38.鑑定士、魔獣となったゾイドと出会う
ベヒーモスを倒し、以下の能力を得た。
『魔法無効障壁(SS)』
『→外部からの魔法による攻撃を完璧に防ぐ』
『螺旋弾(SS)』
『→空間をも削り取る真空の刃を作り出す。飛ばすことも可能』
『土遁(S)』
『→触れている地面・壁の分子構造を変形させ、自在に潜ることができるようになる』
『部分竜化(SS)』
『→身体の一部を竜へと変化させる。それにより身体能力・腕力が竜種並に進化する』
『地岩竜の加護(SS)』
『→地岩竜と同等の体力・防御力を得る』
『耐性・竜属性(SS)』
『→竜種からの攻撃・魔法に耐性を得る』
ベヒーモスを鑑定したことで、俺は更なる強さを得た。
話は、王城からの帰り道。
俺はユーリに頼まれて、街を見て回ることにした。
「アイン、さん。ひと……たくさん! すごい!」
ユーリの目がキラキラと輝く。
目に映るもの全てが物珍しいのだろう。
「外で、ごはん……売ってる! あれは、なんですかっ?」
「出店って言うんだ」
「はぇ~……」
「お姉ちゃんってば子供みたい~。こんなの全然珍しくないよ」
ピナがませたことを言う。
「おまえも外出るの初めてだろ」
「まーね。でもお姉ちゃんと違ってアタシ大人だから。この程度じゃ騒がないよ」
「ピナ、ちゃんっ! あっち……に、あまくておいしそーなやつ、あるよ!」
「えー!? ど、どこどこ~!?」
だーっ! とピナがユーリの元へとかけてく。
「ふふっ♡ ピナもユーリちゃんも、とても楽しそうです。ねえウルスラちゃん♡」
「は、はい……そうですね黒姫様」
幼女賢者組は、俺のとなりに立っている。
「んも~。ウルスラちゃんはどうして、ずっと敬語なの?」
「い、いえ……さすがに四神のご令嬢にため口をきくわけには……」
「立場なんて気にせずほら、黒ちゃんって♡ ね、ウルスラちゃん♡」
「そ、そうだ小僧! 貴様に話しておくべきことがあったんだ! ちょっとあっちで話そうか!」
「え?」
「いいから来い!」
ウルスラが俺の手を引いて、黒姫たちから離れる。
彼女の手はぷにっとしてて柔らかかった。
「おい小僧。いつまで手を握っておるのじゃ」
ウルスラが乱暴に、俺の手を振り払う。
「いやおまえ……自分から手を握ったんじゃないか」
「ふんっ。覚えておらぬわ」
ほんときっついよな態度……。
「なんでおまえ、黒姫にあんなに苦手意識もってるんだよ。おまえらって同じ賢者じゃないのかよ」
「違うわい。われら9人の賢者にも、格付けというものがある。ピラミッドになっておってな。一番下が4人の上級エルフつまりわしらじゃ。その上に4人の四神様たちがおる」
「ウルスラにとって黒姫は、上司みたいなものなのか」
しかし……9人いると言った。
「守り手全員の中で、トップに立つ存在がいるってことだよな?」
「……まぁな」
実に嫌そうに、ウルスラが言う。
「だがもうヤツはいない」
「死んだのか?」
「……似たようなものじゃ」
ウルスラは俺を見て、はぁ……とため息をつく。
「……ほんと、貴様を見ていると、イライラするよ」
と、そのときだった。
「小僧。どうやら敵が出現したようじゃ」
「町中でか?」
「ああ。それも、突如として町中に出現したようじゃ。ユーリたちのもとへ戻るぞ。危険があったら大変じゃ!」
ウルスラが転移してその場から消える。
俺は急いで、ユーリたちのもとへと向かう。
屋台の前で、美少女3人が目をキラキラさせていた。
「ユーリ、みんな無事か?」
「アイン、さん。どう……したの?」
「敵が町中に現れたそうだ。危ないから目の中入ってろ」
ユーリたちはうなずくと、俺の中へと戻る。
『アイン、さん……』
「……わかってる。対処するよ」
困っている人を放っておけない、彼女の性格は承知している。
俺はウルスラに敵の場所を鑑定してもらい、現場へと急行する。
市街地のど真ん中だった。
「しかし……解せないな。街には衛兵がいる。特に王都の守りは硬いって聞くのに、なんでモンスターが市街地に……?」
現場に到着した俺は、言葉を失った。
『ひ、どい……』
あちこちで人が倒れていた。
血の海が出来ており、建物も壊れている。
『す、すぐに、治療、します……!』
「いや……手遅れだ」
地べたに這いつくばっている人たちの頭が、みな、なかった。
モンスターに頭部をくだかれ、即死だろう。
『そ、そんな……』
「被害者をこれ以上出さないために、俺たちは俺たちのやれることをしよう」
俺は精霊の剣を出現させ、敵と相対する。
そこにいたのは……人とも獣とも思えないような、異形の存在。
目は血のように赤い。
体全身に口がついている。
四肢は太く、四つん這いになっている。
そして特徴的なのは、眉間にある3つめの目玉だ。
「噂に聞く、魔族ってやつか……?」
この世には人間、エルフやドワーフのような亜人のほかに、魔族と呼ばれる種族がいる。
モンスターに近い能力を持ち、そして全員が強大な力を持っている。
『ちがうな。魔族はこんな理性無き獣のような姿をしてない。こやつは魔獣じゃよ』
「【鑑定】」
『→キメラ(?)』
『→【*>EW】が、人間に【K<P<>`】を埋め込んで、人工的に作られたモンスター。理性無き獣。強靱な顎を持ち、万物をかみ砕く』
「鑑定結果が……バグってやがる」
正確な情報を読み取ることができない。
『【隠蔽】の技能が使用されているようじゃ。しかし……精霊神の目をあざむくほどの隠蔽技術。いったい誰が……』
一方、キメラは俺たちに気付いたようだった。
「グルァアアアアアアアアアアアアア!」
キメラはグッ、と身を縮めると、弾丸のごときスピードで、俺たちへと襲いかかってきたのだった。




