223.鑑定士、ユーリと一緒に寝る
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極黒大陸で聖杯の欠片を回収した俺は、王都にいるジャスパーを訪ねた後、いったん帰路についた。
夜。
田舎で買った、俺の屋敷にて。
「ふぁー……疲れた」
しゅんっ、と左目から、精霊少女たちが出てくる。
「おっつかれ~☆ おにーさんっ」
ピナが俺の腕に抱きついて言う。
「やー、それにしても全力全開のおにーさんはちょー凄かった~☆」
「そりゃどうも。つっても、俺だけの力じゃない。みんな、いつもあんがとな」
いえいえ、と精霊少女達が首を振る。
「そ・れ・じゃ~☆ おにーさんおつかれのようだしぃ~?」
「お姉さん達は退散しようかねぇい」
目隠しお姉さんクルシュが、口元をによによさせながらいう。
「……おまえら、何か企んでない?」
「「いえいえまったく~☆」」
ピナとクルシュがこういうアホな笑顔を浮かべるとき、たいがいロクデモナイことが起きる。
経験則で知っている。
「おにーさんはお部屋から出ることを禁ずる!」
「お香でも焚いてまっててね~。さ、いこっか妹よ~」
クルシュはユーリの背中を押しながら出ていく。
「あの……えとえと、あ、アインさんっ」
「お、おう……どうした?」
金髪美少女は、もじもじと身をよじった後。
「わたし……がんばり、ます!」
ふんす、と鼻息を荒くして、ユーリが出て行った。
「ううーん……」
ユーリがああいう気合いを入れすぎているとき、大概ロクデモナイことが起きる(ピナとクルシュにそそのかされて)。
「…………」
「あれ? アリス、どうした?」
「……なんでも、ないわ。じゃあ、また明日」
「おう、また明日な」
ちらちら、と俺を見た後、とととっ、と彼女が近づいてくる。
「……アインくん」
「どうした?」
「……妹に、優しくしてあげてね」
それだけ言って、アリスは駆け足でさっていった。
「ううーん……わ、わからん……」
精霊達の挙動が不審すぎた。
「ま、ひどいことにゃならんだろう」
俺はベッドに横なって、目を閉じる。
「今日は疲れたな……っと」
久々に全力を出したしな。
グッスリと寝れそうだ。
……。
…………。
………………ふと、良い匂いが鼻孔をついた。
「……お香?」
俺は目を開けて、半身を起こす。
窓際にお香が焚いてあった。
「誰かが置いてくれたのか。ウルスラあたりかな?」
誰が置いたのか判断しづらいので、完全に憶測だけれど。
「なんだかリラックスする香りだな。これならグッスリ……」
そのときだった。
がちゃ、とドアが開いた。
「アイン……さん……♡」
「ユーリ。どうしたって、えぇええええええええええええええ!?」
彼女が来ていたのは、その……薄い布きれ一枚だった。
ネグリジェというやつか?
いや、なんだ、その……スケスケ具合は!?
「どう、ですか? 似合って、ない?」
「い、いや! めちゃくちゃ似合ってる! すげー似合ってる!」
ほっ、とユーリが安堵の吐息をつく。
しかし、マジですげえ美人だ。
もとからプロポーションの良い彼女。
その豊満な体を包むのは、薄い布だけ。
透けて見える白い肌は、女神様と錯覚するほどに美しい。
ユーリは頬を赤く染めながら、俺の隣までやってきて、ベッドに座る。
「ど、どうしたんだ……そ、そのかっこう?」
どうしても、ネグリジェ越しに見える、とてつもなく大きな胸に目が行ってしまう。
「ピナちゃん、に、教えてもらい、ましたっ。こうすれば、元気になる……と!」
くっ……! あのいたずら娘め! なんということを純粋な姉に教えるんだ! 最高だけどさ!
「しつれー、します♡」
ユーリはよいしょよいしょ、と近づいてきて、俺に密着し、ぎゅっと抱きしめる。
彼女の大きな乳房が、腕に押しつぶされてぐにゅっと変形する。
いつもより、布が薄い分、生暖かなぬくもりがダイレクトに伝わってきて……ああやばいぞこれは!
「ゆ、ユーリさん……な、なにを?」
「クルシュ、ねえさまに教えてもらいました。こーしたほうが、アインさん、元気になるって!」
くっ……! あのアホ姉め! なんてことを純粋な妹に教えるんだ! めっちゃ元気になるけれど!
「元気、でました?」
「お、おう……めっちゃ元気だぞ」
やばい、セクハラにならないかこれ?
「それは、良かった……です♡」
ほぅっ、とユーリが安堵の吐息をつく。
「えっと、ええーっと……ユーリは何しに来たんだ?」
「アインさん、に、元気……だしてもらおー、って、思って!」
ユーリは笑顔で言う。
「アインさん、おつかれ、さまでした♡」
そこで、俺は気づく。
この子は、純粋に元気づけに来てくれているのだと。
「どうした、の? アイン、さん。しょぼくれ……て?」
「ああ、いや、ちょっと期待しちゃって……」
「きたい?」
「なんでもないよ。ありがとな、元気出たよ」
俺は窓際のお香を見やる。
「あれもユーリが置いてくれたんだろ?」
「はい♡ アリスねえさまに、おしえて、もらいました!」
そっか、あいつも良い姉ちゃんだな。
「はじめてのとき? は、リラックスするために、お香がいいって」
「……そ、そっすか」
アリス、なんか誤解してるぞ。
ユーリはまだそういうこと、できる精神年齢じゃない。
俺はしばし、ユーリと並んで座る。
彼女が俺の肩に頭を乗せてきて、俺はそのさらさらの金髪をなでる。
「アインさん、つよつよ、でした! かっこ、よかった、です!」
にこにこー、とユーリが笑う。
「サンキュー。みんなのおかげだよ。それと……おまえのおかげだ」
はて、と彼女が首をかしげる。
俺は苦笑して、眼帯越しに、左目を触る。
「この目をさ、おまえが授けてくれなかったら、こんなに強くはなれなかったよ」
ゾイドに裏切られ、奈落に堕ちて……俺はユーリとで会った。
傷付いた俺を癒し、失った希望の光を与えてくれたのは、この優しい精霊の少女だ。
「いつもおまえには感謝してるよ。ありがとう、ユーリ」
ユーリはうれしそうに笑うと、じーっと期待するようなまなざしを向けてくる。
「どうした?」
「もっと、甘いお言葉を!」
俺は気恥ずかしくなって頭をかいた後。
「いつも愛してるよ、ユーリ」
えへへっ、とユーリは笑うと、俺に抱きついてくる。
「わたしも、です! 愛してます……アイン、さんっ」
俺たちは口づけをする。
顔を離して、ふたりで笑う。
「寝ましょー! おつかれの、よーですし」
「だな」
俺たちは布団に入って、そのまま朝までグッスリと寝た。
ユーリのお香のおかげで、疲れは完璧に取れたのだった。
「あちゃー、おねえちゃん駄目だったかー」
「ま、ゆんゆんはお子ちゃまだからね~。まだ早いか~」
「しかーし☆ チャンスはいくらでもあるのだー!」
……なんか、寝る前に不穏な会話が聞こえたけど、聞こえないことにしておいた。
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