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52/244

52.鑑定士、魔族の軍隊を退ける



 ユーリたちとサウナに入った、数日後。


 千里眼が、魔族の軍隊が人間の村を襲っている現場を捉えた。


 俺は現場である南西部の村まで、【飛翔】能力アビリティを使ってやってきた。


 眼下にはサルの集団が居た。


 黒いサルが多数。

 白いサルが、1匹。 


 黒いサルは、人間を捕縛し一カ所に集めている。


 俺は村に降り立つ。


「な、なんだてめえはぁ!」


 黒サルが俺に気付く。


『モンキィという魔族らしいぞ。男爵。そこら辺に居る黒いサルたちはみな親族だそうだ。白いのはシルバー・コングという名の子爵の魔族だそうだ』


「おいそこのひ弱そうなサル! 逃げてるんじゃあねえよ!」


 黒サルが俺の頭をわしづかみにしようとする。


 俺は精霊の剣を出し、能力アビリティ【居合抜き】を発動。


 スパァンッ……!


 間合いに入っていた黒サルが、一太刀で切り捨てられた。


「おいなんだぁ~」


 黒サルたちがぞろぞろと、俺の元へとやってくる。


 仲間の死体を発見し、目を丸くする。


「お、おい、なにがあった?」


 黒サルたちが俺を見つける。

 だが、ハンッ! と鼻で笑う。


「なんだ、ひ弱そうなサルじゃねえか!」

「こんなのに負けるなんて! 一族の恥さらしめ!」


 サルたちが殺された仲間を足蹴にする。


 ……なんてクズな野郎どもだ。


 俺はスタスタと歩き出す。


「おい! 人間! 止まれ!」


「断る。三下の雑魚には用はない」


「なんだと! 下等生物のくせに!」


 ……その瞬間、俺の【千里眼】に明確なビジョンが見えた。


『→黒サルたちは、背後から一撃を食らわせる』


 俺は【重力圧】を発動。

 背後の敵がグシャッ……! と潰れる。


 千里眼は、このように未来の事象を予測することができる。


 ただし、俺の実力では、千里眼による【未来視】を自在に操れない。


 今のところ、俺が見られる未来のビジョンは、俺の身に危険が迫る事象についてのみだ。


 アリス曰く、訓練すれば自分の好きなように未来を見られるようになるという。


「さて、駆除するか」


 親玉であるシルバー・コングの近くには、護衛である黒サルと、そして捕まった村人たちが多く居た。


「そこの人間! 止まれ!」


 黒サルが俺に命令するが、無視。


「非力なサルのくせに無視するとは生意気な!」

「下等生物の分際で! 死ね!」


 スパァンッ!


 敵が襲ってくるタイミングを完璧に鑑定できる。


 だから歩みは止めない。


 避ける必要も無い。

 攻撃が来る場所に、一撃喰らわせばいい。


 スパンッ! スパンッ! スパァアアアアアアン!


「な、なんだこいつ!?」


「人間のくせに強いぞ!」


「うろたえるな、子分ども!」


 奥の方から、のそり……と白いサルが立ち上がる。


 人間の3倍くらいの大きさ。

 全身が白髪というか銀の髪。


 こいつが親玉か。


「こちらには数の優位がある! 全員で取り囲んで殺せ!」


 バッ……! と黒サルどもがいっせいに動き出す。


 10……いや、50匹くらいのサルに、俺は四方を囲まれた。


「多少腕が立つようだが、所詮は非魔族のサル1匹だけ! こちらは1匹1匹がSランクモンスター以上の実力を持った魔族の集団! 我らが負けるなぞありえぬわ! カーッカッカッカー!」


 シルバー・コングが勝ち誇った笑みを浮かべる。


 俺は居合抜きの構えを取る。


【斬鉄】にくわえて、【斬撃拡張】の能力アビリティを発動。


「子分ども! いっせいに……かかれぇい!」


 黒サルたちが、俺めがけていっせいに飛びかかってきた。


 そのタイミングで、俺は超高速で、居合抜きを放った。


 ズバアァアアアアアアアアアアアアン!


