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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
後日談

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211/245

211.鑑定士、残党魔族から情報を聞き出す



 魔族の残党を倒した数日後。


 またも、屋敷に魔族が襲撃してきた。


「くくく……! この我、【沙悟浄さごじょう】、貴様の命を摘む男の名前だ。覚えておくと良いよ」


『こやつも魔神の1柱じゃ。触れたものを水のように溶かす【水溶メルトダウン】という能力を使う』


 沙悟浄はカエルのような、亀のような魔神だった。


「おとなしく【勇者ミクトランの忘れ形見】を差し出すがいい人間よ。そうすれば……命は取らないでやろう」


「またそれか。そんなもん、ないって言ってるだろ」


 俺はミクトランの相棒だったエキドナに確認した。


 彼に忘れ形見なんて存在しないそうだ。


「嘘をつくか。まあいい。ならば力尽くで奪うまでよ。哀れな人間サルだ、おとなしく強者たる我に従っていれば良い物を……」


 バッ……! と沙悟浄は地面に手を置く。

 どぽんっ……!


 やつの体が、突如として消えた。


『どうやら能力で地面を水のようにし、地下へ潜ったみたいじゃな。背後を取るみたいじゃ』


 なるほど、そういう使い方もできる訳か。

 ザバッ……!


「ひゃはー! ドロドロに溶けてしねえい!」


 スカッ……!


「なっ!? あのサル!? どこいった!」


「後ろだよ」


 俺は沙悟浄の背中めがけて、強烈な蹴りを喰らわす。


 ドガアアアアアアアアアアン!


 沙悟浄はそのまま吹っ飛んでいき、無様に地面に転がった。


「ぶべっ! ……な、なにをされた。地下からの強襲攻撃、どうやって避けた!」


「殺気を感じ取って避けただけだよ」


『なるほど、アインは鑑定能力を制限されておる。が、今までの戦闘経験から殺気という、相手がわずかににじみ出す気配を感じ取っていたわけじゃな。さすがじゃ』


 沙悟浄はギリ……と歯がみする。


「ま、まあいい。死ぬのが少し伸びただけだ。所詮は我が魔手を完全に攻略したわけではない!」


 敵がまた地面に潜る。

 俺の足下が、水のように溶けた。


 ドボンッ……!


 気づけば俺は、地面の下にいた。


『沙悟浄がアインの足下を水にしたようじゃ。泳ぎでは向こうに分があるぞ』


【しゃーっしゃっしゃ! 見ろぉ! この沙悟浄の華麗なる水泳法を!】


 流麗な動きで、沙悟浄は水中を舞う。


 それくらいの自信があるってことか。


【人間は哀れだなぁ! 水の中ではもがくことしかできないんだからなぁ!】


 沙悟浄が俺の周りを、縦横無尽に泳ぐ。


 確かに速い。まるで魚のようだ。


【おぅら! 目で追えないだろぉ!】


 バッチリ、俺と沙悟浄は目が合った。


【なっ!? なにぃいいいいいいい!?】


 俺はヤツの腕を、半身を倒して躱す。

 足を掴んで、そのまま頭上へと放り投げる。


 ザッパァアアアアアアアアアン!


 高く放り投げられた沙悟浄は、水上へと出る。


 俺はその後を続く。


「そ、そんな馬鹿な! 水中では魔神随一の速さを持つこの我の動きを! 何故たかがサルごときが目で追えるんだ!」


「結局、魔神の中ではの話だろ?」


『アインは数々の強敵との戦いをその目に焼き付けている。そやつらと比べれば、魔神ごときの動きなど止まっているのと同然。さすがアインじゃ』


 沙悟浄が再び、地面へ潜る。


「させねえよ」


 俺は鬼神化で体を強化し、手刀を振るう。

 スカカカッ……!


