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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
4章

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75/245

75.イオアナ、鑑定士の分身にすら敗北する



 鑑定士アインが、精霊たちから看病を受けた、数日後。


 夜。

 レーシック領の森の中にて。


 元上級魔族イオアナは、アインたちが泊まっている村を、遠目に見ていた。


 深夜ということで、人が外に見えない。

 

「……今から、地獄を見せてやる」


 イオアナの右手には、魔法の火の玉が浮かんでいる。


 そして手を大きく振りかぶり、レーシックの村に、火を放った。


 ドガァアアアアアアアアアアアアン!


 魔法の炎が、村を焼く。


「燃えろ燃えろぉ! アインごと死んじまえーーーーー!」


 燃え盛る炎を前に、イオアナが狂ったように笑う。


 アインに何度も負けた。

 今度こそ勝ちたかった。


 だから、寝静まった頃合いを狙ったのだ。


「寝込みを襲おうが何しようが、勝ったヤツが正義なんだよぉ! はーはっはっはーーー!」


 と高らかに笑っていた、そのときだ。


「…………」


 燃えさかる炎の中で、ゆらりと立つ人影があった。


「アイン……会いたかったよぉ~……」


 彼は、幽霊のように、ふらふらとした歩みで、イオアナの元へとやってきた。


 その【目】に生気は無かった。


 とても、【生きてる人間】には【見えなかった】。


「ははっ! ざまぁないなぁ! アイン! おまえのせいで領民は死んだんだ!」


 アインは、無言だった。

 うつろな目の奥には、憎しみの【炎】が見えた。


「本当は寝込みを襲って殺そうと思ったけど……まあいいや。今の憔悴しきったおまえなら! 楽勝だからねぇーーーー!」


 イオアナは拳銃を取り出し、闘気を弾丸に込めて打ち出す。


 ドドゥッ!


 射出した弾丸が、超高速でアインへ向かって飛んでいく。


 アインは精霊の剣を取り出す。

 軽く、弾丸を弾く。


 だが打ちもらした弾が、肩に被弾した。


「勝てる! 勝てるぞぉおお!」


 イオアナは両手に拳銃を持ち、アインに発砲する。


 アインはこちらに近づいてくる。


 だがやはり精神的ダメージが大きいのだろう。


 彼の剣は、以前のような冴えはなかった。


 銃弾を撃つ。

 彼が弾く。


 彼が剣を振る。

 イオアナがそれを避けて撃ち返す。


 さすがというべきか。


 彼は精神的ダメージを負い、そして手負いだったにもかかわらず、イオアナと互角だった。


 だが……。


 ドドゥッ! ドドゥッ!


 アインの剣を回避し、その両腕に弾丸を撃ち込んだ。


 彼の手から、剣が落ちる。


「ははっ! 武器が落ちてるぞアインくんよぉおおおおおおお!」


 ドドゥッ!


 今度は両足を狙う。

 足に傷を負ったアインが、がくっ、と膝を折る。


「どうしたもうお仕舞いか!?」


 イオアナが銃口を、アインの眉間に突きつける。


 その引き金を引こうとした……そのときだ。


 バッ……! とアインが地に伏せる。


「なに!?」


 アインは、落ちている剣を口でくわえると、超高速でイオアナに肉薄する。


「くっ……!


 ドドゥッ!


