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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
5章

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98/245

98.ヤードック、街を襲うが鑑定士の策の前に完敗



 鑑定士アインによって、ニーズホックの軍勢を撃破させられた、直後。


 砂浜にて。


 ヤードックの眼前にはアイン。

 手にもった剣を突きつけてくる。


 秘蔵っ子のニーズホックたちは、アインによって完璧に無力化された。


 今の手持ちで、アインを倒せるだけの戦力はいない。


「くっ……くくくっ、くははははは!」


 だがヤードックは高らかに笑った。


 それは決して、敗北を認められず狂ったわけではない。


「サルめ! これで勝ったと思うのか!? この軍師が、なんの策も講じず、敵の元へノコノコと現れると思うか!?」


 ヤードックは高らかに笑う。


「……なんだと?」


「わしは軍師! もし負けてしまったときを、想定していたのよぉ!」


 ヤードックは口のなかに手を突っ込み、目的のブツを取り出す。


 水晶玉を手にして、地面に転がす。


 アインは水晶玉を手にして、目を見開く。


「これは……」


「【遠見の魔水晶】! 遠くの映像を映し出すマジックアイテムよ! そこに写っているのは、貴様が暮らしていた王都の惨状よ!」


 勝ち誇った笑みを、ヤードックが浮かべる。


「王都の水路に、魚人サハギンの卵を潜ませておいたのよぉ! 今頃卵が孵化し、王都はサハギンの大群で埋め尽くされていることだろうなぁ!」


 アインはジッと、水晶を見つめている。


「貴様が異常に強いとは言え1人だけ! 遠く離れた場所の敵は倒せぬ! なにせ一人しかおらぬのだからなぁ!」


 ヤードックが邪悪に笑う。


「街は、魚人どもが今頃制圧した頃だろう! 貴様のせいだ! 貴様がわしにかまけている間に、愛するものどもは死ぬのだ!」


 アインはなにも言わない。

 動揺しているのだろう。


「しかし……案ずるな。わしは王都を制圧せよとは命じても、全員殺せとは命令していない……。が、わしの一声で、殺戮ショーが開始される」


 ヤードックは一歩下がり、立ち上がる。


 鑑定士は剣を下げている。


「さぁアイン。立場を理解したな? 武器を消しひざまづけ。抵抗はするなよ?」


 アインは精霊の剣をしまう。


 にぃ……とヤードックは口の端をつりあげる。


「バカなサルだなぁ。なぜ目的のために冷酷になれない? 名も知らぬ住民たちなど、捨て置けばわしに勝てたものがなぁ……」


 ヤードックは口のなかに手を突っ込む。


 対人間用の、致死性の毒が塗られたナイフを取り出す。


「…………」


 アインのそばまでやってくる。


「ははっ! 無様だなアイン! 貴様の敗因は、人外の強さを持ちながら! しかし人の甘さを持ち合わせたことだぁ!」


 ヤードックはナイフを振り上げる。


「人のことを散々こけにしてくれたなぁあああああ! 死ねぇええええええええ!」


 ザシュッ……!


 刃物が、肉を裂いた。

 ただし、ヤードックの、だ。


「うぎゃぁあああああああああああ!」


 アインの手には、精霊の剣が握られていた。


 彼が剣を振り、ヤードックの腹を割いたのだ。


「痛い痛い痛いぃいいいいいいいいい!」


 ヤードックはその場で転がりもだえる。


「貴様ぁ! よくもやりやがったなぁ!」


 憎しみを込めてアインをにらみ付ける。

 だが彼は平然と、ヤードックを見下ろしていた。


「ば、バカめ! おい魚人ども! 殺せ! 住民を皆殺しにしろおぉおおおお!」


 ヤードックが魔水晶に向かって吠える。


 水晶を介して、現場の魚人たちに声が届くのだ。


「はっ! 貴様は世のため人のためと言いながら、結局我が身かわいさに街のサルどもを犠牲にしたのだ! この偽善者め!」


 狂気の笑みをアインに浮かべる。


 自分はもうダメかも知れない。

 しかしアインの精神に多大なるダメージを与えられた。


「確かに俺は本心で人を守りたいって思ってるわけじゃない。偽善者って言われてもしょうがない」 

 

