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ナナシの使い(仮)  作者: りふれいん
第二章 王都を乱す男
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第33話 黒光りするアレ、上級魔法

「と、言うわけで俺と主従関係が結ばれた以上連れていくことになった。

 名前が無かったから勝手に『ユキ』と名付けた、教育は済んであるから安心してくれ」


「は、はあ…ユキさんですか。ちなみに性別は『男だ』それは安心…え、男性でこんなに可愛いの?」


「旦那様…こ奴はさしずめペットってところでしょうか?小動物のように可愛らしくて…」


「だ、誰がぺっとじゃ!我は天空龍ぞ!?ええい、放せ、放さんかー!」



 改めてユキを紹介するナナシ。だがそのユキは鼻息を荒くして獲物を狩るような目つきをしたアスモにより捕獲されていたのだった…

 ユキはナナシに助けを求めるもナナシは『ユキ、頑張れよ』と暖かい視線を送っていたのである。


 結局アスモが満足するまでユキは解放されなかった。しばらく頬擦りされ、ようやく解放されたユキの眼は虚ろで、何か大切なモノを失ったかのような雰囲気を纏っていた。

 当のアスモは何故か肌がツヤツヤとしており、舌なめずりをする表情が妙に色っぽかった。



「よし、それじゃそろそろ進むか。だいぶ休息も取れたし、一気に15階層まで突っ切ろうと思う。

 そこでひたすら戦闘する予定だ、問題は無いか?」


「一気に5階層ほど駆け抜けてしまうということですね。ナナシさん、そこまでして急ぐ理由はなぜですか?」


「実は次の階層から14階層まではとある昆虫系の魔物が多くてな、見たくない魔物がいるんだ…

 ギルド職員から聞いた情報だから間違いはないだろう。正直戦いたくもない」


「11階層から14階層に出現する昆虫系の魔物…まさか…」



 その魔物に心当たりがあるエルは青褪めた表情を見せた。

 ステータスにいくら差があろうともナナシ程の人物が戦いたくないと思わせる魔物。

 2本の触覚、黒光りする硬い甲殻、多数の群れを作りカサカサと音を立て、時に羽ばたき空を飛ぶ。

 そう、誰しもが嫌悪感を抱く奴等、『G』である。正式名称はブラックローチ。



「誰が好き好んでゴキなんかと戦うんだよ…いいか、俺は先に進む。15階層で会おう」


「え!?ちょっとナナシ!?待っ…もういない。道もわからないのにどうしろっていうのよー!」


「大丈夫です。マスターとは比べ物になりませんが、私もそこそこの精度でマッピングができます。

 階段程度ならすぐに辿り着けると思います。では私たちも行きましょう」



 仲間たちを置いて我先にとダンジョンを突き進むナナシ。その後ろにはユキもついて来ていた。

 時速にして200㎞を超える速度で走っていたのだが、さすがは天空龍である。その速度にしっかりと追いついていたのだ。

 ユキはナナシがここまで焦って移動することが愉快だと考えていた。

 自分をあそこまでボコボコにできる男がここまで焦燥感に駆られている姿が面白いと思ったのだ。



「主よ、そこまでしてローチどもと戦いたくないのか?あいつらは頭数だけではないか」


「おわっ!?ユキか、よくついてきたな。強さは問題じゃねぇ、見た目とか色々気持ち悪い。

 是非とも存在を抹消してほしいくらいには嫌いなんだよ、アレは…」


「くくっ…主がそこまで焦る姿は愉快よの。だが…さすがにアレは倒さないと進めぬな?」



 15階層へ続く階段の前にたどり着いたのだが、とてつもなく巨大な影が現れる。

 見た目は完全にローチなのだが、今までのとは色が違った。赤いのである。

 おそらく集団のボスなのだろう、『レッドローチ』と呼ばれるBランク魔物である。

 炎を吐く行動が増え、熱に強くなっている個体となっている。


「あぁ!?邪魔すんじゃねぇよクソムシがああああああ!!!」


 ナナシが咆哮を上げ、熱に耐性のあるレッドローチに対して特大の火球を打ち込んだ。

 上級火魔法『フレア』である。もちろん無詠唱なのだが、威力が通常の『フレア』の数倍である。

 直径20m程にもなった火球がローチに直撃する。熱風が吹きすさび、辺りを火の海へと変える。


 直撃を受けたローチの姿は既になく、素材となった赤い甲殻だけがその場に残されていた。

 だがナナシは拾うこともなくさっさと次の階層へと進むのであった。


「あ、主よ…ここまでの魔法はさすがにやりすぎだと思ったぞ…」


 ここまで高威力な火魔法で攻撃すると思わなかったユキは唖然としていた。



 一方その頃、サラの案内により順調に階層を下へ下へと進んでいた仲間たちであるが、とある広場で戦闘を行っていた。

 50匹を超える大量の『ブラックローチ』に囲まれていたのである。

 サラやアスモ、シルビィは淡々と数を減らせていた。だが他の3人は違った。

 見た目や音により恐怖と気持ち悪さで戦闘に集中することができていなかったのだ。



「いやああああ、こっちこないでええええ!!!」


「ヒイイ、カサカサいやあああ!?」


「あああ…あの時と同じで数が減らない…」


「ちょ、3人とも!?ウチのとこに追加させないでよ!…あーもう増えてきたし…」


「サラよ、面倒になってきた。一気に消滅させてよいか?」


「わかりました。では結界にて隔離しますので少々お待ちを…はい、隔離できました。いつでもどうぞ」



 さすがに面倒になったアスモは上級魔法にて攻撃することにした。

 それを聞いたサラは即座に結界を発動、過半数のローチたちを隔離することができた。

 その結界にアスモは上級闇魔法『ブラックホール』を放つ。超重力を持つ黒い球体が結界の中に現れる。

 その球体にローチが吸われていき、跡形もなく消し去っていく。ローチのみを吸い込むのではなく、ローチ討伐による素材も纏めて消え去っていったのだ。

 結界の中に存在するものが無くなるまでわずか15秒。圧巻の威力である。


 隔離しきれなかったローチが6体いたのだが、シルビィが全て討伐していた。

 エル、エレン、リスティルの3人は既に戦意喪失していたのだった…



「さて、ようやく片付きましたね。次が14階層です…群れのボスがいたようですが、マスターが消滅させたと『念話』により報告が届いています。比較的安全に通過できるでしょう」


「や、やっとナナシと合流できるのね…もういや、このダンジョン…」


「ナナシさん…私も連れて行って欲しかったです…」


「あのローチたちのボス…想像しただけで吐き気が…」


「だらしがない…旦那様にそのような弱い姿を見せて良いのか?エルもエレンも婚約者なのでしょう?」


「そ、そうは言ってもナナシだって戦いたくないって言って逃げたじゃないの…」


「マスターは先に進んで安全確保をしていた、と言っています。どうやら謝罪する気はなさそうです」


「「「帰りたい…」」」



 3人は綺麗にハモり、既に嫌気がさしているのであった。

 だがその気持ちはナナシと合流を果たした時に消え去ることになったのだった…


 6人がナナシの後に進む14階層は魔物も少なくなっており、所々に戦闘の後が見受けられた。

 階段についたあと、ユキが『主よ、我も戦いたい』と言い出し、一通りの魔物を討伐していたのだ。

 ボスとされていたレッドローチもナナシが討伐済みなので、とても平和だった。

 サラの案内により階段まであっという間に辿り着く。そこで6人を待っていたのは…小屋だった。



「お、全員来たな。意外と早かったじゃねぇか…まぁとりあえず入ってくれ、中で休もう」



10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。

読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。

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