225.アインに敗れし者たち、集う
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【彼】が目を覚ますと、そこは見知らぬ、白い空間だった。
「こ、ここは……どこなんだよ? おれは、いったい……?」
両手を見やると、人間の腕に戻っていたことがわかる。
「ど、どうなってんだ……!? おれは、あの女に、変な目玉をつけられて……それで」
そのときだった。
「やぁどうも」
「な、なんだよおまえ!?」
白髪で、小柄な、女とも男とも思えないような人物が立っている。
「ボクは【イオアナ】。君は?」
イオアナと名乗る人物に、心当たりはなかった。
「おれは……【ゾイド】」
彼女の前に立っているのは、そう、かつてアインを奈落の底に置き去りにした男。
剣士ゾイドだった。
「へぇ、ここに【召喚された】ってことか、君もアインに強い恨みを抱いているのかな?」
「アイン……そうだ! おれは、あいつに殺されたんだッ!」
ゾイドは思い出す。
鑑定士アインが奈落から戻ってきた。
彼は自分たちをかばって犠牲になった、と嘘をついていたことがバレてしまい、ギルドでの信用を落とす。
信用を取り戻そうと焦った結果、すべてが空回り。
そして精霊エキドナにアインへの恨みを利用され、魔族化。
「けど負けたってことだよね。この場にいるんだから」
「うぐっ! そ、それは……おまえはどうなんだよ!?」
イオアナはケラケラと笑いながら答える。
「負けたよ。そりゃ何度も何度も。君なんかじゃ比じゃないくらいに……ね」
ひょうきんに振る舞っているつもりであっても、イオアナの目の奥には、ほの暗い殺意が見て取れた。
ゾクッ……! とゾイドが背筋を震わせる。
「と、ところで……イオアナよ。ここはどこなんだ? おれは死んだんだろ?」
「まあね。君は死んだのは事実だ。けど呼び出されたんだ。【復讐者】としてね」
「あ、復讐者……?」
ニコッと笑い、イオアナが言う。
「周り見てごらん?」
「なっ!? なんだよ、この大量の化け物達は!?」
白い空間には、数え切れないほどの魔族やモンスター達がいた。
「うぉおおおおお! アインぅううう! ぶっころぉおおおおおおす!」
金髪に筋骨隆々の男が、猛獣のように吠えている。
「彼は【キング】。特級魔族で、アインに殺された」
イオアナは次に、別の場所を指す。
「くく……今一度、この世に生を受けた。アイン……覚えておれ! このわしが、貴様を直々に殺してやるからのぉ!」
一見するとただの老人のおような男が、殺意むき出しにして笑っている。
「彼は【主神ゼウス】。アインが殺した神だ」
「ちょ、ちょっと待てよ!?」
ゾイドが目をむいて、イオアナにくってかかる。
「なに?」
「魔族? 神? あ、アインの野郎、そんなやつらを倒したって言うのかよ!?」
ゾイドは青ざめた顔で叫ぶ。
鑑定士が比類なき強さを持っていたことは知っていた。
だがゾイドは彼の足跡を知らない。
鑑定士の物語の、序盤で退場したからだ。
「そうだよ、アインはね、神を平然と殺し、魔王を討ち、世界を1つまるごと作るほどまでに進化したんだ」
「な、なんだよそれ……」
ぺたん、とゾイドが尻餅をつく。
「そんなのもう……化け物って次元じゃないぞ!」
「うん、そうだね。正直アインは人間じゃないと思う。精霊の目を手に入れた瞬間からね」
そう言って語るイオアナの顔は、どこか誇らしげだった。
「おまえ……本当にアインに恨みを抱いているのか?」
「ああ、もちろんだよ」
イオアナは歯をむいて、凶暴に笑う。
「今すぐにでもぶっ殺して、ぐっちゃぐちゃにしてやりたい。ボクが舐めた辛酸の数だけ、何度も……何度も……! 何度も何度も何度も!」
ぶわっ、とイオアナの体から闘気が噴出する。
「君もそうだろう!? アインを殺したいくらい憎んでいるんだろ!?」
問われて、ゾイドは目を閉じる。
鑑定士アインのせいで、ゾイドは魔に落ちて、そして元の生活を失った。
「憎い……あいつさえ、アインさえいなければ! 今頃おれはまっとうな道を歩いていられたんだ!」
ゾイドの体から、黒い気持ちが吹き出る。
イオアナは満足げにうなずく。
「それだよ、【あの御方】が欲しているものは」
「あの御方……?」
「ボクらを召喚した人さ。ごらんよ」
彼女が指さす先には、【黒い器】が浮いていた。
「なんだ……あの器は?」
漆黒の器はイオアナ達、復讐者たちを見下ろしている。
「さぁみんな! アインを殺したいんだろ!? ならば祈れ……ボクたちを今一度現世に呼び出した、あの御方に!」
すると……漆黒の器から、莫大な量の力が吹き出る。
それは復讐者たちに降り注ぐと、彼らをさらに強くする。
「殺す……! アイン……殺してやるぅううううううううう!」
ゾイドもまた負のパワーを得て強さを手に入れた。
イオアナは彼らに向かって高らかに言う。
「さぁ行こうじゃないか復讐者諸君。鑑定士の命と、そして聖杯の器を奪うために!」
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「宮廷【獣医】、国外追放のち獣の国で幸せになる~森で会った神獣を治療したら、臣下のケモ耳少女たちから好待遇で雇われました。え?動物たちが言うことを聞かないから帰ってこい?いやちょっと無理ですね」
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