27.鑑定士、第2ダンジョンをサクサク攻略する
世界樹の精霊・ピナに会いに、隠しダンジョンへとやってきた俺たち。
『正解のルートはすでに鑑定済み。トラップの位置も知らせよう。さっさとユーリを妹に会わせてやるのじゃ』
俺は密林ダンジョンの中を進む。
ウルスラというガイドがいるため、まったく道に迷わない。
あちこち分岐する道の中、正解を的確に選んで進む。
『ちょっとちょっと反則ー! ルート鑑定なしなしー! それじゃあつまんなーい!』
「つまんないっておまえ……」
『せっかくアタシがいっぱい頭ひねって作った巨大迷路なのにー!』
なんか防衛用とか言いつつ、こいつ迷路作るの楽しんでないか?
『ピナ、ちゃん。昔から、いろいろつくって、楽しませるの、好きな子』
「オモチャとダンジョン一緒にするのもな……最悪人死ぬだろうし」
『アタシそんなダンジョン作らないもん! 危なくなったら外に追い出すシステム作ってあるし、トラップも引っかかった後外へポイってなるもん!』
「じゃあ最初から侵入者を来たらすぐ追い出せよ……」
『それじゃつまんないじゃん!』
何はともあれ、密林の中を俺は進む。
ここはダンジョンなので、当然、モンスターが出現する。
『アラウネじゃ。下半身が植物の亜人型モンスター。Sランクじゃな。あらゆる植物の種を生み出すそうじゃ』
アラウネは右手を前に出す。
足元から蔦が生え、俺の体に巻きつこうとする。
「【超鑑定】」
『→アラウネの巻き付き攻撃の軌道』
『→攻撃反射のタイミング』
蔦の動きが遅くなる。
攻撃を喰らう前に、俺は剣の腹で蔦を弾いた。
パリィイイイイイイイイイイイン!
だが弾いた瞬間、何か種子のようなものまで一緒に弾いてしまった。
ぶしゅぅううう…………!
『アラウネちゃんはどんな種でもつくれるんだっ。眠りの花粉が入った種だよっ? どうどうっ? 眠くなった?』
「いや、別に」
『えぇーーーーー!? なんでぇええええええ!?』
俺には【毒大蛇】から鑑定した【耐性・全状態異常】があるからな。
俺に状態異常攻撃は効かない。
『なにそれずるいずるいずるぅーーーーーい!』
ピナが駄々っ子のように言う。
俺は【超加速】を発動。
アラウネに近づいて、【斬鉄】を使用した剣で、胴体をぶった切る。
その後、能力を鑑定。
『万能種子(S+)』
『→あらゆる食物・植物を生やす魔法の種子を生成する』
『万能菜園(S+)』
『→特殊な栄養素を含んだ樹液を分泌する。これを垂らした地面に埋めたものは、どんなものでも大量生産できる』
「次だ」
通路を進んでいくと、やたらとトラップがあった。
上から物が落ちてくる。
下に落ちる穴。
普通の花に擬態した食虫植物。
俺はそのことごとくを鑑定することで回避する。
『なんでトラップひっかかんないのーーーー!? 一個くらいひっかかりなさいよぉおおおおお!!!』
罠の存在や種類をウルスラが教えてれるからな。
『こうなったらもうモンスターしかないっ! がんばってみんな!』
なんかかわいそうになってきたな……と思ったそのときだ。
ガキンッ……!
「なんだ? 今の」
『誰かが影から攻撃したみたいじゃ』
「敵が見えないぞ」
『どうやら【隠密】の能力を使っているようじゃな。透明になり敵から見えなくなる』
ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!
さっきから見えない敵が、俺に不意打ちを喰らわせる。
『だからなんでダメージ喰らってないのよおお!?』
「俺【不意打ち無効化】って能力があってだな」
『きぃ~~~~~~! 卑怯だよぉ!』
「ちなみに通常攻撃も【不動要塞】って能力があるから完全に効かないぞ」
『そんなのもう無敵じゃん! 強すぎる反則だーーーーー!』
申し訳ないが、まあ俺にはユーリをピナの元へ送り届けないといけないからな。
手は抜けない。
『で、でもねっ! うちの暗殺蟻ちゃんの【隠密】能力には勝てないみたいねっ!』
「まあそもそも全部不意打ちにカウントされてるから、負けてないんだけどな」
『そうだった! くっそぉ~~~~~!』
『茶番は終わりじゃ。位置を鑑定しておいたぞ』
「了解。【重力圧】」
ウルスラに指示してもらった位置に、重力場を発生させる。
動けなくなっているそいつを、火属性の魔法で焼いて倒した。
『隠密(S+)』
『→特殊な幕で体を覆う。体を透明化するだけでなく、本人が持つ匂いや気配などを完璧に消す』
『背面攻撃(S+)』
『→脚力を超強化。視界に入っている敵の背後に一瞬で跳ぶ』
「Sランクモンスターなだけあって、優秀な能力を持っているやつがおおいな」
『なにSランクモンスターを楽勝で倒してるのよぉ!!!』
「ウチのユーリさん、かなりチートなもんで」
『うぇええええええええん! お姉ちゃんのばかぁーーーーーーーーー!』
『うう……ピナ、ちゃんっ。ごめん、ね……』
ユーリが逆に申し訳なさそうにしていた。
ピナは妹だと言っていた。
ユーリにとっては、妹のいたずらを、次から次へと、大人げなく見破っていってる感じなのだろうか。
『つ、次はほんと強いから! びっくりして腰抜かすから! ゆけー!』
『蜘蛛女とケンタウロスじゃな。下半身蜘蛛の女と下半身馬の男のセット』
2体同時か。
どうやら向こうもなりふり構っていられなくなったのだろう。
「ギッシャァアアアアアアッ!」
蜘蛛女がケツから、大量の白い蜘蛛の糸を吐き出す。
『あれは【粘糸】じゃ。当たると粘ついた糸に足を取られて動けなくなる。剣で切り払うのもやめておけ』
俺は【火球】で粘糸を焼く。
そのままアラクネごと炎で焼いて殺した。
『2秒後に小僧の側頭部を狙って、ケンタウロスが矢を打ってくる。弾き飛ばせ』
「【超鑑定】」
『→ケンタウロスの矢の攻撃反射タイミング』
ひゅんっ……!
パリィイイイイイイイイイイン!
剣で弾き飛ばした矢は、凄まじい速さで、ケンタウロスへと跳んでいく。
攻撃反射は攻撃を倍にして返す。
『ケンタウロスには【矢避け】という能力があって、遠隔攻撃を自動で避ける。近づいて殺せ』
俺は【超加速】を発動。
矢が飛んでいった先へと走る。
ケンタウロスが矢を避けるタイミングを狙って、俺は【斬鉄】付与の剣で胴体をぶった切る。
『アラクネから【鋼糸】、【粘糸】。ケンタウロスから【魔法弓】、【矢避け】をコピーしたぞ』
「ふぅ……」
『もう……なんなの……? Sランク2体よ……? それを同時に倒すとか……なんなのバケモノなのお兄さん?』
「いや……普通の鑑定士だけど」
『あんたのどこが普通なのよぉもぉおおおおおおおおおおおおお!』
まあそんなふうにサクサクと、隠しダンジョンを攻略していくのだった。




