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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
4章

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77.イオアナ、最底辺まで落ちぶれ闇落ちする



 鑑定士アインが、精霊たちと楽しい日常を送る、一方その頃。


 レーシック領を流れる河川。

 その下流にて。


「ゲホッ! ゴホッ! ゲホッ!」


 魔族イオアナは、川から上がり、大の字になって寝ていた。


「ぢぐしょ~……」


 イオアナは、先日アインの炎攻撃を受け、命からがら、逃げてきたのだ。


 そこから川に流され、翻弄され……。


 やっとの思いで川から脱出したときには、精も根も尽き果てていた。


 しばし、その場から動けなかった。


 一夜が明けて、ようやく動けるようなった。


「なぜだ……体力が、以前のようにすぐ回復しない。いったいどうなってるんだ……?」


 重たい体を引きずりながら、イオアナは歩く。


「アインめ……今度こそ……今度こそ……」


 と、そのときだった。


「おや~?」

「そこにいるのって、魔公爵のイオアナ様じゃねー?」


 森の茂みから、魔族が2人、現れたのだ。


「君ら……なに?」


「おれらこれから、王都に行ってちょっと観光にーって思ってさ」


「なっ……!? お、おまえらアインを倒しに魔界からやってきたんじゃないのか!?」


 イオアナを見て、魔族二人がぷっ……と噴き出す。


「いやもうそういうの、ダサいっすよ」


「そーそー。どーせあのバケモノ級に強いアインなんて、だーれも倒せないんですって」


「最近じゃ、アインの強さが魔族連中に伝わってるのか、人間界へ行くやつら減ってるって話っすよ~」


 それを聞いたイオアナは、ぎり……と歯がみする。


「おまえら……恥ずかしくないの?」


「は? なんすか急に?」


「魔族として恥ずかしくないのかって言ってるんだ! 人間ごときサルに負けるならまだしも! 戦うのを最初から諦める? 魔族としての誇りを忘れたのか!?」


 すると魔族たちが顔を見合わし、ゲラゲラと笑う。


「な、何がおかしい!?」


「いや誇りってさぁ……イオアナ様」


「あんた……アインの寝込みを襲おうとして、返り討ちに遭ったんだって?」


「なっ!? ど、どうしてそれを!?」


 その現場は、誰も見ていないはずだった。

 しかし、なぜかこの低級魔族どもは知っている。


「いやぁ、ぷぷっ! 上級魔族様はすることが立派だなぁ!」


「敵が寝てるところを襲うなんてなぁ! その上で負けるんだから、ほんとたいした御方だよ!」


「「ぎゃはははは!」」


 ギリ……とイオアナは拳を強く握りしめる。


「う、うるさい! だまれぇえええ!」


 イオアナは、闘気を乗せた一撃を、魔族たちにお見舞いしようとした……そのときだ。


 ぺちん………。


「は? な、なんで!?」


 イオアナは自分の拳を見やる。


 確かに闘気を乗せて、拳を繰り出したはず。


 本当だったら相手は一発で消し飛ぶ。


「ぷぷっ! なんですかそのヘロヘロのパンチ~?」


「パンチっていうのは、こうやるんだよっ!」


 バキィッ……!


