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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
2章

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40.鑑定士、死者を蘇生する



 キメラを一蹴した直後。


 王都の市街地にて。


 頭部を失った死体が、散乱している。


「うぇえええええええん! おかーーさーーーーーーん!」


 死んだ母親にしがみつく、子供。

 母親の頭部は、完全に破壊されていた。


 ……とてもじゃないが、見ていられなかった。


 俺のとなりに、ユーリが顕現する。


 泣いている女の子を見て、きゅっ、と下唇をかんだ。


「ユーリ……。無理だ。世界樹の雫は回復能力はあっても、部位欠損はなおらない。まして、死んだ人間にはもう……」


 俺が言うと、ユーリは首を振った。


「おかー、さん。ごめん、ね。【約束】……やぶる、ね」


「ダメじゃ! ユーリ! 能力アビリティは使うな!」


 ウルスラが顕現し、ユーリの腰にしがみつく。


「ユーリの……能力アビリティ?」


 世界樹のピナには、【幻術】という能力があった。


 しかし……同じく世界樹の精霊であるはずのユーリにはなかった。


 治癒は、世界樹の雫で行っていること。能力じゃない。


「おかー、さん! とめないで! あの子、泣いてるの!」


「ダメじゃ! 何のために能力を秘匿してきたと思っておる! その力を知った悪しき者たちが、必死になっておまえを狙ってくるぞ!」


「でもっ! 助けたいの!」


 ウルスラを振り払い、ユーリが駆け出す。


「小僧! たのむ! ユーリを止めてくれ!」


 俺はユーリの手をつかんで止める。

 華奢な彼女では、俺の手を振り解けない。


「ウルスラ。この子の能力って?」


「守り手でもない貴様に教える義理はない。帰るぞ、小僧」


「まっ、て……!」


 ユーリが俺を見て声を張る。


「まだ……やりなおせる。わたしの……ちから、なら……」


「言うな! ユーリ!」


「わ、たし……能力、【完全再生パーフェクト・リバース】。死者すら……復活させられる。だから、あの子の母親も、みんなも……生き返らせて……あげたい……」


「わしは許さぬ! 死者を蘇生させたら大勢がその力を奪いに来る! 自らの命を危険に晒してまで! 名前も知らない他人のために、そこまでする義理はないじゃろうが!」


「それでも、わたし……は、たすけたい! 傷ついているひと……みんなを!」


 ユーリが駆け出そうとする。

 俺は……彼女の手を引いた。


「アイン、さん……とめない、で!」


「ウルスラ。おまえが危惧しているのは、ユーリが【完全再生】を使うことで、この子の力を狙う輩が来ることだよな」


「そうじゃ! だから能力を人前で使わせたくないのじゃ!」


「なら俺がユーリの【完全再生】を鑑定コピーする。俺があいつらを蘇生する。そうすれば……ウルスラが危険視してるような、ユーリの命が狙われるような展開にはならない」


「! けど、それじゃあ、アインさんが」


「心配すんな。俺には力を貸してくれるおまえがいる。仲間がいる。身に降りかかる火の粉は、振り払える」


「……じゃがおぬしがとらわれ、ユーリが力の源だと気付かれたらどうする?」


「そのときは潔く、自殺するよ」


 ウルスラの魔法により、俺が死ぬと、ユーリの精霊核は世界樹の元へ戻る。


「これならユーリは安全だろ?」


 俺は笑って、不安げなユーリの頭を撫でる。


「俺はおまえに返しきれない恩がある。おまえのしたいことが、俺のしたいことなんだよ」


 彼女の涙を、俺は指で拭う。


「ユーリ、俺はおまえを守りたい。ウルスラがおまえを守るように」


「それは……小僧。貴様も守り手となるということか?」


「ああ」


 ユーリが傷ついた人たちを助けたいと叫んだとき、俺は思い出した。


 俺が奈落に墜ちたときのことを。


 あのとき、俺は死んだはずだった。

 けどこの子は、俺を助けてくれた。


 ユーリは、優しい子だ。


 たとえ見ず知らずの命を助けた結果、自分の命が狙われるかもしれないとしても。


 目の前の困っている人を、助ける。


 そんな彼女の気高き精神にひかれて、俺は今まで以上に、ユーリを守りたいと思ったのだ。


「……ミクトランの再来、か」


 ウルスラは目を閉じて、はぁ……と大きくため息をつく。


「わかった。小僧……いや、アイン。おぬしの覚悟しかと受け取った。しゃがめ。貴様に証をさずける」


 俺は言われたとおり、ウルスラの前にしゃがむ。


 彼女は俺の前に立つと、目を閉じて、俺の唇に……自分の唇を重ねた。


 その瞬間、俺の体に、大量の魔力が流れ込んでくる。


 そして俺の左手が強く輝く。


 ややあって……ウルスラが唇を離す。


「アイン。おぬしとわしとの間に、パスをつないだ。これでおぬしとわしは、精霊の守り手として、一心同体となった」


「それって……つまり?」


「わしの体内に蓄えてある膨大な量の魔力を、おぬしが使えるということだ。それに魔術回路も共有となった。魔法の威力も私と同等になったぞ」


 つまり……俺は賢者ウルスラの魔法と魔力を、完全に自分の物にしたということか。


「アイン、左手を見よ」


「なんか……紋章があるな」


「それは精霊の守り手である証じゃ。わしとおぬしはユーリを守る運命共同体。……わしはユーリを、そして同じレベルで、おぬしを守ろう」


 今までもウルスラは、十分に俺のことを守ってくれた。


 だが……これからは、より一層、俺のことを守ってくれると言うことか。


「勘違いするでないぞ」


「ユーリのためなんだろ?」


「いや……」


 ふっ、とウルスラが微笑む。


「おぬしのためなんじゃからな」


 ……不覚にも、ウルスラが可愛いと思ってしまった。


「ユーリから能力をコピーせよ。なんのために魔力回路を共有させたと思っておる」


「なんのためだよ?」


「【完全再生】には莫大な魔力量が必要となるのじゃ。だがもう心配するな。わしのものを使えるのじゃからな」


 俺はユーリの元へ行く。


「ユーリ。いいか?」


「は、い。おねがい、します……」


『世界樹ユーリの能力アビリティ


『→完全再生パーフェクト・リバース(SSS)』


『→対象となる人物の肉体を完全な状態に戻す。対象が死亡した場合、死亡直後であれば蘇生が可能となる』


 俺は能力をコピーした後、泣いている女の子のもとへいく。


「安心しろ。お母さん治してあげるから」


 俺は少女の母親に、両手をかざす。


 尋常じゃない量の魔力が、俺の体からひっぱられる。


 ウルスラと契約してなければ、今頃魔力を全て吸い取られ死んでただろう。


 俺の手が、翡翠に強く輝いたと思った、次の瞬間。


「ママっ!!!」


 女の子が母親に抱きつく。


 失った頭部は、完全に再生されていた。


「わたしは……いったい?」

「このお兄ちゃんが治してくれたのっ!」


 女の子が俺を指さす。


「なんとお礼を言って良いことやら!」

「気にすんな。礼は……不要だよ」


 このお礼は、俺に向けるべきじゃない。

 けど俺がやったとしないと、ユーリに迷惑がかかる。


 そんなことはできない。

 俺は、精霊の守り手として、ユーリを守ると……決心したのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] ザオリク・・・。
[気になる点] ローブかなんかで全身隠して蘇生すりゃいいだけの話だと思うけど
[気になる点] チートは大好物なので全然OKなのだけども、死者の再生だけはやっちゃいけなかったんじゃないかなぁ。一気に冷めちゃった。
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