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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
後日談

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215/245

215.鑑定士、賢者達と今後の方針を立てる



 隠しダンジョンにて、俺は四神・玄武から、【聖杯】の欠片をもらった。


 話は、数時間後。


 深夜。

 俺の住んでいる、屋敷の一室にて。


 守り手の一人、【黒姫くろひめ】の部屋を訪れることにした。


「黒姫。入るぞ」

『ええ、どうぞ、あーくん』


 ドアを開け、中に入る。

 俺のとほぼ同じデザインの部屋があった。


 窓際にテーブルがあり、そこに着物を着た、小柄な少女がいる。


「こんばんは、あーくん♡」

「アインよ。早くドアを閉めるのじゃ。娘達が起きるであろう?」


 幼女賢者ウルスラもいた。

 丸眼鏡に、銀髪が特徴的だ。


「ウルスラもいるのか。どうしたんだ?」

「わしも四神さまとは関わりがあるからの」


 俺はテーブルの前に腰を下ろす。


「とかいって、ウルスラちゃんは、わたしとあーくんが二人きりになるのが許せないんでしょ~?」


「ななっ!? 何をおっしゃる! そんなことはないのじゃ、断じて!」


 ウルスラが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「照れちゃって~。かわいい~♡」

 

 うりうり、と黒姫はウルスラの頬を指でつつく。


「好きなら告っちゃえばいいのにね」

「お、お戯れはよしてください、黒姫さま」


「もー、駄目よウルスラちゃん。黒ちゃん♡ って言って♡」


「いやさすがに……」

「言って♡」

「わ、わかったのじゃ……黒ちゃん」


 彼女たち守り手の中でも、序列があるとかつて言っていた。


 賢者ウルスラから見たら、黒姫は上の立場であるらしい。


 よく見ればふたりとも、頬が赤かった。


「酒飲んでたのか?」


「ちょっとね。あーくんが来るまでウルちゃんとふたりでね~♡」


 テーブルの上にはグラスと……空いた酒瓶がもの凄い散らばっていた。


「ちょっとって……おまえら酒飲んで大丈夫なのか?」


 見た目幼女だしこの人ら。


「そりゃあもう、わたしたちこう見えてもとっても大人ですから」


「そうじゃ。おぬしの何百倍も長く生きておるからな。飲酒くらいたしなむ」


 俺は少し考えて、屋敷で見つけてきた酒のボトルを、収納の魔法紋から取り出す。


「飲むか?」

「あら、おいしそうなお酒ね♡ いただくわ」


 ボトルを開けて、ふたりに注ぐ。


 幼女たちがグラスを手に取り、一口飲む。


 ほぅ……と嘆息をついた。


「とってもおいしいわ、あーくん。どこにあったの?」


「屋敷の中にあった。メイドの子が好きなの飲んで良いっていうからさ、よさげなの選んできたんだよ」


「うむ、さすが鑑定士。こんなに美味い酒を選んでくるとはな」


 ウルスラが上機嫌に、酒をごくごくと飲む。


「あーくんは戦い以外もなんでもできて本当にすごいわ~♡ 逆に何が不得手なのか教えて欲しいくらいだわ♡」


 黒姫もまた、ハイペースに酒を飲んでいく。


「おまえらこんなに飲んでもケロッとしてるんだな……」


 ユーリやアリスは、少し飲んだだけでベロンベロンになるというのに。


 これが大人か。


「さて、話しましょうか。四神と聖杯について」


 俺はうなずいて、無限収納の魔法紋から、光る欠片を取り出す。


「聖杯は文字通り器よ。とてつもない強大なエネルギーを入れておくためのね」


 太陽のように神々しく輝く欠片を、黒姫は指でつつく。


「エネルギー……それって、ミクトランの職業ジョブのことか?」


「そう、いにしえの勇者ミクトラン。彼は本来、とてつもない力を持って生まれたの。けれどそれを妬んだものがいて、ミクトランから職業の力を抜き取った」

 

 けれど……と黒姫が続ける。


「強すぎる力は争いを生むわ。だから四神たちが力を合わせて聖杯を呼び出し、ミクトランの力をそこに封印。四分割して、四神達が管理した……と聞いているわ」


 一息ついて、黒姫が酒を飲む。


「正直わからないな。そもそも職業ってそんな抜き取ったり奪ったりできるものなのか? 形のないものだろ」


「女神様曰く、おぬしら人間が持つ職業の根源とは、ユーリ達精霊が持つ精霊核と同等、と聞いたことがあるの」


「精霊核……え、俺の中にもあるのか?」


 ウルスラがうなずく。


「誰の魂の中にも、女神様の手により、精霊核が埋め込まれおる。職業による恩恵は、埋め込まれた精霊核からにじみ出たものよ」


「そうか……職業ジョブがみんなバラバラなのは、埋め込まれている精霊核の種類がことなるからなんだな」


「しかり。希少職、普遍職と能力に差があるのも、宿っている精霊の格の差によるものじゃ。より強力な精霊が宿れば希少な職業を、普遍的な精霊が宿れば普遍職となるのじゃ」


 俺は自分の胸に手を触れる。

 だが鑑定士の精霊核を感じ取ることができない。


「おぬしが下級普遍職ロー・コモンなのに誰よりも強くなれたのは、世界樹の精霊の精霊核を手に入れたことで、魂に同化している本来の精霊核が進化したから、という側面もあるの」


