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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
5章

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94.鑑定士、アリスと水の街でデートする




 リヴァイアサンを討伐した翌日。


 俺は紫髪の美少女アリスとともに、王都の街を散歩していた。


「しかしみんな、どうしたんだろうな。急に都合が悪くなったって」


 元々今日は、精霊たちと街を見て回る予定だったのだが。


「……さ、さぁ?」


 アリスが明後日の方向を見ながら言う。


「……じゃんけん」


「? どうした」


「……なんでもない」


 俺はアリスとともに歩いている。


 彼女はうつむき、首筋まで真っ赤にしていた。


「……あの」


「ん? どうした?」


「……服」


「服?」


 アリスがスカートの端を持って、もじもじする。



 そのとき、ぐいっ、と左腕が引っ張られた。


 何だと思ってみやると、そこに誰も居なかった。


「……ちょっとお兄さん! なにぼけーっとしてるの!」


 視界が揺れる。

 そこには、ピナが居た。

 どうやら幻術で姿を消していたらしい。


「お姉ちゃんの服! ほめなきゃだめでしょっ!」


「あ、ああ……というかおまえどっから……」


「ちゃんと、ほめなきゃっ、めっ、です!」


「ユーリまで……おまえら何してるんだよ?」


「「これにてドロン!」」


 すぅ……とふたりが消えた。

 なんだったの?


「あ、ええっと……アリス」


 いつもは長袖にロングスカートと、あまり肌を見せない彼女。


 しかし今日は心なしかスカートの丈が短く、そして肩周りも肌を露出していた。


「その……今日の服キレイだよ。似合ってるし、やっぱりおまえもキレイだなって……アリス?」


 アリスはその場にしゃがみ込み、手で顔を覆って、ぷるぷると震えていた。


「だ、大丈夫か? 気分でも悪いのか?」


 俺はアリスに手を伸ばす。

 彼女は俺の手を取って、立ち上がる。


「……うれしい」


 アメジストの目に涙をたたえ、口元を緩ませる。


「……あなたに。そう言ってもらえて」


 その彼女の美しさに、俺は思わずドキッとしてしまった。


「そ、そっか。その……いくか」


 俺は彼女から、手を離そうとする。

 だがアリスが、俺の手を強く握ってきた。


「……だめ?」


「いや……いいけど」


 アリスが微笑む。

 ほんと、美人だよな……。


「……いけー! お姉ちゃん! そのままぶちゅーって~!」


「姉さまっ、そこですっ。ちゅっちゅっ」


 ……どこからか、精霊たちの声がした。


 姿を消して、俺たちを監視してやがるな。


「アリス。いこうか」


 俺はアリスの手を引いて走り出す。


 王都は人が多かったが、鑑定能力で最適なルートを選び、人にぶつかることなく先へ進める。


 ややあって、俺たちは水路近くの、レストランへとやってきた。


 店の外にイスとテーブルが置いてあった。

 外の席に座り、俺たちは料理を注文。


「ちょっとお手洗い行ってくるな」


 アリスを残して、俺はトイレを済ませる。

 そして戻ってきたのだが……。


「……にゃー」


 座っているアリスの膝上に、猫が乗っていた。


「……にゃー? お腹、すいてるのか、にゃー?」


 テーブルの上には、すでに料理が運ばれていた。


 アリスの膝の上の猫が、料理に目を奪われている。


 アリスが猫を撫でながら言う。


「……にゃー。おなかすいたよー。お姉さん、食べたいにゃー。……しょうがないにゃー」


 アリスは微笑むと、運ばれていた料理のうち、ピザをひとかけら手に取る。


 猫がピザを食べる。


「……おいしいかにゃーん? にゃーん、とってもおいしいにゃーん」


 と、そのときだ。


 ぱちっ、と俺とアリスの目が合った。


「あー……その……」

「~~~~~~~!」


 アリスは顔を真っ赤にする。

 目をぐるぐる巻きにして、がたたっ! と席から落ちそうになる。


 猫はびっくりして、アリスの膝上から降りて、どこかへ逃げていった。


「「…………」」


 俺たちは無言だった。


「アリス。にゃーん、ってなんだったんだ?」


「……なんでもない」


 しまった。

 アリスが気まずそうだ。


 そりゃそうか。

 猫と戯れている姿を見られたんだもんな。

 フォローせねば。


「け、けどその……か、かわいかったぞ」


 アリスが耳の先まで真っ赤にして、うつむいてしまった。


「あ、いやその……変な意味じゃなくてさ。おまえって、結構動物に優しいんだなーって。新しい一面が見れて良かったていうか……」


 アリスは他の精霊たちと比べて、何を考えているのかわかりにくい。


 クールな美少女だが、ともすれば、冷たい印象受ける。


 けれど、猫と戯れているアリスは、年相応の女の子に見えた。


「……そう」


 アリスは口元をゆるませて、微笑んだ。


「猫好きなのか?」

「……ええ」


 するとアリスの足元に、さっきの猫がまとわりついていた。


「まだ腹減ってるんじゃないか?」


「……しかたのない子ね」


 ふふっ、とアリスは笑うと、ピザを1つ手に取って、足元に置く。


 猫は嬉しそうにピザを食べていた。


「……ゆっくり食べて良いのよ」


「いいんだにゃー? って言わないのか?」


 するとアリスが俺を見て、唇を尖らせる。

「……アイン君のいじわる」


「ごめんって。なんかピナの気持ち少しわかったよ。アリスっていじると楽しいな」


「……ばか」


 彼女はそっぽ向いて、しかしふにゃふにゃと頬を緩ませていた。


 ややあって、食後。


 俺たちはレストランを離れる。


「にゃー」

「……まだついてくる」


 アリスの後を、さっきの猫がついてくる。

「おまえのこと気に入ったんじゃないか?」


 俺たちはしゃがみ込む。

 猫には、首輪がしてなかった。


「飼い猫……じゃないな。それによく見たら子猫だ」


「……おまえ、お母さんは?」


 にゃー、と子猫はなくだけだ。

 アリスの足元にやってくると、すりすりと頬ずりしてくる。


「親とはぐれたんじゃないか?」

「……そう」


 アリスは子猫の頭をなでる。

 だが眉を八の字にして、困ったような表情をしていた。


「……アイン君」

「どうした?」


 アリスは、何度も何度も、何かを言おうとしてやめていた。


「……なんでもない」


 アリスは立ち上がると、先へ進もうとする。


 名残惜しそうに、何度も猫を見ていた。


「なるほど。飼いたいんだな?」


 俺は子猫を持ち上げて、アリスのそばへ行く。


「いいんじゃないか」

「……でも」


「アリスはもっと、したいこととか、言いたいこと言った方が良いと思うぞ。妹たちみたいにさ」


 俺は子猫を、アリスに差し出す。


「……アイン君。この子、飼いたいわ」


「良いと思う。親とはぐれた野良猫みたいだし。おまえがお母さんの代わりだ」


 ほら、と俺はアリスに子猫を手渡す。


 アリスは、きゅっ、と猫を胸に抱く。


「……ありがとう」

「いや、別に俺何にもしてないけど」


「……優柔不断なわたしの背中を押してくれた。本当にありがとう。……だいすき」


「え? なんだって?」


 かぁ……とアリスは頬を染めると、足早にその場を後にするのだった。

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[良い点] クーデレは、大正義!!
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