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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
4章

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66.イオアナ、負けたことを仲間から馬鹿にされる



 鑑定士アインが、第4ダンジョンをサクサク攻略していく、一方その頃。


 魔界の中枢、魔王城。


 その大会議室にて。


 エキドナを除いた、【12人】の魔公爵たちが集結していた。


 魔界は貴族制度を取っている。


 貴族は実力によって5つの階級に別れる。

 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。


 特に【公爵】は、魔貴族たちの中でもトップの実力を持つ。


 ゆえに、公爵家の人間たちは、【上級魔族】を名乗っている。


 エキドナは、会議室の円卓に腰を下ろす公爵たちを見回して、言う。


「今日はみんな、私の呼びかけに応じ集まってくれてありがとう。12人全員、欠けることなくそろってくれて嬉しいわ」


 上級魔族12人が、いっせいに頭を下げる。


「さて、今日の議題は、鑑定士アインについて。みんなと情報共有がしたくて集まってもらったの」


 イオアナは周囲を見渡す。

 自分と同じ公爵家の人間が、11人。


 その全員が、こちらをちらっと見て、影口を言ったり、クスクスと笑ったりしている。


「その前に、ちょっといいかね?」


 魔公爵のひとり、最年長【ゴーマン】が手を上げる。


「何かしら、ゴーマン?」


「我ら上級魔族の恥さらしの、処遇について話し合うべきだと我が輩は思うのだがね?」


 ゴーマンが、イオアナを見る。

 その目は確実に、他人を馬鹿にする目だった。


 残りの10人も、ゴーマンと同様、イオアナを見下していた。


「は? なにそれ? 誰のこと言ってるの?」


 イオアナの声に、いらだちが混じる。 


「貴様を置いて他に誰がいるのかね? イオアナ。非魔族のサルごときに負けるなんて、恥さらし以外のなんだというのかね?」


 ゴーマンがフンッ、と鼻を鳴らし、見下しながら言う。


 ギリ……とイオアナが歯がみする。


「ボクは、負けてない」


「これは驚いた。無様に胴を切断され、ノコノコ魔界に帰ってきた。しかも相手に一切の致命傷を与えられずに。これを敗北と言わず何というのかね?」


 イオアナは何も言い返せなかった。


 一方その様子を、集まっていた他の魔公爵たちが見て、ヒソヒソ声で言う。


「……いつもあんだけ大物ぶってたくせに負けるとか」


「……闘気オーラも使えないサルに負けるとか恥ずかしくないのかしら?」


「……自分はキレると誰よりもヤバいですよ的な雰囲気出してるのに、子供に負けるんだもんなぁ」


 ドガンッ……!


 イオアナは拳銃を取り出し、円卓の中央目がけて発砲した。


「口を慎みなよ君たち……? 次は殺すよ?」


 いつもならこれで、魔公爵たちは黙る。


 しかし彼らは、クスッと笑った。


「負け犬の分際で、凄んでもなぁ」


「非魔族のサルに足をすくわれ、オメオメ帰ってきたやつのセリフだと思うと、ぜんっぜん怖くないわ」


「「「ギャハハハハッ!」」」


 イオアナは歯噛みする。

 拳銃を握る手に、より一層力が入る。


「……殺す」


 仲間たちに向けて、発砲しようとした……そのときだ。


「イオアナ。落ち着きなさい」


 手から、拳銃がなくなっていた。


 エキドナが微笑んでいる。

 その手には、イオアナの拳銃が握られていた。


「彼らは仲間でしょう? 向ける相手を間違えてはいけないわ」


 エキドナは円卓に拳銃を置くと、慈愛に満ちた眼をイオアナに向ける。


「は? 黙りなよ。ボクに命令するな」


 それを聞いた他の魔公爵たちが、抗議の声を上げる。


「なんだその言い草は!? エキドナ様は貴様を助けてくださったんだぞ!」


「ほんとよ! 【ゲート】を開くのが後少しでも遅かったらあんたは死んでたのよ!? もっと感謝なさい!」


 魔公爵たちが全員、イオアナに侮蔑のまなざしを向ける。


「……ウザいんだよ」


 乱暴にイスから立ち上がると、イオアナは会議室から出て行こうとする。


「待ってイオアナ。どこへ行くの?」


 エキドナが微笑を崩さずに言う。


「決まってるじゃん? ボクのことをコケにした、あの鑑定士のところだよ」


 あのアインとかいうくそがきに、復讐しなければ気が済まないのだ。


「ぷっ。また負けるんじゃないのー?」


 公爵の一人が、イオアナに嘲笑を向けてくる。


「は? そんなわけないじゃん。ボクはあのときは本気を、【闘気オーラ】を出してなかったんだよ? 適当抜かすと君も殺すけど?」


 闘気。

 上級魔族のみが使える、特殊技能。


 ひとたび使えば身体能力を超向上させ、【無双】の力を手にできる。


 イオアナはエキドナの元へ行く。


「ねえエキドナ様。ボクにもう一回いかせてよ。次はきちんとあのサルを殺してくるからさ」


 するとそれを聞いた魔公爵たちが、ぷっ……と噴き出す。


「前も散々イキリ散らして負けたのに、これでまた負けたら、今度こそ【降格】させられちゃうわね」


 魔貴族は実力主義。

 力が無いと判断されれば、下の位に降格は十分に考えられる。


「黙ってろ。ボクはエキドナ様と話してるんだ。……ねえ、いいでしょ?」


「そうね。じゃあ今度はしっかりと、鑑定士の息の根を止めてきなさい」


 エキドナは立ち上がって、イオアナに拳銃を手渡す。


「アインは第4の隠しダンジョンを昇っている最中よ。【天竜】をかしてあげるわ。それに乗っていけば、アインたちが頂上に着く頃には到着できると思うわ」


 イオアナは拳銃を受け取ろうとする。


「ただし……」


 ひょいっ、とエキドナが拳銃を持ち上げ、にこりと笑う。


「次に失敗したときは、きちんと責任を取ってもらうからね」


 エキドナは笑みを崩さない。

 だが目の奥に、冷たい物を感じた。


 だがすぐにイオアナは首を振って、威勢よく言う。


「ハッ……! 誰に言ってるの? 本気出したボクが、あんなサルに負けるわけないじゃん。絶対。100%。あり得ないよ」


 バシッ、とイオアナは乱暴に拳銃を受け取る。


「いいよ? 次の戦いでボクが負けたら責任でもなんでも負うよ」


 それだけ言って、イオアナは会議室を後にする。


「……ぷぷっ。あれだけ言ってまた負けたら傑作だわ」


「……最初あいつが最年少で公爵になったときは、天才が現れたって思ったけど、蓋を開けてみればたいしたことなかったんだな」


 背後で、同僚たちの嘲笑が聞こえる。


 今すぐにでも握っているこの銃で、全員を撃ち殺したかった。


 だがそれよりも、アインだ。


「アインめ! よくもボクをコケにしてくれたね!」


 イオアナは拳に、【闘気オーラ】を集める。


 そのまま、魔王城の廊下の壁を、叩いた。


 ドガァアアアアアアアアアアアアン!


 難攻不落と名高い魔王城の壁が、紙のように容易く粉砕された。


「殺す! 絶対殺す! 闘気が使えればボクが負けるわけないんだ! あのサルめ! 覚えていろよ!」


 イオアナは邪悪な笑みを浮かべると、廊下の奥へと消えていったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 場所わかってるのなら何で自分で他の世界樹破壊しないのかね
2020/02/02 02:23 退会済み
管理
[一言] 紙を粉砕できる人って、逆にすごい。
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