第27話 ダンジョン突入、クラン初陣
「あ、そうだ。これから俺たちダンジョンへと向かうんだけどなんか決まりとかある?」
「なるほどダンジョンに…そのためにガルディアまで出張ってきたわけか。
うーん、そうだねぇ…当然っちゃ当然だけど、獲物の横取りや素材、たまに出現する宝箱の横取り禁止、かな?
一応決まりとして殺人も厳禁だけど、死人に口なし、ってことでどう足掻いても捕まえられない殺人鬼もいたりするんだ。そいつらは指名手配されてるからダンジョンからは出てこないんだけどね。
ちなみにその殺人鬼どもを捕まえて突き出せば報奨金も出るよ」
世界各地に点在する『ラビリンス』には、少なからずルールを破り殺人を繰り返す集団がいるらしい。
命からがら逃げ伸びた冒険者によって名前や特徴など報告されてはいるが、捕まえられたのは一部だと言う。
王都ガルディアにある『ラビリンス』も例外ではなく、20名弱ほどが確認されているらしい。
「殺人鬼ねぇ…物騒なことで。んでもう一つ聞きたい。ダンジョンの深さとかはどうなってる?」
「深さ?そうだね…今のところ確認されている階層は確か27階層だったかな?
1つ階層を降りるたびに魔物たちがガラッと代わるし、強さも少しずつ上昇していくんだ。
10階層ごとにボスフロアが存在していたりするんだけど…21階層からは各魔物の亜種が出現してくるんだ。それを捌ききれなくて止む無く探索を終了したのが27階層まで、だったかな」
「なるほど、そこから先はどれくらい深いか想像もつかないみたいだな。
ま、近いうちにダンジョン制覇してやるよ、楽しみにしてろよアインズさん」
笑顔でダンジョン攻略を宣言してギルドを後にするナナシ達。
『君たちの実力を見せてもらうよ』アインズはそう小さく呟いた。
クラン設立の際、リスティルの冒険者登録も一緒に済ませておいたのだが、何故かAランク登録だった。
どうやらガルディア王が裏で手回しをしていたらしい。『虹の輝き』唯一の銀製プレートだった。
それを見ていたエレン、シルビィ、エルの3人はやる気に満ちており、『少なくともBランクには…』だの、『ナナシクンの貞操はウチが貰う』だの、『結婚前にナナシさんに認めてもらいます』だのそれぞれバラバラな目的を持ってモチベーションを上げていた。若干1名の目的が違うが。
普段表情を変えないサラも心なしか楽しみにしているようだった。身体を動かしたかったのだろう。
同じくほとんど戦闘をしていないアスモもニコニコしており、暴れたくてしょうがないようだった。
全員の希望により、1時間後にダンジョンへと突入することとなった。
ダンジョンに向かう道中に冒険者向けの店が多数あり、そこで買い物をしつつ物資を揃えている。
もちろん荷物持ちはナナシだが。
大量の食糧、野営に必要な食器や寝袋、何故か装飾品や普段着まで買い込むことになった。
占めて金貨150枚ほどの出費である。全てナナシが支払っていた。
『どうせ後で儲かるんだからいいじゃない!』とエレンは言うが、エレンが一番衣類を買い込んでいたことにナナシは突っ込むのを諦めていたのであった。次点でエルである。
色々と準備を済ませつつ歩いていると、冒険者で溢れる大きな門のある広場に出た。
ここがダンジョン入り口である。門の前にはギルドの職員の服装をした男女が何やら書類作業をしている。
出発する際に人数と冒険者ランクの確認及び説明をしているようだ。
「あのー、俺たちもダンジョン行きたいんだけどここで受付すればいいのか?」
「あ、はい、こちらがダンジョン受付になります。まず初めに人数と冒険者ランクの確認をします。
プレートを提出願います…はい、Dランクが2名、Cランクが1名、後は…Aランクが1名に…Sランクですって!?しかも3人も…信じられない…」
「まぁ…そういう反応するよな…これを見せれば問題ないって言われてアインズさんに渡されたんだけど、これはどういう意味がある?」
そう言ってナナシが取り出したのは金貨や銀貨とは違い、二回りも大きなメダルだった。
「そ、それはクランメダルですね。アインズ所長が認めたという証拠になります」
「クランメダル…これがあれば俺たちがクランだっていう証拠になるのか」
「はい、その通りです。えっと…ナナシ様、ですね。説明の方はアインズ所長からうかがったと思われますが、1つだけ。中で手に入れた魔物素材の買い取りはギルドではなくこちらでお願いします」
「ああ、この入り口で担当してくれるのか。そりゃ楽だ、助かる。入場料とかはないのか?
