90.鑑定士、精霊たちとプールに入る
聖地から帰ってきた、数日後。
ネログーマ王都内にある、【大使館】にて。
俺は【プール】とやらにやってきていた。
「ここ、海でもないのに泳げるんだな」
俺は水着になって、プールサイドにたっている。
『獣人国は水源が豊富なため、こうして生活用以外の用途でも水が使われているようじゃな』
ちなみにここは大使館の部屋の一画だ。
室内プールというらしい。
魔法で水の温度を調整し、あらゆる季節で泳ぎが楽しめるそうだ。
「アイン、さ~ん♡」
更衣室から、金髪の麗しき美少女が、こちらに向かって走ってくる。
真っ白な裸身に、真っ白なビキニ。
大きな胸は水着からこぼれ落ちそうだ。
「お着替え、して、きましたっ」
「そ、そうか……」
「ちらり……ちらちら?」
ユーリが頬を赤らめながら、翡翠の目を俺に向けてくる。
『この鈍感男め。娘が水着の感想を言って欲しそうに見ておる。なんとか言ってやれ阿呆め』
「あ、えっと……よく似合ってるぞ」
「♡」
ふにゃふにゃ、とユーリが頬を緩ませる。
「お兄さ~ん☆ おまたせ~☆」
「…………」
ピナとアリスがやってきた。
ピナは水玉模様のビキニ。下にフリルがあしらわれている。
アリスは落ち着いた色のワンピースタイプ水着だった。
「どうどうお兄さん? 背はちっこいけど胸は意外とおっき~でしょ~」
ニヤニヤ笑いながら、ピナが俺の腕にしがみつく。
ゴムまりのように弾力のある乳房が、俺に腕に当たって気持ちが良かった。
「アリスお姉ちゃんも見てあげて! ぺったんこじゃないんだよ。ほらほら~」
「アイン、さん。姉さま、の、水着……感想、いって!」
妹二人が、アリスの背中を押し、俺の前に連れてくる。
「その……なんというか、普通にキレイだな」
「…………」
アリスは顔を真っ赤にすると、そのまま走って、プールに飛び込んだ。
「お兄さんやるね~。よっ、精霊たらし!」
にやにや笑いながらピナが、俺の脇腹をひじでつつく。
「やぁやぁ皆の衆、おまた~」
「めぃもきましたよー!」
クルシュとメイが着替えて出てくる。
メイは黒いワンピース? みたいな水着だった。
胸には【めー】と張り紙がしてある。
「お~。メイちゃん【スク水】とは、基本を抑えてるね~☆」
たまに謎単語言うよな、精霊って。
「ぬふふ~。どうだいアイちゃん。お姉さんの色気抜群の水着姿にメロメロか~い?」
クルシュはヒモみたいなきわどい水着を着ていた。
もとより大きな胸が、完全にこぼれ落ちていた。
局部だけが隠されてて、非常に目のやり場に困る。
「さっ。サービスショットはこれくらいにして~。泳ごうぜ☆ お兄さん」
ピナが俺の腕を掴んで、プールに走る。
ジャボンッ、と水につかる。
「ユーリお姉ちゃんも早く早くぅ~」
「まっ、てぇ~……」
ユーリは恐る恐る、水に片足を入れる。
足が水に入れた瞬間、ぴゃっ、と足を引く。
「もしかしてユーリお姉ちゃん、泳げないの~?」
「うそー! ゆぅちゃんおよげないなんて、めぃだっておよげるのにー!」
メイは、すい~っと実に器用に泳いでる。
「おっ、およげる、もんっ!」
「ほほぅ。じゃあお水に入ってみよっか~。妹よ~」
クルシュがユーリの背中を、とんっ、と押す。
ばっしゃーん……!
ユーリが、顔面から水にぶつかった。
「あぷっ、あぷっ、あ、アインさ~ん! た、たすけてぇ~!」
ばしゃばしゃ! とユーリが溺れている。
俺は慌てて彼女のもとへ向かった。
「ユーリ、落ち着けって」
ユーリが俺の体に、抱きついてきた。
「こわ……こわかったぁ~……おぼれしぬ、ところ、でした……」
ユーリの胸が、俺の胸板に押しつぶされ、ひしゃげていた。
ビキニから覗く彼女の谷間。
そして、こぼれ落ちそうな彼女の白い果実に、俺は動揺した。
「その……ユーリ。離れてくれ」
「アインさん、いや、です! はなさ、ないで!」
むぎゅーっとユーリが力強く抱きしめる。
アアそんな強く抱きしめたらっ!
ぷるんっ、とビキニの上着から、乳がこぼれ落ちた。
「ゆ、ユーリ。落ち着け。ここ足付くから」
ユーリが恐る恐る、足をつける。
そして、自分の胸が出ていることに気付いたようだ。
「~~~~~!」
ユーリが声にならない悲鳴を上げ、水の中に体を隠す。
「お、みぐるしい、ものを……」
「い、いやいや! そんなことないって! き、キレイだったからマジで!」
「ほ、んと? ……えへへ~♡ なおして、きまぁす♡」
ユーリはビキニを手に、上機嫌に、更衣室へと戻っていく。
その様子を、他の姉妹たちが、ジーッと見ていた。
「……なんだよ?」
「青春だね~ぇ。お姉ちゃん、うらやましいわ~」
「お兄さん良かったね☆ お姉ちゃんの生乳みられてっ! 役得っ!」
「…………」
「あーちゃんどうして、おちこんでるのー? げんきだしてくださいっ!」
アリスが死んだ表情で、自分の胸部を触っていた。
「や~、アイちゃんよぅ。ほら、我が麗しの妹君が、落ち込んでるよ~」
「ほらお兄さん! フォローしてあげないと!」
こいつら……!
楽しんでやがる!
まあしかし、落ち込んでいる彼女は放っておけなかった。
「あー……その。アリス。おまえはそのままで、十分キレイだから」
「…………」
アリスはピシッ! と体を硬直させると、その場で沈んだ。
1分くらいしても、上がってこなかった。
「おっ、大丈夫か!?」
俺はアリスを引っ張り上げる。
彼女は、ぐったりしていた。
「ここれは定番の人工呼吸イベントだ~~!」
ピナがめちゃくちゃ嬉しそうに叫ぶ。
俺は急いでアリスを、プールの外に連れ出した。
くったり、とアリスが力を抜いて倒れている。
「アイちゃんほら~。人工呼吸しないと~」
「な、なんだそれ……?」
「アリスお姉ちゃんの唇にぶちゅっ、とキスして、そのまま息を吹き込むんだよ!」
「はぁ!? なんだよそれ!?」
そんなもので息を吹き返すとは到底思えなかった。
「アイちゃん、今は緊急事態だ。今すぐ助けないと大事な妹が……くっ……!」
「うぇええん! あーちゃん死なないでぇえええ!」
メイがそばで泣いている。
クルシュたちは、ニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
「…………」
アリスは、目を閉じて……しかし、頬を赤く染めながら、唇をすぼませている。
「アリス」
「…………」ぴくっ。
「おまえ……本当は意識あるんじゃ?」
「あーもうっ! ダメだよお兄さん! 空気空気!」
「ほら、ぶちゅっと~。ぶちゅ~って」
俺はため息をついて、アリスの体に覆い被さる。
みずみずしい唇に、俺の唇を重ねる。
そして、息を吹き込む。
「これでいいか?」
アリスは、顔から湯気を出し、気を失った。
「「いえ~い! やった~!」」
ピナとクルシュは、楽しそうにハイタッチしてたのだった。




