51.鑑定士、精霊たちとサウナに入る
俺は暗殺者の魔族シャドウを撃破し、【壁抜け】【忍び歩き】【能力無効化領域】の能力を鑑定。
さらに暗殺者の対人格闘術を習得した。
話はその翌日。
俺はジャスパーの屋敷にある、サウナに入っていた。
「サウナなんて自宅にあるんだな……ほんと金持ちだなジャスパーって……」
木でできた部屋。
熱を発する魔法石がおいてあり、部屋の温度を高めている。
俺はイスに座って体を休ませていた。
「アイン、さーん♡」
ばーん! とサウナのドアが開く。
長い金髪の美しい少女・ユーリだった。
「おまっ、何で入ってくるんだよ! ここ男湯のサウナだぞ!」
「ところがどっこい! 違うんだなぁ~」
ひょこっ、と小柄なピンク髪のツインテール娘・ピナが顔を覗かせる。
「アタシが幻術を使ってね、お兄さんがいるここはなんと! 女湯なのです!」
どうやら男湯と女湯の入り口を、幻術で逆に見せていたらしい。
「お、俺は出るからなっ」
慌てて立ち上がり、サウナの扉に手をかける。
だが押しても扉が開かなかった。
「わ、わー。たいへん、だあ。扉が、ひらか、ないよぅ」
「誰かが外から閉じ込めてるみたいだね~。わー。これは困ったなぁ~」
「こいつら……」
おそらく黒姫あたりが、外から結界を張っているのだろう。
「そんなわけで4人でまったり、しばらくサウナご一緒しましょーってことで!」
「4人……って、あとだれだよ?」
するとユーリの後に、誰かがいることに気付いた。
ユーリはその豊満な体を、タオル1枚で包んでいる。
その後に……紫色の、ショートカットの女の子がいることに気付いた。
「あ、アリス……おまえまでこんなアホなことに付き合ってるのか……」
「……ごめんなさい」
おずおずと、アリスがユーリの影から出てくる。
ほっそりとした手足。
真っ白な肌にしみはひとつもない。
胸と尻の起伏には乏しい。
しかし線の細さと、儚げな表情から、美術品のような繊細な美を感じる。
「…………」
アリスは黙り込んでしまう。
肌を真っ赤にしていた。
「おい大丈夫か? サウナの外に出た方がいいんじゃ?」
俺は立ち上がり、アリスの手を引いて、出ようとする。
きゅっ。
アリスが俺の手を引っ張って、上目遣いで言う。
「……あなたと一緒に居たい。だめ?」
「いや……ダメじゃないが……」
「じゃ結界が解かれる……けふんけふん、外から応援がくるまで、ここで4人でレッツサウナだよ☆」
「おー♡」
黒姫のいたずらだろうから、ほっとけばそのうちに結界が解かれるだろう。
俺は諦めて、サウナ室で待つことにした。
しかし……。
「あのー……3人とも? なんでわざわざ俺の隣に座るんだ? 他にも空いてるだろ」
「いえいえお気になさらず~☆」
「きにしちゃ、め……ですっ」
俺の右隣にユーリ、左にアリス。
そしてなぜか……俺の膝上にピナが座っている。
「ピナおまえ、なんで膝上に乗ってるんだよ?」
「だってほら、座るスペースないし~?」
「どこもかしこも空いてるだろうが!」
サウナ室はあきれるくらい広い。
座る場所など腐るほどある。
「いやでーす、アタシお兄さんのそばが好きなの~☆」
こいつ……俺が好きというより、俺がそばに居ることによって、姉2人をからかうのが好きってことみたいだ。
「わ、わたしも……アイン、さんのおそば……す、すこだもん!」
「すこってなんだよ……わけかわからん」
タオル1枚の美少女たちが、すぐそばにいる。
なんか、蒸し暑さにくわえて、とてつもなく良い匂いがする。
フルーツのような、花のような、ミルクのような……。
いろんな甘い匂いが混じって、頭がクラクラする。
「あれれ~? お兄さんどうしたの? 顔が赤いですぞー?」
ぬふふとピナが俺を見上げて笑う。
「な、なんでかな、ピナちゃん? アインさん、まさか風邪?」
「ちがうよー☆ きっと美少女三人の柔らかボディにメロメロになってるんだよーもーえっちぃ~♪」
確かに3人とも体がぷにぷにしてて気持ちが良い。
ピナのお尻や、ユーリの乳房。
そして……アリスの……アリスの……。
「…………」
アリスが死んだような目で、自分のストンとした胸を見やる。
「やっばーい☆ ほらお兄さんのせいで、アリスお姉ちゃん落ち込んでるじゃーん。いけないんだー」
「アイン、さん……姉さま、なぐさめて、あげなきゃっ」
なんかユーリも、最近ピナ化してない?
これワザと? いや天然入ってるからな……。
「…………」
アリスがシュンとした表情になる。
「だ、だいじょうだぞアリス。おまえのむ、胸も……その、えっと……あるよ」
「……ごめんなさい」
「謝らないでくれほんと俺の方こそごめんな!」
ピナがニヤニヤしながら言う。
「アリスお姉ちゃん、ヒトの価値は胸だけじゃないよっ」
「そ、そーですっ。おむねとか、おしりだけが……女の価値じゃ、ない、です!」
胸も尻もデカい2人が言っても、追い打ちをかけるだけのような気がする……。
と思ったらやはりアリスがさらに暗い表情になった。
「……胸か」
「あ、アリス、気にすんなって……」
「……ごめんなさい」
「だから気にすんなって!」
するとユーリが、つんつんと肩をつついてきた。
「どうした?」
「姉さま、落ち込んでます。アインさん……はげまし、てっ?」
「励ますってどうするんだよ」
「いいところ、ほ、めるとか。してあげてっ、おね、がい?」
……女性を褒めるなんて、今までしたことなかったぞ俺。
ただユーリの頼みだし……しかたない。
「あ、アリス。胸なんて……その、気にすんな。おまえはその……普通に、肌とか、めちゃくちゃキレイ……だし、すらっとしてて、美人……だぞ」
言いながら、俺はサウナで何をしているんだという気分になった。
「おー、お兄さんやるぅ~☆ よっ、無自覚女たらしっ」
「…………」
俺が褒めた後も、アリスはうつむいたままだった。
褒めるのヘタだったか……と思ったそのときだ。
とさっ……と、アリスが俺の肩に、頭を乗せてきたのだ。
「はぁ……はぁ……んっ……。はぁー……はぁー……はぁー……」
アリスの顔は真っ赤だった。
潤んだ目、しっとりと濡れた肌。
ふわり……と花のような、濃い香りがする。
「おっとー! 濡れ場来ちゃうかー!?」
「ピナ、ちゃん。ぬれば、って?」
「お姉ちゃんはお子ちゃまだから、ここからは見ちゃ行けませーん」
「むぅ。こども、じゃない、もん」
その間もアリスの様子はおかしかった。
俺は彼女の額に手をやる。
「のぼせてるぞ!!」
「あちゃー、刺激強すぎちゃったかー」
「姉さまっ、しっかり! 死なないでー!」
……その後、ダウンしたアリスを連れて外に出た。
しばらく風に当たっていたら、アリスも復活したのだった。