 イオアナの銃撃を、彼は間一髪で避ける。

 そして口にくわえた剣で、イオアナの右腕を切り飛ばす。


「ひぃっ……!」


 アインはそのまま、体を回転させ、イオアナの首を撥ねようとする。


「う、うわぁあああああああ!」


 イオアナは目をつぶり、死を覚悟した。


 ……しかし。


「………………あれ?」


 いつまで経っても、イオアナに攻撃が来ない。


 不審に思って目を開ける。

 そこには……地面に倒れた、アインの姿があった。


「はぁッ、はぁッ、はぁッ、な、なにがどうなった?」


 アインの両手足、そして腹部から、大量の血がもれていた。


 どうやら彼がとどめを刺す前に、血を失いすぎて、アインは死んでしまったのだろう。


「はは……な、なんだよ……びびらせやがって……」


 イオアナはその場にへたり込む。

 恐怖で膝が震えていた。


 しかし……。


「あはは! 勝った! 勝ったぁあああああああ!」


 イオアナは狂ったように叫びながら、アインの死体を踏みつける。


「どうだ!? サルめ! ボクを散々! こけに! しやがって!」


 アインの死体を、何度も何度も踏みつける。


 そして彼の死体に、銃弾を撃ちまくる。


「見てくださいましたかぁ!? ボクは勝ちましたよぉーーーーーー!」


 イオアナは天を仰ぎ、大声で叫んだ……そのときだった。


『いったい、誰にだよ?』


 むくり、とアインが起き上がったのだ。


「は……? はぁああああああ!? アイン!? な、なんで!? 何で生きてるんだよぉおおお!?」


 ズタボロだったアインが、立ち上がっている。


『まず、周りをよく見て見ろ』


 イオアナが言われたとおり、炎で廃墟と化した村を見やる。


 しかし……。


「なっ……! 村じゃない! これは……ただの木か!」


 焼け焦げたそれらは、木でできた偽物だった。


『俺が創樹の力で作った、木の模型の村だ。暗かったせいで本物と見間違えたんだろ』


「ばっ、バカな!? じゃ、じゃあ目の前のアインは……って、なんだこれは!?」


 アインだと思っていたものは、炎の塊だった。


 人間の形をしてはいるが、まごう事なきただの炎。


『そいつは陽炎分身。炎で作った俺の分身だ。幻術と併せて本物そっくりの質感、手応えを演出して見せた』


 イオアナはその場で、膝をつく。


『おまえらが昼夜問わずやってくるからな、俺が寝てる間、魔族の相手をそいつにやらせてたんだよ』


 アインの説明は、しかしイオアナの頭に微塵も届かない。


『眷属操作と並列思考を応用し、自動で動くようにした。強さは数段落ちるけど、イオアナ相手でも結構やれることが実証された。実験につきあってくれてありがとな』


「そんな……ボクは、木偶人形を倒して勝ち誇ってたのか……」


 ゆらり……とイオアナが立ち上がる。


「……どこまでも、ボクをこけにしやがってぇえええ!」


 イオアナは、銃口を炎の分身めがけてかまえる。


 だが分身は、イオアナが発砲するよりも早く動く。


 イオアナの手を、剣で切り飛ばし、心臓に刃を突き刺した。


 そして分身が炎の塊へと変化し、そのままイオアナの体を焼く。


「ぎゃぁあああああああああああ!!!」

 

 イオアナは炎に飲まれ、その場で無様に転がり回る。


「熱いぃいいいいいいい!」


 ゴロゴロと転がりながら、イオアナは炎に身を焼かれ続けた。


『……おまえさ、やっぱ学習しないよな。こんだけ敵を送り込ませ続けたら、相手も対策取るって、普通なら考えるぜ?』


 アインの声が、冷たく響く。


「くそがぁあああああああああ!」


 イオアナは炎に焼かれながら、必死になって逃げる。


 もう死ぬ! と思ったそのとき。


 がッ……!


 どぼぉーーーーーーーーーん!


 イオアナは、レーシック領に流れる川に、落ちたのだった。


「げぼっ! ごぼぼぼっ! ごぼぉおおおおおおおお!」


 炎は消えたが、激しい川の流れに、なすすべ無く翻弄される。


 息ができない。


 もがき苦しみながら……やがてイオアナは意識を失ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] イオアナはスキル【環境適応】持ってるんだから激流の中でも息できる気がするんだが
[気になる点] だああかああああらあああ なんでこいつだけ毎回逃がすんだよwwwww 平和的な性格だけど仕事で仕方なくやってる奴とかなら判るけどさ こいつ心底悪人じゃん なに?ドロンジョ一味とかバイ…
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