226.鑑定士、ウルスラと釣りをする
【※お知らせ】
コミカライズ最新話がこのあとすぐ、10/21の0時に更新されます!
マガポケで好評連載中!
コミックスは11/9に発売予定です!
俺が極黒大陸で聖杯の欠片を回収してから、2週間ばかりが経過した。
ミクトランの屋敷、その裏庭にあった湖の畔にて。
俺は釣り竿を垂らして、のんびりとしていた。
「ふぁー……」
次なる聖杯の欠片の場所は、あらかたの目星はついている。
今はジャスパーが正確な位置を探ってくれている最中だ。
その間の時間を利用して、俺は余暇を過ごしている。
「あ、アインよ……ちょっとよいか?」
「ん? なんだウルスラって……え? ど、どうしたその格好?」
普段の学者風の服装ではない。
お嬢様みたいなワンピースに、ボサボサで無造作に束ねている髪の毛は、ストレートヘアになっている。
眼鏡を外し、帽子も外していると……本当に別人のようだった。
「た、たまにはいめ、イメチェンというやつじゃ。変……じゃろうか?」
不安げに尋ねてくる彼女に、俺は感心したように言う。
「いや、すっげえ似合ってる。はぁー……変わるもんだなぁ」
「そ、そうかっ。ふ、ふんっ、もっと言葉を選べ愚か者がっ♪」
ウルスラさんめっちゃ嬉しそう。
彼女は俺の隣に座り込む。
「あ、アインよ」
「おうよ」
「は、腹減っておらぬか? ちょっとサンドイッチを作ってきたのじゃが」
「マジ? 助かるわ」
そろそろ腹が減ってきたタイミングだったからな。
ウルスラは嬉々としてランチボックスを膝上に広げて、蓋を開ける。
「ほ、ほれ。好きなのを取るが良い」
「さんきゅー」
きゅうりサンドを手に取って、一口食べる。
「ど、どうじゃっ?」
「おう、うめー!」
ほどよく塩気があるきゅうりと、バンズにぬったマヨネーズが実に合う。
「そ、そうかっ! それは重畳。たくさんつくったからの、たぁんとお食べ!」
俺はウルスラの言葉に甘えることにして、彼女の作ったサンドイッチを頬張る。
「平和じゃのぅ」
「そうだなぁ」
屋敷は田舎町にある。
釣り竿に魚が食いつく気配はまるでない。
「のどかで良い町じゃ。ここで娘達と余生を過ごすのもよいだろう」
「そうだな。ま、それも聖杯の回収が終わってからだな」
聖杯の欠片はあと2つ。
どこにあるのかも定かではなく、しかもなぜか復活したイオアナも邪魔してくるという。
「不安か?」
「まさか。俺には最強の目と仲間がいるし。それに最強の賢者様もついてるからな」
ニッと笑って、俺はウルスラの頭をなでる。
「頼りにしてるぜ、ウルスラ」
「う、うむ……」
顔を赤らめて、彼女がもじもじとする。
「あ、アインよ……」
「おう」
「その……あのな。おぬしは、わしのこと……ど、どう思ってる?」
「どうって……頼りになる俺の相棒だろ?」
彼女はうぐぐっ、と唇をかむ。
「違うの?」
「いや、そうじゃろうな。それでも嬉しいのじゃが……その……あっ! アインよ! 引いておる! 引いておるぞ!」
釣り竿の尖端が、ぐぐっとしなっていた。
「おう、よっしゃあ! ゲットだぜ!」
ぐいっと釣り竿を引っ張ると、湖面がズももっと盛り上がる。
水しぶきを上げて出てきたのは、見上げるほどの巨大な魚だった。
「魔物じゃな。Aランク程度じゃ」
「あいよ」
手刀を振り上げ、適当に振り下ろす。
スパパッ……! と巨大魚が三枚に下ろされて、地面に落ちた。
「刀を使わずとも切断できるとは。さすがアインじゃな」
感心したようにうなずくウルスラを見て、俺は吹き出す。
「な、なんじゃい?」
「いや、やっといつも通りのウルスラに戻ったなってよ。その格好とのギャップがすごくって」
「や、やはり変か?」
「変じゃないけど、その格好で言われるとなぁ」
俺が笑うと、あきれたようにウルスラが笑う。
「まったくもう……やれやれ、いつになれば気づいてくれるのかの」
そんなふうに、俺はウルスラとのんびり釣りをして楽しんだのだった。




