表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/245

45.鑑定士、第3精霊とお茶する



 禁書庫に住んでいたのは、第3の精霊【アリス】だった。


 話は、アリスの居る禁書庫へ来て、数時間後。


 俺は、隠しダンジョンに関する資料を読み込んでいた。

 

「…………」


 アリスは、この本だらけの書庫で、ずっと本を読んでいる。


 カウンターに座り、ページをめくり、本を読み終えると次の本を手に取る。


「なぁ」

「……なに?」


「いつも何読んでるんだ?」

「……本」


「いやだから何の本って意味だよ」

「……色々」


「…………」

「…………」


 しゃ、しゃべらねえ……。


 ユーリも口数が少ない子だが、コミュニケーションは取れる。


 しかしアリスからは人と話したいという気がまるで感じない。


 ただ彼女は俺とのコミュニケーションを、避けているのではないと思っている。


 その根拠は、単純明快。


 俺の真横に、アリスが座っているのだ。


「なぁ、座るところ他にないのか?」

「……ない」


「せ、せまくないか?」

「……べつに」


 俺たちがいるのは、禁書庫の中の、図書カウンター。


 そこにはイスが2つある。


 片方に俺が、その真横にアリスが座っている状況だ。


「このイスもって他のところで本読んでも良いんだぞ?」

「……問題ない」


 彼女は俺の真横に、ぴったりと寄り添って座っているのだ。


 俺の方からイスを離すのも、なんだか悪いし……。


 結局、俺たちはいつも、二人並んで本を読んでいる。


 正直気まずい。

 向こうは何考えてるかさっぱりだし。


 重苦しい空気に、押しつぶされそうになっていた……そのときだった。


「おーい! ふたりともー! お茶入れてきたで~!」


 手にお盆を乗せた、小さな女の子が、俺たちの元へやってきたのだ。


「【朱羽あかはね】! い、良いところに来たな!」


 彼女は、【朱羽あかはね】。

 精霊アリスの守り手で、【朱雀すざく】の娘だそうだ。


 外見年齢は、黒姫と同じで5歳とかそこら。


 赤い和服。ただしスカートの丈が極限まで短い。


 赤い長い髪を、ポニーテールにしてる。

 オレンジの瞳はパッチリとしてて、快活そうな印象を受ける。


あんちゃん、うちの子ぉと仲良ぉしてくれてありがとぉな~」


 ニカッと朱羽が笑う。


「うちの子ほーんましゃべらへんやろぉ~。もーすまんなぁ兄ちゃん」


 朱羽がカウンターにお盆を乗せる。


「けどな兄ちゃん勘違いせんといてあげてな? うちの子こーんな仏頂面しとるけど、あんたが帰るとそりゃあもう、さみしそーにしてるんやで~?」


 アリスは本を置いて、立ち上がる。


「アリスどこいくんや~? お茶入れたんやから兄ちゃんと一緒にのめばええやろ~?」


 朱羽が声をかけても、アリスはどこぞへと消えていった。


「すまんなぁ兄ちゃん。けどほんまは照れてるだけやねん。大好きな兄ちゃんと一緒にお茶するのがそりゃーもう恥ずかしいっちゅー乙女心? 理解してくれると、うれしいなぁ」


 無口なアリスとは対照的に、朱羽は実に饒舌だ。


「よっしゃ、ウチの子かえってくるまで、うちがおしゃべり相手になったるで! 何でも聞いてな!」


 朱羽からクッキーとお茶をご馳走になった後。


「なぁ朱羽。アリスはなんで王都の図書館になんているんだ? 城の中に隠しダンジョンがあるのか?」


ちゃう。ここは隠しダンジョン。王都の図書館との間に、【転位門ゲート】が開いとるだけや」


「転位門って?」


「ピナ嬢ちゃんとこにもあったやろ。触ると別の場所に転位するしかけや」


「じゃあ王城に住んでるんじゃなくて、ここは隠しダンジョンの中で、俺が転位してきたって感じか」


 朱羽がうなずく。


「ただうちらの転位門は特殊でな。まず【人間】しか通れへん。そん中でも、【王】と、【アリス】が認めた子しか入れへんの」


「だからユーリがここへこられないんだな」


「せやな。ほんでアリスも転位門を使って外に出られへん。もしかりにユーリお嬢ちゃんをここへ連れてきたいんやったら、正規ルート、つまり隠しダンジョンを見つけて、直接禁書庫へ来る必要があるっちゅーわけやな」


 朱羽が紅茶をすする。


「逆に、俺がこっからアリスを連れて、外に出るってどうだ?」 


「そら難しいわ。うちの子もやしっ子やさかい、隠しダンジョンから外へ連れてくなんて体力がもたんわ」


 ユーリやピナみたいに、自分から外へ行きたいと言ってくれれば、精霊核を義眼に変えて連れ出せる。


 けれどあくまでアリスが自分の意思で出たいと言わないと無理な話だ。


「どうしたもんか……」


 この大量の本の中から、アリスたちの居場所の手がかりを見つけるなんて至難の技だしな。


「てか、なんでこんなたくさん本があるんだよ……」


「ミクトランが生きてた時代から、いにしえの王とうちらとの間に契約があってな。転位門を通じて、世界樹は魔力をこの国におさめる。その見返りに、本を献上するっちゅー取り決めあるんよ」


 そうこうしてると、アリスが帰ってきた。 


「おー! なにやっとんねんアリス! もうお茶飲み終わったで!」


「……そう」


 アリスは涼しい顔をして、俺の隣に座る。

 本を手に取って、読み出す。


「なー、無愛想な子ぉやろぉ。けどな兄ちゃん見てみ? うちの子ほら! 頬が赤いやろ! あれなやっぱめっちゃ照れてるんやで! あんたみたいなかっこいい子ぉの前で緊張してるんや! せやろ!?」


 アリスは本を閉じると、懐から杖を出し、軽く振る。


 突如、凄まじい勢いで、本棚から本が射出。


 それが朱羽あかはねの顔面に激突して、すっ飛んでいった。


「おいおまえやりすぎだろ……おまえの母ちゃんだろ?」


「……べつに」


「そうや! 平気やで! 気にせんといてや!」


 朱羽が笑顔で俺たちの元へ帰ってくる。


「まー隠しダンジョンの場所は、じっくり探すしかないわ。なんせこの本の量やからな」


「なぁ、もしかしてだけど、アリスはおまえらが居る隠しダンジョンの居場所、知ってるんじゃないか? 知らないにしても、ヒントの書かれてる本、知らないか?」


 俺はアリスを見やる。


 彼女は本に目を落としてるだけだった。


「朱羽、アリスはなんていってるんだ?」


「……さぁ。ウチもエスパーやないしな。答えへんってことは、知らんとちゃう?」


「そっか……。わかった」


 俺はイスから立ち上がる。


「なんや? もう帰るんか?」


 俺はうなずいて、出て行こうとした……そのときだ。


 きゅっ。


 と、アリスが俺の服の袖を、控えめに引っ張ったのだ。


「どうした?」


「……明日も。来て、くれる?」


 無表情なまま、アリスが俺に問うてくる。


「? ああ。だってまだ隠しダンジョン手がかり何も掴んでないからな」


「……そう」


 アリスは手を離す。

 彼女は、俺を見上げる。


 ジッと俺の目を見て、ふっ……と口元をほころばせていう。


「……待ってる。ずっと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