【番外編】
「ど、どうしてママがここに!? ていうか、勝手に入らないでよぉ!」
ピナが目を丸くして抗議する。
だが、黒姫は悪びれる様子もなく、湯気の立つ鍋をテーブルに運んだ。
「いいじゃない。合鍵はギルド長から借りたわ。それより座りなさい。冷めちゃうわよ」
「むぅ……」
ピナは不満げに唸りつつも、空腹には勝てない。
大人しく席に着くと、目の前には肉じゃがや卵焼きといった、慣れ親しんだ家庭料理が並べられていた。
「いっただっきまーす……」
一口食べると、じわりと出汁の味が染み渡る。
悔しいけれど、やっぱりママのご飯は美味しい。
ピナが夢中で箸を動かしていると、黒姫が頬杖をついて優しく微笑んだ。
「それで? 今日は途中から私が見ていないから、拗ねてたのかしら?」
「……べ、別に。ただ、せっかく真面目に働いてたのに、ママがいなくなっちゃうから」
ピナが口を尖らせる。
見てほしかったのだ。
昔のような泣き虫でドジなピナではなく、一人前の職員として働く姿を。
「ふふ。貴方が張り切っているのは、見なくても分かっていたわ。だから私は、貴方じゃなく『周りの人たち』を見ていたのよ」
「え?」
「同僚の受付嬢や、ギルドに出入りする冒険者たちに話を聞いて回ってたの。『うちの娘は、ちゃんとやってますか?』ってね」
ピナの手が止まる。
黒姫がいなくなったのは、サボっていたわけではなく、ピナの評判を集めていたからだったのだ。
「みーんな、褒めていたわよ。『ピナちゃんはいつも元気で、場の空気を明るくしてくれる』『仕事も丁寧で助かってる』って」
「ほ、ほんと……?」
「ええ。正直、驚いたわ。あんなに甘えん坊だった貴方が、誰かの役に立って、感謝されているなんてね」
黒姫は目を細め、愛おしそうにピナの頭を撫でた。
「アーくんとの旅を経て、変わったのね。……少しだけ、安心したわ」
「ぬへへ……そ、そうかなぁ……? あたしも、やるときはやるんだよぉ……☆」
ピナは照れくさそうに頬を緩ませ、デレデレと奇妙な笑い声を漏らす。
認められた。
あの大好きなママに、成長を認めてもらえたのだ。
胸がいっぱいになり、ご飯がさらに美味しく感じる。
だが、黒姫はそこで、スッと目を細めた。
「まあ、『たまに受付の裏でお菓子を食べてサボってるのが玉に瑕ですけどね』とも言われてたけど?」
「うぐっ……!?」
ピナが喉を詰まらせ、激しく咳き込む。
黒姫はニッコリと、しかし逃げ場のない笑顔で続けた。
「お仕事は真面目に、ね? ピナちゃん?」
「は、はいぃ……気をつけるでありますぅ……」
やっぱりママには敵わない。
ピナは小さくなりながら、それでもどこか嬉しそうに、母の手料理を頬張るのだった。
【おしらせ】
※1/30(金)
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