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ナナシの使い(仮)  作者: りふれいん
第一章 目覚めと出会い
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閑話 エルの日記

エルとナナシの出会いの日記(?)です。

 私はエル・ベルモンド。ファスターの町の冒険者ギルドの受付嬢をしています。

 毎日受付に座り、依頼の受諾や達成報告、新規冒険者の登録などの雑務をしています。

 父はここのギルドの所長を務めていて、事あるごとに問題を起こしてきます。町に抜け出すなんて至極当然、ひどい時には変装して依頼を受けて町の外に行ってたり…


 そんな父ですが、町で一番の実力のAランク冒険者なため、他のAランク冒険者が失敗した依頼や指名の依頼も舞い込んできたりしますので、仕方がないことだと職員の間では割り切ることになっています。


 そんな毎日が続いていたある日、普段から騒がしいギルドの入り口で、いつも問題ばかり起こす冒険者に絡まれる若者たち4名が現れました。

 女性2人は顔なじみで、エレンさん、シルビィさんの両名なのはすぐわかりました。

 ですが一緒にいた美しい女性と、その隣の長身のイケメンさんはこの町では見たことがありませんでした。かっこいい…。

 見惚れていると突然私のほうに向かって『対応は俺に任せてもらってもいいかい?』と声をかけてきました。

 好みのイケメンだったし、まさか私に話しかけてくるなんて思わなかったため笑顔を抑えることも忘れ、親指を立ててゴーサインを出してしまいました。

 問題児しかいないので、丁度いい薬にもなるだろうし、あのイケメンさんの実力も図れる…なんて浅はかな考えをしていました。


 その男性が一言男たちに呟くと、その男たちの姿が消え、空から降ってくるじゃありませんか!

 おそらく風魔法を使って吹き飛ばしたんだろう、そう思って自分を何とか言い聞かせておきました。

 私も含め、周りにいた職員や冒険者たちはその男性を静かに見つめるだけになっていました。

 その男性に隣に立つ女性が『さすが旦那様!』と叫び、既婚者だったのか…と少し落胆してしまいました。

 シルビィさんが『ナナシクン』と呼んでいたので、おそらくその男性はナナシ、という名前なのでしょう。

 黒髪のオールバック、三白眼で鋭い目つきの黒目、そして整った顔と高身長…ああ、私は一目惚れしてしまった。そう感じました。

 ぽーっと見つめていると、気づけば私の受付に立ち、『冒険者登録』をしにきた、と言っていた気がしました。

 反応がとても遅れてしまい、咄嗟に『個室の方でご案内させていただきます』なんて言ってしまった。

 私はこの男性『ナナシ』様ともっと会話をしたい、登録だけで終わらせたくない、という個人的な理由で応接室の方に案内をしました。

 今思えばとても利己的で卑しい考えだったと思います。


 応接室にて対応しようと移動中、父である所長の視線を感じました。おそらく後で入ってくるだろうな、と。

 最もらしい理由をつけ、ナナシ様をこの場に縛り付けておくことには成功しました。

 ただ、『個人的な理由もある』と口を滑らせてしまい、ナナシ様を警戒させてしまうことに…

 そんな話をしていると、入り口から気配を感じ、父親が来たんだなと思い入室を促しました。


 ナナシ様と父親が自己紹介を済ませてすぐ、父から『こいつと戦いたい』という意思を感じました。

 先ほども書きましたが、この町一番の実力者なため、普通なら登録前の冒険者見習いと戦っても一瞬で決着がつくのが至極当然、戦いたい冒険者なんていない…それが普通の出来事だと思います。

 ただ、このナナシ様は違った。隣にいるアスモ様と紹介された女性でも圧倒できる、というのだ。

 私は聞き間違いかと思い、ナナシ様に確認を取ると、『その通りだ』と強く言われました。

 それを聞いた父は怒りの表情をさすがに隠してはいましたが、青筋は隠せておりませんでした。


 その後、ナナシ様と父の決闘が決まり、ナナシ様が勝利すればBランク登録及び金貨200枚の贈与、敗北すれば、貴族であるベルモンド家に対する不敬罪として出頭させる、というものだった。

 審判はナナシ様の指名により私が勤めることとなりました。ナナシ様の実力を目の前で測れるため私としては大歓迎でした。

 観戦者としてエレンさん、シルビィさんともう一人、面倒見のいい冒険者として初心者に好かれているドルフさんが指名され、どういう繋がりなのかというのも教えていただきました。

 3人が応接室について早々、何やら話をしているのはわかっていたのですが、自信満々に語るナナシ様の顔を私も気づかず見つめ続けておりました。


 訓練場にて、ナナシ様は『鞘もくれ』と言いました。鞘に入れたまま戦う戦闘術、というのは聞いたことがあります。

 遥か東方に存在する島国に、鞘から抜刀しその一閃にて勝敗を決着する剣術。『抜刀術』とナナシ様は仰いました。

 ナナシ様は『目を離すなよ』と言いました。そんな一瞬で決着がつくなんて…と。

 この時まで、私はナナシ様がかっこつけて抜刀術で戦うのかと思っておりました。

 ですが、準備運動がてらに軽く動いていたナナシ様のその動きや構えが、達人と呼ばれる動きそのものに見えました。


 決闘の内容及び勝敗による報酬の説明を審判である私がします。

 その際、『エル・ベルモンド』と名乗りました。一応それが決まりですから。

 エレンさん達3人は、私が所長の娘だと知らなかったようで何故か笑っておりました。

 まぁ、どこからどう見ても似てませんしね。他にも色々言われてきたので慣れています。


「では…始め!」


 その一言と共に私は上に構えていた右手を下に振り下ろしました。

 ナナシ様に言われた通り、一瞬も目を離さず、決着を見届けようと。

 気づけば、父が倒れておりました。目の前で見ていたのに、何が起きたのかわかりません。

 ナナシ様に言われ確認すると、父は白目をむいておりました。首筋には紫色の斬撃とも見える痕が残っておりました。


 父が目覚め、決闘は父の敗北と伝えると青ざめた表情で『何をされたのかわからなかった』と繰り返していました。

 その後、目覚めた父を連れて応接室に戻り、報酬のお話を父がすると、突然『Sランクにする』と言い出すではありませんか!

 実力至上主義である、といった説明を父がすると、渋々といった表情で受けていただきました。

 そんな父ですが、決闘で何もできず何をされたのかもわからないままなので、とても悔しそうに握り拳を作っていました。


 翌日、私がギルドの仕事としてナナシ様を町案内することになりました。

 少しでもいい所を見せなきゃ!と思ったので、町の観光名所や評判の良い食事処、腕のいい職人のいる武器防具屋をリストアップし、書類にまとめました。

 気づけば太陽が昇り始めていました、急いでお迎えに上がらなければ!

10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。

読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。

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