「ようするに……誰の中にも精霊核はあって、ミクトランの職業ジョブっていうのは、彼の魂に同化していた精霊核ってことか?」


 ふたりがうなずく。


「しかり。精霊核は完全に魂と同化しておる。本来ならば核を採られた段階でミクトランは廃人となるはずじゃった」


「でもそうならなかったよな?」


 ミクトランは、エキドナと出会う前までは、ごく普通の青年として生活していたという。


「たとえ精霊核を失ったとしても、残滓のみで生命活動ができる。それほどまでにあやつの精霊核は特別にして強大じゃったのだ」


 大まかな理屈は、おぼろげながら理解できた。


「けど解せないな。抜き出したあと四神たちが聖杯に入れたってことは、盗んだヤツから取り返したんだろ? 元の持ち主であるミクトランに、なぜ返さなかった?」


「返せなかったのよ。そのときはすでに、ミクトランは封印されていたから」


 盗んだヤツから取り返すまでに、大分時間が掛かったみたいだな。


 勇者だったはずのミクトランは、アンリによって闇落した。


 神々の力によって世界樹に封印されることになったのだ。


「ミクトランの力は、いずれ新たなる厄災を招くことがわかっていた。だから誰の手にも、もう二度と触れさせないように、この星を支えるお母様達のもとに託されたの」


「星を……支える?」


 黒姫がうなずく。


「四神とは、この世界を構成する4体の大精霊ことよ。女神様たちはお母様たちを核として、この世界を作り上げたの」


 そんなすごい存在だったのか……あの玄武って亀は。


「話はだいたい理解した。けどそうなるとさ、聖杯は元の場所に置くのがベストなんじゃないか?」


「いいえ。お母様もおっしゃってたけど、聖杯の存在が魔族側にバレた。ヤツらは聖杯を奪おうとするわ。そうなるとお母様達の手元に置いておくのは危険」


「どうして?」


「四神は現世に直接干渉ができぬ。有り体に言えば、奪われそうになっても反撃ができぬのじゃ」


 確かに、玄武は、侵入者おれに対して戦ってこなかった。


 精霊騎士なんかよりも、遙かに格上のオーラを持っていながら。


「今まで秘匿されておった玄武様の居場所が、魔族に見つかってしまった。ヤツらは四神を見つけるなんらかの手段をみいだしたのじゃろう。であれば残りの四神様のもとに魔族が向かうのは必須」


「そうなると……確かにマズいな。四神が反撃できない以上」


 玄武を守っていた精霊騎士は確かに強かった。


 しかしオリュンポス神程度の力しかなかった。


 魔族では到底力及ばない。

 けれど……例えば神々の誰かと手を組んでいたとしたら?


「あーくん。お願いがあるの。聖杯の欠片を集めて。魔族に取られ、悪用されてしまう前に」


 俺は聖杯の欠片を、魔法紋に収納する。


「わかった。けれど、俺が集めて良いのか? 一カ所に欠片が集まったら危険じゃないか?」


「何を言っておる。おぬしの中が世界一安全じゃわい」


「あーくんがいればあらゆる敵から守ってくれるでしょう?」


 俺は目を閉じる。

 どう考えても、もめ事に巻き込まれるのは火を見るよりも明らかだ。


 それでも……。


「わかった。その依頼、俺が引き受けるよ」


 俺はミクトランの意志とともに、勇者の力を引き継いだ。


 そのおかげで、世界を救うことができた。

 聖杯の回収が彼の残した宿題というのなら、俺がやるべきことだろう。


「となると、残りの四神の居場所を見つけないとな。ウルスラ、地図あるか?」


 ウルスラが自分の魔法紋から世界地図を取り出す。


 俺は眼帯を少しだけ持ち上げる。


「なにをするのじゃ?」

「四神の位置を鑑定する」


 左目から神眼がのぞく。

 最強無比の神の目の力を使えば、鑑定スキルを超強化し、見つけ出すことも……できるはず。


 俺の左目が翡翠に輝く。


 すると、地図上に、4つの光が浮かび上がる。


 そのうちのひとつが、俺たちの居る街だった。


「大まかな位置はわかった」


「なんと! われらとて知らされておらぬ、四神様のおわす場所を鑑定するとは! さすがアインじゃ!」


 とは言っても、正確な位置や、どこにかくれているかまではわからない。


 気配が大きすぎたからだ。


「けれど、まったくの手がかり無しよりはマシなはずよ。すごいわ、あーくん」


 かくして、俺は聖杯を回収するというミッションを請け負ったのだった。

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