 沙悟浄の入っている地面だけを、手刀でえぐり取り、片手で持ち上げる。


【ひ、ひぃいいいいいいいい! ば、バケモノぉおおおおおおおおお!】


「よく言われるよ。で? 忘れ形見って言うのは、一体なんのことなんだ?」


【く、詳しくは知らん! ただ確かに存在すると聞いただけだ……!】


「誰からだ?」


【ま、魔界中でうわさになってるんだ! 出所は知らん! 本当だっ!】


『……アイン君、嘘は言ってないようよ』


 心を読めるアリスが言うんだ。

 本当に沙悟浄はウワサの出所を知らないのだろう。


「コキュートスに聞いてみるしかないか」


【たっ、頼む……! 殺さないでくれ!】


「別に良いよ」


 俺はぽいっ、と切り取った地面を、放り投げる。



「もう悪さすんなよ」」

【へへっ、すんませんでしたっ!】


 沙悟浄は地面に潜る。

 

 ザバッ……!

 パシッ……!


「しゃーっしゃっしゃ! 触れてやったぞ! バァアアアアアアアアカ! こんな単純な嘘にひっかかるなんてなぁ!」


「まあ、別に引っかかってねえけどさ」


「なっ!? なっ!? なぁんだってぇえええええええええ!!!」


 沙悟浄は俺の肩に触れている。

 つまり、水溶メルトダウンは発動しているのだ。


 しかし、俺は人間の姿を保ったままである。


「馬鹿な!? ありえん! 我の水の魔手は触れたものを必ず溶かすのに!」


「よく見ろ、体に直接触れてないだろ?」


『おおっ! 魔力で体全体を包み込み、鎧のようにしているのじゃな!』


 魔力の鎧に阻まれ、沙悟浄の手は俺に届いていない。


 これなら能力は発動せず、結果、俺は無事というわけだ。


『なんという素早い魔力操作! さすがはアイン! わしの自慢の弟子じゃ!』


「くっ、くっ、くっそぉおおおおおお!」


 沙悟浄は思いきり体重を乗せて、俺に触れようとする。


 俺は体から、魔力を勢いよく放出する。


 ボッ……!


 噴出する勢いだけで、沙悟浄は消し飛んだ。


『虚無を使わずとも、魔力の流れだけで敵を倒してみせるとは。見事な腕前じゃ』


「ふぅ……でも、忘れ形見は本当にあるんだな」


 俺はミクトランの屋敷を見やる。


 魔神二人は、明確な目的を持ってここへ来た。


 なら、本当にこの屋敷のどこかに、勇者にして魔王だった彼が、置いていった【なにか】がある。


「本当にそんな物があるとして、それを手に入れて、どうなるんだろうな」


 そのとき、パァ……! と俺の左目が光る。


 長女エキドナが、俺の前に顕現する。


「もしかしたら、ですが」


「どうした、エキドナ? 心当たりでも?」


「ええ。ミクトランの【職業ジョブ】が関連するのかも知れません」


「たしか、あいつは世界で唯一の職業を持たない【無職者】だったんだっけ?」


「そのとおりです、アイン。良く覚えていましたね」


 過去に戻った際に、エキドナから聞いていたのだ。


「私は長年疑問でした。誰もが職業を持つこの世界で、なぜ彼だけが職業がないのかと」


「なるほど……もってない、じゃなくて、取られたってことか?」


「そのとおりです。さすがはアイン。鋭い意見です」


 ミクトランが元々持っていたはずの職業ジョブ、それが何らかの要因で紛失した。


 それが忘れ形見ってわけか。


「ミクトランは最強の勇者となった者です。その才能は恐ろしいものでした。そんな彼が持っていた職業です」


「とてつもない力を秘めていたかも知れない、ってわけな」


 つまり残党どもは、ミクトランが保有するはずだった、その特別な職業ジョブを狙ってるわけだ。


「目的は俺たちへの復讐、ってところだろうな」


 なんだか面倒なことになってきたな。


『これからどうするのじゃ、アインよ』


「決まってる、取られる前に保護する。あの人の力が、悪用される前にな」


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