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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
3章

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55/245

55.魔族、鑑定士の防御システムに完敗する



 鑑定士アインが、ヒュドラを討伐した、1週間後。


 魔界にある、子爵の家にて。


 彼の名前は【ドラゴ・ニュート】。

 

 竜人だ。

 ドラゴンを人間サイズにまで圧縮し、2足歩行で歩くような見た目。


 ドラゴは客間にて、精霊エキドナと向きあい、報告会を開いていた。


「それで、ドラゴ? ヒュドラを使った王都襲撃作戦の首尾はどうだったの?」


 ドラゴはかけていたメガネを、くいっとあげて言う。


「襲撃は失敗に終わりました」


「あら、ダメだったの? なのに冷静ね」


「ええ、これはデータ収集です。いわばヒュドラはアインの能力を測るための駒です」


 ふっ……と余裕のある笑みを浮かべるドラゴ。


「どうやらアインは【未来視】が使えるようです。でなければ、王都から離れた位置にヒュドラを転移させただけで、気付くわけがない」


「さすがキレモノと名高いドラゴ子爵ね。それで、未来視が使える彼をどうやって殺そうというの?」


「簡単なこと。複数の古竜を使い、一気に王都を攻め落とすのです」


 くいっ、とドラゴはメガネを持ち上げていう。


「いくら未来が見れるとは言えど、彼は1人。複数の敵。しかも彼本人を狙うのではなく、彼の暮らす街を襲撃する。街を守りつつ、複数の敵を倒すなど至難のワザ。集中力の削がれたアインは、必ずや、私に敗北するでしょう」


 スッ……とドラゴが優雅に立ち上がる。


「すでにヒュドラの幼体は、前回の襲撃時に潜伏させています。特殊な薬剤で成長を早めていますゆえ、今頃成体となって王都を襲撃している頃合いでしょう」


 ドラゴは立ち上がり、礼儀正しく腰を折る。


「恐悦至極。ではエキドナ様。吉報を持って帰りますので、しばしお待ちを」


 ドラゴは王城までの道のりを、悠々と歩く。


 ゲートをくぐり、ドラゴは人間界へと転位する。


 ヒュドラ10体が目覚め、王都を襲っている、はず。


 混乱の極地にいる街のど真ん中へと送ってもらった……と、そのときだ。


 ぐんっ……!


 と、体が何かに、強く引っ張られた。


 しかし違和感は一瞬だけだ。


 人間界、アインの居る屋敷へと転移できた……はずだったのだが。


「なっ!?」


 ドラゴは初めて、余裕を崩した。


「な、なぜ私は! 王都の外にいるのだ!?」


 ドラゴの立っている場所は、王都から遠く離れた草原の上だった。


 正確にアインの居場所へ送ってもらったはずだったのだ。そして……。


「バカな! ありえない! なぜ王都が無事なのだ!?」


 ヒュドラが10体、王都を襲撃したはずだ。

 

 しかし実際の現場からは、火災一つ起きていない。

  

 それどころか、ヒュドラの姿すら見えなかった。


「私の作り上げた人工ヒュドラによる作戦は完璧だったはず! どうして!?」


 ……と、そのときだった。


 一陣の風が吹いた。


 ドラゴの目の前に、小柄な少年が現れたのだ。


「お、おまえは鑑定士アイン! なぜここに!? いや、どうしてここが!?」


「未来視でおまえの作戦、出現位置はだだもれだったよ」


「だ、だとしてもヒュドラ相手に10体をどうやって!?」


「どうやっても何も、未来視でヒュドラの位置を特定できるんだから、あとは普通に処理したよ」


 ドラゴは、作戦が破られ動揺した。

 だがすぐに持ち直す。


「ば、バカめ! その程度で勝ったつもりか!」


 ドラゴは懐からヒュドラの卵を取り出す。

 特殊配合した薬剤をふりかけ、そして放り投げた。


 魔族は人の何百倍もの腕力を持つ。


 投擲された卵は、王都上空で孵化。


 そのまま成体へと進化する。


「残念だったな! もしものケースを想定し、奥の手は取っておいたのだ!」


 巨大なヒュドラが、王都上空から落下。


「ヒュドラの毒で王都は壊滅! 貴様が余計な小細工をしたせいで、大勢の民が苦しむことになるぞぉ! ハーッハッハッハー!」


 と、そのときだった。


 バチーーーーーーン!