「だろう!」


「けど、優しくしてくれた街の人たちを、他人だと見捨てて犠牲になんか、絶対にしない」


 強い意思のこもった目を、アインはヤードックに向けてくる。


 それは精神をおられた弱者の目ではなかった。


 強き意思と力のこもった、強者のまなざしだ。


「ハッ……ハッ! 強がりもそこまでにしておくんだな! 今頃魚人どもが王都の人間を皆殺しにしてる!」


「そうかな? よく見てみろよ」


 アインは転がっていた魔水晶を手に取って、ヤードックに投げつけてくる。


 地面に転がる水晶を見て、ヤードックはフンッ、と鼻を鳴らす。


「ほれ見ろ! 王都が血に染まって……染まって……ない、だとぉおおおお!?」


 そこに写っていたのは、無人の王都だ。


 住民たちはおらず、いるのは魚人の、無惨な死体だけだ。


 建物に損壊はほとんど見られない。


「バッ、バカな!? なぜだ!? 魚人どもが征圧したはず!?」


「してねえよ。魚人どもは俺が全員殺した」


「ふっ、ふざけたことをぬかすな! 貴様はイマココにいるではないか! ならどうやって王都の魚人を倒したのだ!?」


「よく見てみろよ。いるだろ、俺が?」


 水晶を凝視する。

 そこには……鑑定士アインが、いた。


 しかも1人ではない。

 何人ものアインがいた。


「い、いったいなにが起きてるんだ……?」


 困惑するヤードックをよそに、アインが冷静に言う。


「おまえの作戦は、千里眼でお見通しだったよ。二手に分かれての王都制圧。だから王都には、分身体を残してきた」


 水晶のなかにいたアインが、炎となって消える。


 また、別のアインたちは、姿がぶれると、消えた。


「【陽炎分身】。炎で分身体を作る能力だ。それとシルフからコピーした【偏在】。実体をともなった分身をいくつも作れる。あとは並列思考と眷属操作を使って、自動で魚人どもを、分身たちに殺させてたんだよ」


「そんな……ばかな……」


「住民たちはエミリアとフェルに頼んで、王城に避難させている。俺と魚人どもの戦闘による住民の被害はゼロだ」


 ヤードックは地面に手をついて、呆然とする。


「ばかな……この軍師ヤードックを、上回る知能を持っていたのか……」


 見上げると、そこにはアインがいる。

 手には精霊の剣を持っていた。


「貴様……それほどまでの強さ、聡明さを持ち合わせていながら……なぜ人間たちの支配者とならない。貴様なら世界を手中に収めることなど容易かろうに……」


「そんなことに興味は無い。俺は、大切な人たちが笑ってくれていれば、それでいいんだ」


 アインがにじり寄ってくる。


「この力は、そのためだけに使う」


 闘気を剣に乗せる。


 そして、アインは渾身の力で、剣を振り下ろした。


 ズバァアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


 斬撃によって、ヤードックの体は完全に消滅した。


 消えながら、完全な敗北を悟る。


 ヤツは、生き物としての格が違った。


 こいつに負けることは恥じゃない。


 なぜなら相手は、人間を超越した、超人だったのだから。 

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― 新着の感想 ―
軍師ヤードックを、上回る『知能』を持っていたのか…… →いや、能力ではなくて? 色んな能力をコピーして使っていますし 軍師にしてはアホな事を言いますね それとも失礼ながらキャラにアホな事を言わせてい…
[気になる点] 自ら敵の前に出てきた時点で軍師としてどうなんだと思う 戦闘力にも自信のある軍師ならともかく [一言] 安定のサル呼ばわり
[良い点] 設定は面白い [気になる点] 内容が薄い [一言] 流し読みするならいいと思う
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