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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
3章

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44.鑑定士、第3の精霊のいる禁書庫を訪ねる



 新人冒険者たちを助けた後。


 俺は王都にある、王城へと訪れていた。


 王城は見上げるほどの立派な城壁に囲まれている。


 入り口は1カ所しかない。

 王国騎士が常駐し、怪しい人物が入って来れないよう目を光らせている。


 俺は入り口から王城へと入ろうとした、そのときだ。


「おいおまえ! なにをしてる!?」


 若い騎士が俺の元へ駆け寄ってくる。


「なんだ?」


「ここは貴様のような平民が、おいそれと足を踏み入れて良い場所じゃないぞ!」


「おまえ新人か? じゃあ知らなくて当然か」


「うるさい! 身分を明かせ!」


 俺は名前と鑑定士であることを伝える。


「なんだ、平民の上に下級職なのか!」


 騎士が俺を見て嘲笑を浮かべる。


「最底辺のゴミ拾いなんぞが、王城に入れるとでも思っているのか? さっさと帰って、ダンジョンのゴミでも拾ってろ」


 と、そのときだ。


「この……バカもんがぁあああああ!」


 詰め所から、老騎士が血相変えて出てきて、若い騎士の頭を殴った。


「この方は【古竜殺し】の英雄アイン様だぞ!」


「ええっ!? あ、あの超強いって有名なSランク冒険者が……こんなひ弱なガキ……?」


 俺はため息ついて、懐から銀時計を取り出す。


「王家の銀時計!?」

「これでわかったろ! 王もアイン様を気に入られているんだぞ!」


 若い騎士が顔を真っ青にして、自分から膝をついて土下座する。


「大変申し訳ございませんでした!」

「部下が失礼いたしました!」


 老騎士が一緒にペコペコと土下座をする。


「いいって。知らなかったんだろ?」


 すると老騎士が声を震わせ言う。


「さすがはアイン様。やはり英雄は、その心のありようも素晴らしいのですな!」


 時計を仕舞って、俺は王城へと向かって歩く。


 デカい入り口をくぐり、廊下を歩いていた、そのときだ。


「勇者さまぁ~~♡」


 この国の第三王女、クラウディアが、笑顔で俺に走ってきた。


 パァ……と俺の左目が光ると、ユーリが顕現。


「ユーちゃん、ごきげんよう♡」

「くーちゃん、きのう、ぶり♡」


 連日俺は王城を訪れている。


 王女と会う機会も自然と増えた。

 だからふたりは、仲良くなったらしい。


「勇者様は、今日も【禁書庫】へ?」


 太古の昔から存在する、王家のみが閲覧可能な書物が収められている、大図書館のことだ。


「ああ。今日いってきた迷宮は、結局隠しダンジョンじゃなかったんだ」


「では、また【あの子】のところへいって、書物を探すのですか?」


「まあな。禁書庫のことは、【司書】であるアイツが一番よく知ってるから」


 ユーリが申し訳なさそうな顔で、俺を見やる。


「アイン、さん……ひとり、だけ……大変、ごめん、ね?」


「気にすんな。俺はおまえの家族を探してやりたい。したい事をやってるから、全然苦じゃないよ」


 俺はユーリ、クラウディアとともに、禁書庫へと向かって歩く。


 ややあって、俺たちは王の所有する図書館に到着。


 その奥に、デカい扉があった。


「約定により、ここは王と、【司書】から許可を得たもの以外の立ち入りを禁じられてまして……お父様不在ではわたくしは入れないのです」


「いいって。クラウディア、悪いけど夜までユーリたちの面倒よろしくな」


 俺はユーリたちにそう言うと、禁書庫の扉をノックする。


「【アリス】。俺だ。開けてくれ」


 すると……禁書庫の扉が、がちゃりと開かれる。


 俺が扉をくぐると、扉そのものが消えた。

 

 そこは一言で言えば……【本の屋敷】だ。


 壁一面に、恐ろしい高さの本棚がびっしり並んでいる。


 ここは異空間になっているのか、見上げても天井が見えない。


 本棚から漏れた本たちは、横積みにされ、あちこちに本の塔が築かれている。


 本の塔を縫って歩いて行くと、やがてカウンターテーブルが見えてくる。


 そこにいたのは……薄紫色の、短い髪をした女の子だった。


 髪質はふわふわしている。

 青いワンピースに、白いエプロン。


 カチューシャをつけ、そして近視用のメガネをかけていた。


「よっ、【アリス】」


「…………」


 この子はアリス。

 ここの、唯一の住人にして、禁書庫の【司書】だ。


 アリスは俺が挨拶をしても、無視する。

 手に持っているのは、分厚い本。


 本に集中しているため、俺に気付いていないようだった。


「今日も本棚あさらせてもらうぞ」


「……そう」


 アリスは素っ気なく返事をすると、ぺら……っとページをめくる。


 この子のこういう態度は、いつも通りなので、大して気にならない。


 俺は司書アリスへの挨拶を終えたので、その場を離れる。


「アリス」

「……なに?」


「本、逆さまだぞ?」


 ぴくっ、とアリスが体を硬直させる。


「……そう」


 この子は、どうしてだか、俺が訪れると、いつも本を逆さにして読んでいるのだ。


 そういう読み方が自分流なのかと思ったが。


 俺が指摘すると、アリスは本を正常な位置に戻し、読書を続けるのだ。


「この間調べたダンジョン、空振りだったよ」

「……そう」


「別の資料ってないか?」


 アリスが懐から、短い杖を取り出してふる。


 すると、どこからか、本がフヨフヨと浮いて、俺の元へとやってきた。


 彼女は禁書庫の司書。

 本の位置をすべて把握している。


 そして欲しい本があると、彼女に言えば、こうして俺に差し出してくれるのだ。


「ありがと。ちょっと目を通してみるよ」


 アリスは特に何も言わず、黙々と本を読んでる。

 

 誰もいない禁書庫は、本当に静かだ。


 俺はふと気になったことを尋ねる。


「なあ、そう言えばどうして俺だけは、禁書庫に入って良いんだ?」


 ぴくっ、とアリスがまた体を硬直させる。


「ここって王と、おまえに気に入られた人間しか入って来れないんだろ?」


「……そう」


「どうして立入を許可してくれたんだ? 俺、おまえに特に何もしてないよな?」


 まあ強いて言えば、最初、国王と一緒訪れたとき。


 アリスが脚立に乗り、本棚から本を取ろうとして、バランスを崩し、彼女が落下。


 それをすんでの所で俺がキャッチした。

 

 それくらいしかしていない。


「俺、本当にここに来て良いのか?」

「……いい」


「毎日来てるけど迷惑じゃないか?」

「……ぜんぜん」


「手分けして本探したいから、仲間を呼んじゃダメか?」

「……だめ」


「俺なら良いのに?」

「……あなただけ」


 アリスは本に目を落としたまま言う。


 よくわからん……。


「なぁ、また本が逆だぞ」

「…………そう」


 アリスはいそいそと、本の上下直す。


「なぁアリス」


 俺は、彼女に、再度確認を取る。


「おまえ本当に、世界樹の精霊なんだよな?」


 俺が言うと、アリスはいつも通り、こう答えるのだ。


「……そう」

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに巨乳と書かない女キャラもでてきたのか? 大災害の前兆じゃないだろうな
[良い点] 読みやすい [気になる点] リゼロに同じような感じの内容あったから被って見えた。 [一言] 次回からに期待(о´∀`о)
[一言] どれだけコンプレックスがあるんだろう、、、
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