「はぁッ!? ふ、吹っ飛んだだと!?」


 ヒュドラが、【何か】に触れて、弾き飛ばされたのだ。


 アインは精霊の剣を出現させる。


【斬撃拡張】を使用した【居合い抜き】で、上空のヒュドラは真っ二つにされた。


「な、なんだこれは!? なぜヒュドラが吹き飛んだ!?」


「ヒュドラを防いだのは【結界】と【千里眼】の応用だ。敵の襲撃を未来視した瞬間、王都全域を結界で覆うようにしただけ」


 結界で足止めしている間に、アインが敵を倒す。


 これによって複数同時襲撃を防いだのか。


「ではなぜ! 私は外に転移させられていたんだ!」


「魔族が来ると、千里眼が発動した瞬間、うちの賢者が【転移魔法】で戦っても安全な場所まで送るように手はずを整えておいたんだ。ファルコのような、結界をぶち抜いてくる魔族も居るかもだからな」


「なんと……! ど、どこまで周到な男なのだ!?」


「いや2度も襲撃を受けたらアホでも対策を取るだろ。そんなことも予想できなかったのか? インテリ気取ってる割に脳みそがトカゲだな」


 ぶるぶる……とドラゴの肩が怒りで震える。


「な、なめるなよ非魔族のサルめ!」


 ドラゴはもう一つの能力【竜血強化】を発動。


 普段抑えている竜の血の濃度を上げ、基礎能力を大幅に向上する能力アビリティだ。


「さらに!【領域展開】!」


 それはアインも使った、一定範囲内の能力の使用を無効にする領域。


 これの凶悪なところは、展開したものの能力は使えるところにある。


「知って居るぞ! 貴様の弱点! 能力を使えなければ無能だと言うことを! シャドウからコピーした対人格闘術程度で、この子爵級魔族の、竜血強化した攻撃に耐えられる道理がない!」


 だっ……! とドラゴは走り出す。


 目にもとまらぬ速さで、アインの腹部に拳を繰り出す。


 ……しかし。


 ザシュッ……!


「なっ!? ば、バカな!? 拳が!」


 ドラゴの竜血強化された身体能力。


 その一撃を、こいつは精霊の剣で、斬ったのだ。


「おまえやっぱバカだろ。俺に攻撃しようとした時点で、未来を読まれるんだよ」


「し、しまったぁああああああ!」


 ドラゴがひるんでいる間に、アインは彼を背負い投げする。


 領域の外へと追い出される。


 アインは能力を発動させ、精霊の剣で、ドラゴの体を切り刻んだ。


「なんという周到さ……なんという、即応力……魔族の中でも、ここまでのやつはいないぞ……」


「それじゃ魔族はたいしたことないってことだな」


「くっ……!」


 反論したいが、敗北した自分には何も言い返せない。


「先にいっとくが俺の不在時に王都を狙っても無駄だ。結界が発動して、俺が帰ってくるまで中に入れないからな」


「……そんな、ばかな。こんな低脳なサルに、私が完敗するなど……」


 死に際になって、ようやく、ドラゴは理解した。


「我らのターゲットは人間ではなかった。……異常なほど強い、バケモノだったのだ」


 エキドナにそのことを伝えなければ。


 しかし余力はもう残っておらず、伝える前に、ドラゴは絶命したのだった。

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― 新着の感想 ―
異常なほど強い、バケモノというより知恵を回す相手かと そして、そんな事も分からん魔族は馬鹿としか良いようがない 最近、標的を調べもしない無能魔族ばかり萎えていたところ少しは知恵が回る魔族と思えば一番馬…
[気になる点] ヒュドラはいつの間に10匹に増えたのですか? 首が9つでも胴体は1つなので1匹と数えるべきかと
[気になる点] 「すでにヒュドラの幼体は、全快の襲撃時に潜伏させています。特殊な薬剤で成長を早めていますゆえ、今頃成体となって王都を襲撃している頃合いでしょう」  ドラゴは立ち上がり、礼儀正しく腰を…
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