第26話 『虹の輝き』、アインズ
「クランの名前は『虹の輝き』だ」
全員が目を瞑りその名前を咀嚼する。いつの間にか会議室に入っていたクラウは紅茶を用意しながらいい笑顔で頷いていた。
「『虹の輝き』…確かにとてもいい名前ですわ、旦那様。その名前となった理由をお教えくださいませんか?」
「何、とても簡単で単純なことさ。それぞれ特色となる色があり、しかもそれぞれが被ることなくバラバラだ。
その数が丁度7つ、七人七色ってことさ。虹も七色だろ?それら全てが光り輝く存在であれ、ってちょっと臭かったか」
なるほど、といった様子で頷くアスモと、既にそれで決まりだと言わんばかりのエレン。
相方のシルビィは目をキラキラさせて『ナナシクン凄い!』と繰り返していた。
サラは相変わらず無言のまま出された紅茶を啜り、エルはポカーンとしていた。
リスティルは頬を赤く染め、うっとりとした表情で『虹の輝き…なんて素晴らしい名前なんでしょう…』と感激に浸っていた。
ナナシとしてはただ自分の考え付いた案を出しただけなのだが、満場一致で決定の雰囲気を感じ取っていたのだった。『まさかこれで決まるとかないよな?』と心の中で呟くのだった。無論、正式名称となる。
「よしっ、名前も決まったことだし、早速登録しに行きましょ!あー、なんだか胸のつかえがとれた感じがするわ」
「本当ならウチとエレンで考えて決めなきゃいけなかったのにねー?さすがナナシクンだ」
「ちょ、ちょっと待て。『虹の輝き』で決定なのか?他の奴らも異論とかないのか?」
「「「異議なし」」」
「旦那様、私は名前など適当で良いと思っていたのですわ。ですが、ここまでしっかりとした意味を持つ名前であるならば意見など出るわけありませんわ」
「満場一致で決定か…んじゃ仕方ないな、『虹の輝き』の名前でクラン結成だ。
そうとなればギルドに向かうとするか」
クラウとメイド達に『行ってらっしゃいませ』と見送られ、王都にある冒険者ギルドへと向かうナナシ一行。
ファスターの町から借りた馬車はガルディア王により送り返されたらしく、徒歩で向かうことに。
だがナナシ達は移動中居心地が悪くなるのである。
ナナシを始め、一緒にいる6人もの女性全てが美形ぞろい。中にはリスティル王女も混じっている。
ただ誰一人として声をかけてくるわけではないが、屋敷の敷地を出てからギルドに到着するまで衆目を浴びることとなった。
冒険者ギルドはファスターの町と比べて数倍大きく、内装も豪華なものばかりだった。
多数の美女を連れている見慣れない若い男一人というのも相まって、ここでもチンピラ集団に絡まれるのだが、『強制的に』道を開けさせる。リスティルは絡んできた男たちの視線が気味悪く、腕を抱き抱えながら引いていた。
「王都ガルディアの冒険者ギルドへようこそ!今日はどのような内容でしょうか?」
「えーと、クランを設立しようと思って。代表は俺、でメンバーはこの6人だ」
「は、はぁ…冒険者プレートを拝見します。他、紹介状等はございますか?」
そう言われ、ナナシは自身のミスリルで作られたプレートとグリーグに渡された手紙を差し出す。
プレートを見て目を見開いて驚き、そして怪しむ受付の女性だったのだが、グリーグの手紙を読んでさらに驚き、納得したかのようで2枚の書類を出してきた。
「で、ではまず1枚目ですね。こちらはクラン設立にあたっての注意書きになります。
全て読んでいただけたら下の方に代表者1名の署名とクラン名の書き込む欄がございますので、そちらの記入をお願いします。
2枚目ですが、クラン設立時のみ代表者含む他の方々の署名と冒険者ランクの記入が必要になります。
今回は全員ですね、署名が終わりましたら2枚の用紙を持って2階へ進みください。
本来のクラン受付は2階になりますので、そちらに書類を提出してください」
「ああ、クラン用の受付があったのか。悪かった、通常の受付で対応してもらって」
そう言いながらナナシは申し訳なさそうにしつつ笑顔を受付嬢へ送る。
ナナシ本人としてはそんな気がなかったのだが、ナナシ自身イケメンである。そんな男性のスマイルを受けた受付嬢はやはり顔を赤くするのであった。
それを見て後ろで頬を膨らませるエルがいたのだが、その身長も相まってただただかわいく見えた。
本人は一応怒っているのだが…
受付嬢の案内を受け、2階へ続く階段に進もうとしたナナシ達の後ろで『俺たちもクラン作らせろよ!なんであんな色男は通ったんだ!やっぱ顔か!?』などという声が聞こえた気がした。
Aランク以上の代表、7人以上のメンバーという条件だけでなく、実は『冒険者ギルド所長による認可』も必要だったのだが…それをナナシ達は知る由もない。
罵声にも似た声を受けながら、書類を提出するためにクラン受付へ向かう。
そこにはスーツのようなピシッとした衣装を身に纏い、立派な白髭を携えた老人が待っていた。
「君たちがあのグリーグが認める冒険者たちで間違いないみたいだね。その様子だとクランを作りに来たと見ていいのかな?」
「ああ、そうだが…あんたはここの所長さんか?」
「おっと、こりゃ失敬。私がここ王都ガルディアの冒険者ギルドの所長を務めている。
名をアインズ・サリヴァーンという。アインズ、で構わない。よろしくな、ナナシ君」
「おっと、こちらの名前とかはもう割れてるわけね…クラン『虹の輝き』代表のナナシだ。
不本意ながらSランク冒険者になっている、よろしく頼むアインズさん」
アインズ、と名乗ったその男性はナナシと同じくらいの身長で、冒険者に似つかわしくない華奢な身体つきをしていた。
そんなアインズだがナナシと交わした握手は力強く、『もう現役引退した身だよ』と苦笑交じりで話していたが、そこらの冒険者はおろかグリーグ並の実力があるとナナシは感じていた。
「ああそうそう、クランを作りに来たんだったね。グリーグから聞いているよ、彼が何をされたのかわからないまま気絶させられたということ。そして多数の美人のお嫁さんを引き連れた美形の男性ということも。
だから君だとすぐに分かった。そしてこの私がクラン受付も兼任していてね。1階での出来事もちゃんと届いているよ」
「所長さん自らクラン受付とはね…人手不足、には見えないが…信用のおける部下がいないのか?」
「ああ、それは違うよ。実はもう一つだけ設立の条件があってね、ナナシ君たちはもうその条件を突破しているから何も問題は無いよ。
この条件というのも実は秘密にしなきゃいけないんだ、教えられなくてごめんね」
「秘密というなら気にならないこともないが仕方ない。そもそも条件を満たしているなら気にしてもしょうがないな。
…で、この書類を所長さんに提出したら終わりなのか?」
「うん、後はこういうクランが発足しましたよーっていう告知を出すことと、ナナシ君にクランメンバーの斡旋が必要かどうかを確認するだけだね」
「告知はこっぱずかしいな…それが決まりならしょうがないとして割り切るが。
メンバーは一切募集しない。ギルド側からの推薦だとしても全員断らせてもらう。これでいいか?」
ナナシは『虹の輝き』は身内のみ、家族同然であると考えている。というのも、婚約者3名に呼び出したアスモ、ナナシのサポートをしてくれていたサラ、そして今は奴隷となっているリスティル。リスティルに関してはそのうち解放する予定だが、身内同然であるのは間違いない。
そこに赤の他人を入れようなんて思わない、それがこのクラン『虹の輝き』である。
10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。
読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。




