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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
2章

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37.ゾイド、全てを失い闇に墜ちる



 ゾイドが、隠しダンジョンから、おめおめと逃げてきた。


 その噂はしかし、まったくと言っていいほど広まらなかった。


 センセーショナルな噂が、2つも、立て続けに起きたからだ。


 1つは、隠しダンジョンが突破されたこと。


 そしてもう1つは、SSランクモンスター【ベヒーモス】が、討伐されたこと。


 どちらも偉業であり、どちらの偉業にも、鑑定士アインが絡んでいる。


 冒険者ギルドでは、アインの話題で持ちきりだった。


 皆の関心事は、はたして下級職であるアインが、本当にそれら偉業を達成できたのかということ。


 大抵の冒険者は、それはインチキだと否定する。


 だが事実として隠しダンジョン踏破、ベヒーモス討伐はなされている。


 じゃあ本当なのか、いやどうなのか。

 冒険者ギルド内では、もっぱらその噂で持ちきりだった。


 一介の冒険者であるゾイドのことなんて、みんな気にもとめてなかったのだ。


「ちくしょう~……」


 夜。

 ゾイドは、王都をフラフラとした足取りで歩く。


「ったく……どいつもこいつもよぉ~……くちをひらけばアインアインってよぉ~……」


 先ほどまで、ギルドで酒を浴びるように飲んでいた。


「ちくしょぉ~……アインの野郎~……ひとりだけ、強くなりやがって……」


 ギルド内では、まだ噂のどちらもが、アインの所業か否かで紛糾している。


 だがゾイドは知っている。

 噂は本当であり、アインは尋常じゃない強さを手にしているということを。


「ほんの少し前は俺の方が強かったじゃねえか……くそっ!」

 

 と、そのときだった。


 ドンッ……! と誰かがゾイドの肩にぶつかってきたのだ。


 ゾイドは無様に、その場に尻餅をつく。


「なにすんだよぉ……! ああっ!?」


「あなた……ゾイド?」


「ジョリーン! てめぇ……!」


 そこにいたのは、かつての恋人でありパーティメンバー・魔女のジョリーンだった。


「ジョリーン、知り合いかい?」


 彼女の隣には、背の高い、イケメンの男がいた。


「んーん。知らないわ、こんなやつ……」


「なっ!? なんだよその態度! ふざけんな!」


 ゾイドはカッなって、ジョリーンめがけて殴りかかろうとした。


 パシッ……!


「女性に乱暴は良くないよ」


 男は軽々と、剣士であるゾイドの攻撃を受け止めたのである。


 そのままくるんっ、とゾイドの腕をひねる。


 ゾイドは無様に背中を打って、倒れた。


「彼はどうしてジョリーンに殴りかかってきたんだい?」


「こいつ……昔の男なのよ。まあもう別れて何の関係もないわ。けど向こうには未練があるんじゃない?」


「そうか。それは失礼した。だがジョリーンは今僕と付き合ってるんだ」


「なっ……!? なんだとっ!?」


「そういうわけだ。彼女のことはあきらめてほしいな。それでは」


 男はジョリーンを連れて、ゾイドの元を去って行く。


 彼女はこっちを一瞥もせず、新しい恋人に熱烈な視線を向けていた。


「は……はは……最悪だ……」


 ゾイドは、その場に大の字になって倒れる。


「ギルドの信用は、失う。女も取られる。見下していた相手に……先を越される」


 じわ……っとゾイドの眼に涙が浮かんできた。


 どうして、こんな不幸な目に遭わなければいけないのだ。


 すべては鑑定士アインを、奈落に置き去りにしてからだ。


 あの日から全ての歯車が狂ってしまったんだ。


「アインさえ……アイツさえいなければ……俺は……」


 ……と、そのときだった。


「もしよろしければ、力、お貸ししましょうか?」


 ゾイドは見上げる。


 そこにいたのは……言葉を失うほど、美しい女だった。


 背が高く、胸と尻が飛び抜けて大きい。


 顔の作りは人形と見まがうほど精巧だ。


 流れる銀髪に、尖った耳。


 一瞬、エルフかと思った。


 だが肌の色が……浅黒かった。


「ダークエルフ……?」


「いいえ、私は精霊。名前を【エキドナ】と申します」


「精霊……だと?」


 ゾイドはフラフラと起き上がる。


「精霊がおれになんのようだよ?」


「なにやら強い恨みを抱いているとお見受けします。その復讐のお手伝いができれば……と思いまして」


 確かにアインに、強い恨みを抱いている。

 だがどうしてこの女が、それを知っているんだ?


「ふふっ、それはですね。私には特別な【目】があるのです」

 

 エキドナは、まるでゾイドの心の中を呼んだかのように、語りかけてくる。


「精霊の目……あなたが恨みを抱いているその鑑定士も、同じ目を持っているのです」


「なんだと!? だ、だからあの野郎、強くなりやがったのか!!!!」


 エキドナが怪しく微笑む。


「欲しくないですか、精霊の目?」


「ほ、ほしい! よこせ!」 


 にぃ……っとエキドナが邪悪に笑う。


 右手を差し出すと、その上には……赤黒い目玉が出現した。


 これが精霊の目というやつか?


 エキドナは精霊の目を手に取ると、ゾイドの眉間めがけて、勢いよく突き刺した。


 眉間に、エキドナの持っていた目玉が収まる。


「がっ! がぁあああああああああああ!」


 ゾイドはその場に崩れ落ちる。

 頭部に激痛が走った。


 体全体がバラバラになるのではないか、という痛みにもだえていた。


 内臓が入れ替わり、筋肉や骨が破壊されていく。


 そして……まったく別の生き物に、作り替えられていくような……感覚。


 ややあって。


 そこにいたのは、1匹の【獣】だった。


 3つ目玉のある、異形のバケモノ。


「さぁ坊や。人間が憎いのでしょう? ならば……殺しなさい」


「グルアァアアアアアアアアアアア!!!!」


 獣はグッ、と体を縮めると、凄まじいジャンプ力を発揮。


 たどり着いたのは……先ほど自分たちに恥をかかせた、ジョリーンたちカップルだ。


「な、なんだおまえは!?」


 男が剣を抜こうとする。

 

 獣となったゾイドは、口を大きく開ける。


 顎の関節は完全にはずれていた。

 牙は剣山のように。


 人間離れしたその顎で、ゾイドは男の頭部を喰らった。


「え…………ヒッ……! きゃあぁああああああああああああ!」


 ジョリーンは悲鳴を上げ、その場にへたり込む。


 ぐちゃぐちゃと咀嚼しながら、ジョリーンを見やる。


「じょ、りーん……お、おま……え、ころ……す」


「そ、その声……まさか、ゾイド?」


 ゾイドは一歩、ジョリーンに近づく。


「ご、ごめんねゾイド! こ、この男、私に自分の女にならないと殺すって脅されてたの! あなたのことが嫌いになったとかそういうんじゃないわ! だから!」


 しかしゾイドはジョリーンの頭部を喰らった。


 ぼり……ぼり……とゾイドはジョリーンの頭部を咀嚼する。


「ダメでしょう、坊や?」


 エキドナがゾイドに近づいてきて、その顎を撫でる。


「復讐相手は、あの鑑定士でしょう? 探し出して……殺しなさい」


 本題を思い出したゾイドは、月に向かって吠えると、王都の繁華街へと走り去っていったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ざまぁされた相手を唆して悪の力を授けるパターンですね。 でもエキドナが堕ちてたとは。
[一言] 作者先生は、 見た目第二次性徴期以上の女キャラを巨乳にしないと、 死んじゃう病気にかかってるの?
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