227.鑑定士、イオアナから忠告を受ける
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俺はウルスラとの釣りを終えて、屋敷に戻ってきた。
「アイン様」
「どうした、ロキシー?」
屋敷の守護霊であるメイドのロキシーが、不安げな表情で俺の元へやってきたのだ。
「アイン様にお客様です」
「客? だれだろう」
「親友を名乗っております」
ウルスラは首をかしげる。
「おぬしに親友などいたのか?」
「ちょっと凹むんですけど……」
俺は彼女とともに応接間へと向かう。
「やぁアイン。久しぶりだね」
「げ……おまえかよ、イオアナ」
白髪の魔族、イオアナがソファに座っていた。
「自分で親友っていってて悲しくならないのかおまえ?」
「何言ってるんだい。ボクらは親友だろ。何度も殺し合った」
「それは親友とは言わん。で? 何の用事だ?」
こいつは以前の戦いで完全に撃破したつもりだった。
しかし聖杯のかけら回収の旅の途中で、復活したことを知った。
「つれないな、こうして君に会いに来てあげたというのに」
「なんじゃこやつ、おぬしを好いているのか?」
「やめろ、縁起でもない」
ややあって。
「こんな立派なお屋敷に住んでるなんてね。買ったのかい?」
「まあ。譲ってもらったみたいな」
「さすが救国の英雄、良い待遇をしてもらっているようじゃないか。うらやましいよ。妬ましい」
へっ……! と吐き捨てるように言う。
「おまえは……なにやってんだよ」
「ま、裏でこそこそやってるよ。敗者のボクにふさわしいだろ?」
「知らんよそんなこと……で、マジで何しに来たんだ? 戦う気はないんだろ」
「おや? 宿敵が襲いに来たとは考えないのかい?」
「おまえが殺す気かどうかなんて、見てわかるだろ」
「ふふっ、なるほど。気配を読んだわけか。鑑定も使わず、さすが歴戦の勇者だね」
イオアナがティーカップをテーブルの上に置く。
「今日は君に警告に来た」
「警告?」
「君に倒された者達が今回復活した。そして、君を倒しにやってくるだろう」
「なっ! なんじゃと!」
隣で聞いていたウルスラが、がたっ! と立ち上がる。
「キングやゼウス、君が葬り去ってきたものたちみんなさ」
「なんでそんなことになってるんだ?」
「詳しくは言えない。けど君に復讐しにくることは確実だろうね」
「……おまえもか」
「そりゃもちろん♡」
鋭い目つきでイオアナが俺をにらみ付ける。
以前よりも洗練された殺気。
ウルスラが思わず額に汗をかくほどだ。
「へぇ、これでも微動だにしないなんて、やっぱりアインはすごいな。……妬ましいよ。ああ、妬ましい」
平然としているものの、イオアナからは、俺への憎悪が見て取れた。
こいつもまた俺を殺す気だろう。
「狙いはなんだ? 憂さ晴らしのためだけに、復活なんてしないだろ」
「君が持っている聖杯のかけら。4つあるうちの2つを君が保有している。それをいただく」
「なるほど……じゃおまえらの黒幕に言っといてくれ。渡す気はさらさらねえってよ」
ニコッとイオアナは笑ってうなずく。
「それでこそアインだ。じゃあね宿敵。有象無象なんかに、まけるんじゃないよ」
フッ……! とイオアナは、音もなく、まるで煙のように消え去った。
「ふぅー……」
ウルスラはソファに腰を下ろし、汗を拭う。
「あやつめ……とんでもなくレベルアップしておったな」
「ああ、けど、問題ない。俺にはみんながいる、この目があるから」
まける気はしない。
いざとなれば左目の神眼の封印をとけばいい。
「アインよ。これからどうする?」
「決まってる、みんなの笑顔を俺は守るよ。守り手だからな」
「……うむ、それでこそ、アインじゃ。わしもおぬしに力を貸すよ」
「ありがと、ウルスラ」
「べ、別にな……おぬしのためじゃないぞ。娘のためじゃ……娘のためなんじゃからな!」
「わかってるって」
こうして、俺はまた新たな戦いに、巻き込まれていくことになるのだった。




