシルビィの鎖骨付近に見える痣だった。

 ボスを討伐した後、ナナシはユキと戦ったりダッシュで15階層まで駆け抜けたため気づくのが遅くなったのだ。


「なるほどな、あのキマイラとの戦いの後か…やっぱりお前蛇の毒を浴びてたんだな」


「へへ、ちゃんと見ててくれたんだ。そう、あの時トドメとして尻尾を切ろうとしたときにかかっちゃったみたい。

 今のところ痛みとか苦しさは無いし、ただ少し身体がだるいなって感じるだけ…ってうわぁ!?」


「馬鹿野郎!そんなこともっと早く言えってんだ!死に至る毒だったらどうするつもりだ!?

 お前の身体はもうお前だけのモノじゃない。俺の、俺たち家族のモノだろう!?

 お前自身が俺との結婚を望んだんじゃねえか、もっと考えて行動してくれよ!」



 ナナシはシルビィを抱きしめながら説教するように言葉を伝える。

 急に抱きしめられたシルビィは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。

 普段はシルビィからスキンシップをしているのだが、逆に自分がされるのには慣れていなかった。

 だがそれでも嫌がるそぶりは見せず、むしろナナシの胸元に頭をうずめたのだった。

 その表情はナナシには見えなかったのだが、口元がゆるみ、目を細め、耳をピコピコ動かしていた。



「頼むから辛かったら言ってくれ。その毒以外でもなんでもだ。わかったか?シルビィ」


「うん、うん…ごめん、ね、ナナシ、くん…うう」


「ああ、もう怒ってない。だから落ち着くまでこうしてていいから、約束してくれ」


「うん、約束するよ。へへ…今だけナナシクンを独占しちゃってる」


「はは、そうだな…アスモがいたらきっとめんどくさくなってるだろうな…」



 防音結界によりその声は誰にも届かず、静寂が2人を包んでいた。

 2人で待つエルとユキが退屈そうにしていることには気づかなかったのであった。


「「ナナシさん(主)遅い!!」」


 そんな声が聞こえた気がしたシルビィだった。

毎朝10時に投稿しております。体調が戻り次第14時にも投稿しますので、いつも読んでくださる方々にはご迷惑をおかけしますが、最低1日1話投稿しますので、これからも読んでいただけると幸いです。

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