【番外編】ゾイド魔族化直後
それは、俺の元パーティメンバーゾイドが、魔族化し、王都で騒動を起こした直後のこと。
大暴れしたゾイドを、精霊の力を込めた斬撃で、打ち倒すことに成功した。
ゾイドは元の人間の姿に戻ることができた……でも……。
「ほら、立て! キリキリ歩け!」
騎士達が、ゾイドを拘束して、立ち去ろうとする。
ゾイド……。あいつ、操られていただけなのに……。
「ま、待ってください!」
俺は騎士達の元へ向かう。
「あなたは、古竜殺しの英雄の……?」
「はい。その……ゾイドを連れてくの、やめてもらうことって……できないでしょうか?」
騎士達が怪訝な表情をする。
それは、そうだ。犯罪を犯した人間がいる。証拠もある。目撃者も多数いるのだ。
連行しない方が、おかしい。でも……。
「さっきまでのゾイドは、誰かに操られていたんです。悪いのはゾイドじゃない。ゾイドを操って、騒動を起こしていたやつが悪いんです!」
ゾイドは、俺のことを虐めていたやつだ。庇う義理があるのかと問われると、微妙なところ。
でも……だからって、無実の罪で、連れてかれるのはまちがいだと思う。
「アインさん……」
騎士達が困惑してる。
一方で、ゾイドが俺をにらみつけ、蹴飛ばす。
「おい何をしてるんだ貴様!」
「うるせえ! さっさと連れてけよぼけが!」
ゾイドがそう言うと、騎士達は不愉快そうに顔をゆがめ、そして去っていく。
「ゾイド……おまえ……」
「……おれは、自分の意志で悪い力を手に入れたんだ。他のだれでもねえ、おれの意志でよ」
「だから、捕まるっていうのか……?」
「……そうだよ。……おれが、バカなせいで。おれが、安易に力を得ようとしたせいで、こんな大事になっちまったんだ」
だから、とゾイドが続ける。
「だから、アイン。てめえは……おれみたいになるんじゃあねえぞ」
「っ!」
……ゾイド。おまえ、俺に警告してるのか……?
自分のように、強い力を得て、それで道を踏み外さないようにって……。
「ゾイド……」
ゾイドは、去っていく。こちらを振り返ることはなかった。
俺は……彼を引き留めることができなかった。ゾイドは自分のしてしまったことの、精算を、きちんとしようとしてる。それを止めるのは……駄目だって、そう思ったから。
アニメ6話、このあと23:30〜スタート!