「ぐぇえええええええええええええ!」


 魔族からの一撃を受け、イオアナは吹っ飛び、無様に地面に転がり込んだ。


「うっわ、よっわ! おれら男爵級だぜ?」


「うわー……【言ってたとおり】だったわー。まじ、弱くなってるんだなぁ~」


「つーか、下級魔族に負けるのってどうなん? 仮にも元は上級魔族だったのに」


「なんつーか……落ちぶれちまったな。いこうぜ、萎えたわ」


 魔族たちは白い目でイオアナを見下ろすと、そのまま立ち去っていく。


 イオアナは脳しんとうを起こし、その場で、気絶する。


 ……ややあって。


「…………ちくしょう」


 イオアナは、目を覚ます。


 無様に、地面に大の字で寝ていた。


「ちくしょう……なんでだよ……。どうして、あんな雑魚にまで負けるんだよぉ……」


 元上級魔族だったという事実が、イオアナをさらに惨めにさせた。


 うっ、うっ……と泣いていたそのときだった。


「それはねイオアナ。闘気の大部分を、アインに吸収されたからよ」


「え、エキドナ様っ!」


 ダークエルフの美女エキドナが、イオアナをのぞき込むようにして立っていた。


「こんばんは、イオアナ。いい夜ね」


「エキドナ様! さっきのはどういうことなんだよ!?」


「アインは精霊の剣と言って、闘気を吸収する特殊な剣を持っているの。挑んで負ければその都度、闘気を吸い取られる。あなたは3度負けた。その分莫大な闘気を持って行かれたの」


「だから……男爵級の雑魚に負けたのか……」


 合点がいったが、しかしじゃあどうするか?


「闘気は、どうやったら戻るんですか!?」


「残念だけど失った闘気は、もう戻らないわ」


「そんなぁ~…………」


 深い絶望に、イオアナは見舞われる。


「いやだよぉ……ボクは、もう一度魔公爵になるんだぁ……こんなところで、終わりたくないよお……」


 情けない声を上げ、涙を流していた……そのときだ。


「一つ、手がないこともないわ」


 エキドナが微笑みながら、イオアナのそばにしゃがみ込んだ。


 右手を差し出す。


 その上には、赤い結晶が乗っていた。


 それは目玉にも似た形をしていた。


「エキドナ様……これは……?」


「これを取り込めば、あなたは莫大な闘気を取り戻し、以前よりも遥かに強くなれるわ」


「ほっ、ほんとですかっ!?」


 イオアナは赤い目玉を手に取ろうとして……躊躇する。


「…………」


「どうしたの?」


「いや……その……なんだか、いやな予感がして……」


 どくん、どくん……と、エキドナの手の上の目玉が、脈動している。


 ギョロッ! と目玉が動いて、イオアナの目と会う。


 表現できない恐怖を感じた。


「そう……」


 エキドナが落胆した表情で言う。


 立ち上がって、イオアナを見下ろす。


「じゃあそこで一生、虫けらのように転がってなさい」


 きびすを返すと、エキドナは立ち去ろうとする。


「ま、待って!」


 イオアナは体に残ったの力を振り絞り、エキドナの足にしがみつく。


「お願いします! それを……ボクにください!」


 エキドナがしゃがみ込む。


「そう、良い子ね。さすが元とはいえ魔公爵だわ。強さに貪欲な子、わたし、大好きよ」


 エキドナが、赤い目玉をつまんで、イオアナの眉間に押しつける。


 ズブッ……!


「ギャァアアアアアアアアアアア!!」


 突如、イオアナの体に、激しい痛みが走った。


 目玉から、凄まじい量のエネルギーが流れ込んでくる。


 否、流れすぎて、体の中に入りきらない。

 エネルギーはどんどんと、イオアナの体に蓄積されていく。


 その体に収まりきれなくなったのか、徐々に、イオアナの体が膨れ上がっていく。

 メキッ! メキメキメキメキッ!


 体がきしむ。

 肉が膨らむ。


 さっきまで通常サイズだったイオアナは、今は見上げるほどの巨体へと変貌していた。


 メキメキッ! メキメキメキメキッ! 


 なおもイオアナは、膨れ上がる。

 膨張はもはや、誰にも制御できないようだった。


「さぁ、坊や。第2ラウンドよ。はるか巨大な敵に、あなたはどう対処するのかしら?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 投稿拒否しないでくれていて有難うございます m(_ _)m (というより読んでいないせいだと思うけど) ある作家先生にはもう拒否されてるくらい、 既に好き勝手感想書いてます ちなみにあちら…
[一言] 毎回とても楽しく読ませていただいています。 毎日休まず投稿とても大変なご苦労だと思います、 本当にありがとうございます! 体に気を付けてこれからもワクワクする作品続けてください。
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