「本来であれば1人銀貨2枚になりますが、Sランク冒険者様がいらっしゃいますので全員無料となります。Sランクの特権の1つですね」
「お、そりゃラッキーだ。んじゃ行かせてもらうな、またなー受付のねーちゃん!」
今回担当したのもギルドから派遣された女性だったのだが、その薬指には指輪がはめられていた。
だが、やはり少し顔を赤らめていたのであった。
そしてナナシ達は『ラビリンス』へと侵入する。内部は真っ暗闇とまではいかないが、数m先が見えないくらいである。
Sランク3人はそんな暗闇でもよく見えるほどなのだが、他の4人はそうはいかなかった。
「ちょっとナナシ!待ってよ!暗くてよく見えないんだから…こけてケガでもしたらどうするの!」
「ウチはまだギリギリ大丈夫だけどエルちゃんも全然見えてなさそうだねー?大丈夫?」
「うう…ギルドで働く前はよく潜っていたのに身体は忘れてしまっているなんて…」
「マスター、まもなく魔物3匹と遭遇します、種族はゴブリンですね。いかがなさいますか?」
「そうだな…動きを見たい、リスティル行ってみてくれ。暗闇は任せろ…『ライト』」
ナナシが上に向けて掌をかざす。光属性低級魔法の『ライト』で周囲30m程がよく見えるようになり、こちらに向かってきているゴブリンたちの姿が視界に映る。
指名されたリスティルは嬉々として背中に背負った両手剣を抜き、ゴブリンたちに突撃していく。
出会った当初の全身鎧ではなく、胸当てやプリーツ、膝下までの鉄製ブーツに籠手といった動きやすさを重視した装備に代わっていた。
絶対領域や二の腕、へそなどかなり露出が多くなったが、リスティル自ら店で選んだ防具なためナナシの趣味嗜好で選んだわけではない。断じて。
そしてリスティルは横に両手剣を薙ぐ。わずか一撃、それでゴブリン3匹の首と胴体がお別れした。
命を奪うことに一切の迷いが無く、急所を的確に判断し狙う技術。忘れてはいけないが、彼女はここ王都ガルディアの第2王女である。
「ナナシ様、いかがでしたか?一応痛まないように首だけを撥ねたのですが…」
「まあまあだな。今回は3匹だけだったが、追加で何頭か襲いに来る可能性もあった。少し視野が狭いな。だが一閃で3匹の首を仕留める技術は見事だったぞ」
「そうですか…やはりまだ未熟ですね。ちなみにサラ様やアスモ様はどちらに…?」
「旦那様、この程度でよろしいかの?」「マスター、こちらも終了しました」
サラとアスモの2人にはリスティルの邪魔にならないよう周りの魔物たちを狩りに行ってもらっていた。
ただ…その数が尋常ではなかったのだ。それぞれ50頭は超えているのではないだろうか。
その数を見たリスティルは思わず絶句していた。すぐ近くにこれほど魔物がいると思わなかったようだ。
後ろで見張っていたエルたちもこれにはさすがに驚きを隠せなかったようで、ポカーンと口を開いている。
ちなみにサラとアスモはまだまだ暴れ足りないようで、身体が微振動を起こすほどウズウズしていたのであった。
10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。
読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。