「がッ……!」「ばか……な……」


 50はいただろう黒サルたちが、全員、その場に倒れた。


 胴体を切断され、1匹残らず絶命した。


 奥に居たシルバー・コングだけが助かったらしい。


 俺はコングの方へと悠然と歩いて行く。


「ふんっ! 人間、なかなかやるではないか。しかし! 所詮は男爵級をいくらたおしたところで、子爵級魔族であるこのシルバー・コング様に勝てるわけがないのだ!」


『どうやらこいつは【百烈拳】という、強烈な1撃を、ほぼ同時に100発くらわせる能力アビリティを使うらしいぞ』


 ウルスラと、そしてアリスが見せる【未来視】のおかげで、【予習】はばっちりだ。


「わしには最強の能力がある! 聞いて驚け!」


「強烈な打撃を100発同時に打ち込むんだろ?」


「わが必殺の百裂拳は…………へぇ!? な、なぜそれを!?」


「答える義理はない。それで? 種が割れてる手品を、客の前でやるつもりか?」


「ば、ばかをいうな! わしが長年武を積み上げて手に入れた必殺の【百裂拳】! それを避けられるものはこの世に存在しない!」


 バッ……! とシルバー・コングが腕を引く。


 アリスが見せてくれた未来のとおりだ。


「死ね! おらおらおらおらおらおら!」


 ドドドドドドドドッ!


 ……襲い来る拳。


 俺はその全てを……回避も、そして攻撃反射もしなかった。


 ただ、一歩前に出る。

 そこはシルバー・コングの間合いの内側。

 拳の雨あられは、俺の真横をすり抜ける。


「ば、バカなっ!? 1発もあたらないだと!?」


 驚愕するシルバー・コング。

 俺は【斬鉄】を使用。


 剣を振り、コングの四肢を切り飛ばす。


 胴体だけになったコングが、地面に倒れ伏す。


「貴様! どうやってわが百裂拳をかわしたぁあああ!」


「かわしてない。未来視で拳が当たらない場所を予習してただけだ」


「バカな……そんなことができるなんて……わしは、子爵なんだぞ……それがこんな弱そうなガキに……」


 俺は剣の先をシルバー・コングにつきつける。


「おまえに聞きたいことがある。先日、ファルコ、シャドウっていう魔族が俺を襲いに来た。そいつは誰かに命令されてきたと言った。おまえら魔族の裏で糸を引くやつの名前を言え」


「それは言えぬ! 貴族の誇りにかけて!」


 俺は螺旋弾を使用し、コングの脇腹を吹き飛ばした。


「ぐぁあああああああああ!」


「次は本当に殺すぞ? だれがいったい俺の命を狙うんだ?」


「わ、わかった! 言う! だから命だけは勘弁してくれぇえええええええ!」


「雇い主の名前は?」


「それはエ……」


 と、そのときだった。


「ごぼぉ……!」


 突如として、シルバー・コングの顔色が紫色に変わった。


 シルバー・コングはぶくぶくと泡を吹きながら、もだえ苦しみ、やがて動かなくなった。


『どうやら死んだみたいじゃな。結局、手がかりは無しか』


「いや……そうでもない」


『なんじゃと?』


「やつが名前を呼ぶ瞬間、やつの心の中を千里眼で覗いた。雇い主の姿ビジョンが見えた」


 あの瞬間見えたのは、恐ろしく美しい、ダークエルフの女だった。


『ふんっ。やるではないか、小僧』


 手がかりは得た。名前はわからなかったが、一歩前進だ。


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― 新着の感想 ―
今の神眼って心の内まで見通せるんですよね? 前回雇い主は言えないって言って自爆したんですから、『雇い主を教えろ』ではなく、『雇い主を思い浮かべろ』って言えば良いのでは? せっかく作った設定が意味ないで…
[一言] 拳って言うぐらいだから腕の可動域内に 100発攻撃だと思うけどその間合いに 入ったのに、人間サイズの全く 当たらない空間が出来るのは不自然 だと思う。
[気になる点] 名前をエ、まで言って姿まで思い浮かべているのであれば、名前も思い浮かべていると思うのだが...
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