228.鑑定士、ユーリを連れて星を見る
俺がイオアナから忠告を受けた、その日の夜。
ユーリとともに、屋敷の屋上へとやってきていた。
「わぁ……! お星様、きらきら、ですー!」
田舎は空気が澄んでいるのか、きれいな夜空が広がっている。
星々の輝きが、ユーリの金髪に反射して、とても美しい。
まるでユーリは月の女神かと思うほどだ……って、ちょっとくさかったか。
「アインさん、どーしたの?」
「いや、なんでも。単にガールフレンドと一夜を過ごしたい……なぁんて……」
ふしゅぅ……とユーリは顔を真っ赤にして、長い耳をピコピコと動かしていた。
「あい、あいんしゃん……わたし……その、まだ……そーゆーの……ちょっと……」
「え? あ、いやいや! 変な意味じゃなくて、そばにいたいってことさ」
きょとん、とユーリは目を丸くすると、ぷくっと頬を膨らませる。
「まぎらわし、です……!」
「す、すまん……」
「期待した、じゃないですかっ。わたし、下着、しょーぶよう、はいてきたのに」
「そ、それはその……もうしわけ、ない?」
くすっ、とユーリは笑うと、首を振る。
「気にしてない、です。アインさん。わたし、も、一緒。そばに、いたいので」
屋上はバルコニーみたいになっていた。
俺は敷物をしいて、普段俺が羽織っているマントに、ふたりでくるまる。
「あたたかい、です」
「そうだなぁ。それに柔らかくって良いにおいがするわ」
「えへへっ。もっと、くっついて、よいのですが?」
俺たちは肩を並べ、寄り添う。
すぐ近くに大事な人がいる。
抱き寄せると、彼女が頭を乗っけてきた。
「アインさん、また、危ないこと、するの?」
「いや……別に危ないことはしてないけど」
「アインさん、おやさしい。だから、わかります。また、なにか……起きるんでしょう?」
「……ユーリさんには隠し事できないな。さすが俺の目をつとめるだけはある」
「むぅ、ちがい、ます!」
ユーリは至極真面目な表情で言う。
「わたし、は、アインさんの……伴侶、です!」
「そ、そうだな……予定な、予定」
「が、がーん! 伴侶じゃ……だめなの?」
「いやいやいや! そんなことないって! でも、俺みたいなやつでいいのか?」
「もちろん、ですっ。アインさん以外じゃ、だめ、です」
むぎゅっと俺を抱きしめるユーリ。
そりゃ、まあいつかは結婚したいなって思っている。
けどほら、俺たちまだ恋人だし……お母さん(ウルスラ)の許可もないわけで。
「おかーさん、なら、許してくれます」
「うーん……どうだろう。わしの娘はやらんぞ小僧! って消し炭にされそう」
「そーしたら、わたし、回復します!」
「……さんきゅー」
……ああ、なんかいいなこういうの。
俺には両親がいない。
ずっと、孤独だった。
不遇職ということで今までいろんな奴らに馬鹿にされ続けた。
友達はおろか、恋人も、家族も……いなかった。
だからこうして、信頼し合える、心を通わせられるひとがいるのは……ほんとうに、その、いいもんだ。
「ユーリ、その……ちゃんとするから。諸々片付いたらさ。だから、待っててくれるか?」
ユーリはニコニコしながら、きちんとうなずく。
「もちろん、です! アインさん、の、お嫁さんですからっ」
そんなふうに、俺たちは遅くまで星を眺めているのだった。
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