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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
3章

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58.鑑定士、領地の食糧問題を解決する



 オーガ・キングを倒した数時間後。


 俺は、レーシック領にある、ペトラたちの村へと到着していた。


 彼らに挨拶をするのが目的だ。


「これはこれは! アイン様! おひさしぶりでございます!」


 村長が俺を出迎えてくれる。


「ユーリ様もお元気そうで何よりです」


「こ、んにち……は」


 ユーリが俺の後に隠れつつ言う。


「おおーい! みんなー! アイン様とユーリ様がおいでになったぞー!」


 村長が声を張ると、村に居た人全員が、俺たちの元へと駆け寄ってきた。


「アイン様!」「いらっしゃーい!」「ユーリ様ぁ!」「今日もお美しー!」


 あっという間に、俺たちの前に、人だかりができた。


 皆笑顔で、俺の手を握ったり、ユーリに手を振ったりする。


「ほらユーリ。みんなに挨拶しような」


「えと……み、みなさん……おげんきです、か?」


「「「元気でーす!」」」


「そ、れは……良かった、でーす!」


 ユーリが明るく笑う。


「さぁさぁアイン様! 遠かったでしょう? 村長である私の家へご案内いたします」


「あー! ずるいぞ村長!」


 別の村人が、俺の手を引く。


「アイン様! ぜひウチに来てくれ! この間のお礼がしたかったんだ!」


 するとまた別の村人が、俺の腕を引っ張る。


「アイン様、こんなむさ苦しいおっさんども家より、あたしの家に来なよ! たくさんもてなすからさ!」


 その後も次々と、村人たちが俺を誘いまくってきた。


 結局収拾つかないということで、当初の予定通り、村長宅へと向かった。


 居間にて。


「いやぁアイン様、申し訳ない。村人たちが大変失礼なことをして」


 和室に正座する俺たち。


「ただお気を悪くなさらないでください、村人たちはみなあなた様が大好きなのです」


「まっ、そりゃ当然だよねっ! なにせうちのダーリンは村を救った英雄なんだからさ!」


 村長もペトラも、裏表のない笑みを俺に向けてくる。

 

「しかしまさか、アイン様がこのレーシック領の領主になられるとは。なんたる僥倖! 領民たちもみな喜びますぞ!」


「いや、大げさだろ。前の領主とちがって俺は素人だぞ? 領民のみんなに今以上に迷惑かけると思う」


「とんでもない! 前領主がやめたことで、みな大喜びですぞ!」


 村長、そしてペトラが、うんうんとうなずく。


「前の領主がひっどい人でさぁ。偉そうなだけで何もしてくれないの!」


「こちらからの要望は全て無視。関心事は徴収する税のことばかり。まったく酷い領主でした」


 どうやら前レーシック領の領主は、結構不評だったみたいだ。


「ミラ、前の領主って今どうしてるんだ?」


 背後に控えていた獣人従者に、俺は尋ねる。


「レーシック領を取り上げられ、別の小規模な領地をあてがわれたそうです。ただそのことでかなり不満があるそうで、先日からアイン様のもとへ抗議手紙が来てました」


「領地返せってことか?」


「おそらくは。レーシック領は農地には向きませんが、近くに珍しい鉱石が取れる鉱山があるのです」


「……はぁ。面倒だ」


 俺はただユーリに恩返しがしたいだけなのにな。


 そうこうしてると、村長の嫁が、もてなしの料理を出してくれた。


 ただ、なんというか……質素だった。


 食後。


「せっかく命の恩人が来てくださったのに、このような粗末な料理で、申し訳ございません……」


「ごめんねアイン君。うちの土地って牧草も農作物も育ちにくい土してるんだ」


「なるほど……じゃあ鉱石だけで保っているんだな」


「ええ。しかし前領主が多額の税金を要求してくるので、手元に残った金など雀の涙です」


 だからみんな質素な生活をしてるわけか。


 そう言えば村長たちの着ているものも、食っているものもかなり貧しいもんな。


「アイン、さん……」


 くいっ、とユーリが俺の腕を引く。


「村の、ひとたち。こまって……ます。どうにか、でき、ないです、か?」


「どうにか……か。けど俺は戦闘はできても領地をどうにかなんて……」


 と、そのときだ。


『アイン。おぬしが持っている能力で、この問題対処できるぞ』


 ウルスラは鑑定コピーした能力の管理もしてくれる。


 俺が覚えて無くても、最適な能力アビリティを教えてくれるのだ。


 ということで、俺は村長たちとともに、村の所有する畑へとやってきた。


「アイン様、こんな痩せこけた畑で、いったい何をなさるおつもりですか?」


 確かに畑の土は、カッサカサだ。

 これじゃ作物が育ちそうにない。


『ピナのダンジョンで倒したモンスター。そこからコピーした【万能菜園】という能力がある。まずはそれを使え』


 俺はうなずいて、畑の上に立ち、能力を発動する。


 俺の右手の先から、【樹液】のようなものが分泌される。


 ぽた……ぽた……と畑の土に垂れた、その瞬間。


「なんと! は、畑の土が! 変わっていく!」


 村長が畑の土を手に取って、しげしげと見やる。


『今の能力で、ここらいったいの大地が、農作に向く肥えた土へと変質したようじゃ。次に【万能種子】を使え』


 同じくピナのところで倒した、植物モンスターからコピーした能力だ。


 俺の右手に、小さな植物の種が出現。


『それを適当にばらまけ』


 俺は手に持った種を、畑めがけて放り投げる。


 ずぉおおおおおおおおおおおおおおお!


「すっごい! 畑が一瞬で、緑一面になったよ!」


 カサカサの畑が、みずみずしい葉っぱで埋め尽くされていた。


『足元の草を引っこ抜け』


 俺はウルスラの言われたとおりにする。


 蔦のようになっていた。

 デカいジャガイモが、いくつもなっていた。


「なっ、なっ、なんとぉおおおおおお!」


 村長がその場にへたり込む。

 ペトラが近づいて、俺の持っているジャガイモをしげしげと見やる。


「お父さん! ジャガイモだよ! 本物だ!」


「ここは何を植えてもまったく育たなかったのに!」


『万能菜園は土を変質させあらゆる作物を一瞬で栽培可能な魔法の沃野に変える。万能種子はあらゆる作物に変化する種を作るのじゃ』


 こんな能力までコピーしてたんだなぁ。


『しかもこの菜園で作れるのは農作物だけじゃないぞ』


「え? ……ああ。村長。鉱石もってきてくれないか?」


「え、ええ……」


 村長が一度家に帰って、俺の元に鉱石をもってくる。


 俺は万能菜園のなかに、鉱石を埋める。


 ボコボコボコッ……!!!


「うっわ、すっごー! 地面から魔鉱石があふれてきたよー!」


「農具とかもこの菜園で増やすことができるぞ」


「すごい! これなら鉱山へいかずとも! 誰でも簡単に鉱石が採取できます!」


 村長が俺の手を握り、何度も頭を下げる。


「ありがとうございますアイン様!」


「気にすんな。いちおうおまえらの領主だからな」


「おおっ! なんて素晴らしい御方だ! アイン様が領主になられて本当に良かった!」


「さっすがダーリン♡ もうますます大好きになったよー!」


 どうやら領民とは、うまくやっていけそうだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公の性格が良いので目こぼしされている事ではあるのでしょうが、 それでもペトラの行動が常軌を逸していないでしょうか? 当人は(恐らく)ただの村娘なのに、『国の重要人物として王から称さ…
[一言] いつも楽しく拝見させてもらってます。これからも頑張ってください!
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