第9話 贈答品、秘密
野営の見張りをしているドルフと交代で夜の見張りをすることになったナナシは、自身を蘇らせこの世界に送り出した天使『ミコト』の言葉を思い出していた。
「そういえば『使いそうなもの』を金貨と一緒に『収納』の中に入れておいたって言われてたな…
魔法の練習は見張り中にはできないし丁度いい。中身を確認してみるか…『収納』発動」
中には金貨20枚の袋のアイコン、それと剣が2本、槍1本、籠手、刀一振り、弓と矢が数種類100本ずつ。銃も入っていた。
他に黒字に赤いラインの入ったロングコート、指輪と腕輪が一つずつに何故か水筒まである。
「ミコト…何が『使いそうなもの』だよ。多すぎるっつーの!調べてみるか…」
武器種:片手剣
固有名:魔剣テンペスト
希少度:伝説級
属性:風
付与魔法:サモンテンペスト
武器種:両手剣
固有名:聖大剣レーヴァテイン
希少度:神話級
属性:光
付与魔法:リヴァイブソウル
武器種:斧槍
固有名:魔槍グレイプニル
希少度:伝説級
属性:地
付与魔法:アースブレイク
武器種:籠手
固有名:妖鬼籠手
希少度:伝説級
属性:火
付与魔法:クロスフレイムウォール
武器種:居合刀
固有名:妖刀『ムラマサ』
希少度:伝説級
属性:闇
付与魔法:ソウルイート
武器種:大弓
固有名:破天弓ヴァリガルマンダ
希少度:伝説級
属性:水
付与魔法:サモンオーシャン
「っておいおいおい!なんだこの伝説級のオンパレードは!しかも各属性揃ってるのかよ!
ん、なんかメモも一緒に入ってるな。えーとなになに…?」
『このメモを読んだということはボクがあげた荷物を確認しているところかな?
実はそれ全て、ボクが自作した使い道の無い傑作たちなんだよね。是非貰ってほしい。
各武器に属性ごとの特上級魔法を付与してある。もし付与したい他の魔法があったり、キミが思いついた魔法を付与したくなったら、武器に対して『贈与』すればいい。そうすると魔法が付与されるよ。
ただし、別の属性や『合成魔法』による複合属性はボクの作った武器には付与できないから気を付けてね。
コートは『全属性耐性』『消費魔力軽減』を付与してある。デザインはキミに似合うと思って作ったんだ。気に入ってくれるかな?
ボクはいつでもキミをあの場所から見守っているよ。
キミの新たな人生に祝福を。 名付け親 ミコトより』
「…えーと。過保護すぎねぇ?見守ってるって…途中で急に現れたり、迷ったら電話してきたりするのか?あいつ…
とりあえず武器は全て危険だというのはわかった。だが…俺も元日本人だ、この刀…『ムラマサ』か、これを普段用に使うとして、籠手とコートを装備しよう。
付与されてる魔法も一応調べておくか…恐ろしい名前もあるしな」
『サモンテンペスト』
雷を伴い標的を切り刻む強力な大竜巻を呼び起こす
『リヴァイブソウル』
聖なる光により広範囲の穢れた魂を浄化する
『アースブレイク』
大地を穿つ大地震を起こし指定範囲に地割れを起こす
『クロスフレイムウォール』
指定範囲に十字架のごとく巨大な炎の壁を生み出す
『ソウルイート』
標的の魂を吸い出し魔力へと変換する
『サモンオーシャン』
指定範囲に大波を伴う水流を起こし万物を飲み込む
「恐ろしすぎるわ特上級!殺意強すぎるだろ!特上級魔法は大体全てこんな危なっかしい魔法しかないのか!?」
---火魔法及び闇魔法は攻撃的な魔法しかありません。その他の属性の特上級魔法には回復魔法、補助魔法も存在します---
「お、数時間ぶりに『賢人』が答えてくれたな。俺も魔法を使えるようになりたいんだが、どう覚えればいい?教えてくれ」
---マスターは無詠唱にて魔法行使が可能なため、詠唱部分は不要になります。なので『魔法名』及び『その魔法の効果』をマスターが理解なされば現存する全ての魔法が使用可能です。マスターならば、新しい魔法を生み出すことも可能と推測いたします---
