【番外編】
炊き出しを終えた午後。
メイは集落から少し離れた荒野の真ん中に立ち、大きく深呼吸をした。
「……すぅ、はぁ。よし、やるのです!」
気合を入れて、赤茶けた大地に両手をつく。
意識を集中させ、体内の奥底に眠る『種』に触れる。
かつてアインとの旅で覚醒した、世界樹の精霊としての力だ。
「ええええいっ! 緑よ、生えるのですぅ!」
ドムッ!
メイが魔力を流し込んだ瞬間、大地の脈動がドクンと跳ねた。
乾ききっていた土壌に潤いが染み渡り、ひび割れた地面から次々と緑の芽が顔を出す。
ズズズズズ……!
芽は見る間に茎を伸ばし、葉を広げ、太い幹へと成長していく。
ほんの数秒前まで死の世界だった荒野が、瑞々しい若葉の香りと、生命の息吹に満ちた緑地へと塗り替えられていく。
創樹の力。
それは理をねじ曲げ、無から生命を創造する神の御業だ。
「ふぅ……。今日はこれくらいにしてやるのです」
額の汗を拭い、メイは満足げに腰に手を当てた。
目の前には、見事な防風林と、小さな果樹園が出来上がっている。
「何度見ても、世界樹の精霊の力、凄まじいね」
背後から、感嘆のため息が漏れる。
ジャスパーだ。彼は新しく生まれた木肌に触れ、愛おしそうに目を細めている。
「たった一人で、地図を書き換えてしまうとは。……君の価値は、国家予算にも匹敵するよ」
「えへへ~、それほどでもないのです!」
メイは鼻の下を指でこすり、得意げにふんぞり返った。
大好きな人に褒められる。それだけで、魔力を使った疲れなど吹き飛んでしまう。
(……この力、昔はどう使えばいいか分からなかったのです)
メイは自分の手のひらを見つめる。
かつてアインと共に旅をしていた頃、彼は言った。
『その力は、誰かのために使うべきだ』と。
アインの背中はいつも大きく、誰かを助けるために戦っていた。
メイもそうありたいと願った。
けれど、正直なところ「見知らぬ誰か」のために頑張るという感覚が、メイにはピンときていなかったのだ。
(めーは、アインみたいに立派じゃないのです。だから、これはジャスパー様のためにやってること……だったのですけど)
メイの視界の端に、集落の人々が駆け寄ってくるのが見えた。
「おおっ! 木だ! 木が生えたぞ!」
「すごい、実がなってる! これで飢えなくて済むわ!」
「ありがとう! ありがとう、精霊のお姉ちゃん!」
子供たちが歓声を上げ、大人たちが涙を流して感謝してくる。
その声を聞いた瞬間、メイの胸の奥がじんわりと温かくなった。
むず痒いような、でも誇らしいような、不思議な感覚。
「……悪くないのです」
メイは小さく呟き、口元を緩ませた。
最初はジャスパーに褒められたくて始めたことだった。
でも今は、人々の笑顔を見るのが心地よい。
彼らの感謝を期待して、ワクワクしている自分がいる。
「どうしたんだい? メイ」
「なんでもないのです! さあジャスパー様、あっちの土地も緑で埋め尽くしてやるのです!」
メイは弾むような足取りで、次の荒地へと駆け出した。
アインが教えてくれた「誰かのために」という言葉の意味が、少しだけ分かった気がした。
【おしらせ】
※2/11(水)
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