「ということは魔法をこの目で見て、魔法名を聞くだけですぐ使えるようになるんだな。
今すぐってなると…エレンが使っていたあれがあるな。『ウィンドカッター』」
ナナシはほんのお試しの気持ちで風の刃を生み出した。
エレンが使う『ウィンドカッター』は刃渡り30㎝ほどのものを5つだった。
ナナシのその異次元とも言える圧倒的魔力で『ほんの少し』魔力を消費して生み出したものは
刃渡り2mから3m、数は優に50個を超える。それぞれを自由自在に動かせるのだ。
「え、えっと…なにこれ。めっちゃ少量の魔力を込めたつもりだったんだが。
『賢人』、どの程度魔力を使用したか教えてくれ」
---風の刃一つにつきAランクの魔力所持者の全魔力程度と思われます。その数50個を超えておりますので、SSランクの魔力所持者一人の全魔力を使用して発動可能です---
「確か低級だったよな、これ。俺は魔法を使うのを全力で控えたほうがよさそうだ。それと…何してんだ、アスモ。さっきから気づいてるんだがなんか用か」
「旦那様の魔力を感じ取って何事かと思い来てしまいました…それにしても素晴らしい魔法ですね。
私でもこの密度の風の刃なら作れて10個が限度ですね…さすがは我が愛しの旦那様!」
「あー…俺これでも全力で手加減したつもりなんだよ。消費魔力的にはそうだな…2%ってとこか?
多分全力でやったら星を崩せるかもしれん」
---マスターがご自身に補助魔法をかけ、全力で大地を殴りつけるだけで星が割れると思われます---
「いやいやそんな報告いらねぇから!俺は平和に過ごしてぇんだよ!」
「旦那様?誰と話されているのです?そっちには誰もいませんが…」
「…あ。いや、自問自答してただけなんだ、気にしないでく『自問自答!?まさか…あのスキルですか!?』…え、アスモ知ってんのか!?」
「知ってるも何も…『並列思考』のスキルではないのですか?複数の物事を同時に考え、行動することのできる…違うんです?」
「何それめっちゃ使い勝手よさそう。って違う!本当にただの独り言だ!気にすんな!」
---召喚主の命令権を使い、『他言禁止』すれば問題ございません。ただし、パーティメンバーは命令権が使えませんので、他の人間に話さないならば問題ありません---
(なるほど…確かにその通りだ。念話で話せばいいか)
≪アスモ。念話で教えてやる。万が一聞かれたら不味いからな。それと命令権で誰にも話せない状態にする。それでもいいなら教えてやる≫
≪教えていただけるのですか!?であれば私に拒否権などございません。命令内容は『旦那様のスキルについて他言禁止』だけでしょうか?≫
≪それに加えて『指示無しに本気を出すことを禁ずる』も付け加える。いいな?≫
≪かしこまりましたわ、では…『我、召喚主の命令に従う者。主のスキルの他言を禁ずる。主の指示無しに全力を出すことを禁ずる。これらを受け入れる者なり』≫
≪ん?なんか出てきた…契約書?これで命令権を使ったってことになるのか。
んじゃアスモに教える。俺は特殊スキルに『賢人』という、脳内で俺の疑問に答えたり俺の補助を自動で行ってくれる、おそらく自我があるスキルを持ってる。
そして俺は一度別の世界で死に、新しい命を受けこの世界に来たんだ≫
≪スキルに…自我!?そんなの聞いたこともありませんわ…そして旦那様が転生者とは…
あの美しく強大な魔力も転生者ならば理解できました。
改めて…貴方様に出会えて私は幸せ者でございます!永遠に添い遂げることをお許しくださいませ!≫
10時、14時の2回に分けて1日2話ずつ投稿を目標にしています。
読みづらい、こうした方がいいなどのアドバイスがあればコメントいただけると幸いです。